Monthly Archives: 8月 2020

7区

8月31日(月)

8月が終わってしまいました。今年の8月は、夏休みもなく、ひたすら家と学校の往復に励んだ1か月でした。足を踏み入れたのは、足立、荒川、台東、千代田、中央、港、新宿の7区と、23区の1/3にも及びません。そのうち港区は赤坂見附駅で乗り換えたというにすぎません。中央区・千代田区も、先々週の土曜日に運動不足解消のために朝早く隅田川の河川敷を勝鬨橋まで、そこから晴海通りを有楽町まで歩いたというのを除けば、毎日地下鉄のトンネルで通り抜けただけです。今月の交通費は見事に0円です。

夏休みは、博多に宿を取って、福岡県を中心にあちこち回ろうと考えていました。世界遺産に指定された三池炭鉱、同じく世界遺産の宗像大社(もちろん、沖ノ島へは行けませんが)、いつも通り過ぎるだけの久留米、いつも乗換えと泊まるだけの福岡市内といったあたりを中心に、1日ぐらいは佐賀まで遠征してもいいかなと考えていました。長崎街道を歩いて冷水峠を越えるなんていうアイデアもありました。それがすべて消えてなくなり、気が付いたら60歳になり、安倍さんが辞めていたというのが、今年の8月です。

そして、暑い1か月でした。気象庁が公表している真夏日・猛暑日のデータによると、今年はもしかすると今までで一番暑い8月になるかもしれません。8月の晦日なのに真夏日489地点(観測地点の過半)、猛暑日111地点もあります。それ以上に、7月と8月の暑さの差が激しかった年として記録されるかもしれません。

そう考えると、家と学校の間を地下鉄に乗って行ったり来たりしているうちに半端じゃない日中の暑さをやり過ごしたというのは、健康的だったとも言えます。長崎街道の道端に熱中症で倒れ込んでいたというのでは、シャレになりませんからね。

9月になっても、気温がかなり高い状況が続くようです。せめて、ことわざ通り、彼岸までには夏将軍に撤収してもらいたいものです。

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可能性を求めて

8月28日(金)

先月の大学・大学院の進学フェアに続き、専門学校の進学フェアが開かれました。今年は、4月以降、人の行き来に関しては実質的に鎖国状態ですから、新しい学生が入ってきていません。そのため、学生数も例年の半分ぐらいです。また、その在校生も多くが大学・大学院志望ですから、現時点において専門学校を第一志望とする学生は多くありません。

でも、毎年、秋から冬にかけて、学生たちは悩むのです。自分は本当に大学や大学院に進学したいのだろうかと。自分の本当にやりたいことは大学や大学院にあるのだろうかと。そして、考えに考え抜いた末に、専門学校に進路を変える学生が必ずいます。

Cさんもそんな学生でした。MARCHぐらいの経営学部か商学部を目指していましたが、夏の入り口ぐらいから悩み始めました。学校を休むことすらありました。写真が好きで、そちらの勉強をする夢を捨てきれなかったのです。そして、夏にあったD専門学校の写真コンテストに応募し、見事に入選しました。そこからCさんは、専門学校進学を本気で考え始め、親とも激論を交わし、最終的にD専門学校に進学しました。

今年はほとんどすべての行事が中止になってしまいましたから、Cさんと同じ道を歩むことは難しいです。しかし、学生たちに道は1本しかないと思い込まないでほしいです。いくつかの可能性を持っておいたほうが、明るい未来につながるのではないでしょうか。

進学フェアにいらっしゃったD専門学校の方が、Cさんは成績優秀で大いに活躍していると教えてくださいました。きっと充実した留学生活を送っているのでしょう。

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緩み

8月27日(木)

この前の日曜日に日本語の外部試験がありました。7月のJLPTが中止されましたから、日本語学習者が自分の実力を客観的に評価してもらえるチャンスが消えてしまいました。それを補う一助として、また、入試などで自分の日本語力を示すデータとして、学校が受けておくように勧め、学校を通して出願しました。

