Monthly Archives: 1月 2016

大雪

1月18日(月)

朝、結露を拭いて窓の外を見ると、真っ白ではありませんか。目を凝らすと横殴りの降りのようです。午前の授業は大混乱だろうなと思いつつ、いつもの電車で出勤しました。

私が住んでいるところは、地下鉄の車両基地のあるところなので、よほどのことがない限り電車には乗れます。3.11の直後でも普通に通えたくらいですからね。その上一番電車と来れば、地下鉄ですから雪の影響もなく、また、他からの遅れを引きずることもなく、定時に新宿御苑前に着くのです。今朝もまさにそのパターンでした。

しかし、そうはいかない先生方も大勢いらっしゃいました。T先生は最寄り駅を通る線がどちらも不通で、出勤がお昼ごろになりました。それほどではなくても、大回りしたとか車内で缶詰にされたとかという例はかなりありました。新宿に比較的近い駅では、着く電車がすべて超満員で乗り込もうにも乗り込めずに、9時までには来られなかった方もいました。最寄り駅までバスというのはさらに悲惨で、バスがまともに走らず、雪かみぞれかの中を何十分も歩くことを余儀なくされたという例も。

雪のたびに言われますが、東京は本当に雪に対して脆弱です。でも、年に数回もない雪の日のために、札幌並みの備えをしていたのでは、その設備の維持費だけでもとんでもなく費用がかさみ、不経済のきわみと指摘されるでしょう。逆に言うと、札幌は東京の言う「不経済のきわみ」を抱えていないと、生活が維持できないのです。人口が札幌の100分の1,1000分の1の規模でも、雪国においてはそれがインフラの一部なのです。

こうして考えると、東京は贅沢な町です。雪に降られる都度大騒ぎはしますが、片手で数えられる雪の日さえ我慢すれば、軽装でいられるのですから。東京の雪は長続きしません。雪の翌日は、必ず晴れです。夏は確かに暑いですが、それとて連日38度とかということはありません。こういう軽装で住む町だから、雪には脆弱ですが人が集まるのでしょう。

国立も受けますか

1月16日(土)

午前中仕事をしていると、受付のカウンターからCさんが私を呼びました。出て行くと、Cさんは「先生、S大学に合格しました」と報告してくれました。

Cさんは建築学を勉強するために日本へ来ました。去年のこの学期、Cさんはまだ初級でしたが、EJUの過去問を求めて私のところへ通いました。数学と物理が大好きなCさんは、少し日本語がわかるようになったら、腕がうずうずしてならなかったのでしょう。S大学はこういう理科が本当に好きな学生を大事に育ててくれる大学ですから、きっとCさんの一生を支え続けるいい勉強ができることでしょう。

ところがCさんは、「先生、国立も受けたほうがいいですか」と聞いてきました。Cさんが名前を出した大学は、うまくすれば手が届くかもしれない大学です。そういうところに挑戦しようという気持ちは評価できますが、ただ単に”国立に受かった“という名誉(?)がほしいだけなら勧められません。

それよりも、私はCさんの日本語力が心配です。入学以来ここまで順調に進級してきたのですから、まるっきり力がないわけではありませんが、今のままS大学に入ったら、入ってからが大変なのではないかと心配せずにはいられないくらいの実力です。S大学できっちり勉強すれば4年後に鳴くことはありませんから、国立の入試に備える暇があったら、今の日本語力を1ミリでも伸ばしてもらいたいです。

新学期が始まってまだ1週間も経っていませんが、卒業式は3月5日ですから、Cさんが勉強できる期間は1ヵ月半ほどです。その間必死に勉強して、S大学の授業についていけるだけの日本語力をつけて卒業していってもらいたいです。進学後、目を輝かせてS大学での生活を語りに来てほしいですから。

ひねた子どもたち

1月15日(金)

国民の祝日としての成人の日は1月の第2月曜日に移動したものの、私たちの世代にとっては成人の日は1月15日のほうがしっくりきます。

大人になるとは、周りの人や状況など、自分以外のものに合わせて行動できる人、誰かのために、何かのために動ける人だと思います。逆に言うと、どんなに年齢を重ねていても、自分のことしか考えられない人は、まだ子どもなのです。こういう目で見ると、世の中にはひねた子どもが大勢います。

