Monthly Archives: 10月 2023

再マスク

10月31日(火)

この3年余りの間は風邪らしい風邪をひきませんでした。言うまでもなく、マスクのおかげです。愛用の龍角散も減ることなくタンスの中に納まっていました。ところが、先週の半ばごろからのどの調子がおかしくなり、実は先週の柴又は咳をこらえつつ歩き回っていました。龍角散も出動しました。

昨日あたりからは、鼻水とたんも加わってきました。たんは、龍角散を飲んでいるから出やすくなっているのかもしれません。咳と鼻水とたんでいかにも風邪ですが、熱は全然出ません。家でわきの下で測っても、学校で額で測っても平熱です。だからこうして出勤してきているわけです。

とはいえ、席と鼻水とたんですから、声が思うように出せません。午前中はN先生の代講でしたが、しょっちゅう声が裏返りそうになり、なんだか落ち着きませんでした。学生もおかしくて笑いたいのをこらえてくれていたのかもしれません。さすが、最上級クラス、こういうあたりはよくわきまえています。

それにしても、マスクの威力は大したものだと思います。風邪も感染症のうちですから、ついでに完璧に抑えてくれていたんですね。今年の春、マスクを外すとき、風邪の心配もしたのですが、マスクを外す爽快感に負けて、風邪のことはひとまず忘れることにしました。その結果が、これです。

どこで拾ってきたのかわかりませんが、今はこれを学生にうつさないように気を付けるだけです。どのクラスにも受験生がいますから、当分の間はまたマスクのお世話になります。インフルエンザが流行っていると言いますから、予防のためにしばらく続けた方がいいのかもしれません。

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イトウマイ

10月30日(月)

月曜日は2週連続して代講に入ってもらいましたから、10月最終週にしてやっと初授業です。しかし、水曜日にも教えているクラスですから、学生の顔と名前がわからないということはありません。

先学期に引き続きニュースの小見出しをやると、包囲網、公取委、一等米などという言葉が壊滅状態でした。上級とはいえ、ちょっと聞き慣れない言葉となると、意味の想像もできなくなってしまうようです。公取委は漢字を示してもぽかんとしていました。経済経営系の大学院進学志望の学生には反応してほしかったのですが、そんな学生も含めてみんなスマホで調べ始めるというありさまでした。

一等米がきちんと書けたPさんは、クラスで唯一、その文の聞き取りが完璧でした。他の学生のノートをのぞき込むと、「イトウマイ」とか「いっと毎」とか、思い思いの表現で自分の聴き取った言葉を書いていました。学生にとって「米」の字は、米国、欧米などの「ベイ」ではあっても「マイ」ではないのです。米の話だとわからなければ、その小見出しについては皆目見当が付かないでしょう。

逆にほとんどの学生ができたのが、日本のGDPがドイツに抜かれる見通しだという小見出しです。こちらは、円安とか下回るとか聞き覚えのある言葉ばかりですから、それを組み合わせればそれっぽい文ができます。つまり、ニュースを聞き取るには理解語彙を増やさなければならないという、聴解の基礎法則が実地に確認できたということです。

こういう積み重ねをするつもりで始めたニュースの小見出しですから、今後も地味に地道にやっていきます。

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混雑に思う

10月28日(土)

昼食のついでに用事を済まそうと、ちょっと丸ノ内線に乗りました。私の出勤時の早朝より混んでいることは当然として、帰宅時よりも乗客が多く、乗り込むのに一苦労しました。混んでいますからすべての駅で乗り降りに時間がかかるのでしょう、若干遅れ気味でした。反対方向の電車も同様でした。ベビーカーの方が、肩身が狭そうにしていたのが印象的でした。

現在、平日の日中と土曜休日の丸ノ内線は5分おきの運転です。でも、昼間見た光景は、明らかに本数が少ないことを意味しています。乗客全員に座らせろとまでは言いませんが、車内で身動きするのがはばかられるような状況は、適切な混雑具合とは言いかねます。休日の日中にたまに乗る銀座線も、丸ノ内線よりはましですが、できれば敬遠したいぐらいに混んでいます。せっかく増えつつある外国人観光客も、「東京では、地下鉄には絶対乗るな」なんてSNSに流しているかもしれません。

