Monthly Archives: 10月 2024

選択

10月31日(木)

「7月の私はバカでした」と、日本語プラス物理の授業が終わった直後にWさんが叫びました。Wさんは理系の学部に進学しようと思っています。6月のEJUの理系科目で思った以上の高得点を取りました。そこで喜んで東京の有名私大への進学を考え始め、資料を集め始めました。「A大学とB大学と、名前を言ったときのインパクトが強いのはどちらですか」なんていうような質問もしてきました。「A大学もB大学も知らない人がいないくらい有名だけど、それは文系の大学としてだから、理系の学部はあまりお勧めしないな」などと答えると、不満そうな顔をしていました。

ところが、最近になって、ようやくそういった有名私立大学は授業料が高いことを知り、また、自分が勉強したいことが勉強できそうもないこともわかり、冒頭の発言に至ったというわけです。「国立のZ大学は書類審査だけですから、6月の点数で合格できるかもしれません」と。すぐにでも出願しそうな勢いだったのですが、結局出願せずじまいでした。それもまた後悔につながっているようです。

「国立のY大学とX大学に出願しようと思っていますが、私の点数で合格できますか」なんていう質問をするようになりました。どちらの大学も、はっきり言って田舎にあります。そういう大学の名前を、決していやそうな顔でなく口にするようになりました。夏あたりは大学に入ってチャラチャラするつもりもあったようですが、このところは堅実な考え方に向かっています。

Wさんの変身の影にはVさんがいます。同じ理系のVさんは、ずっと国立と言っていました。そして、C大学やD大学のようなチャレンジ校のほかに、U大学やT大学のような、自分の勉強したいことが勉強できて、なおかつVさんの成績で手の届きそうな大学を見つけてきています。間近にそんな友人がいると、Wさんも自分の志望校を見直してみようという気になったのでしょう。

2人とも11月のEJUで点数の上積みを狙っています。そして、本当の意味での志望校に挑戦しようと思っています。EJUは、10日後です。

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成長

10月30日(水)

水曜日は、週に1回の初級クラスの日です。週1の初級クラスというと、毎週学生たちの伸びを感じます。先週できなかったことができるようになっていたということがよくあります。

Kさんもそんな1人で、モニターを見ろと言っても教科書から目が離れなかったのが、画面を見ながらオリジナルの会話が作れるようになっていました。まだ完全に教科書を手放したわけではありませんが、教科書に頼らずに歩き出す兆しが感じられました。

Cさんは、テストはよくできるのですが、話す力はイマイチどころかイマサンぐらいでした。担任のN先生があおったこともあるのでしょうが、全体への問いかけに真っ先に答えてくれました。授業の終わりごろには、習ったばかりの表現に関する質問さえしてきました。先週までと比べたら、長足の進歩です。

Jさんはもともとよくできる学生でしたが、それに磨きがかかっていました。今学期受け持っている中級クラスのできない学生よりも、よっぽど気の利いたことが言えます。中級クラスに連れて行って、会話の授業かなんかに入れたら、中級クラスの学生の刺激になるでしょうね。

そんなクラスですから、こちらもうれしくなってついつい力を入れてしまいます。午前中は雨が降って肌寒ささえ感じたのですが、午後クラスの授業の最中にはうっすら汗をかいていました。それだけ力を込めれば全部吸い取ってくれそうな気がしますから、気分が乗ってくるのです。

今週もたっぷり種をまきましたから、来週も豊年満作を期待して教室に入ることにします。

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会話と作文

10月29日(火)

このところ仕事が滞っていて、今頃になって先週の水曜日にやった初級クラスの会話テストの動画を見たり、木曜日にやった中級クラスの作文の採点をしたりしています。

さて、その会話テストですが、2組の学生にやってもらいました。学生の受けがよかったのは、GさんとTさんのペアでした。しかし、私の目で見る(耳で聞く?)と、もう1つのCさんとRさんのペアの方に高評価をつけました。GTペアは動きがあって見た目は面白かったのですが、会話の内容が伴っていませんでした。一方、CRペアは、アクションは乏しかったものの、勉強した表現を使って会話を進めていました。

素人好みと玄人好みとの違いだとしてしまったら言い過ぎかもしれませんが、本当に上手な会話とは何かということぐらいは伝えていきたいものです。そして、その玄人好みを理解してもらえるように育てていきたいものです。私が作文の採点をしている中級クラスの学生がこの2組の会話の動画を見たら、どう判定するでしょうか。CRペアの方が、日本語会話が上手だと言ってくれそうな気がします。学生たちも、そのぐらいの実戦経験は積んでいるはずです。

そして、作文の方です。こちらも、言いたいことは伝わってきますが間違いが多い作文と、ミスは少ないものの薄味な作文のせめぎ合いがあります。後者は、今回の作文のテーマに対して明確な意見・考えを持っていなかったのかもしれません。あるいは、そもそも考えることが嫌いなのではないでしょうか。だとしたら、この先、進学した後で苦労するでしょう。そうならないように、鍛えていくのも、日本語学校の役割の1つです。

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楽しかった?

