Category Archives: 勉強

明日、特別授業実施???

4月27日(木)

昨日のクラスでやった文法テストを採点しました。満点に近い学生もいれば、合格点にはるかに及ばない学生もいました。始業から半月余り、学生間の学力の差を感じつつありましたが、それを点数という形で明確に見せつけられました。私が感じている学生の実力とテストの成績には、強い相関関係があります。

当たり前の話ですが、宿題をきちんと提出し、教師の話をしっかり聞き、授業中にちゃんと練習し、疑問点をうやむやにしない学生が、高得点をあげました。指名されても、今どこをやっていて、何を答えていいのかわからないような学生は、不合格の海底に沈みました。

文法の時間には必ず例文を書かせますが、自分の頭で考えて書いている学生はテストでも堂々〇の例文を書いてくれました。形式だけまねたいい加減な例文ばかり提出してきた学生は、微妙に何か違う文を並べていました。それにとどまらず、初級で既習の文法や語彙を間違えて減点を重ねています。この結果を見て、自分の足りないところに気づいてくれたらいいのですが、そういう学生に限って、返却されたテストを机の中に置いたまま帰ってしまったりするんですよね。

明日の秩父旅行は、このクラスを引率します。秩父までの電車内ではあれこれレクリエーションを企画していますが、この答案を見てしまうと、問題学生を集めて特別授業をしたくなってきました。芝桜を見たり銘仙に感心したりおいしいものを食べたりしていてる暇なんかないんじゃないかな。だって、そういう学生でも、来年の4月には大学や大学院に進学するつもり満々なのですから。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

弱いまなざし

4月25日(火)

今学期に入ってから、火曜日のクラスでは毎週最近のニュースの映像を見せています。近頃の学生たちはテレビを見ません。ニュースも文字情報として取り入れていますから、日本で暮らしていながらも、耳を鍛えるチャンスは意外なほど少ないです。

映像を見せる直前に、ニュースの見出しのディクテーションをしていますから、多少はどんなニュースか見当がつきます。しかし、ニュースの映像となると、単にニュース原稿を読み上げるだけではなく、各局独自の切り口による分析や解説も加わります。上級クラスですから、そういうところも聞き取ってほしいと思っています。

映像は、それ自体が内容理解の助けになりますし、要点は字幕で表示されますから、聴解力を養うという点から言うと、効果のほどは怪しいかもしれません。でも、モニターを真剣に見入っている学生たちを見ていると、いせ続けていきたいなあと思います。

ところが、YさんやHさんは、毎週映像が流れ始めるとスマホに視線を移します。普段の授業中の様子からすると、ニュースの音声がつかめていないのではないかと疑っています。何とか食らいつこうという向上心や、何でも知ってやろうという好奇心みたいなものは、持ち合わせていないのでしょうか。

入試に合格すれば留学成功だと思っているのだとしたら、大きな間違いです。向上心や好奇心こそ、進学してからの学問成就を支えます。物価上昇が続く日本でどんな社会的変化が起こりつつあるか、これって、Yさん、あなたの研究テーマにかかわりがあるんじゃないんですか。

多くの学生の強いまなざしよりも、うつむきがちの視線のほうが気になりました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

外国料理

4月21日(金)

読解テキストに関連した宿題として、学生自身の国の料理で、外国料理をアレンジしたのものを探してくるというのがありました。マクドナルドやケンタッキーが自国風に味付けされているとか、寿司のネタに日本ではありえないようなものを入れているとか、想像できそうなできなさそうな答えが寄せられました。

40年近く前のことですが、私は新入社員として山口県にある工場に配属されました。その工場の食堂のテーブルに、キムチの素という瓶が置かれていました。普通の白菜の漬物にそのキムチの素をかけるだけで白菜キムチができあがるという、オレンジ色のドロッとした半液体の調味料です。

当時は韓流ブームのはるか前でしたから、東日本で生まれ育った私には、キムチはなじみのない食品でした。工場の人たちが、しょうゆの代わりにそのキムチの素を白菜に漬物にかけて、ごく当たり前に食べているのを見て、さすが山口県は韓国に近いだけあるなあと感心していました。

なんとなく好奇心が湧いてきたので、ある日、少し勇気を出して即席白菜キムチを作って食べてみました。これが辛いのなんのって。食べ物を残すのは嫌いですから小皿の白菜キムチをどうにか平らげましたが、二度と手を出すまいと強く心に誓いました。同時に、こんなものを毎食口にしている韓国人の味覚を大いに疑いました。