東京メトロも、本数を増やしたいのかもしれません。しかし、本数を増やせない事情があるのかもしれません。それは、運転士不足です。今、運転士がいないためにバスや電車を減便または路線を廃止せざるを得ない会社が、全国各地にあります。大阪郊外のバス会社に至っては、年内に廃業するそうです。それぐらい、人手不足が深刻化しています。大阪の例は関係自治体がどうにかするとのことですが、やがてそんなことすらできなくなってしまうかもしれません。

交通機関に限らず、福祉施設でも学校でも商店でも病院でも、働き手がいないためにしかるべき活動(サービス)ができない例が激増しています。今、この瞬間に出生率が2.5に跳ね上がったとしても、若い働き手が増えるのは20年後です。いや、そのはるか以前(=2.5になった直後)に、急増した赤ちゃんや子供をお世話する人手が足りなくて、世の中がしっちゃかめっちゃかになってしまうでしょう。

用事は済みましたが、また混んだ丸ノ内線に乗ると、暗い気持ちになりました。

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柴又ワンデーワンダーランド

10月27日(金)

目的地の柴又は、私の家からは比較的近く、隅田川沿いをしばらく歩いて京成関屋駅に出てしまえば、電車の乗車時間より京成高砂駅での待ち時間の方が長かったくらいです。

柴又は狭い街ですから、KCPの学生が勢ぞろいして歩き回ったらどこもかしこも大混雑になりかねません。そんなわけで、私が引率したクラスは、まず、江戸川沿いにある柴又公園へと向かいました。公園には何もなく、草地が広がっているだけですから、どうやって過ごそうかと頭を悩ませていました。ところが、公園に待機していたO先生が縄跳び用の縄を見せるや、学生たちはそれに飛びつきました。

大縄跳びが特に好評で、「4人で30回跳べたら草団子をおごる」と言うと、腕(足?)に覚えのある学生が次々と挑戦しました。私はもっぱら縄を回す方でしたが、学生が跳びやすいように回すとなると、腕を大きく回さなければならなくて、思いがけずいい運動をすることになりました。そろそろ出発時間かなという頃に、32回まで記録を伸ばしましたから、あとで跳んだ学生とそれまでに何回も挑戦していた学生に草団子をご馳走しました。

次は柴又のメイン、帝釈天です。ここではおみくじが大人気でした。「あそこにおみくじがありますよ」と案内しただけで多くの学生がおみくじを引き、でもおみくじに書かれていることがわからず、私はおみくじの解説係になりました。帝釈天のおみくじには「凶」がわりと多く含まれているようで、そちらのフォローもしました。

学生たちには柴又の取材という課題が出されていましたから、帝釈天の拝観が終わったところで、学生たちを参道に解き放ちました。どんな取材をしたかは月曜日のお楽しみですが、みんな集合時間ぎりぎりまで参道のにぎわいを楽しんだようです。

出席を取って解散し、チーム縄跳びと一緒に草団子をいただきました。程よい草の香りがおいしさを引き立てていました。その後、午後のクラスの誘導も兼ねて、私も参道をうろつきました。解散してからだいぶ時間が経っても柴又を楽しんでいる学生が少なくありませんでした。そして、概して、そういう学生は成績のいい学生でした。遊ぶときは徹底して遊ぶという具合に、時間の使い方にメリハリをつけているのでしょう。そういう意味で、明らかにうその理由でずる休みを決め込んだ私のクラスのWさん、あなたの今後は暗いですよ。

学生の話によると、柴又は学生の母国ではあまり紹介されていないようです。穴場を訪れたといった感じだったのでしょうか。寅さん抜きでも結構楽しめたことは確かです。次の課外授業はどこにしましょうかね。

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これも作文?

10月26日(木)

遅ればせながら、今週の月曜日に書いてもらった上級クラスの作文を読みました。先週の金曜に課題を与え、週末に何についてどんな構成で書くか考えておくようにと宿題を出しておきました。しかし、作文を見る限り、その宿題に全く手を付けてこなかったと思われる原稿用紙が何枚か紛れていました。

文章そのものが稚拙ならば、まだ救いようがあります。鍛えれば伸びる可能性があります。添削のし甲斐もあるというものです。しかし、明らかにどこかの文章を丸写しというのは、あーあと嘆くほかありません。その学生が考え出したとは思えない論理展開なのですが、ところどころにいかにもといった感じの間違いがあります。一生懸命写したのでしょうが、内容を理解していませんから誤字脱字初歩的な文法ミスが浮かび上がってきます。

