Monthly Archives: 10月 2018

受験が迫る

10月5日(金)

昼ごはんを食べに行こうとしていたら、Cさんが「急いで在学証明書がほしいんですが…」と申し込みに来ました。きのう、出席成績証明書を申し込んだばかりなのに何事かと聞いてみると、募集要項をよく読んだら日本語学区の在学証明書が必要なことがわかったとのことでした。Cさんは超級クラスの学生ですから、募集要項を隅から隅まで読んだ上で必要書類を全部申し込んだとばかり思っていたのですが、読み落としがあったようです。

中級ぐらいまでの学生だったら、一緒に募集要項を読んで何を申し込むべきか確認してから、書類の申し込みをさせます。超級だったら、しかもできるほうの学生のCさんならそんな心配は要らないだろうと思っていましたが、そうじゃなかったんですね。まあ、受験のときに日本語学校の在学証明書を必要とする大学は珍しいですから、いらないと思うほうが普通かもしれません。

昼食から戻ってくると、Lさんが来ていました。T大学には出願したのですが、もう1校受けたいといいます。Lさんが勉強したいことは、どこの大学でも勉強できることではありませんから、手当たり次第に出願するというわけにはいきません。しかも、Lさんはビザの関係上12月で帰国しなければなりませんから、試験日が1月の大学には出願できません。そんなわけで、非常に狭い範囲から受験校を選ばなければなりません。LさんのEJUの成績も考慮して、いくつかの候補校を選びました。その後しばらく、Lさんはその候補校を自分のタブレットで調べていました。

授業はなくても、受験は進んでいきます。

十人十色

10月4日(木)

期末テストの作文の採点をしました。先週のうちにざっと目を通し、気になるところには朱を入れておきましたから、2度目は内容までよく吟味して、主張がどれだけ伝わってくるか、独自性がどのくらい発揮されているかといったあたりを中心に、深く読んでいきます。深くといっても、初級の作文ですから、そんなに複雑・高度なことが書かれているわけではありません。ですから、文ではなく文章のレベルで書かれているか、今までに習った文法や語彙を使うべきときに使っているかといったあたりが、主たるチェックポイントになります。

とはいえ、クラス内でかなり差がついてしまっていることも確かです。Kさんは文法のミスがいくつかあったものの、言わんとすることが十分伝わってくる個性的な文章が書けています。中級に上がって、抽象語や微妙なニュアンスを表す文法を覚えれば、社会性のある論理的かつ説得力のある文章が書けるようになるでしょう。一方、Tさんは主張はわかりますが、文法の間違いがあまりにも多く、高い評価はできません。Sさんは論理が破綻しており、このまま中級の課題に取り組んだら、教師泣かせの作文を大量生産することになるでしょう。

Nさんは、成績はいいです。でも、どうやら安全運転に走った形跡があり、習った文法を思い切りよく応用しようという姿勢がありません。作文の採点基準に従うと、Nさんのようにミスの少ない文章が高得点になりやすいのですが、期末テストのNさんの作文にはもどかしさを感じます。点数はKさんといい勝負ですが、読後感は段違いです。

作文は文字の形で跡が残りますから、会話のように勢いですり抜けることはできません。文法力や語彙力を積み上げ、論理に従って書き上げるものです。私の学生たちが、新しいクラスでどのように伸びていくのでしょうか。

講義と採点

10月3日(水)

ここのところ、学期休み中に日本語教師養成講座の講義を担当することが多くなりました。学期が始まってしまうと、通常授業のほうに代講を立てなければならなくなるためです。今シーズンも、きのうから始まっています。

7月期は初級文法で、今学期は中上級の文法です。そうはいっても、私の文法の講義は、例えば「みんなの日本語」の範囲が初級だとか、N1の文法項目だから上級だとかという分け方ではありません。最初に教えるのは初級でも中上級になっても間違える文法とか、中上級では取り上げ方を変える項目とか、文法を語用論的に考えてみるとかしています。初級からの連続性と、日本語をコミュニケーションのツールとして考えた場合の位置づけに力点を置いています。

語用論では、日本人にとっては自明のことでも外国人にとっては意味不明のことを分析していくこともあります。また、授受表現や指示詞や受身・使役の高度な使い方など、上級の学習者が最後まで間違えることも取り上げています。私の講義では、学習者への教え方はやりませんが、教えるべきポイントは取り上げます。

午前中はそんな感じでパキパキ授業をしたのですが、午後、上級の期末テストの採点になると、勢いが衰えてしまいました。養成講座で訴えたことが、そのまま自分に跳ね返ってきたかのようでした。学期を通して学生たちに訴えたかったこと、できるようになってほしかったことが、一部の優秀な学生を除いて、からっきしだったのです。会話テストでとっさに言葉が出てこなかったのならわからなくもありませんが、学生たちの得意なペーパーテストでこれだと、少々頭が痛いです。理解が表層にも達していないおそれがあります。

この学生たちが卒業するまでに、どのように鍛えていけばいいでしょうか。宿題が重くのしかかります。