Monthly Archives: 11月 2016

頼りすぎ

11月30日(水)

韓国の朴大統領が、どうやら任期途中でやめそうです。大統領が任期を全うせずにやめるのは、現行の大統領制が確立してから初めてだそうです。支持率が5%にも満たないというのですから、こうなるのも当然かもしれません。でも、どうしてやめなければならないようなことをし続けたのかなあと思わずにはいられません。大きな権力を握ると誰でも清廉潔白でいられなくなるものなのかと、そんな権力を手にしたことのない私は漠然と想像しています。

それとも、自分が握っている権力の大きさが怖くなって、近しい人を必要以上に頼ってしまったのでしょうか。一国の大統領ともなれば、常に大きな決断を迫られます。どんな道を選べばいいかわからなくても、どれか1つを選んで実行に移さなければなりません。迷いたくても迷わせてもらえません。そして、その決断に対する責任は負わなければなりません。だから、自分の権力の大きさに押し潰されそうになることだってあるでしょう。そのときに、相談に乗ってもらうとまでは行かなくても、誰かに背中を押してもらいたいと思うことがあったとしても、不思議はありません。

だから、朴大統領を許してあげたいというわけではありません。自分の大きさと釣り合わない器の人物を、ブレーンとして頼り続けてしまったように思えます。大統領のお父さんの時代は、そういうことが許されたのかもしれませんが、現在はそのころとは比べ物にならないほど、国の規模も大きくなり、国際的地位も高まり、国を取り巻く環境も激変しました。それがわかっていないはずがありませんが、大統領がしたことはそういう意味で前期代的なことです。

翻って自分自身を見ると、私も学生の人生を左右しかねない、学校の将来の明暗を分かちかねない決定を下すことがあります。そういう決断の際には曇りのない目で見極めているか、常に自問自答しいます。

ようこそ

11月29日(火)

夕方、あれやこれやと仕事をしていると、S大学に進学したYさんとZさんがやって来ました。Zさんとは、先々週、T奨学金のパーティーで会い、そのときに、近いうちにYさんを連れて顔を見せに行くと言われていました。それが早速実現したというわけです。

ここ数年、毎年コンスタントにT奨学金の受給者となる学生が出ているので、先日のパーティーでは大勢のKCP卒業生に囲まれました。みんな私のために料理を運んできてくれ、その料理をつまみながら卒業生たちの近況を聞きました。大学院に進学するOさん、アメリカへ向かうJさん、日本人なら誰もが知っている日本の会社に日本人学生との競争に勝って就職したSさん、カメラ係スタッフとしてパーティーの裏方をしていたWさん、KCPにいた時とは見違えるようないい学学生になったXさん、なんだか垢抜けた日本語を使うようになっていたCさん、みんなT奨学金をもらうだけあって、自分の人生の基礎を着実に築いていました。パーティー会場についた私を見つけて、一番はしゃいで喜んでくれたのが、Zさんでした。

そのZさんが、ルームメートとして一緒に暮らしているYさんを連れてきてくれたのです。Yさんは、Zさんと入れ替わりにKCPを卒業してS大学に進学しました。そして、先輩としてKCPへ来てS大学のよさを語り、その話を聞いてZさんたちがS大学に進学したのです。今度はZさんが今の学生の中から誰かを釣り上げてくれないかなあなんて思っています。

忙しい授業の合間を縫って顔を見せてくれたYさんもZさんにとても感謝しています。夏に来ようと思っていたけど、台風が来たから…などと言っていましたが、それでそのままにせず、義理堅く来てくれたことをうれしく思います。

式と文

11月28日(月)

理系の学生の大学独自試験対策として、理科の筆記問題のクラスを始めました。EJUの選択肢の問題とは違った力が必要になりますから、短期間ではありますが、国立大学などを目指す学生のために始めました。

物理は、答案の書き方の指導が中心です。単に式の羅列に終始するのではなく、どういう発想でその式を導き出したのか、どういう理論・法則に基づいて式を立てたのかを明示しなければなりません。学生たちはここができません。先学期の受験講座でも扱ったのですが、指導が不徹底だったので、今回は厳しく指導していくつもりです。学生たちからは、ここまで書かないとだめなのかという声が挙がりましたが、式を並べただけでは減点されても文句は言えないと答えると、おとなしく私の板書を写していました。

私が大学受験するころは、式を立てるときにはどういう文字をどういう意味で使うのかきちんと断らなければならないとか、公式の名前は必ず書けとか、うるさく指導されました。でも、そのおかげで自分の考えを答案の形に表現することができるようになりましたし、それは、今、学生たちに問題の解き方を説明する時に非常に役立っています。物理を語る言語は数学であるとはよく言われますが、コミュニケーションツールは答案だとも言えるのではないでしょうか。