まず、吸殻のポイ捨てをする人。毎朝校舎の正面を見て回ると、たいてい吸殻が落ちています。多くは校舎前の道路ですが、敷地内に投げ込まれたと思える吸殻も珍しくはありません。一服の快楽が得られれば、後は野となれ山となれなのです。

それから、電車のシートに中途半端に座る人。詰めればもう一人座れるのに、込んでいても詰めようとしない人は毎日のように見かけます。ちゃんと規定の人数が座れるようにシートがくぼんでいても、そのくぼみを無視してまでゆったり座ろうっていうのは、どういう神経なのでしょう。

電車ついでに、駆け込み乗車してドアに挟まれ、車掌にドアの開閉をやり直させる乗客は、その電車1本の全乗客の時間を奪っていることに気付いていないんでしょうね。乗客1000人の電車で再開閉に10秒かかったとすると、10000秒=2時間46分40秒が無駄になります。新幹線に乗れば新神戸か八戸まで行けます。北陸新幹線なら終点の金沢で降りて、タクシーで香林坊まで行けちゃうかもしれません。

昼の時間にKCPの成人式がありました。大勢の新成人が集まりましたが、この中には上のような“子ども”はいないですよね。

答えに詰まる

1月14日(木)

午後からDさんの面接練習をしました。Dさんは理系の学生で、志望校の面接の際に口頭試問も行われますから、物理や化学の問題を出す役目を負った次第です。

Dさんは、EJUの物理や化学ではかなりの点数を取りましたが、口頭試問は大苦戦でした。化学や物理の基本事項を根っこから理解していないことがあらわになりました。「なぜ」を追究せず、表面的な現象や結論となる公式だけを覚えて満足していたのです。数学の問題の解き方なんか見ていると、理系のセンスは十分あると思うんですがね。Dさんには、面接本番までに教科書を読み直し、応用問題ではなく、“〇〇とは何か”という根本の知識を確認しておくように指示を出しました。

口頭試問を貸して学生を選抜しようという大学側の姿勢は評価できますが、根本のところを押さえていなくても好成績が収められてしまうEJUって何だろうという気持ちになりました。理系的な勘が働けば、訓練によって点が取れてしまうのです。こういうテストだけで選ばれて大学に入学したら、入ってから苦労するだろうなと思いました。

先学期、理科の受験講座で記述式試験の対策をしました。T大学の電磁気学の問題など、難問ではないけれども基礎を余さず盛り込んで、それを組み合わせて答えを導き出す惚れ惚れするような良問でした。解説していて気持ちがよかったです。こういう問題なら真に力のある学生、科学的な基礎知識をもとに創造的な学問ができる学生が選ばれるだろうなと思いました。

今週末はセンター試験です。そして、センター試験を中心に、大学入試のあり方全体の改革が議論されています。そこに留学生入試を含めることは難しいでしょうが、入試対策ではなく大学で学問していく基礎力を身に付けようというインセンティブが働く試験制度になるといいです。

プレッシャーに弱い

1月13日(水)

早朝、一人で仕事をしていると、Kさんが外から窓をたたきました。まだ暗いうちでしたが、志望理由書をチェックしてもらいに来たのです。急いで玄関のドアの鍵を開け、Kさんを招き入れました。そして、Kさんの書いてきたS大学の志望理由書を見ました。ややインパクトに書けるところはありますが、日本語としての間違いの少ないよくできた文章でした。

そういう感想を述べ、どんなことを付け加えればいいかを指摘しました。ところが、今思うと、Kさんの本題はここから先でした。S大学を始め、いくつかの大学に出願しようとしていますが、Kさんの最大の悩みはプレッシャーに弱いということでした。EJUの前などでも、体の震えが止まらないほどの緊張感を味わうそうです。今も、午前中の授業が終わるとすぐ帰宅して、夜の8時ごろまで寝て、それから夜を徹して朝まで勉強するそうです。だから、暗いうちから学校へ来られるのです。