その数年後、ソウルまで1万円足らずで行けるというチケットが出たので、初めて韓国の土を踏みました。あれ以後キムチの素には一切手を出していませんでしたが、せっかく本場に来たのだからと、食卓の上に合ったキムチを、ほんの一口、記念に味見しました。

口に入れた瞬間辛さが舌を刺激し、失敗したと思いました。しかし、そのうちに辛さ以外の味が広がりだしました。これをおいしいというのであれば、韓国人の味覚って繊細じゃありませんか。あのキムチの素で満足している日本人の方がどうかしていると思いました。

ネットで調べると、現在、某大手食品会社がキムチの素を出しています。それがあのキムチの素なのかはわかりませんが、キムチが一般化した今は、きっとおいしくなっているに違いありません。私がこの読解の宿題をするなら、この話を書きます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ナトリウム?

4月18日(火)

今学期は6月にEJUがあるので、日本語プラスの受験科目は、それに合わせて授業を進めています。私が火曜日に担当している化学もそうです。

3時15分になり授業を始めましたが、学生たちが今一つすっきりした顔をしません。化学の受講生は直前まで数学の授業を受けていますから、疲れているのでしょう。…と思ったのですが、大事なことを忘れていたのに気が付きました。今、目の前にいる学生たちは今学期から受講を始めたのです。それなのに、元素の日本語名をまとめたプリントを配っていなかったのです。いきなり水素とかナトリウムとかと言われたって、何がなだかわかりませんよね。すぐに職員室に戻って、プリントを持ってきました。

水素をはじめ気体の元素は、中国語では「气」にいろいろなパーツを入れて表します。「羊」を入れれば酸素、「炎」なら窒素です。水素は、「圣」です。ついでに、元素ではありませんが、「安」だとアンモニアになります。それぞれ何と発音するかわかりませんが、日本語と同じだとは到底思えません。

ナトリウムは、もともとはドイツ語です。英語では「sodium」(ソディウム)です。ですから、英語が話せても、「ナトリウム」からすぐに「Na」を思い浮かべることはないでしょう。

元素名のプリントを配ったら、学生たちはだいぶ線がつながったようです。文法的にやさしい日本語でしゃべっても、水素やナトリウムは言い換えられない場合も多いです。「エイチ原子」なんて言うと、かえってわかりにくいみたいです。

大学の授業は日本語で元素名を言うはずですから、今から覚えてもらいます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

漢字は苦手です

4月17日(月)

漢字のテストがありました。不合格者が3人いました。その3人は全員中国人でした。先学期の私のクラスも、漢字テストで不合格になるのは中国の学生ばかりでした。中国の簡体字と日本の漢字が微妙に違うことも原因の1つとして考えられるでしょうが、それだけで合格点(60点)にはるかに及ばない成績しか取れないことは説明できません。

ひとことで言ってしまえば、勉強していないのです。「教育」の読みを「きょいく」と書いたというのであれば、きちんと勉強していなかった、正確に覚えていないのだろうと思います。あるいはうっかりミスかもしれません。しかし、全く何も書いてないとなると、勉強してこなかったとしか思えません。空欄が1つか2つなら、度忘れという線もありえますが、解答欄の半分ぐらいが真っ白となると、勉強せずに受けたと結論せざるをえません。不合格の学生たちは、空欄が多かったのです。

この学生たちも、大学や大学院に進学したいと言っています。しかし、こんなにまで勉強していなかったら、進学先の授業についていけないでしょう。漢字の勉強だけでなく、勉強全般が嫌いだとしたら、進学する意味などありません。別の進路を探るべきです。勉強ではなく、努力を厭う気持ちがこの学生の心に巣食っているとしたら、人間として根本から鍛え直す必要があります。ここまでくると、私たちの手に余ってしまいます。

このテストで一番成績がよかったのは、アメリカの学生でした。韓国の学生も押しなべて好成績でした。もちろん、中国の学生だって何名かは高得点を取っています。しかし、かろうじて合格のもう3名も含めて、中国の学生の不振が目立ちました。国で漢字を使ってこなかったアメリカや韓国の学生がどれだけ努力をしているか、不合格の3名と土俵際だった3名は見習うべきです。先学期の私のクラスの漢字テストで不合格常連だった学生の末路を見れば、このままでは明るい将来などなことは明らかです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

どんな勉強?

