Monthly Archives: 4月 2023

明日、特別授業実施???

4月27日(木)

昨日のクラスでやった文法テストを採点しました。満点に近い学生もいれば、合格点にはるかに及ばない学生もいました。始業から半月余り、学生間の学力の差を感じつつありましたが、それを点数という形で明確に見せつけられました。私が感じている学生の実力とテストの成績には、強い相関関係があります。

当たり前の話ですが、宿題をきちんと提出し、教師の話をしっかり聞き、授業中にちゃんと練習し、疑問点をうやむやにしない学生が、高得点をあげました。指名されても、今どこをやっていて、何を答えていいのかわからないような学生は、不合格の海底に沈みました。

文法の時間には必ず例文を書かせますが、自分の頭で考えて書いている学生はテストでも堂々〇の例文を書いてくれました。形式だけまねたいい加減な例文ばかり提出してきた学生は、微妙に何か違う文を並べていました。それにとどまらず、初級で既習の文法や語彙を間違えて減点を重ねています。この結果を見て、自分の足りないところに気づいてくれたらいいのですが、そういう学生に限って、返却されたテストを机の中に置いたまま帰ってしまったりするんですよね。

明日の秩父旅行は、このクラスを引率します。秩父までの電車内ではあれこれレクリエーションを企画していますが、この答案を見てしまうと、問題学生を集めて特別授業をしたくなってきました。芝桜を見たり銘仙に感心したりおいしいものを食べたりしていてる暇なんかないんじゃないかな。だって、そういう学生でも、来年の4月には大学や大学院に進学するつもり満々なのですから。

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ピョウをください

4月26日(水)

今学期の学校行事・秩父旅行があさってに迫ってきましたから、私のクラスでは朝からテストを2つこなして、その後、旅行の説明をしました。遅刻や欠席がおおぜいいたらいやだなあと思っていましたが、今朝はYさん1名だけでした。

今回の旅行は、今までのバス旅行とは違って、電車旅行です。去年の川越も電車で行きましたが、現地集合でしたからみんなばらばらに行き、、電車旅行という雰囲気ではありませんでした。しかし、今回は池袋から特急ラビューで行きます。乗った瞬間から旅行です。川越へ行き時に乗った通勤型電車とは、高揚感も違うはずです。

でも、それにまつわる注意事項も増えました。まず、電車は絶対に待ってくれません。バスなら出発時刻に多少融通をつけてくれますが、電車はその点シビアです。下車駅でもそうです。短い停車時間の間にてきぱき動いて降りなければなりません。だらだらでれでれ動いていたら、各方面に迷惑が掛かります。

学生たちには当日の乗車券を配りました。外国人専用の(だから、教職員は対象外)、西武線全線が乗れるチケットです。その説明をし、絶対忘れるなと注意しました。ラビューの座席指定券も渡しました。現地に着いてからは原則クラスごとの行動ですから、そこでの注意もしました。

そこまでで、前半の授業が終わってしまいました。1階の職員室に引き上げようとしていたら、説明の時にいなかったYさんが来ました。「Yさん、どうしたんですか」「先生、すみません。寝坊しました」と、予想通りの遅刻理由。そのすぐ後に、「先生、ヒョウをください」とYさん。Yさんの言いたいことはわかっていましたが、「ヒョウ?」と聞き返しました。「電車のヒョウです」「電車のヒョウって何ですか」「…ピョウ」「電車のピョウ?」とさらに聞き返すと、Yさんは口頭での説明をあきらめ、指で四角を描きました。

「ヒョウでもピョウでもいいですが、それは日本語で何ですか」と聞くと、Yさんは黙ってうつむいてしまいました。“チケット きっぷ”とホワイトボードに書きました。“ヒョウ”とは“票”であり、“ピョウ”のほうが原語音に近いのです。Yさんの思考回路が中国語で回っていることが、はっきりわかりました。

それにしても、心配です。あさって、Yさんはラビューに乗れるのでしょうか…。

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弱いまなざし

4月25日(火)

今学期に入ってから、火曜日のクラスでは毎週最近のニュースの映像を見せています。近頃の学生たちはテレビを見ません。ニュースも文字情報として取り入れていますから、日本で暮らしていながらも、耳を鍛えるチャンスは意外なほど少ないです。

映像を見せる直前に、ニュースの見出しのディクテーションをしていますから、多少はどんなニュースか見当がつきます。しかし、ニュースの映像となると、単にニュース原稿を読み上げるだけではなく、各局独自の切り口による分析や解説も加わります。上級クラスですから、そういうところも聞き取ってほしいと思っています。