確かに、KさんのEJUの成績は、周りの教師たちが感じるKさんの実力よりだいぶ低いものでした。緊張しやすい性質を矯正するのはなかなか難しいです。自信を持たせようとしても、実際の試験のことを思うと、こちらの小細工など消し飛んでしまうのです。私にできることは、Kさんの話をじっくり聞くことぐらいです。だから、1時間あまりKさんの話に耳を傾けました。

取り留めのない話と言ってしまえば身も蓋もありませんが、Kさんにとっては多少はカタルシスになったようです。朝ごはん(Kさんにとっては晩ごはん???)を取りに出たところを見かけた出勤途上のR先生は、ずいぶんすっきりした顔をしていたとおっしゃっていました。

プレッシャーに弱かろうとどうしようと、受験は容赦なく迫ってきます。それまでKさんを支え続けねば…。

日本語力の差

1月12日(火)

小雨の新学期初日でした。教室を間違えたとか事務手続きに手間取ったとか、何名かが遅刻しました。まあ、でも、最終的には欠席1名にこぎつけましたから、よしとしなければならないでしょう。

午前のクラスは上級クラスでしたが、初級で教えた学生が何人もいて、なんだか上級という気分にはなりませんでした。「Tさんがいるなんて、上級もお安くなっちゃったね」なんていう冗談が通じるのですから、まあ彼らも上級なのでしょう。でも、消しゴムで字を消した時にできる黒いものを「消しゴムのごみ」なんて言っちゃうあたり、初級的な発想が抜け切っていないとも言えます。「消しゴムのかす」なんて、日本人なら子どもでも知っています。そういう言葉を知らないと進学してから日本人の同級生にバカにされるよって言ってやったら、妙に納得していました。

こんなのは比較的どうでもいいのですが、このクラスで一番いけなかったのは、自己紹介のときに全員が「〇〇です。◎◎(国)から来ました。趣味は△△です」で済まそうとしたことです。これならみんなの日本語の14課だと怒ってやり直させたら、中級ぐらいの文法は使って夢やら日常やらを語ってくれました。やればできるんですから、やるように仕向けることがこのクラスを教える上での課題です。

一息つく間もなく、午後は代講。そのクラスは一番下のレベルですから、初日は挨拶と教室用語と数字と自己紹介です。自己紹介では「初めまして。〇▲です。△▽(国)の▼◎(都市)から来ました。どうぞよろしく」と、都市名に触れる分だけ午前中の上級の学生より上ではないかっていう自己紹介を練習しました。日本語の発音に慣れていないためにおかしげなイントネーションの学生もいましたが、全体的に見ればよくできたんじゃないでしょうか。

教室の片づけを済ませ職員室に戻ると、C大学に進学したTさんが来ていました。「新学期の初日だからお日柄が悪いんだよなあ」なんて言いながらも、懐かしさのほうが勝って、思わず話し込んでしまいました。4月から3年生で、就職に向けて動き始めるとか。こなれた日本語を話していますが、入学当初は日本人学生との間の日本語力のギャップに悩んだそうです。このねたは、明日の超級クラスで使えそうです…。

言霊

1月9日(土)

始業日に渡す、先学期の成績表を作っています。単純に中間テストや期末テストの点数を記入し、合格か不合格かを伝えるだけなら楽なのですが、1人1人にコメントを書くのが頭脳的に重労働です。「頑張れ」だけならどうということはありませんが、先学期の3か月間を振り返り、伸びた学生はほめ、出席率の芳しくない学生は叱り、合格が決まった学生にはお祝いのことばを送り、成績の思わしくない学生を励ましてって考え、しかも私の気持ちが効果的に学生に伝わるような表現を探していくとなると、1人の学生のコメントを書くのに意外と時間がかかるのです。

私も最初からこんなに力を入れていたわけではありません。コメントの言葉を選ぶようになったのは、もうだいぶ前に卒業したHさんがきっかけです。Hさんは卒業式の後のパーティーで、「先生が成績表に書いてくれた言葉が励みになって志望校に合格できました。その成績表、これからもずっと取っておきます」と、これだけは伝えなくちゃっていう顔つきで言ってきました。

