Category Archives: 勉強

宿題を見ると

5月26日(金)

今学期は中級クラスの読解を担当しています。授業では教科書の文を追いかけるだけではなく、そこに書かれていることについて考えてもらったり、教科書の周辺事項まで話を広げたりしています。学生たちも、自分の思いをうまく表現できないもどかしさを感じつつも、そういったことを楽しんでいるようでした。

ところが、中間テストの出来は芳しいものではありませんでした。私のクラスだけでなく、他のクラスでも似たようなものでした。そこで、学期の後半は、読解の1つの課が終わるごとに、宿題として数問の確認問題をしてもらうことにしました。家で教科書やノートを見ながらなら十分解けるはずの問題です。

その宿題を回収し、チェックしたのですが、残念な結果に終わりました。まず、問題をよく読んでいない学生がおおぜいいました。意味を聞いているのに理由を答えてしまったとか、答え方を指定してあるのにそれに従わなかったなど、解いた後で書いた答えを読み返していないと思われるパターンです。中間テストでも目立ちました。

それから、教科書の文を長々と抜き出した答えも多かったです。それを要領よくまとめてもらいたかったのに、何かを省くと減点されると思ったのでしょうか。「要点をまとめられるかどうかが、中級の力があるかどうかの分かれ目だよ」と言っているんですがねえ。これも中間テストそのものでした。

来週の読解は、こういう点を踏まえて、学生たちをしっかり追い込みます。きちんとはっきり正確に答えられるようになることを第一に、授業を組み立てます。

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教師の勉強

5月25日(木)

1時間の授業をするためには3時間の準備が必要だ――20年以上も前、私が日本語教師養成講座の受講生だった時、講師の先生がおっしゃっていました。駆け出しのころは、そのぐらい準備に時間をかけていたと思います。しかし、今はそこまで時間をかけません。いや、“かけません”と“かけられません”の中間ぐらいでしょうか。仕事が立て込んでいて、即興に近い形で授業をすることさえあります。そんなことでは学生に対して失礼だろうと思いながら、若干の罪悪感を抱きつつ、でも平気な顔をして、教壇に立つこともあります。

準備が嫌いなわけではありません。本棚に並んでいる10冊以上の辞書を駆使して語句の意味を調べたり、読解テキストの参考になりそうな資料を探したり、数学や物理の問題のオーソドックスではない解法を考え出したりなどということは、何時間やっても飽きません。しかし、次から次と仕事が飛び込んできますから、そういう方面にばかり時間を割り振るわけにはいきません。

午後、読解の勉強会がありました。上級では、今学期から新しい読解の教科書を使い始めました。読解の授業のコンセプトも見直しました。そのため、授業で新しい課に入る前に、上級担当の教師が集まって、その課の取り扱い方を研究しています。

毎回、教師間で読解テキストの捉え方、視点の位置が違うものだなと感心しています。たびたび目からうろこが落ちます。そうすると、授業で新しいことに取り組んでみようかというチャレンジ精神が湧き上がってきます。年寄りには刺激が必要なのです。

この勉強会も授業準備だとしたら、いくらかは3時間に近づいたでしょうか。

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5月24日(水)

中間テストの結果をもとに中国出身のSさんの面接をしていたら、「先生、“的”の使い方がわかりません。教えてくださいませんか」と聞かれました。

中国語と日本語では、“的”の使い方に違いがあります。「美国“的”大統領」は「アメリカ“の”大統領」であって、現在はバイデンさんです名詞が名詞を修飾するときの“の”です。ところが、日本語で「アメリカ“的”大統領」といったら、バイデンさんは指さないでしょう。「アメリカの大統領と同じような権力を持った大統領」「アメリカ人のような発想をする、アメリカではない国の大統領」といったところではないでしょうか。

日本語での“的”は、「積極的」とか「具体的」とかというように、な形容詞を作る際に使うのが典型例ではないでしょうか。「実力“的”に十分合格可能」などというと、「実力の面から考えると」と、普通のな形容詞とは違った意味を担っています。