生物は文章で答える問題を中心に扱いました。EJUの問題と一番大きく違うのが、こういう問題です。グラフや実験結果の解釈を言葉で表現させる問題は、どこで出されるかわかりません。留学生には完璧な日本語は要求されないでしょうが、キーワードが含まれていなかったら、筆記問題の答えとしては致命的です。

EJUの理科は、問題自体は優れたものが多いと思いますが、それが選択肢問題になっているために「?」月になってしまっているきらいがあります。大学独自試験における筆答方式の問題は、その欠点を補うものであるのと同時に、学生に大学に入ってから必要な発想を求めるものだとも思います。ですから、EJUが終わったら、学生にはこちらに力を入れてもらいたいと思っています。

伝わらない

11月26日(土)

今学期の選択授業・身近な科学は、私が80分ぐらいしゃべりまくって、最後にその内容に関するクイズをするという形で進めています。昨年はノートを取らせてそれを提出させたのですが、ひたすらパワポの文字を書き写すばかりで、こちらの伝えたいことが伝わっていなかったようなので、やり方を改めました。

回答を集めてチェックすると、熱心に聞いていた学生はきちんと答えられているとう、当然過ぎる結果が得られました。身近な科学は受験には利さない内容ですから、理科系志望の学生がクイズに有利だとは限りません。授業で聞いた内容を答えるのが主旨ですから、知識を振り回して小難しい答を書くと、かえって減点されてしまいます。

実際、いつもうなずきながらメモを取っている美術系志望のOさんは、毎回好成績です。前回は、理系のGさんは私がしゃべったことを聞き流し、受験の常識に基づいて答えたので、そこは点数になりませんでした。

別にひねくれた問題を出しているわけではありません。このテーマに関しては、これぐらいは知っておいてもらいたいという内容を学生に問うています。授業で強調した項目、印象に残るように話したことについてクイズを作っています。それでも的外れな答えがボロボロ出てくるのです。受験に関係のない授業ですから、学生たちが気楽に受けている面もあるでしょうが、授業で大事なことを伝えることの難しさを思い知らされています。

同じようなことが読解だ文法だというクラスの授業でも起きているとしたら、恐ろしいことです。受験講座でもこんな調子だったら、非常に効率の悪い仕事をしていることになります。気楽な独演会のつもりが、針の筵が敷かれた茨の道を歩むような次第になりそうです。

丸暗記

11月25日(金)

Sさんは、自分の話す力に難があることを自覚して、半月後にある入試の面接の準備を進めています。クラスの先生からもらった想定質問集の1つ1つに回答を書き込み、これでどうですかと私のところへ相談に来ました。

初めての受験ですからしかたがないかもしれませんが、まず、他の受験生でも答えられるような、ありきたりの答えが目立ちました。また、パンフレットかネットのページかどこかからそのまま引っ張ってきた文言もありました。その部分だけ妙に日本語がこなれていますから、すぐわかってしまいます。そして、その部分についてちょっと突っ込むと、何も答えられなくなってしまいます。

それから、文字にしてみると文法の誤りがあらわになります。Sさんのたどたどしい話し口がそのまま文字になっていました。話すのですから漢字の使い方には目をつぶるとしても、助詞の間違い、接続詞の抜け落ち、不自然な言葉の使い方など、初級のときの穴がふさがれずに上級にまで至ってしまったはっきりわかりました。

1年前の初級のSさんは、クラスの授業でやる日本語は簡単だとして、N1やN2など背伸びしまくった勉強をしていました。わかっているつもりだった初級文法が実はさっぱり身についていなかったのです。頭は悪くないですから、中間・期末テストでは点が取れてしまい、ここまで進級できちゃったのです。

そんなSさんの想定質問への回答をようやく直し終わったら、Sさんはその答えを暗記するといいます。そういう能力はふんだんにありますから、丸暗記しようと思えばできちゃうでしょう。でも、それにどれだけ意味があるでしょうか。本番で緊張して、最初の一言でつまずいたら、頭が真っ白になり、何も出てこなくなります。そうなったら面接は全滅で、結果は火を見るより明らかです。

でも、自分の弱点を冷静に見極めて、周りの友人よりも早く準備をしている姿勢は評価できます。来週、もう少し本格的な面接練習をする約束をして、Sさんは帰っていきました。

さあ出願だ

11月24日(木)

朝、メールをチェックすると、Cさんから志望理由書が送られてきていました。BBQの前に相談を受けてある程度手を入れて、それをもとに書き直したようです。Cさんの志望校の出願締め切りは明日の消印有効ですから、授業の前に急いで読んで添削しました。