10月28日(月)

9時3分前ごろに教室に入ると、学生が3分の1ぐらいしかいませんでした。毎朝している漢字復習テストの準備をしているうちに駆け込みの学生が数名入ってきましたが、それでも欠席が3分の1ほどいました。うち1名は事前に連絡があったのですが、他は理由不明です。漢字テストが終わった頃に2名入ってきましたが、いつになく欠席の多い日になりました。BBQ疲れだとしたら、若いのにずいぶんと尾を引いたものです。

BBQの感想を聞くと、みんなから“楽しかった”という声があがりましたが、Gさんは服に煙がしみ込んで、いつまで経っても臭ったと言っていました。Gさんは料理作りに力を込めていましたから、必然的に煙をたくさん浴びて、Gさんの衣服は肉やら調味料やら香辛料やら様々な臭いを吸い込んだのでしょう。これを名誉の負傷と言ったら無責任すぎますかねえ。表情からすると、GさんもBBQで活躍したことを訴えたかったようにも感じました。

さて、授業は、今までに自分が読んだ本、見た映画・アニメ・ドラマなどを紹介するという課題に取り組みました。こんな表現を使って、こんな感じの文章にするんだよというのを示して、学生たちに書いてもらいました。形も示したのですから、書く時間は15分かせいぜい20分もあれば充分だろうと思っていたところ、みんな黙々と書き続け、30分もかかってしまいました。数人のグループに分かれて発表し合い、各グループの最優秀作品をクラス全体に発表してもらいました。これが思いのほか出来が良かったのです。授業後、回収した紹介文を読んでみると、私が読みたくなる、見たくなる作品がけっこうありました。

“よくやった”と言ってやりたくなりましたが、BBQの感想が“楽しかった”ではいけませんでしたね。もっと厳しく追及して、紹介文並みの感想を引き出すべきでした。

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曇り空でちょうどいい

10月25日(金)

朝早くは傘も要らない程度でしたが雨がぱらついていました。しかし、学生がぽつぽつ集まり始めた9時過ぎの葛西臨海公園は、分厚い雲に覆われていたものの、雨はすっかり上がっていました。最近は、下手に日が照ると暑くてかないませんから、考えようによっては、雨が降りさえしなければ曇り空でちょうどいいのかもしれません。しかも、風が弱いですから、BBQにはまさにピッタリです。

クラスの学生が集まってきましたが、見慣れぬ顔が2人ほどいました。声を聞くと、メガネを外したRさんと、マスクをしていないSさんでした。「教室とずいぶん雰囲気が違うね」と声をかけると、そこを狙っていたと言わんばかりの自慢げな顔をしていました。

今までのBBQは立川の昭和記念公園が多かったのですが、今回は葛西臨海公園です。配給される燃料が木炭を四角く成形したもので、今までとは若干勝手が違いました。コンロの空気孔の通りが悪く、そのため炭がなかなか燃えてくれず、火おこしに苦労しました。

Lさんは軍隊でこういうことはやってきたと、火の担当になってくれました。調理はアルバイトで腕を磨いているKさんが中心でした。慣れた手つきで材料を切ったり串を通したり調味料を振りかけたりしてくれました。焼くのは、材料を持ってきたみんなが協力して、ひっくり返したり炭をうちわであおいだりしながら面倒を見てくれました。

今回のBBQの料理コンテストは、ピザがお題でした。それを担当してくれたのが、Jさんでした。生地の上に材料を飾り付けて、焼いてもらいました。チーズとソーセージ、ベーコンなどが絶妙に絡み合って、コンテストの入賞は逃しましたが、おいしくいただきました。