映像は、それ自体が内容理解の助けになりますし、要点は字幕で表示されますから、聴解力を養うという点から言うと、効果のほどは怪しいかもしれません。でも、モニターを真剣に見入っている学生たちを見ていると、いせ続けていきたいなあと思います。

ところが、YさんやHさんは、毎週映像が流れ始めるとスマホに視線を移します。普段の授業中の様子からすると、ニュースの音声がつかめていないのではないかと疑っています。何とか食らいつこうという向上心や、何でも知ってやろうという好奇心みたいなものは、持ち合わせていないのでしょうか。

入試に合格すれば留学成功だと思っているのだとしたら、大きな間違いです。向上心や好奇心こそ、進学してからの学問成就を支えます。物価上昇が続く日本でどんな社会的変化が起こりつつあるか、これって、Yさん、あなたの研究テーマにかかわりがあるんじゃないんですか。

多くの学生の強いまなざしよりも、うつむきがちの視線のほうが気になりました。

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12時間寝たい

4月24日(月)

変化の表現の勉強で、「(可能動詞辞書形)ようになります」「(動作動詞辞書形)ようになります」という文型を取り上げました。「速く走れるようになりました」とか「毎朝散歩するようになりました」とかという文の勉強です。前者は“できない”から“できる”への、能力の変化、後者は“しない”から“する”への、習慣の変化を表します。そんな解説と練習をし、授業の最後に、「~ようになりたいです」という文で、こんなふうに変わりたいということを学生に言ってもらおうと思いました。「進学するまでに日本語が上手に話せるようになりたいです」なんていう答えが出てくればよしとするつもりでした。

いくつか答えが出てきましたが、Aさんのは「毎日12時間寝るようになりたいです」というものでした。若干違和感がありますが、文法的にどうのこうのと議論する前に、毎日12時間寝ることを習慣化したい、1日の半分を寝て過ごす生活を送りたいという感覚に驚かされました。さらに、Aさんの文(意見)にうなずく学生が非常に多く、唖然とするほかありませんでした。

学生たちは受験勉強などで寝不足感が強いのかもしれません。そうだとしても、12時間は寝すぎでしょう。しかも毎日ですよ。20歳代の輝かしい若い時間を、惰眠をむさぼって過ごそうというのです。年寄りの私に、その若い時間を分けてほしいです。柔軟な頭脳と、あふれる体力と、焦点がピシッと合う目と、あなたたちが使わないのなら、私にくださいよ。

40年前の私は、そんなに寝たいと思ったかなあ。記憶が薄れてしまっていますが、徹夜マージャンした翌日も、そこまで寝ようとは思わなかったでしょう。

あ、もしかすると、彼らはスマホから逃避したいのかな。

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外国料理

4月21日(金)

読解テキストに関連した宿題として、学生自身の国の料理で、外国料理をアレンジしたのものを探してくるというのがありました。マクドナルドやケンタッキーが自国風に味付けされているとか、寿司のネタに日本ではありえないようなものを入れているとか、想像できそうなできなさそうな答えが寄せられました。

40年近く前のことですが、私は新入社員として山口県にある工場に配属されました。その工場の食堂のテーブルに、キムチの素という瓶が置かれていました。普通の白菜の漬物にそのキムチの素をかけるだけで白菜キムチができあがるという、オレンジ色のドロッとした半液体の調味料です。

当時は韓流ブームのはるか前でしたから、東日本で生まれ育った私には、キムチはなじみのない食品でした。工場の人たちが、しょうゆの代わりにそのキムチの素を白菜に漬物にかけて、ごく当たり前に食べているのを見て、さすが山口県は韓国に近いだけあるなあと感心していました。

なんとなく好奇心が湧いてきたので、ある日、少し勇気を出して即席白菜キムチを作って食べてみました。これが辛いのなんのって。食べ物を残すのは嫌いですから小皿の白菜キムチをどうにか平らげましたが、二度と手を出すまいと強く心に誓いました。同時に、こんなものを毎食口にしている韓国人の味覚を大いに疑いました。

その数年後、ソウルまで1万円足らずで行けるというチケットが出たので、初めて韓国の土を踏みました。あれ以後キムチの素には一切手を出していませんでしたが、せっかく本場に来たのだからと、食卓の上に合ったキムチを、ほんの一口、記念に味見しました。