こういう文章を訂正する場合、私はまず、語句や文法の間違いを直します。こうして読みやすい文章にしてから、構成を組み替えます。文法や語句の間違いが多いと、文章のまずさが浮き上がってこないのです。

志望理由書などを見てもらおうとする学生は、まず内容の良し悪しの判断を求めます。Cさんのようなレベルになれば、「いい学校ですから志望しました」のようなアホなことは書きません。志望理由書に必要なことはひと通り書かれているものです。ただし、自分の思いが効果的に書かれているか、他の受験生と差別化できているかとなると話は別です。この部分が構成の良し悪しにかかってくるのです。

差別化がうまくできていない場合は、こっそり入れ知恵することもあります。こういう考え方がこの分野におけるトレンドだとか、この大学はこういう方面に強みを持っているとか、この大学が置かれた地方はこんな特色がある、こんな問題を抱えているとか、留学生が普通に調べただけでは手が届かない情報を与えます。でも、与えるまでです。その情報をどう生かすかは、学生次第です。

Cさんは語句・文法の誤りは少なかったですが、構成が間延びしているのと、その学部学科で勉強できることの一部が抜けていたのを訂正・指摘して、授業前に返信しました。すると、午後、その部分を書き直して持って来ました。ぐっと立派な文章になっていましたから、OKを出しました。志望理由書ではねられることはないでしょうから、本番の試験での健闘を祈るのみです。

青赤黄

11月22日(火)

明け方まで雨だったところもかなりあったようですが、集合時刻を迎えた国営昭和記念公園西立川口は快晴となり、雪をかぶった富士山がマンションのすき間から拝めました。園内は、錦秋という言葉がぴったりの紅葉と黄葉が抜けるような青空に映えて、目を楽しませてくれました。「京都なんかまで行かなくてもここで十分ですね」とMさんが言っていましたが、まさにその通りでした。

やはり最大のネックは、着火剤1つで炭に火をつけることでした。火のつけ方は各クラスで指導していましたが、着火剤に火をつけてから炭に火が移るまで待つことがなかなかできず、焦ってあおいでかえって火を消してしまうクラスがけっこうありました。火付け役の私は、あおぐのを思いとどまらせたり、消えかけた火を復活させたり、火が起こったクラスには炭を足すタイミングを知らせたり、日差しの強さもあり、この時点でずいぶん汗をかいてしまいました。ヒートテックがちょっと邪魔くさくなってきました。

料理が始まると、各クラスから持ち込まれた料理コンテストの作品の味見に没頭しました。どのクラスも、味にも盛り付けにも工夫を凝らしていて、目で引き付けられ、舌で驚かされ、濃密な審査時間でした。じゃがいも料理というお題でしたから、カレーライスや肉じゃがばっかり出てきたらどうしようと思っていましたが、よくぞまあこんなにいろんなじゃがいも料理を考え出したものだというくらい、バラエティーに富んでいました。自分の発想の貧困さを思い知らされました。

火付け役で見回ったときに、各クラスで串焼きやら焼肉やら、色とりどり素材とりどりの料理が用意されていましたから、じゃがいも料理以外にも舌鼓腹鼓を打ったことでしょう。その一部が差し入れされてきましたが、どれもおいしくいただきました。審査があったのでほんの一口ずつでしたが、クラスの学生の満足げな笑顔が目に浮かぶ料理ばかりでした。

昨日までの空模様と天気予報からは想像もつかない、もしかするとこの秋一番の青空に恵まれ、食後の園内散策から戻ってきた学生たちは、いい1日を過ごしたという顔をしていました。私も、快い疲れを感じました。

1人何役?

11月21日(月)

午前の授業が終わってから、進学相談やら面接練習やらが続き、すべて片付いたのが6時半でした。

まず、Kさんの志望理由書チェック。文法的な間違いや不自然な語句の使い方はほとんどありませんが、特徴もありません。その点を指摘すると、聡い学生ですから、すぐ理解しました。でも、志望理由書としてどれだけ特徴的な文章が書けるかは、必ずしも文法力や語彙力とは比例しません。Kさんが自分で自分の心の特徴に気がつくか、それを文章化できるか、そこにかかっています。

次はGさんの面接練習。毎日のように顔を合わせている私にすら緊張するようでは、見通しは明るくありません。頭の中の考えを、口からの言葉にうまくできないようでした。そのもどかしさに、少しいらだっているようにも見えました。Gさんの思いを聞いて、それをこちらで面接の言葉にしてやれば、少しはどうにかなるでしょう。

続いてJさんも面接練習。Jさんは基本的な受け答えはできましたが、Jさんの答えに関連した質問をすると、とたんに詰まってしまいました。話の内容は一本筋が通っていましたが、これではちょっと勝ち目がないので、関連分野の基礎知識を注入しました。