そして、何より感心したのが、CさんとSさんが、焼くときは何もしていなかったのですが、食べ終わった後の器具を洗うのを引き受けてくれたことです。洗い場まで2往復してくれました。ゴミも、誰かが所定の場所まで運んでくれました。私が尻を叩くまでもなく働いてくれた学生たちには感謝しています。

食後は海を見に行きました。晴れていれば富士山がきれいだったろうにと思いましたが、あまり欲張ってはいけません。図らずして、他のクラスの学生たちも含め、ご歓談の時間になりました。授業中には見られなかった組合せでしゃべったりじゃれたりしている姿が見られました。

3時半に無事解散。月曜日はいつも通りに漢字の復習テストがあるんですが、ちゃんと勉強してくれますよね。

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シーズン到来

10月24日(木)

「先生、あと2週間ですよ、EJUまで。緊張します」「うん、緊張するのもわかるけど、Yさんは6月でいい点数取ってるんだから、その点数でどこか出さないの?」「出します。M大学とN大学とD大学に出そうと思っています。M大学は書類審査だけ、N大学とD大学は面接も筆記もあります」「そうか。D大学は独自試験重視だから、面接が大切だぞ」「そうですか。じゃあ、EJUが終わったら面接練習お願いします」

…なんていう会話をする季節になりました。Yさんには6月の成績で受かりそうなところに出願しておけと指示しておいたのですが、結局何もしませんでした。11月はもっと高い点が取れると思っているのでしょうが、Yさんぐらいの成績だと上積みするのが難しくなります。しかも、Yさん、先学期は6月の成績に浮かれてろくに勉強しなかったみたいですから、この期に及んで焦り始めて、それが緊張につながっているのでしょう。

今週はSさんの推薦書も書きました。Sさんは、直接受け持ったことはありませんが、いろいろなところで接触してきましたから、お引き受けしました。「推薦書に何書いてもらいたい?」と本人に直接聞いたら、出席率がいいこととう控えめな答えが返ってきました。でも、出席率が高いだけでは、推薦書は書けません。Sさんの一番の美点は、あふれんばかりの向上心でしょうかね。負けん気の強さと言ってもいいかもしれません。そういった気持ちに支えられて、外部試験でも高得点を挙げてきました。

私だけじゃありません。毎日、校内のあちこちで、T先生もK先生もO先生もH先生も、面接練習や進学相談をなさっています。留学生の入試は、今が入シーズンです。

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暗雲

10月22日(火)

先週の金曜日に行った中級クラスのテストを採点しました。明日が返却日ですから、もう先延ばしにすることはできません。覚悟を決めて採点を始めると、とんでもないことになっていました。

問題1は記号で答える穴埋め問題。最後の空欄に入りそうな言葉が2つありました。1つは記号Bであり、もう1つはFでした。多くの学生がBと答えましたが、正解はFでした。間違えた学生は、Bの言葉を見るや“これだ”と思ってBと書き、C以下は読まずに次の問題に進んでしまったのかもしれません。この問題、図らずして、ひっかけ問題になってしまったようです。

次は空欄を自分の言葉で埋める問題。こちらは接続の形がめちゃくちゃで点を落とした学生が多かったです。また、もうちょっと違った場面を思い浮かべてもらえたら正しい文が書けたのにという答えも目立ちました。学生たちの頭は意外と固いのでしょうかね。

最後の問題は統計資料を見てそれを説明する問題。資料の言わんとしているところを読み取り、それを文にします。まず、根本的にこの読み取りができない学生がいました。ただ単にグラフの数字を羅列しただけで、全く説明になっていませんでした。次に、読み取りはどうにかできたものの、それをうまく表現できないグループがあります。部分点をあげて少しでも救ってあげようとしましたが、救いきれませんでした。そして、読み取りも表現もできた学生たちです。こちらは採点していて気持ちがいいですね。

最後の組に大学や大学院に進学しようと考えている学生が集まっていれば理想的なのですが、残念な結果に終わってしまいました。このテストの成績もさることながら、こんなこともできないようでは、その学生たちの先行きに巨大な暗雲が垂れ込めてしまいます。今学期中にこの暗雲を吹き飛ばせるでしょうか。なんだか不安になってきました。

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短い秋

10月21日(月)

先月の今頃は、“暑さ寒さも彼岸まで”というけど、本当にそうなるだろうかと心配していました。その言葉通り、お彼岸を過ぎたら、確かに気温は高いけれども、肌に粘りつくような暑さではなくなりました。衣替え直後は薄手の夏のスーツを着ていましたが、先週から裏地のついたスーツを着ています。日中に外をたくさん歩かない限り、このスーツでちょうどいい感じです。土曜日は真夏日でしたが、スーツを着なかったので…。

