Monthly Archives: 10月 2024

点数は正直

10月4日(金)

先学期の担当クラスのデータチェックをしていたら、会話の中間タスクと期末タスクの成績が未入力でした。これでは学生に成績表を渡せませんから、急いで入力しました。

中間タスクはペアでのロールプレイ、期末タスクはグループで調べたことの発表でした。中間タスクは普通体でのくだけた会話、期末タスクは丁寧体でのわかりやすい説明を見たことになります。どちらもコミュニケーション力を構成する太い柱です。だから両方ともできてほしいのですが、そういう学生はなかなかいません。唯一、Lさんが中間も期末も高得点でした。Lさんは授業中の発言も多く、同国人にも母語を使って話すことはありませんでした。やっぱりねという感じでした。

次はHさんとPさんでしょうか。Lさんよりは発言が少なかったですが、普段から話すときは単語や単文止まりではなく、勉強した表現も織り込んで、考えたことを伝えていました。CさんやGさんは、会話よりも発表が高得点でした。この2人はおとなしいので、会話のキャッチボールよりは自分のペースで調べたことを語る方が性に合っていたのでしょう。逆に、ZさんやJさんは、会話の方が振るっていました。調べたことを原稿にしたまではよかったのですが、それを棒読みしてしまったことが響きました。

Wさんは、どちらもお情けで合格という点数でした。指名されたとき以外はしゃべらないし、しゃべっても単語を並べるだけでした。おそらく、学校外では日本語を使っていないのでしょう。KCPを出た後、日本社会でうまくやっていけるのか、心もとない限りです。

学生の特徴を意識して採点したわけではありませんが、成績には学生の特徴が現れるものだと、妙に感心してしまいました。

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24時間営業大好き

10月3日(木)

期末テストの作文は、“子どもを育てるとしたら、田舎と都会とどちらがいいか”というテーマででした。これをお読みのみなさんは、いかがですが。私のクラスの学生は、9対1で都会組の圧勝でした。

しかし、よく読むと、まず、Jさんは子どもについては全く触れておらず、自分が都会に住みたい理由を滔々と述べていました。文法の間違いも多く、お情けのCをあげるのがやっとです。

Kさん、Lさんは、子どもについて触れていますが、それは最初の段落だけでした。2段落目からは、田舎は不便でかなわんということを書き連ねていました。Mさんは、都会には塾があるからいい学校に進学する際に有利だと言っています。でも、今、塾の宿題に追われて苦しんでいるのはMさん、あなたですよね。

他の学生も似たり寄ったりで、多少の濃淡はあるものの、行間からにじみ出てくる思いは、“田舎には住みたくない”でした。都会は電車が便利で通学に時間がかからないと言いますが、田舎は自転車で通える範囲に学校があることも多いんですよ。便利な電車に乗りたいのは、子どもではなく自分自身なのです。田舎に24時間営業のコンビニが少ないのは確かですが、24時間営業に頼っているのは都会人だけですよ。

数名が、子どもが病気になった時すぐ対応できるのは都会だと書いていましたが、Nさんは田舎のきれいな空気を吸っていれば病気にならないと主張しています。これはNさんに軍配を上げたいです。また、Oさんは、都会にいるとスマホゲームばかりしていて、遊びを通して身につくスキルが身に付かないと言っています。これは、Oさん自身の反省かな。

学生の都会志向の強固さを改めて感じさせられました。そういえば、このクラスの学生の志望校は、大部分が東京でした…。

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メール送信

10月2日(水)

今学期の新入生のプレースメントテストはもうだいぶ前に終わり、先週はプレースメントテストの結果で中級以上に判定された学生の面接をしました。面接でのやり取りも加味して、レベルを最終的に決定します。

私が担当した学生たちは、みんな話す力がもう一歩でした。まだ国にいますからオンラインの面接でした。だから、回線の状況によっては聞き取りにくかったこともあるかもしれません。そのハンデを差し引いても、普段日本語の勉強はしていても、会話はしていないんだろうなと感じました。

学生たちは異口同音に、KCPではコミュニケーション力を付けたいと言いました。そうだろうなと思いました。漢字の読み書きや文法、もしかしたら読解問題の解法のテクニックまで練習しているかもしれませんが、会話はテキストを「読む」くらいしかしていないのでしょう。それでいきなり、「KCPで勉強以外にどんなこと、してみたい?」なんて聞かれたら、オンラインの向こう側で目を白黒させていたとしても無理はありません。

Aさんは、「こんにちは。KCPの金原です。よろしくお願いします」と私が話しかけるや、「Aと申します。これからお世話になります。私は日本で大学院に進学したいです。どうぞよろしくお願いいたします」と、いかにも何かを読み上げている口調で言いました。あいさつ文を作り上げた努力は認めますが、どうせなら自然な話し方ができるまで練習しておいてほしかったですね。

9月にレベル4だった私のクラスの、できない学生といい勝負の話し方でした。Aさんが3か月練習すれば、同じクラスのできる学生並みになれるかな、なってほしいなと思いながら、レベル判定をしました。

午後、Aさんたちに判定結果をメールで送りました。コミュニケーション力を付けるには、今までとは質の違った練習をしなければなりません。覚悟はできていますか。

ほどなく、Aさんからは返信のメールが来ました。文面からは覚悟のほどはわかりませんが、ガンガン鍛えていきますからね。

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