さらに困ったことに、そういった学生の多くがこれから入試などで作文・小論文などを書くことになっているのです。彼らの頭には想像力・創造力というものがないのでしょうか。また、文章を書いた(写した)後で読み返すという基本的な習慣も持ち合わせていないに違いありません。もっとも、すぐスマホに頼る学生たちですから、こういう心の働きなど思い浮かびもしないのです。

クラスのみんながこういう作文だったら、課題設定が悪いとか授業の進め方が学生のやる気を誘うものになっていないとか、こちらの反省材料もあります。しかし、すばらしい作文を書いた学生も、しょうもない作文を書いた学生と同じくらいいましたから、やっぱり丸写し組は何かが欠けているのです。

来週の月曜日、どうやって返却しましょうかねえ。

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不親切な大学

10月25日(水)

授業後、JさんがO大学への出願に関して相談に来ました。自分はプリンターがないので、学校で留学生入試の志願票、志願理由書をプリントアウトしたいと言います。私のパソコンからプリントアウトしようと思ってO大学のサイトに入りましたが、志願票も志願理由書も見つかりません。それどころか、留学生入試の要項すら見つかりません。別のサイトによるとO大学の出願締め切りはあさっての消印有効です。今すぐ用紙を取り出して必要書類を作成すれば、どうにか間に合います。しかし、プリントアウトの元になるものがないのですから、どうしようもありません。

それらしき様式が見当たらないとJさんに伝えると、JさんはO大学に電話を掛けました。隣でやり取りを聞いていると、Jさんは自分の住所や電話番号を伝えていました。電話を切ったJさんに聞くと、留学生入試の要項は電話申し込みで、これからJさんあてに郵送するとのことでした。となると、27日の消印有効に間に合わせることは絶対無理です。O大学には年明けに第2期入試がありますから、そちらに使うことになるでしょう。

それにしても不親切な大学です。ネットで見られる要項には「在留カードの更新」というページがありますから、留学生を受け入れていることは確かです。しかし、その留学生入試の出願や試験日程などが全く書かれていないのです。私が見た限り、電話で連絡せよとも書かれていませんでした。

「そんな留学生に冷たい大学になんか行くな」と言ってやりたいところですが、JさんはO大学のカリキュラムに魅力を感じていますから、どうしても行きたいのです。とはいえ、とても心配になってきました。出願する前に実地検分をしてくることを勧めようと思っています。

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症状悪化

10月24日(火)

ある時、授業の初めに口慣らしとして行う3分会話で、「命の次に大事な物」というテーマを取り上げました。2人1組で3分話して、その内容をかいつまんで発表してもらいました。そこでCさんは「スマホ」と答えました。自分はスマホがなければ生きていけないスマホ中毒だとまで言い切りました。Fさんもそれにうなずき、「私もスマホ中毒です」と名乗りを挙げました。もしかすると…と思い、「2人のほかに、自分はスマホ中毒だと思う人」と聞くと、さらに2、3人が手を挙げました。その後、スマホ中毒自慢大会みたいになり、中にはスマホを握ったまま寝るという剛の者までいました。

数年経った現在、スマホ依存症は勢いを増しているようです。Yさん、Pさん、Bさん、Eさん、Jさんあたりは、上述のCさん並みかそれ以上でしょう。スマホなしで何かを考えることができないのではないかと思えるほどです。依存どころか、脳みその一部になっています。おそらくスマホを握ったまま寝ていることでしょう。

本人はスマホを使いこなしているつもりなのかもしれませんが、はたで見ているとスマホに浸りきっている、振り回されているように思えてなりません。わからないことがあるとスマホで調べるばかりですから、人に聞くということもなく、だからコミュニケーション力も伸びません。しかも、周りの状況を顧みずスマホを使いますから、まじめに授業を受けようとしている学生は鼻白んでしまいます。もちろん、教師が注意したくらいではやめません。Yさんに至っては、あまりにひどい授業態度なのでT先生がスマホを取り上げようとしたところ、無言で奪い返したそうです。その瞬間の教室に漂った気まずい雰囲気、想像するだけで寒気を催します。

今週の木曜は課外授業ですが、1日中スマホを見ながら街を歩くんじゃないでしょうね。

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悲しい再会

10月23日(月)

代講で中級クラスに入りました。教室に入ると、SさんとHさんがいました。この2名は、4月期にこのレベルで教えた学生です。つまり、半年間同じレベルで足踏みしているのです。いや、12月まで同じレベルですから、9か月間同じ勉強を続けることになっています。