4月13日(木)

昨日のこの稿で取り上げたHさん、数学のS先生によると、数学に関しては先学期から勉強しているPさんやWさんよりよくできるそうです。理系の数学が難しすぎるのではなく、本当に基礎を再確認したいのかもしれません。私の担当している物理も、解けると思った問題が解けず、前に戻って勉強し直すと言っていました。

学生は、とかく先へ先へと進みたがります。わかったつもりを繰り返したあげく、基礎がガタガタのまま、入学試験のような範囲の広い試験を受け、跳ね返されることがよくあります。「間違えた問題は間違えなくなるまで何度でも解いてみること」と言うと、Pさんは「同じ問題を何回も解きますか」とびっくりしたような顔で聞き返してきました。「日本の受験生はみんなそうしているよ」と答えると、不思議そうな顔をしていました。

Hさんがそういう学生ではなく、やり直しを厭わず勉強していくのなら、今後に希望が持てそうです。6月のEJUに間に合うかどうかは微妙なところですが、確実な前進を積み重ねれば、いずれ大きな力を身に付けるに違いありません。日本語も、過剰に未知への挑戦を続けるようなことがなければ、きっと芽を出しますよ。私たちも、そういう発想でHさんを指導していくことを考えるべきかもしれません。

ただ1つだけ気になるのは、「公式を覚えます」と言っていることです。公式を覚えれば、あるレベルの問題までは解けるようになります。しかし、公式のよって立つ原理や自然現象などを切り捨てて暗記にばかり走ると、それ以上の問題には太刀打ちできませんし、ましてや進学してからの勉強においては戸惑うばかりでしょう。そういうところも含めて、見守っていくつもりです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

やっぱり日本語力?

4月12日(水)

文系数学の日本語+の授業を終えて一息ついていると、Hさんに呼び出されました。Hさんは今学期から理系の数学と物理、化学の日本語+の授業を受け始めた学生です。昨日の化学は、顔をゆがめながら私の話を聞いていましたから、受講を取りやめたいという相談かもしれません。

出て行って話を聞くと、理系の数学のほかに、数学の基礎の勉強として、文系の数学も受けたいと言います。基礎というと、つい先ほどまでやっていたクラスは、先学期から受講している学生対象ですから、Hさんの意図する授業内容ではないでしょう。かといって、月曜日のクラスは今週から始まったクラスで、基礎の基礎をやっていますから、理系志望の学生にはどう考えても易しすぎます。

そういうことを伝えてみたのですが、どうも伝わり方がよくありません。半分筆談になってしまいました。とりあえず、来週月曜日の授業に出てもらうことにしました。

そんなことがあってからしばらくして、A先生が「この学生は午後のクラスに戻した方がいいと思いませんか、金原先生」と、ある学生の例文ノートを持ってきました。見ると、確かにひどい間違え方です。午後クラスに差し戻すという判断もありでしょう。で、その例文ノートの名前を見ると、Hさんではありませんか。ということは、理系数学のS先生の日本語が難しすぎてわからなかったのかもしれません。昨日私の授業で顔をゆがめていたのも、理解するのに悪戦苦闘していたのでしょう。

理系の授業は数式や反応式など、日本語以外でどうにかなる部分もあります。しかし、根幹をなすのは日本語の資料を読んだり、教師の日本語の話を聞いたりすることです。Hさんの日本語力では難しすぎたのでしょうか。Hさんだって、来年の4月には進学しなければなりません。日本語力を養ってからなどとのんびり構えている暇はありません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

4月は始まりの月

4月8日(土)

今学期から、KCPの「受験講座」は、名称を改めました。日本語+(プラス)としました。クラスにおける通常の日本語授業に加えて(プラスして)、各学生が、KCPを卒業した後の進路に合わせて、多様な勉強ができるようにメニューをそろえました。従前の受験講座と同じ内容の授業もありますが、取り扱い方は新しくしていこうと思っています。

そういう趣旨が伝わったからなのかどうかわかりませんが、私が担当するEJUの数学コース1は、新しく始める学生がおおぜいいます。先学期からの学生は6月のEJUを目指しますから、それに向けた授業をしていかなければなりません。新しい学生がそういった授業についていけるかとなると、大きな疑問符が付きます。数学コース1には、数学の基礎から勉強したいという学生が少なからず入ってきます。そんな学生にいきなり2次不等式や確率、平面図形などの問題をやらせたら、すぐに逃げて行ってしまうでしょう。

そこで、今回は、レベルテストをすることにしました。先学期に取り扱った内容から問題を出し、そのテストでそこそこの点数が取れたら、受講継続の学生と同じクラスにします。白紙に近いようだったら、11月を目指して基礎から勉強するクラスで勉強してもらいます。