口に入れた瞬間辛さが舌を刺激し、失敗したと思いました。しかし、そのうちに辛さ以外の味が広がりだしました。これをおいしいというのであれば、韓国人の味覚って繊細じゃありませんか。あのキムチの素で満足している日本人の方がどうかしていると思いました。

ネットで調べると、現在、某大手食品会社がキムチの素を出しています。それがあのキムチの素なのかはわかりませんが、キムチが一般化した今は、きっとおいしくなっているに違いありません。私がこの読解の宿題をするなら、この話を書きます。

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さわやかな半袖

4月20日(木)

お昼過ぎにいらっしゃった数学のS先生は、いかにも夏という涼しげなスーツをお召しでした。「いや~あ、これでも汗かいてるんですよ」と、暑がりのS先生。日中の最高気温は26.0度で、今年最高でした。春になったと思ったら、もう初夏ですね。

日本語プラス・物理にやってきたLさんは、半袖のTシャツでした。その姿が全然寒々しくなく、さわやかでした。その隣でセーターを着ているPさんが暑苦しく見えました。でも、Pさん自身は汗をかいているわけでもなく、平然と授業を聞き、練習問題を解いていました。

私も冬物のスーツにネクタイですから、Lさんの目には重たい感じに映ったかもしれません。でも、最低気温16.5度を記録したのは、私が学校に着いた頃です。この気温だと、裏地のついているスーツでもおかしくないと思います。この時期は、気温の日較差が大きいのです。

物理では、電気抵抗を取り上げました。オームの法則やキルヒホッフの法則に勉強しました。半袖のLさんは、私の方を見ていないなと思っても、あとで回ると、私の配ったプリントに要点がきれいに書き込まれています。家へ帰ってから見てもよくわかるようにまとめられているのでしょう。いっぽう、Pさんは、腕を組んだまま微動だにせず私の話に耳を傾けています。後から書き込みのないプリントを見て、何か得るものがあるのでしょうか。聞いただけでわかったつもりになってしまうのが、一番怖いです。

明日の予想最高気温も26度です。明日は上着を脱いで教室に入ろうかな…。

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精進料理とは

4月19日(水)

中級クラスの読解のテキストに、“精進料理”という言葉が出てきました。ふりがながついていたので読み方はわかります。「精進料理はどんな料理か知っていますか」と聞くと、「肉がない料理」とか「お坊さんが食べる料理」とか、テキストに書かれている内容や辞書的な意味が返ってきました。

その答えでで「うん、そうだね」と言ってしまってもいいでしょう。でも、学生は「肉がない料理」と言えばサラダという反応をしているおそれがあります。そこは否定しておかなければなりません。

こういう時に便利なのは、やっぱりgoogle先生ですね。精進料理の画像検索をして、その結果をモニターに映し出します。検索結果の最初に出てきたのは、料理が美しく盛り付けられたお椀やお皿が数えきれないほど並んだ超豪華精進料理です。見た感じ、一人前1万円は下らないでしょう。教室内に小さなどよめきが沸き上がりました。でも、これは「お坊さんが食べる料理」じゃありません。

そこで、“永平寺”という検索語を付け加えると、永平寺の修行僧の朝食がモニターに大写しになりました。おかゆと漬物と塩とお菜が少し。「これが、お坊さんが食べる料理だよ」と紹介すると、超豪華精進料理以上の、何とも形容しがたい声が学生から漏れてきました。「それで満腹になりますか」「はい。毎日こういう食事を続けて、仏教のトレーニングをしていれば、空腹は感じなくなるそうです」(“満腹”“空腹”は先週覚えたばかりの単語)なんていうやり取りも通して、学生たちの頭に精進料理が強くインプットされたことでしょう。

このテキストのテーマは精進料理じゃありませんから、ちょっとした脱線なんですがね。1日に1回ぐらい、こんな驚きを味わう時間があってもいいんじゃないかな。

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ナトリウム?