数十名が出願したのですが、そのうち十数名が受験しなかったと、主催者側から連絡がありました。私のクラスのKさんもその1人でしたから、授業後に理由を聞きました。すると、寝坊したというではありませんか、確かにKさんは授業中にうつらうつらしていることがあります。W大学を目指して毎晩遅くまで勉強しているのでしょう。先週の土曜日もきっとそうだったのだと思います。しかし、日曜日の試験をすっぽかしてはいけません。

これがW大学の本番の試験だったら、論外もはなはだしいです。だから、Kさんは絶対にこんなことはしなかったでしょう。気が緩んでるなと思いました。W大学出願直後は、ある種の高揚感から、勉強に限らずなんにでも張り切って取り組む姿が目に浮かびます。日が経つにつれて緊張感が薄れ、本人の地金が出てきたのです。

まだ若い学生たちにとって、気持ちをコンスタントに保つことは難しいと思います。でも、それができないと、いつまでたっても「やればできる」のレベルにとどまります。そういう人の「やれば」は、非常に大きな仮定であり、だいたい最後までやらないかやれないものです。

「やれば」の壁は厚いのです。

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目標を見据えて

8月26日(水)

超級クラスの授業で、東大の学生は目標を明確にしてそれに向かっているという内容の生教材を読みました。毎日、何となく生活しているのではなく、具体的な数値目標を立ててそれを達成するよう努力を重ねていると書かれていました。

超級の学生たちに聞いてみると、ぼんやり生きているわけではありませんが、生教材に書かれていたほどの意識には達していないようでした。普通はそうでしょうね。社会人になれば数値目標だらけで頭が痛くなってしまいますが、学生でそれがきちんとできる人はまれでしょう。逆に言えば、そういうことができたから、他から抜きんでて、東大に入れたのでしょう。

“EJUの日本語で360点”など、ほどほどの期間の目標は立てやすいです。しかし、その目標に到達するために、毎日何をどう積み重ねていくかとなると、緻密な頭脳が要求されます。「1日ぐらいサボってもいいか」の繰り返しが、目標の未達をもたらします。目標の切り下げが度重なることが挫折です。

入学した時は、みんな国立とか早慶とかと言います。そう言った学生の中で、日々の目標を掲げ、一歩ずつ確実に前進し続けられる学生は、残念ながら、非常に少ないです。超級の学生たちは、その中でもよじ登り続けられた精鋭と言ってもいいでしょう。確かに今は東大の学生のレベルには及びませんが、背伸びすれば手の届く範囲にいると思います。だから、この記事に刺激されて、その背伸びをしてもらいたいのです。

クラスの中には東大を志望校としている学生もいます。その後押しになればと思っています。

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暑いけど、秋

8月25日(火)

夕方、GさんがN大学の出願書類を持って来ました。最近はコンピューターで書類を作成するのが主流ですが、それをプリントアウトさせて紙の形で郵送提出を求める大学も少なくありません。不思議だなあと思う反面、書類の書き方や扱い方で受験生の人となりのかけらでも知ろうという気持ちもわからないではありません。Gさんにしてはきれいな字で書かれた書類を見て、これならそのまま提出してもN大学の先生方に不快感を与えるものではないだろうと思い、すぐ出すようにと指示しました。

それからGさんは、T大学の志望理由書の下書きを見てくれと頼んできました。目を通すと、志望理由書の形にはなっていますが、インパクトがありません。最後の最後になって、やっと、Gさんの大学での勉強のキーワードともいえる言葉が出てきました。それが他の言葉に埋もれて、さっぱり見えなかったのです。

それに対して、Gさんがきっかけと称する子供の頃の昔話がやたらと長いのです。お父さんとの思い出話よりも、将来の夢を語らねばならないのに、Gさんの志望理由書は年寄りの回顧録のようです。T大学で何を勉強したいのか、どうもはっきりしません。

そういう点を指摘すると、「研究計画書みたいですね」とGさんは言いました。いや、そうなんです。志望理由書とは、こういう勉強がしたいからこの大学に入るという決意表明でもありますから、研究計画書の要素があって当然です。学習計画書という形でそれを提出させる大学もあるくらいですから、志望理由書が大学入学後4年間の計画表になったとしても、何らおかしいことはありません。