文科系の数学の授業は、引導を渡すのが仕事だという面もあります。下手に引き留めて、総合科目の足を引っ張ってしまっては、元も子もありません。でも、学生が思い描いている“いい大学”に合格させるには、茨の道を歩いてもらわなければなりません。その辺の見極めが難しいのです。

これから、日本語+には新しい授業が加わっていきます。数学みたいにやるべきことが明確に決まっている授業ばかりとは限りません。学生よりも前に、教師が鍛えられそうな日本語+です。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

新たな出発

3月20日(月)

卒業式後に私が受け持っている上級クラスの学生は、その多くが、今シーズンの受験が残念な結果に終わっています。私たちの指導が甘かった、学生が高望みしすぎた、受験を甘く見ていた、…いろいろな原因が考えられますが、何はともあれ、2024年度入試に向けて新たなスタートを切ったところです。

Kさんは、入学時から24年4月進学というつもりでいます。今までは気楽な留学生活だったかもしれませんが、もうそんなわけにはいきません。Kさんの志望校は、6月のEJUで高得点が必要です。できる学生ですが、もう少し目の色が変わってほしいところです。

Hさんは受験の結果に満足できず、もう1年勉強することにしました。卒業式前に比べていくらか前向きの姿勢になりましたが、こちらもさらなる奮起をしないと、来年の今頃は妥協に妥協を重ねた進学となっているかもしれません。教師として、要注意です。

Gさんはクラスを明るくしてくれるのはありがたいのですが、日本語がいい加減なのはいただけません。質問や課題に対する答えが雑です。マークシートはどうにかなっても、筆答問題や面接は乗り切れないでしょう。本人がどれだけ自覚しているか、これからどれくらい勉強に身を入れられるかにかかっています。

Lさんはほぼ毎日学校へ来るのですが、ほぼ毎日遅刻です。今朝は珍しく9時前に教室にいましたが、これを毎日続けられるように生活習慣を改めるところが、Lさんのスタートラインです。

Eさんは、初級の先生方からは「いい学生」と言われていますが、上級で見ている私の目には、そうは映りませんでした。今学期このクラスに入ったO先生に「Eさんはいい学生だったのに…」とさんざん言われ、4月の入学式には先輩として参加することになり、若干自覚が芽生えてきたようです。顔つきが変わり、発言が増えてきました。

Rさんは、このクラスでは一番下ではないでしょうか。授業に対しては積極性が出てきましたが、提出物を見るとまだまだです。6月のEJUに間に合うかなあという感じさえします。自覚を促すとともに、よほど強力に引っ張らないと、志望校には手が届かないでしょう。

なんとなく、4月以降の骨格が見えてきました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

グローバリゼーションかな

3月17日(金)

私の周りにたまたまそういう学生が集まっているだけかもしれませんが、最近、心に問題を抱えている学生が増えたような気がします。

昨日、Pさんは、1時間以上ずっと語り続けました。私にとっては取り留めのない話に過ぎませんでしたが、Pさんにとっては来日以来の思いを語ったのかもしれません。自分の生い立ち、両親のこと、ネットで知り合った日本人の友だちからの言葉、…と話があちこちに飛んで、なかなか追いつけませんでした。入学直後は将来に対する不安から激情をぶちまけたこともありましたから、それに比べれば大きな進歩です。でも、1時間以上分の澱を心の中にため込んでいたのです。誰にも聞いてもらえなかったら、またどこかで爆発したかもしれません。

Zさんは受験がうまくいかず、タガが外れてしまったようです。今週はまともに登校したのがたった1日しかありませんでした。水曜日は、「真夜中過ぎまで勉強したので、朝起きられませんでした」という欠席理由を伝えるためだけに、授業後わざわざ学校へ来ました。欠席者にはこちらから電話を掛けますから、その時に答えてもらえばよかったのですが、先生に直接言うというのが、Zさんなりの誠意の示し方だったようです。何人もの先生から、授業中に内職をしてはいけないと注意され続けてきましたが、とうとう治りませんでした。内職の結果が大学入試全滅です。真夜中過ぎまで勉強したというのは事実でしょうが、集中力が全く伴っていなかったに違いありません。

こういう学生たちを見ていると、受験は今でも戦争なんだなあと感慨にふけってしまいます。私のころは大学の定員が少ないことに起因する“戦争”でしたが、今はグローバリゼーションの末端がKCPにまで到達し、学生たちがその波をかぶっている図が思い浮かびます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