授業に入ると、Sさんは平気で国の言葉で周りの学生に話しかけるし、Hさんは指名されるとどこをやっているかわからずに隣の学生に聞くし、という半年前と同じ状況が再現されました。これでは進級できないのも当然です。勉強しようという気持ちが感じられませんでした。

半年前に同じクラスだったYさんは、飛び級をして今学期は最上級レベルです。Lさんはその次のレベルです。多くの学生が上級の上位ないしは超級のクラスに在籍しています。みんな、大きく力を伸ばしました。進学しても、日本語の面では十分やっていけるでしょう。しかし、SさんとHさんは、進歩が見られません。2人がどういう進路を思い描いているかわかりませんが、今の日本語力では、進学にしろ就職にしろ、先行きは暗いでしょう。

その一方で、Kさん、Sさん、Aさん、Tさんなどは、どんどん質問してきました。中には的外れな質問もありましたが、その前向きな姿勢は評価できます。クラスのみんながその質問に対する私の回答に耳を傾けていましたが、Sさんは片手を机の中に突っ込んでいましたから、スマホで何かしていたに違いありません。Hさんは聞いているのかいないのかわからないような顔をしていました。

こういう学生でも、年度末には世話を焼いて、どこかに進学させなければならないんですよね…。

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浮かれる

10月20日(金)

後半は選択授業でした。上級クラスの学生を希望に応じて分けてクラスを作り、その1つを受け持ちました。そのクラスにはJさんがいるはずでしたが、欠席でした。担任のM先生によると、昨日も欠席だったそうです

JさんはすでにE大学に受かっています。4月ごろはとんでもなくレベルの高い大学を志望校に挙げていましたが、M先生などがなだめすかして受けさせたE大学がえらく気に入ってしまい、もうこれ以上受験はせず、E大学に進むと決めています。それ自体は問題ありませんが、かなり浮かれている点が大問題です。

欠席理由を確認すると、午前中はE大学近くの物件の内見だったとのことです。内見なら午後にもできるし、不動産屋なら土日も営業しています。そもそも、4月に入学するE大学に通うための部屋を、半年も前から押さえますかねえ。KCPまで30分ほどのところに住んでいてもよく遅刻する学生が、E大学の近くというと小1時間かかるところに移ったら、毎日遅刻じゃありませんか。

だいぶ昔ですが、早々に八王子の大学に受かって、すぐに八王子に引っ越しした学生がいました。こちらが危惧した通り、9時に教室にいるのが週に1日ほどになってしまいました。ビザはもらえたみたいですが、KCPの卒業証書はもらえませんでした。Jさんもその道をまっしぐらに突き進むのでしょうか。

志望校に受かっても浮かれることなく日本語の上達習得に努める学生もいます。Jさんは確かに上級の学生ですが、まだまだ日本語を勉強してもらわないと、E大学で“学問成就”とはなりません。来週月曜日は、通常授業でJさんのクラスに入ります。その時たっぷり説教しておきましょう。

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切れる前に

10月19日(木)

中級クラスの代講をしました。授業内容そのものは、教科書や教材がそろっていましたから、決められたところまで進めさえすればいいだけでした。しかし、担任のO先生からは、「学生の集中力がちょっと…」と懸念材料を示されていました。テンポよく、目先を変えて、学生を波に乗せる必要があるようでした。

前半はうまくいきましたが、授業開始後1時間足らずで、さっきまで元気いっぱいだったSさんが机に伏せてしまいました。Dさんも元気がなくなってきました。逆に、最初は線がつながっているのか切れているのかわからない雰囲気だったEさんが発言するようになりました。授業の最後の方は聴解問題だったので、QさんやWさんは飽きてしまったようでした。

O先生たちこのクラスの先生方のご苦労がよくわかりました。集中力の切れ方が予測不能で、雑談で息抜きをして集中力を復活させるべきか、集中しているうちに進むだけ進んでおくべきか、そのあたりの学生との駆け引きが難しかったです。何回もクラスに入れば勘所もつかめるのでしょうが、そもそもこの集中力のなさ加減では、これから先が思いやられます。

まず、EJUやJLPTでしかるべき成績を挙げるのが難しいでしょう。それゆえ、学生たちが思い描いている進学ができるかどうかも疑問です。出願書類を作成するときだって、細心の注意を払い続けなければなりません。私の観察では、それすら危ういですね。面接はどうなのかなあ。集中力が途切れた瞬間にあらぬことを口走ったりはしないかと、心配になってきました。

文法や聴解よりも、集中力をつける訓練をしたくなってきました。

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