詳しく見ていくと“的”の意味はまだまだ出てくるでしょう。あんまりあれこれ教えるとSさんの頭がオーバーフローしてしまいかねませんから、このほかに日本語は形容詞に“的”をくっつけないという違いを取り上げただけにしました。「白“的”紙」ではなく、「白い紙」です。

はっきりいって、中級になってからこんな質問をするなんて、遅いです。こういう疑問は初級のうちに解決しておいてほしいです。とはいえ、聞くは一時の恥で、面接の場ですから他の学生もいないこともあり、長年の(?)疑問をすっきりさせようとしたSさんの姿勢はほめてあげたいです。今学期の進級は無理かなと思っていましたが、少し目が出てきた感じもしてきました。

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自宅勉強時間

5月23日(火)

火曜日のクラスは、今週もディベートに挑戦しました。「予習と復習ではどちらが大事か」という、先週に引き続きしょうもないテーマですが、主張や反論はいくらでも思い浮かべられるでしょうから、ディベートのネタとしました。作戦立案中の学生たちを見ると、予習が大事にしても復習が大事にしても、予想通りいろいろな意見を出し合っていました。

さて、本番になると、その主張を訴えてはいるのですが、どうも迫力がありません。チームで考えた通りに主張を読み上げるチームもあり、相手の目を見て話すという基本ができていませんでした。逆に、相手の目を見て主張を述べたチームは、審査員の受けが良かったですね。

相手チームの話を聞くことに関しては、先週よりもメモを取っている学生が多かったですが、それでも相手の主張に応じてとなると、できる学生は限られていました。相手の主張もすぐに想像がつくテーマを選んだつもりなんですがね。私から見ると不満な点は多々ありましたが、主張や反論はどうにかこうにか形になっていました。

授業後、学生面接をしました。Cさんは自宅学習が毎日1時間と言います。さらに話を聞くと、日本語の動画を視聴した時間も含めての1時間でした。さっきのディベートでは、予習の重要性をあんなに語っていたのに…。今年はN1を取ると言っていましたが、そのための勉強はしているのでしょうか。

Aさんも事情は似たようなものです。美術系大学院進学希望ですから、今は作品制作に忙しいです。毎日4時間ぐらいそれに時間をかけています。でも、勉強時間ゼロはひどすぎますよ。Aさんの熱弁した復習の大切さが今一つ心に響かなかったのは、こんな事情があったからなんですね。

2人とも、中間テストはどの科目も合格点前後でした。予習復習、せめてどちらか1つはしっかりやっておかないと、日本語力が伸びませんよ。

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あと1か月

5月18日(木)

昨日から急に暑くなりましたね。中間テストの翌日、16日から、スーツ・ネクタイなしのクールビズにしています。これぐらい暑いと、その甲斐があったというものです。お昼前に外に出たら、やっぱり気温の高さを感じました。でも、肌にまとわりつくような、ねっとりした暑さではありませんでした。湿度は30%前後だったようですから、さわやかな暑さだったと言っていいでしょう。

5月の暑さは日中だけですから救われます。昨日も日が沈むのと同時くらいに気温は25度を割り、今朝の最低気温は18.7度でした。7月や8月は、夜になっても暑いです。最低気温が28.7度なんていう日もざらにあります。そうなると朝から体力消耗で、ぐったりしている学生が目立ってきます。

物理の授業の直前に質問に来たPさんも、軽装でマスクもしていませんでした。おとといの化学の時間は、2月ごろにも着ていたフリースみたいなのを羽織っていました。それと比べるとえらい違いです。おとといは、朝はひんやりしていましたからね。

その物理ですが、Pさんを含めて、みんな宿題をしてきませんでした。「来週の授業は問題の解説をするから、必ずうちで問題をやってこい」と繰り返し言ったつもりでしたが、通じていませんでした。やっていない問題の解説をしてもしょうがないので、時間を与えて問題を解かせました。おかげで、ごく限られた問題しか解説ができませんでした。学生たちは、これでは時間の無駄だと感じてくれたでしょう。そう信じて、来週分の問題を宿題として渡しました。

EJUまで、ちょうど1か月です。

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津波でサーフィンはできません

5月17日(水)