しかし、今朝は、外に出て数歩あるくと、スーツ内の暖気が抜けて、ズボンの裾から寒気が入り込んできました。前に進むとワイシャツを通して寒気が胸に腹に当たってきました。カーディガンぐらい着てくればよかったと、少し後悔しました。朝の電車内にはコートや厚手のジャケットを着こんだ人が目立ちました。今朝の東京の最低気温は11.5度、11月上旬並みでした。

秋冬物のスーツが暑苦しくなく、コートなど他の衣類も必要としないのが秋だと秘かに思っていますが、今年の秋はもう終わりなのでしょうか。9月末まで半袖シャツで出勤していましたからここまでを夏とすると、秋はたったの1か月? 秋がたけなわになる前に冬将軍ですか。それじゃ短すぎますよ。

今週金曜日はバーベキューです。どうやら寒くはなさそうですが、現時点では雨がぱらつく可能性を否定できません。そういえば、今年はきれいな秋晴れの日がないような気がします。ここは一発、お天気の神様に、25日(金)に快晴を恵んでもらえるよう願うばかりです。

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作文よりスマホ

10月18日(金)

「先生、できました」と言って、Rさんが作文を提出しようとしました。まだ20分ほど時間があります。他の学生はまだ一生懸命課題に取り組んでいました。「もう一度読んで、間違いを1つでも減らしてください」と言って、原稿用紙は受け取りませんでした。

しばらくしてまたRさんの机まで行くと、原稿用紙を机の上に置いてスマホをいじっていました。原稿用紙を取り上げて読んでみると、1行目から漢字のふりがなに間違いがあり、「ょ」を前の字と同じマスに入れてしまっており、さらに助詞の脱落も発見し、とてもじゃないけどそのまま受け取れる代物ではありませんでした。それらの間違いを指摘して、同じような間違いがきっとあるから読み直して訂正しろと命じました。この時点でまだ10分以上時間がありましたが、読み直した様子はありませんでした。

まだ、Rさんの作文をきちんと読んでいませんが、おそらく細かい間違いが山ほどあることでしょう。文構造や段落構成に欠陥が見つかるかもしれません。となると、減点に減点が重なり、合格点が取れないおそれも十分に考えられます。例文レベルならなんとなくごまかせても、作文となると日本語を書く力の差は如実に現れます。

最大の問題点は、気持ちがスマホに行ってしまっていたことです。作文を書く際は、教科書やノートは見てもいいですが、スマホ禁止です。それに耐えられず、作文はいい加減に書いて、一刻も早くスマホの世界に入り浸りたかったのでしょう。

レベルの採点基準に沿って採点してみます。その結果、減点が多すぎて、赤点どころかマイナスの点になっても、その点数をRさんに突き返してやります。

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1・3・5位

10月16日(水)

JPETは、JLPTに比べると知名度も低く、受験者数もはるかに小規模ですが、国際的な外国語学習評価基準であるCEFRにのっとって受験者の実力を判定してくれます。そのJPETの2024年上半期の成績優秀者上位5名のうち、3名をKCPの学生が占めました。その賞状と記念品が届いたので、午前の授業の終了間際に、その3名が在籍している最上級クラスの教室にお邪魔して、表彰しました。

3名とも、最上級クラスの中でもトップを争う学生ですから、そのぐらいの成績を挙げて当然と言えばその通りです。でも、小規模とはいえ受験者は100人や200人ではありませんから、その中での1位とか3位とか5位とか言えば、偏差値を出すとすると80や85まで行ってしまうのではないでしょうか。またCEFRでも最上級レベルに評価されますから、その辺を歩いているバカ高校生はもちろんのこと、普通の高校生をも上回る日本語力かもしれません。クラスの先生方も、そう思ってるに違いありません。

去年は1位と2位の学生を出しましたから、KCPは2年連続で最高位に近い成績の学生を輩出していることになります。今年のJPET受験者募集の際に、去年の話をして、「今年もぜひ上位を独占してもらいたい」と発破をかけました。3名は、その期待に見事に答えてくれました。非常にうれしく、また、誇らしいことです。

この3名に、日本語で太刀打ちできる留学生はほとんどいないと言っていいでしょう。ですから、自信をもって自分の目指す道を突き進んでいってもらいたいと思っています。

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