Monthly Archives: 10月 2020

志望校に向けて

10月6日(火)

理科系の大学を目指すGさんに小論文の課題と口頭試問で聞かれそうな理科の質問を伝えたのは先週のことでした。午前中、私が養成講座の講義をしている最中に答えを持ってきたようです。

小論文も口頭試問もたくさん出題したのですが、Gさんはそのすべてに答えていました。その点は立派だし、努力も認めますが、その代わり志望理由書を書くのが遅れているそうですから、優先順位を考えて取り組んでもらいたかったですね。出願がうまくいかなかったら、小論文も口頭試問もないのですから。

さて、まず、口頭試問の回答を読んでみました。悪くはありません。ポイントは捕らえています。しかし、それは文章としてであり、面接官の前でこれをそのまま話せるかと言ったら、おそらく無理です。いかにもインターネットで調べたという感じのこまごまとした専門的事柄は、実際には口から出てこないでしょう。今度会ったら、その点を指摘しなければなりません。いや、実際に面接練習をして同じ質問をしてみれば、「書く」と「話す」の差に愕然とするに違いありません。

次は小論文です。Gさんが一番自信を持っているという課題を読みました。原稿用紙2枚に書いてきましたが、無駄な部分が多く、それを省くとせいぜい1枚半です。本気で削ったら1枚に満たなくなるかもしれません。闘志が空回りしています。文章を膨らませる方向がちょっと違っているのです。好きだとか得意だとかというだけで文章を綴っていくと、小論文の肝になる部分が抜けてしまいかねません。自分の専門を踏まえた分野に話を広げていくよう指導しましょう。

でも、かなり高度な課題に食らいついてきたGさんは見込みがあります。上手に育てていきたいです。

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学期休み中ですが

10月5日(月)

学期休み中ですが、受験シーズンとあって、切羽詰まった学生たちが学校へ来ています。

午前中は養成講座でしたが、授業が終わるや否や声をかけられました。S大学への志望理由書、学習計画書を書き上げたKさんが最終チェックをしてくれとのことでした。詳しく見ていけば言いたいことはたくさんありますが、ここは感度を若干下げて、細かいことにはツッコミを入れず、大きな流れだけを捕らえました。面接で聞かれそうな点1つと、語句の修正1か所を指摘し、出願するように指示しました。

昼食を取って戻ってくると、ロビーでEさんが待っていました。面接練習の約束をしていましたが、予定よりも20分ほど早かったので、また、下を向いて何やらつぶやいているようでしたから、声をかけずにそばを通り過ぎて職員室に入りました。すると、5分後ぐらいにお声がかかりました。準備はできたと言いますから、15分ほど早かったですが、練習を始めることにしました。

担任のO先生の話によると、Eさんの最大の意問題点は緊張しすぎることで、それを何とかするのが私の役回りです。Eさんは以前受け持ったことがありますから、まんざら知らないわけではありません。しかしEさんは手指も声も震え、一生懸命さは伝わってきますが、話の中身は頭の中でかなり補わないと理解できません。しどろもどろなんていうレベルじゃありませんでした。話すべきことを暗記してきたそうですが、逆効果でした。緊張のため最初の言葉が出てこず、頭が真っ白になってしまったことは、Eさんの様子からすぐわかりました。

ですから、言いたいことを単語で整理するように言いました。文を丸暗記するのは、Eさんの場合は危険ですから、それはやめさせ、キーワードだけ押さえておくことにしました。こうすれば多少は負担が軽くなり、今後の練習のしかたによっては、今よりは滑らかにしゃべれるようになるでしょう。

今年は入試戦線に大いに異状があります。そこを勝ち抜くためには、学生も教師も力を出し合わなければなりません。

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合格と出願不能

10月3日(土)

昨日の帰宅間際にメールをチェックしたところ、CさんからW大学に受かったという報告が入っていました。Cさんの実力なら受かったとしても不思議はありません。何はともあれ、「おめでとう」の返信メールを送りました。

Cさんは好奇心の強い学生です。なんにでもちょっかいを出してみようという精神にあふれています。私宛に時々質問メールが来ましたが、受験勉強に関する事柄だけでなく、日本語そのものや日本社会・文化に関する日ごろの疑問をつづったものもありました。昨日の合格報告のメールでも、三島由紀夫のこんなことが書かれている小説は何かと聞かれました。私が知っている範囲でそういう内容のものはありませんでしたから、わかりませんと答えるほかありませんでした。

その対極にいるのがRさんです。RさんはF大学を目指しています。その提出書類に学業以外の活動を書き表すものがあるのですが、これが書けなくて困っています。部活動、生徒会活動、ボランティア活動、そういった経験が全くなく、書きようがないのです。でっちあげるという手もありますが、そんなことをしたところで、面接などで簡単に見破られてしまいます。