中級で使っている読解の教科書に、津波てんでんこの話が載っていました。津波てんでんこは東日本大震災の後で広く知られるようになりました。日本人にとっては常識に近くなってきましたが、留学生にとっては必ずしもそうではありません。ですから、読解の時間にこういう話題を取り上げる意義もあります。

しかし、その教科書のその課に載っている挿絵がいけません。サーフィンができそうな波から逃げる親子と見られる人たちが描かれています。津波は、台風の波や、北西の季節風が吹きすさぶ日本海沿岸に押し寄せる高波とは違います。それらに比べて波長がはるかに長い、海面が盛り上がるような波です。確かに、そういう波は絵にしにくいです。でも、だからと言って、サーファーが涙を流して喜びそうな波を、さも津波であるかのように見せてはいけません。

学生たちが教科書の挿絵を津波だと誤解をしないように、東日本大震災の津波の動画を見せました。車も家も大木も港に停泊していた船さえも流されていく動画に、普段の読解の授業には興味も示さない学生まで真剣に見入っていました。SさんやLさんなどは顔を引きつらせながら、でも目はそらしませんでした。

この動画は、見せた後に特別な活動をしたわけでもなく、読解の授業の本筋からは脱線しています。しかし、理系人間、地学マニアとしては、挿絵のいい加減さを見逃すわけにはいきません。せっかく地震大国に留学しているのですから、地震に関する正しい知識を身に付けてもらいたいです。

この授業、学生の頭にどれだけ残ったでしょうか。

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久しぶりのご対面

5月15日(月)

中間テストの試験監督のクラスには、先学期受け持っていた学生が何名かいました。1つ下のレベルから、順調にというか年功序列式にというか、まあ、とりあえず進級した(させた)学生と、もう1つ下のレベルから飛び級的に進級した学生が在籍しています。正直に言うと、飛び級組の学生の方がよくできます。先学期のクラスでの様子で言うと、勉強に対する意欲が違いました。

さて、テストが始まると、やっぱり飛び級組のほうがスラスラと問題を解きます。とりあえず組は、頭を抱えて動かなくなってしまったり、さっさとあきらめて提出したりと、採点するまでもなく、担任のK先生の頭痛の種となることは明らかです。飛び級組は、スラスラ解くばかりではなく、じっくり考えるべきところは時間をたっぷりかけて、結局試験時間いっぱいまで粘っていました。これも意欲の違いでしょう。

このクラス、自分が送り込んだのが“???”な学生たちでしたから、果たしてクラスが成り立っているか心配でした。でも、試験監督としてクラスに入ってみると、飛び級組のほかに奨学金面接で好印象だった学生や、新入生のオリエンテーションで光っていた学生や、よくできると噂の学生もちらほらいて、教え甲斐のありそうなクラスだなと感じました。となると、“???”な学生たちはどうなのでしょう。

担当しているK先生やA先生に聞くと、案の定、クラスのお荷物になっているようです。この学生たちは、進学するつもりはあるのですが、それが学習意欲に結びついていません。適当に勉強していればどうにかなるだろうという考えがあるようです。そんな考えじゃ進学できないと先学期さんざん言って聞かせたのですが、新年度になったら時間に余裕ができたと思っちゃったのでしょうかね。1月期にまた受け持つのは、いやですよ。

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熱心差

5月12日(金)

中級クラスのTさんは、クラスで中ぐらいの成績の学生です。ちょっと油断するとすぐ赤点になってしまいます。Tさん自身もそれがわかっていますから、毎日必死に勉強しています。あらゆるチャンスを利用して力を伸ばそうと、授業中に書く例文にも、毎日の宿題にも全力を傾けています。だから、Tさんの例文や、宿題などの提出物を読むのは、私の秘かな楽しみです。

Yさんは、先学期話をする機会があったときには、K大学に入りたいと言っていました。滑らかとは言えませんでしたが自分の気持ちをきちんと話していましたから、4月に私のクラスの名簿にYさんの名前を見つけた時には、いっしょにK大学を目指そうと、期待と希望を抱いていました。しかし、その期待と希望はあっという間にしぼんでしまいました。授業中のやる気のなさが半端じゃありません。テストも毎回不合格だし、不合格だとわかっても挽回しようという様子が全く見られません。提出物を見ても、実に省エネ答案です。提出しろと言われたから、とりあえず何か書いて出しておこうという気持ちがくっきり浮かび上がっています。

