11月30日(金)
上級の読解テキストに、“鰹節削り”という単語が出てきました。私は親の手伝いで鰹節を削った世代ですから、当然どんな物かわかります。学生は無理だろうなと思いながら、「鰹節は何ですか」と聞いてみると、「お好み焼きにかけます」「ふわふわ」という声がすぐに上がりました。彼らが思い浮かべたのは、“鰹節”ではなく“削り節”です。
鰹節を口で説明するのは難しいので、インターネットの画像検索に引っかかった写真を見せました。「鰹節」で画像検索しても、真っ先に出てくるのは「削り節」です。画面を何回かスクロールして「鰹節」を発見し、それを教室のモニターに映し出すと、クラス全員が「エーッ!!!」となりました。だれも本物を知らなかったようです。「これを鰹節削り」で削ったのが、みんなの知っている『鰹節』だよ」と説明すると、一様に驚いた顔をしていました。
私は、こんなふうに、学生が知らなさそうな物事に当たると、検索してあっさり画面を見せてしまいます。百聞は一見にしかずだし、学生に各自スマホで調べられるとみんな下を向いてしまうし、よけいな話をせずに学生の注意をひきつけたままにできますから。せっかく便利なものがあるのですから、使わなければ損です。
鰹節削りを見せて、「さっきの鰹節をこれで薄く削ったのがみなさんの知っている鰹節です」と説明を付け加えると、みんな感心しつつ納得していました。そんな学生の顔を眺めつつ、“削りたての鰹節は香りが立っておいしいんだよなあ”なんて、半世紀近く昔の子ども時代を思い出していました。