6月のEJUがない受験シーズンが本格化してきました。まだまだ暑いですが、受験の秋は始まっています。

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課題山積

8月24日(月)

新聞報道によると、留学ビザを持っている人たちの入国制限が、近い将来、緩和されるかもしれないとのことです。まずは国費留学生からとなるようですが、これが私費留学生にも及べば、日本語学校にとってはありがたい限りです。久しぶりに新入生がやってきそうな気配がわずかながら立ち始めました。

とはいえ、国が正式に発表した内容ではなく、憶測の範囲を出るものではありませんから、喜び過ぎは禁物です。それに、たとえ入国ができるようになったとしても、2週間の自宅待機が義務付けられるでしょうし、そもそも日本政府が「緩和」を発表したところで航空便がないかぎり入国もままなりません。今すぐに政府決定がなされたとしても、10月期の始業日に間に合うかは非常に疑問です。

それに、中途半端な時期に入国し日本語学校に入学すると、日本で思うように進学できないおそれも伴います。日本語学校に在籍できる期間は最長2年間ですが、大学など高等教育機関の入学時期が4月のままだと、来年1月に入学した留学生は再来年の4月にどこかに進学しなければなりません。本来だったら丸2年日本語を勉強して十分に日本語力を伸ばした上で入試に臨めるのに、その前に勝負しなければならないかもしれません。秋入学のテンションがぐっと下がってしまいましたが、今からでもどうにかならないものでしょうか。

とはいえ、これは日本で新規感染者が少なくなることが前提です。毎日1000人とかというレベルで推移していたら、海外から日本への渡航が禁止されるかもしれませんし、親御さんが大事なお子さんを送り出そうとは思わないでしょう。そう考えると、まだまだ道のりは遠そうです。

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猛暑日

8月21日(金)

それにしても、暑い日が続きますねえ。今年は立秋を過ぎてから暑くなり、暦の上の秋が盛夏となっています。残暑が猛暑で、ことわざ通り本当に彼岸まで暑さが続くかもしれません。本来ならそろそろ甲子園の決勝戦で、そのころになると、中継のアナウンサーが「秋風が立ってまいりました」なんて言うのですが、今年はそんな気配など、みじんも感じられません。

8月10日から、毎日、全国で100か所以上が猛暑日を記録しています。最多は15日の278か所です。真夏日に至っては、最多が11日の778か所で、最低でも18日の586か所です。全国の観測地点は921か所ですから、778か所とは85%に当たります。北海道の北半分や本州の高地のような暑くなりにくいところを除くと、人の住んでいるところはすべて30度以上になったと考えいいでしょう。

そのため、熱中症で命を落とす方が多くなっています。日々の死者数だけで物を言えば、今は肺炎よりもこちらの方がはるかにこわいです。KCPでも、学生たちに熱中症の予防に心がけるよう呼び掛けています。校内だけでなく、家の中での注意点も伝えています。

いざとなったらマスクを外せと言われ始めたのものも、わからないではありません。そのためなのか、最近はマスクを外して街を歩いている人を見かけるようになりました。ただ、困ったことに、外で口を出している人を見ると、見てはいけないものを見てしまったような気になり、目のやり場に困ってしまうのです。そのたびに心臓がどきんとし、熱中症よりも体に悪いんじゃないかとすら感じます。

午後5時までの最高気温、36.0度…。

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通じない

8月20日(金)

今週面接をした指定校推薦入試の推薦者を発表しました。順当に上級の学生が選ばれました。受け答えもしっかりしていたし、自分を語るだけの日本語力も備わっていました。選ばれなかった学生は、コミュニケーションが成り立っていないという感じが強かったです。

推薦することにした学生たちに出願手続きや入試の内容とそのための準備に関する話をしていると、推薦されなかったJさんが、その結果に不満を持っているという話が聞こえてきました。Jさんは、面接開始1分後に×を付けた学生です。まず、Jさんの日本語がよくわかりませんでした。それから、私の質問の意図がまるっきり伝わっていませんでした。コミュニケーションが成り立たない典型例です。