これはとても名誉なことでしたが、同時に自分が発した言葉の重みをひしひしと感じさせられました。教師の言葉ってこんなにも強い影響力を持つのかと身の引き締まる思いがしたことが、Hさんの笑顔とともに今でも私の頭に深く刻み込まれています。

それ以後、成績表のコメントにはいい加減なことがかけなくなりました。先学期も、非常に腹立たしい学生が数名いましたが、そういう学生にも、いや、そういう学生だからこそ、コメントに知恵を絞りました。

言霊っていうくらい、日本では昔から言葉の力は畏れられていました。言葉を教えることを職業にしている私は、二重の意味でこのおそれを感じなければならないわけです。来週から、このおそれに立ち向かっていきます。

入学式挨拶

皆さん、ご入学、おめでとうございます。このように多くの国から多くの学生がこのKCPに集まってきてくれたことをうれしく思います。

私は上級クラスを受け持っていますから、毎年この時期は進学指導に忙しいです。今年も、新年の仕事始めの日から、大学入試の面接練習をしました。この大学入試での面接で最も大切な力は、何だと思いますか。それは、コミュニケーション力です。面接官が何を知ろうとしているかを察知してそれに応える、これがコミュニケーション力です。

コミュニケーション力は、大学入試にとどまらず、就職試験やアルバイトの面接でも重視されますし、そもそも円滑な日常生活を成り立たせる上で必要不可欠なものです。日本語という皆さんにとっては外国語によって、皆さん自身の心や頭の中身を目の前の人に伝え、日本語で思考回路を働かせ、それを日本語によって訴えようとしている日本人の考えや気持ちを感じ取ることは、たやすいことではないでしょう。たとえ面接試験なしで進学や就職ができたとしても、その後その進学先や職場で暮らしていく際にはコミュニケーション力なしでは済みませんから、この力を伸ばしていくことはこの国で生きていく上で何より優先すべきことです。ペーパーテストの点数が高いだけでは、勉強も仕事もはかどりませんし、日本での生活自体が楽しいものにはならないでしょう。

日本の文化を知ろうと思ってこの留学を思い立った皆さんは、なおのことコミュニケーション力が物を言います。どこまで日本文化の深い部分に触れられるかは、ひとえにコミュニケーション力にかかっています。日本文化を表面的になでるだけなら、翻訳や通訳を通せば十分できます。でも、それならインターネットによって国でもできるでしょう。日本でしかできない経験を求めるなら、それが日本文化の真髄に近いものいであればあるほど、日本語によるコミュニケーション力を身に付けなければならないことは疑いようがありません。

KCPは、日本語によるコミュニケーション力を付けることに主眼を置いています。初級の教室で、国籍の違う学生が、まだまだ不十分ではあるけれども、お互いの共通言語である日本語によって意志の疎通を図っている姿を見かけると、“ああ、やってるな”と、思わずニンマリしてしまいます。そうやってコミュニケーション力を伸ばそうとしている学生は、実に生き生きとした表情をしています。皆さんにもその輝く笑顔を振りまいてほしいのです。こういうコミュニケーション力を手にすることができたなら、必ずや皆さんの留学は実りの多いものになることでしょう。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

モラトリアム?

1月7日(木)

新入生のオリエンテーションがありました。進学コースの新入生には受験講座の説明もしました。

進学コースのGさんは、レベルテストで中上級に入れる点数を取りました。国で大学を卒業していますから、日本で大学院に入るのかと思いきや、大学進学希望と言います。大学で勉強したいことはアニメ。国の大学で勉強したこととは違うので大学に入りたいというのは正論ですが、なぜアニメなのか聞いたところ、日本で一番就職しやすいのはアニメ業界だからだと言います。

確かにそうかもしれません。でも、アニメ業界は厳しく、数年も経ずして辞めていく人材が多いと聞いています。3年ぐらいで仕事を辞めて帰国するつもりかと聞くと、そうではないと答えます。そして、それならアニメはやめると言い始めました。さらに、「先生、日本で就職しやすい学部はどこですか」と聞いてきました。内心かなるムカついてきたのですが、それをぐっとこらえて、「そうだね、経営とか経済とかじゃないかな」と答えると、「じゃあ、そこにします」とGさん。「日本で就職できれば学部はどこでもいいです」とも。

