2月29日(月)
午後、職員室で仕事をしていると、外から窓をたたく音がしました。音のしたほうに目をやると、Yさんがぴょこんとお辞儀をしているではありませんか。ロビーに入れと手で合図をし、私もロビーへ。
YさんはKCP卒業後、調理の専門学校に進みました。そして、今年卒業を迎えました。スマホに入っている卒業制作を見せてくれましたが、すばらしい刺身の盛り合わせでした。最高の材料を仕入れ、器もしかるべきものを買い揃え、Yさんの話しっぷりからすると、精魂傾けて作ったことがうかがわれました。
「下から3番目ぐらいの賞で…」と言っていましたが、私の目には上位の賞をもらった作品よりもYさんの作品のほうがおいしそうに見えました。それは私が刺身が好きなせいもあるでしょうが、実際に差があったとしても、紙一重だと思いました。まあ、素人の目による評価に過ぎませんが。
そのすばらしい料理、卒業制作の発表会後はすべて捨てられてしまったとのことです。料理が乾かないようにゼラチンを塗ったからだそうです。材料費だけで1万円以上したと言っていましたから、もったいない限りです。
こんなにすばらしいYさんの腕をもってしても、日本で就職はできず、Yさんは4月からE大学に進学することにしました。大学で経営を学び、友達と会社を興し、その会社で、専門学校で磨いた腕を発揮し、自分の夢につなげようというのです。大学生を出てから専門学校に通う人もいますから、順番が逆になったとしても、驚くほどのことではありません。
でも、やっぱり、Yさんはたくましいと思います。国にいた時から抱いていた夢を実現するために、できることは何でもしてみようという姿勢には感心させられました。ただ、仕事になったら、今回の卒業制作並みの料理を毎日作っていかなければなりません。一発勝負を連発するようなものです。それがプロの厳しさです。
次は店を持ったときに招待状か何かを持ってきてくれるとありがたいんですが。