また、先生方の話を総合すると、指定校推薦の制度そのものを誤解しているようです。推薦に値する学生がいたら推薦するということを、各クラスで学生にわかるように説明してもらったのですが、Jさんは募集人員は必ず満たすと受け取っていたようです。また、KCPでの面接に通れば自動的に入学が決まるとも思っていた節があります。致命的なのは、自分の日本語が通じていると信じ込んでいるところです。

しかたがないので、Jさんが受けている受験講座の後で職員室に寄ってもらい、選ばれなかった理由をきちんと説明することにしました。ところが、受験講座を終えたJさん、職員室の前を通り過ぎて帰宅するではありませんか。私も、その後受験講座が控えていましたから、呼び戻すまではしませんでした。

こんなにまで日本語が通じないのなら、どう考えて指定校推薦は無理です。それどころか、面接のある大学はほぼ合格不可能でしょう。Jさんはペーパーテストの成績鵜は優秀ですが、このままではその優秀さが生かせないでしょう。

明日、説明を試みますが、果たして納得させられるでしょうか。

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温暖、死亡、変換、巨大、河川

8月19日(水)

超級クラスの語彙の練習問題に、同じような意味の漢字を2つ重ねた熟語をあげなさいというのがありました。オンライン授業でしたから、画面を見て最初に目についたSさんを指名しました。「はい、温暖」という答えがすぐに返ってきました。すばらしい答えです。ばっちり予習してきたのでしょう。共有画面のホワイトボードに書いて、次にCさん、Jさん、Yさんと指名しましたが、「わかりません」でした。

たとえ予習をしていなくても、「温暖」という文字が画面に出ているのです。いやしくも超級の学生なら、それをヒントに「寒冷」ぐらい思いついて当然だと思うのですが。この3人は、先週の語彙の中間テストではそれなりの点を取っていましたが、暗記のたまものだったのかもしれません。それとも、クラスメートの答えからすぐに導き出される答えを口にすることを潔しとしなかったのでしょうか。

でも、その後は、死亡、変換、巨大、河川など、順調にしかるべき答えが出てきました。どうやら、たまたま気の利かない学生を3人続けて指名してしまったようでした。やっぱり、全体を見渡せば、力があるなあと思いました。

はっきり言って、日本人だって、同じような意味の漢字を2つ重ねた熟語を挙げろと言われても、とっさに答えられる人は多くないと思います。そう考えると、Sさんが偉くて、Cさんたちの方が普通だとも言えます。でも、このクラスの学生たちには入試が待ち構えています。入試を勝ち抜くには、豊富な語彙力が不可欠です。だからこそ、こういう問題をやらせているとも言えます。

日本語学校は変なガイジン養成機関だとも言われます。このクラスのみんなを早くその域に送り込みたいです。

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大学に入ってから困らないように

8月18日(火)

Cさんは、理科に関しては優秀な学生です。受験講座でこちらが一通り説明をすると、EJUの過去問はだいたい解けます。まだ中級ですから、問題文を読むのに時間がかかることがありますが、11月まで訓練を続ければかなりのところまで伸びるでしょう。数学も筋がいいという話を聞いていますから、11月に予定通りEJUが実施されたら、理系科目では高得点が期待できそうです。

Cさんに弱点があるとすれば、応用力です。知識を組み合わせたり想像力を働かせたりして答えを導き出すことが苦手のようです。単一の知識に基づいて答える問題には強いのですが、いくつかの知識を総合して答える必要がある問題となると、勢いが止まってしまいます。EJUの選択問題には答えられても、そこから発展した質問をすると、考えをまとめられないようです。

EJUなら、平均点など軽く上回る点が取れるでしょう。80点台も夢ではありません。しかし、大学の独自試験はどうでしょう。点数になる答案が書けるか心配です。口頭試問も、理路整然と説明できるかとなると、不安を感じずにはいられません。

Cさんの志望校がEJU+面接という大学なら、今のCさんでも勝負できます。しかし、それ以上の試験があるとなると、かなりの鍛錬が必要です。いや、たとえEJUだけで入れる大学であっても、Cさんがこのまま進学したら進級できないかもしれません。大学で壁にぶつかって身動きが取れなくなるなどということのないように、KCPにいるうちにマークシートでない発想法も身に付けさせておきたいです。

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