在校生がこんなことを抜かしたら殴り倒してやるところです。大学を卒業しているのですから、大学の勉強の何たるかぐらいはわかっていると思ったのですが、Gさんにとって勉強は点取りゲームにすぎないようでした。自分は物を覚えるのには自信があると言います。アイウエオから始めて半年でN2の勉強を終え、12月にN1を受けたそうです。受かるかもしれないという手ごたえだったと言っていました。アニメも経済も、その延長線上のようです。

こう書くと、Gさんと私の会話はずんずんすすんだように思えるでしょうが、ここまでたどり着くまで私の日本語が通じなかったり、Gさんの日本語のひどさに愕然としたりと大変でした。Gさんはペーパーテストにはめっぽう強いものの、コミュニケーション力はいたって低いのです。

それよりも心配なことは、Gさんには時間の感覚がないということです。おそらくご実家は裕福なのだと思います。だから、大学を出た上に日本語を勉強し、日本留学もさせてもらえるのです。また、アニメをやめて経済にするだけにとどまらず、大学院まで行きたいと言いますから、根は勉強好きなのでしょう。でも、大学院まで行っていたら、Gさんが就職するのは30過ぎです。いくら勉強熱心で日本語に加えて外国語が自由に操れたとしても、就職するには年齢の壁があります。その辺の感覚が欠如しているように思えました。

今学期もまた、新たな戦いが始まろうとしています。

迷い

1月5日(火)

Cさんは昨年中にM大学に合格し、1月から3月は日本を旅行したり一時帰国したりしようと思っていました。そこでまず考えたことは、退学して日本にい続けようということです。授業料も払わなくていいし、自由な時間も好きなだけ確保できるし、Cさんにとっては最高の方法です。確かにCさんのビザはM大学への入学まで日本に滞在できるものですが、それはKCPに通うという前提ですから、学校にも通わずに日本で遊んでいるなどということは許されません。そんなことをしたら除籍処分となり、除籍されたらM大学に通うビザは絶望的です。

次に考えたことは、授業料を払って登録して、KCPでの学籍を確保した上で旅行に行くという手です。これもまた実質的に学校に通わないのですから、認められるものではありません。百歩譲って認めたとしても、CさんはM大学に入るために出席率上多大な犠牲を払っており、すなわち先学期は欠席しまくっているため、1月期もろくに出席しないとなると、ビザが危うくなります。

その次は、退学していったん完全に帰国するというものです。ビザの上ではKCPと縁が切れますから、出席率が下がることも除籍されることも心配しなくていいです。しかし、M大学進学のためのビザを取り直すことは、そう簡単なことではありません。CさんはM大学や入管に確認や問い合わせをしましたが、Cさんが安心できる回答は得られませんでした。

迷いに迷ったCさんは、国のご両親に電話をかけ、どうしたらいいか相談しました。ご両親からは、「お前のしたいようにすればいい」と言われ、Cさんは頭を抱えてしまいました。

これが昨日から今日にかけてのCさんの思考遍歴です。担任の私を始め、H先生、T先生、事務のLさん、Sさん、Nさんなど、各方面の教職員に相談を持ちかけ、何とか自分の思い通りの答えを引き出そうとしました。学校関係者は、もちろん、「自由に日本中を旅行してもいいですよ」なんて言うわけがありません。誰に聞いても完全帰国か卒業式まできちんと学校に通うかの二択を迫りました。

日もとっぷり暮れた頃、M大学に進学して勉強していくには、KCPをきちんと卒業することが最善の道だと悟って、ようやく1月期の登録をしました。「登録する限りはきちんと出席しないとCさん自身が痛い目に遭うんだからね」と5本ぐらい釘を刺しておきました。

方針を決めたCさんはすっきりした顔をして帰っていきましたから、ちょうど1週間後に始まる新学期に期待することにしましょう。