そして、Hさんの進学相談。C大学、D大学、S大学と国立大学に出願することに決めています。もう1つ、滑り止めにT大学に出願したほうがいいだろうかというものです。私は、HさんはC大学、D大学には受かると思っていますが、Hさん自身は不安でならないようです。どうしても私にT大学に出願しろと背中を押してほしい色が見えましたから、その通りにしてあげました。

それから、Yさん。こちらは先週に引き続き、2回目の面接練習ですから、微調整で済むかと思ったら、これまた心配の種が尽きないらしく、予想外に時間がかかりました。想定問答をすべて文字化してそれを印刷して持って来ました。見るとどれも語りすぎなので、そこはがっちり注意しました。

最後はXさん。面接練習というよりは、面接の想定問答を作る相談でした。答えをいくつか考えてきていて、その中から面接官の心をつかみそうなものを選んでほしいという主旨です。考えすぎて、自分で自分を見失っている節も感じられました。

忙しい1日でした。自信を与えたり、鼻をへし折ったり、背中を押したり、本人の気付かぬ思いを引き出したり、進学担当はスーパー便利屋でもあります。

名誉

11月18日(金)

各クラスで、来週のBBQの日程説明やメニューをどうするカなどの話し合いが行われました。私のクラスでは、Mさんがどんどん決めていってくれたおかげで、当日はおいしいものが食べられそうな感じです。Mさんは去年のBBQを経験していますから、何をどうすればいいか把握しています。しかも、はきはきと発言しますから、話がどんどんまとまりました。MさんにつられてFさん、Jさん、Zさんたちが、進んでいろいろな役割を引き受けてくれました。

クラスにMさんみたいな学生がいると、教師は楽です。むしろ、張り切りすぎて食材を買いすぎないように、ブレーキ役になることすら必要です。そういう学生がいないと、笛や太鼓で盛り上げなければなりませんから、教師は大変です。こちらがたきつけても、学生側に燃え上がる材料がないと、教師の独り相撲に終わりかねません。まあ、どのクラスも1人ぐらいはイベントに強い学生がいるものですから、たいていはどうにかなります。

午後からは初級クラスでBBQの説明がありました。一番下のレベルのクラスはまだて形すら入っていませんから、教師の言葉が十分に通じません。そこで活躍するのが、上級の学生たちです。各国の上級の学生に通訳を頼み、教師の説明を学生に伝えてもらいます。通訳の学生は、自分の経験にも照らし合わせて、自分がよくわからなかったことを手厚くフォローするようです。初級の学生にとっても、教師の言葉より同国人の先輩のことばのほうが身近に感じると見えて、耳を傾ける態度が違います。

この通訳、学生にとっては名誉な仕事のようです。頼まれた学生は、ほぼ間違いなく二つ返事で引き受けてくれます。わざわざアルバイトの時間をずらしてまでも引き受けてくれることさえあります。どうしても都合がつかなかった学生は、とても残念そうな顔をします。

さて、今年はどんな料理が食べられるのでしょうか。今から楽しみです。

晴れるかな

11月17日(木)

学校行事が近づくと、胃が痛くなる日々を迎えます。天気予報担当としては、行事をする土地の行事の時間帯のお天気を予測しなければなりませんから。来週火曜日にBBQが迫っていますから、学校のパソコンで得られる情報をかき集めて、当日の日中のBBQ会場方面におけるお天気をあれこれ予測しています。

お天気は自分の手で変えることができませんから、他力本願の最たるものです。「悪い」という予報になったら、もうどうしようもありません。気圧配置が変わるのを祈るほかありません。私にできるのは、どのくらい悪いのか、何とか行事が実施できる目があるのかないのか、そんなことを予測するぐらいしかありません。

来週のBBQはどうかというと、今のところお天気はどうにかなりそうな雰囲気です。ごく弱い低気圧が発生するおそれは残っているものの、BBQに支障をきたすようなお天気にはならないだろうと読んでいます。11月も下旬となれば初冬であり、東京地方は冬晴れパターンに入るころです。多少寒いのは着込めば済むことだし、料理の最中は煮炊きをしますから、そこそこ暖かくなります。心配なのは、風です。冬の季節風が吹き荒れると、BBQ日和とは言えなくなります。当日は火付け担当として火がつけられないクラスの火おこしのお手伝いもしますから、強い風が吹くと商売繁盛しすぎて困ってしまいます。

さて、明日のクラスでは、BBQで何を作るか話し合います。盛り上がりすぎて、週末に大量の食材を買い込んでしまうなんてことのないように、手綱を引き締めなければなりません。