4月18日(火)

今学期は6月にEJUがあるので、日本語プラスの受験科目は、それに合わせて授業を進めています。私が火曜日に担当している化学もそうです。

3時15分になり授業を始めましたが、学生たちが今一つすっきりした顔をしません。化学の受講生は直前まで数学の授業を受けていますから、疲れているのでしょう。…と思ったのですが、大事なことを忘れていたのに気が付きました。今、目の前にいる学生たちは今学期から受講を始めたのです。それなのに、元素の日本語名をまとめたプリントを配っていなかったのです。いきなり水素とかナトリウムとかと言われたって、何がなだかわかりませんよね。すぐに職員室に戻って、プリントを持ってきました。

水素をはじめ気体の元素は、中国語では「气」にいろいろなパーツを入れて表します。「羊」を入れれば酸素、「炎」なら窒素です。水素は、「圣」です。ついでに、元素ではありませんが、「安」だとアンモニアになります。それぞれ何と発音するかわかりませんが、日本語と同じだとは到底思えません。

ナトリウムは、もともとはドイツ語です。英語では「sodium」(ソディウム)です。ですから、英語が話せても、「ナトリウム」からすぐに「Na」を思い浮かべることはないでしょう。

元素名のプリントを配ったら、学生たちはだいぶ線がつながったようです。文法的にやさしい日本語でしゃべっても、水素やナトリウムは言い換えられない場合も多いです。「エイチ原子」なんて言うと、かえってわかりにくいみたいです。

大学の授業は日本語で元素名を言うはずですから、今から覚えてもらいます。

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漢字は苦手です

4月17日(月)

漢字のテストがありました。不合格者が3人いました。その3人は全員中国人でした。先学期の私のクラスも、漢字テストで不合格になるのは中国の学生ばかりでした。中国の簡体字と日本の漢字が微妙に違うことも原因の1つとして考えられるでしょうが、それだけで合格点(60点)にはるかに及ばない成績しか取れないことは説明できません。

ひとことで言ってしまえば、勉強していないのです。「教育」の読みを「きょいく」と書いたというのであれば、きちんと勉強していなかった、正確に覚えていないのだろうと思います。あるいはうっかりミスかもしれません。しかし、全く何も書いてないとなると、勉強してこなかったとしか思えません。空欄が1つか2つなら、度忘れという線もありえますが、解答欄の半分ぐらいが真っ白となると、勉強せずに受けたと結論せざるをえません。不合格の学生たちは、空欄が多かったのです。

この学生たちも、大学や大学院に進学したいと言っています。しかし、こんなにまで勉強していなかったら、進学先の授業についていけないでしょう。漢字の勉強だけでなく、勉強全般が嫌いだとしたら、進学する意味などありません。別の進路を探るべきです。勉強ではなく、努力を厭う気持ちがこの学生の心に巣食っているとしたら、人間として根本から鍛え直す必要があります。ここまでくると、私たちの手に余ってしまいます。

このテストで一番成績がよかったのは、アメリカの学生でした。韓国の学生も押しなべて好成績でした。もちろん、中国の学生だって何名かは高得点を取っています。しかし、かろうじて合格のもう3名も含めて、中国の学生の不振が目立ちました。国で漢字を使ってこなかったアメリカや韓国の学生がどれだけ努力をしているか、不合格の3名と土俵際だった3名は見習うべきです。先学期の私のクラスの漢字テストで不合格常連だった学生の末路を見れば、このままでは明るい将来などなことは明らかです。

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うつむく学生たち

4月15日(土)

聴解系の問題をするときには、メモを取るのが定石です。こちらもそういう指導をしています。また、学生もそれが当然という顔をして問題に取り組みます。大筋でだれが何を言ったかぐらいなら、メモなしでも答えられるでしょうが、細かいところまで突っ込んで聞かれると、メモがなければどうしようもないでしょう。

日本語+で、EJUの聴読解・聴解の過去問をやりました。ダメ押しのつもりで、始める前にメモを取るように指示しました。しかし、メモを取ったのはごくわずかで、大半はうつむいて必死に耳を傾けていました。真剣に問題に取り組んでいる様子は伝わってきましたが、だからと言って問題に答えられるわけではありません。案の定、そういう学生の正答率は半分ほどでした。

EJUの聴読解・聴解は、先生が一方的にしゃべり、その内容について問うというパターンが多いです。大学の講義を意識したものですから、ノート=メモを取るのは当然です。たとえ国の言葉を使ったとしても、メモを取る力も聴解力の一部だという発想でしょう。これはその通りだと思います。学術的な話を聞き取って理解することは、大学生の主たる仕事だと言ってもいいでしょう。これができない留学生が日本の大学に門前払いを食らったとしても、文句は言えません。

今学期のこの授業は、今回初めてEJUを受ける学生が主力です。初級あたりの聴解ならメモなしでもどうにかなったのかもしれませんが、EJUといく大学入試の端くれとなると、そうは問屋が卸しません。メモが取れずにうつむいて聞いていた学生たちは、壁を感じていたのかもしれません。壁を感じていようといなかろうと、あと2カ月で本番です。

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