Cさんなら学校公認の活動ではなくても、その手のネタには事欠かないでしょう。また、それを読み手であるF大学の先生方の興味を引くように表現する術も持っています。うまくすると、そこで面接が盛り上がって、合格してしまうかもしれません。

悲しいかな、Rさんは国にいた時から勉強しかしてきませんでした。それを責めるつもりはありませんが、少なくともF大学の求める学生像とは違うようです。無理してF大学に進んでも、4年間苦しむだけのような気がします。今のRさんをそのまま受け入れてくれる大学に進むのが、結局Rさんの幸せにつながるのではないでしょうか。

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準備が進む

10月2日(金)

期末テストが終わって1週間余りですが、来週の金曜日はもう新学期です。始業日の時点で新入生は入ってきませんが、新たな気持ちで在校生を迎える準備は抜かりなくしておかなければなりません。

その準備の一環として、午後から教室の掃除をしました。机などは、毎日の授業の後に、消しゴムのかすを集め、消毒のアルコールを吹きかけて拭いていますから、さほど汚れていないはずです。それでも、丁寧に見ていくと消しゴムのかすが残っていたり、飲み物を置いた跡が浮かび上がってきたりなど、拭き掃除に使った雑巾がいつの間にか薄汚れていました。

意外に汚れていたのが、各教室のモニターです。ほぼ垂直に立っているのですからごみやほこりなどがたまる余地などないはずです。しかし、静電気が発生して空気中の微粒子を引き寄せているようで、よく見ると画面全体がうっすら何かに覆われているようでした。そういう汚れは乾拭きすれば取り除けたのですが、ある教室の画面だけ、液体が飛び散ったかのような跡が付いていました。映し出された画像・映像を見るのに支障をきたすほどではなかったのか、学期中モニターが汚いというクレームはありませんでした。でも、明らかに汚れており、乾拭きでは取れませんでしたから、そこだけ洗剤を付けて拭き取りました。

それにしても、何の汚れだったのでしょう。コーラか何かのふたを開けた時に中身が飛び散ったのでしょうか。でも、炭酸飲料は教室内で飲んではいけないことになっています。もしそうだったとしたら、汚れがべとついて黒ずんで、教室の先生が気付いたでしょう。学生が汗を飛び散らせるほど暴れ回ったとは考えられません。どのクラスの学生も、教室内ではおとなしすぎるほどでした。傘のしずくを飛ばした学生がいたのでしょうか。でも、跡が付いていたのは私の背よりも高い位置ですし、そもそも傘は校舎に入るときにきちんとたたむことになっています。

結局原因はよくわかりませんでしたが、新学期の準備は着々と進んでいます。

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磨き上げる、研ぎ澄ます

10月1日(木)

月が替わり、10月期が始まりました。それと同時に日本語教師養成講座も新規受講生を迎えて開講しました。

私はいつも通り文法の講義を受け持ちます。初めのうちは、受講生の思考回路を変えることに力点を置きます。文法に敏感になる、何気なく聞いたり読んだり、いや、もっと受動的に自然に目や耳に入ってきた日本語の中から「あれっ」とか「おや?」とか「ちょっと待って」とか感じた言葉の使い方を拾い上げる感覚を身に付けてもらいます。そして、何がその違和感の元なのか分析し見極める感覚を磨くことが、日本語教師には不可欠だと思っています。

初回のネタには、ある新聞記事を使いました。助詞の使い方が悪いため誤解が生じかねない見出しの実例です。記事に出ていた1つは私も見かけてこれはひどいと思っていたものです。私がわざわざ取り上げたくらいですから、受講生のみなさんはみんな何がどう悪いのか気づきましたが、そういう心構えなしでこういう見出しに触れていたら、知らず知らずのうちに、文法的ではないけれども合理的な意味に解釈してしまったに違いありません。

確かに、文法的には変でも、話し手・書き手の言わんとしていることが感知できれば、その発話や文の文法性についてとやかく言うことはめったにありません。もちろん、誤解が生じたときは助詞が間違っているとか多義的に解釈できるとか、文句は言うでしょう。日常生活においては、それで全く問題ありません。というか、敢えて波風を立てることはしないでしょう。しかし、日本語教師の仕事は言語的に日常生活ではありません。一般庶民とは違う次元の空間に存在しています。その空間を自由に漂い、ましてやお金を得ようというのなら、その方面の感覚を研ぎ澄ますことが求められて当然です。

これから2週間ほどは、養成講座講師の日々が続きます。帰る前に明日の資料の準備をしておかなければ…。

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