Tさんの提出物は、こちらも本気で添削します。中くらいの学生ですから、クラスみんなの役に立つ“いい間違い方”もよくしてくれます。それは授業で取り上げて、こういうことを言いたいときはこういう表現をするんだよと、全学生に参考にしてもらいます。そんな時、ちらっとTさんの顔に視線を向けると、私の板書を必死書き写しつつも、心なしか誇らしげな表情をしています。Yさんのおざなりの答えには、議論できるような間違いなどあろうはずがありません。

週明けは中間テストです。Tさんは自習室で苦手の漢字の書き取りを練習し、ノートや返却された宿題などを見ながら文法の復習もしていました。Yさんは何をしていたんでしょうかね。

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原子の世界

5月11日(木)

物理の時間は原子物理を扱いました。ニュートン力学が通用しない世界だという点でわかりにくいことは確かですが、EJUでは毎回1問、やさしい問題が出されます。単純に式に数値を代入すれば答えが出てくる問題や、ある公式さえ知っていれば簡単に答えが見つかる問題などが多いです。力学や電磁気学に比べれば点が取りやすいです。ただ、最後の問題ですから、1番から順に問題を解いていくと、原子物理の問題のころには時間がなくなっているかもしれません。それゆえ、問題は易しくても、時間切れで問題を解くに至らなかったという例が多いようです。もったいない話ですね。

だから、一通り話が終わった後、過去問からピックアップした原子物理の問題集を渡しました。これをやってみて問題の易しさが実体験できれば、EJU本番で最後の問題を最初にするくらいの知恵を回してくれるのではないかと期待しています。解ける問題を解かなかったなんて、点数をどぶに捨てるようなものです。

そういう指導をしつつ、どこか何か間違っていると感じています。どうせ1問なんだからと、説明を端折りました。式の誘導をすると面白いのにと思いつつ、結論だけ示して「これ、覚えといて」とやってしまいました。また、この分野はノーベル賞の宝庫ですから、その方面に話を広げても手に汗握る展開になるのに…。でも、学生たちは目前に迫る6月のEJUに照準を合わせていますから、こちらもそのつもりで授業を進めなければなりません。与太話は、来学期に回しましょう。

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授業後

5月10日(水)

文法テストがありました。昨日もありましたから、2日連続です。昨日のテストが難しかったからでしょうか、朝、教室に入ると、みんな教科書を開き、自分が書いて先生に添削してもらった例文ノートを見ていました。いつものようにおしゃべりしている学生はいませんでした。張り詰めた空気を吸い込むと、肺に針が刺さるような感じすらしました。

授業を急ぎ気味に進めて20分ほどの時間を作り、昨日のテストを返却し、ざっと解説を加え、間違いを直す時間を与えました。学生からの質問に答えたり、学生が間違いを正しく直せたかどうかチェックしたりしていたら、あっという間に終業のチャイムが鳴りました。いつもならここでさっさと職員室に戻ってしまうのですが、成績優秀なごく一部の学生が帰っただけで、大半の学生が残っている教室を後にすることはできません。

学生たちは教科書を読まなくなったなあと思いました。「どうしてこれはダメなんですか」と学生に聞かれた文は、すべて似たような例文が教科書に載っていたり、教科書に“こういうことはしてはいけない”と注意書きがしてあったりしていました。その部分を示すと、学生たちは「そんなルールいつできたんだよ」と言わんばかりのびっくりした顔を見せました。それの繰り返しでした。

学生たちは、授業中に練習して、これで身に付いたと思うと、安心し過ぎて油断してしまい、かえっていけないみたいです。練習が中途半端だったんでしょうかね。来週の月曜日が中間テストですから、軌道修正の最終チャンスです。こちらも気合を込めて指導しなければなりません。

職員室に戻ったら1時過ぎ。1時半からは次のお仕事が待ち構えていました。

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