Category Archives: 勉強

グローバリゼーションかな

3月17日(金)

私の周りにたまたまそういう学生が集まっているだけかもしれませんが、最近、心に問題を抱えている学生が増えたような気がします。

昨日、Pさんは、1時間以上ずっと語り続けました。私にとっては取り留めのない話に過ぎませんでしたが、Pさんにとっては来日以来の思いを語ったのかもしれません。自分の生い立ち、両親のこと、ネットで知り合った日本人の友だちからの言葉、…と話があちこちに飛んで、なかなか追いつけませんでした。入学直後は将来に対する不安から激情をぶちまけたこともありましたから、それに比べれば大きな進歩です。でも、1時間以上分の澱を心の中にため込んでいたのです。誰にも聞いてもらえなかったら、またどこかで爆発したかもしれません。

Zさんは受験がうまくいかず、タガが外れてしまったようです。今週はまともに登校したのがたった1日しかありませんでした。水曜日は、「真夜中過ぎまで勉強したので、朝起きられませんでした」という欠席理由を伝えるためだけに、授業後わざわざ学校へ来ました。欠席者にはこちらから電話を掛けますから、その時に答えてもらえばよかったのですが、先生に直接言うというのが、Zさんなりの誠意の示し方だったようです。何人もの先生から、授業中に内職をしてはいけないと注意され続けてきましたが、とうとう治りませんでした。内職の結果が大学入試全滅です。真夜中過ぎまで勉強したというのは事実でしょうが、集中力が全く伴っていなかったに違いありません。

こういう学生たちを見ていると、受験は今でも戦争なんだなあと感慨にふけってしまいます。私のころは大学の定員が少ないことに起因する“戦争”でしたが、今はグローバリゼーションの末端がKCPにまで到達し、学生たちがその波をかぶっている図が思い浮かびます。

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手がかからない

3月16日(木)

アメリカの大学のプログラムでKCPへ来ている学生の会話テストを終えて1階に下りてきたら、10日に卒業したJさんがいました。JさんはR大学、S大学、T大学などに受かり、4月からT大学に通うことになっています。その体験談を書いてくれた上に、私と一緒に写真に納まりに来てくれました。

幸い天気もよく暖かかったですから、校舎の外の校名板をバックに写真を撮りました。もちろん、マスクを外して。やっぱり、マスクを取ると気持ちがいいですね。

さて、そのJさんの体験談ですが、「金原先生に大変お世話になりました」と書いてあるそうですが、私はあまりお世話をした記憶がありません。理科系志望の学生ということで、先学期、担任のK先生に頼まれて定期面談をしたくらいです。今学期は私の担任クラスでしたが、Jさんは受験で忙しく、私は他の学生の尻を叩くのに追われて、ゆっくり話す暇もありませんでした。

Jさんが私に恩義を感じているとしたら、先学期の面談の際に、私が理科系だったら国立に行けとアドバイスしたことではないでしょうか。それぐらいしか思い当たりません。国立に行けと言いつつも、独自試験の対策を手伝ったわけでも、面接練習をしたわけでもありません。Jさんは実に手のかからない学生でした。無理やりこじつければ、私のアドバイスがきっかけとなって、T大学の試験勉強に身を入れるようになったといったところでしょうか。

T大学は4月1日が入学式で、すぐにオリエンテーションだそうです。Jさんなら有意義な勉強をしてくれるでしょう。将来名を成してくれることを期待しています。

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新たなスタート

3月13日(月)

卒業生がいなくなると、上級クラスはスカスカになります。残った学生が2人か3人ならいくつかのクラスを合併して1つのクラスを作ります。私のクラスは半分ほど残りましたから、そのままのメンバーで授業を続けました。

学生半減ですから、朝、授業の前に、教室の後ろの方の机を全部寄せておいて、教卓の近くに人数分だけの机を並べておきました。そのままにしておいたら、学生たちは教卓から遠い席に着いて、前の方がガラガラになること疑いありません。

9時に教室に入ると、前の方に集めた机の後ろの方から席が埋まっていました。でも、残った学生たちからはやる気が感じられ、今から来年春に志望校に進学するための勉強をするぞという目つきをしていました。進学は、毎年、早くから騒ぎ始めた学生が勝ちます。後手に回った学生は、思い通りの結果が得られないものです。

この4月に進学するつもりだったTさんも、スタートが遅れてしまった1人です。一番痛かったのは、去年の6月のEJUを受けなかったことです。そのため第1志望校の試験が受けられませんでした。「自分の実力はまだまだだから」という、学生がよく申し立てる理由でチャンスを逃したのです。その後も不完全燃焼みたいな気持ちで受験を続け、結局“もう1年”となってしまいました。

今まで卒業した学生に圧迫されていたわけではないのでしょうが、Tさんも含めて学生たちはのびのびと発言していました。授業中に声を聞いたことがなかったSさんもこちらの質問にしっかり答えてくれました。1年後に向けて、力強い第一歩が踏み出せた気がします。

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戦いは続く

3月6日(月)

SさんがH大学を受けるための、KCPの書類を申請してきました。これから出願できる大学があるのかと驚きながら確認すると、試験日に書類を持っていけば受けさせてくれるそうです。しかし、H大学のページを見ても、そのようなことは書いてありませんでした。出願は、先月のうちに締め切られています。

考えられることは、H大学は受験生が集まっていないということです。留学生の募集にここまで躍起になっているということは、きっと日本人の募集もうまくいっていないのでしょう。ネットの情報によると、今年は多くの私大が受験生を減らしたそうですから、H大学が学生募集で苦戦していたとしても不思議なことではありません。

Sさんは、いわゆる一流大学、有名大学を受験し続けて、敗れ去ってきました。受験勉強のためと称して学校をよく休んだり、出てきても教師の目を盗んで問題集をやったりしていました。EJUの点数だけならどこかの大学に受かってもおかしくないのですが、結果を見る限り、EJU以外の評価が足を引っ張ったようです。

Sさんが実力だと信じていた力は、砂上の楼閣だったのです。最後の頼みの綱だったN大学では、受験生が集中したせいか、かなりハードな面接試験を課せられたらしく、あえなく沈んでしまいました。そういう訓練をしてきませんでしたから、当然の結果でもあります。

N大学の入試の直前には面接練習をしました。しかし、Sさんの答えには“一流・有名大学に落ちたから次善・三善の策としてとりあえずN大学に入っておく”というにおいがプンプンしました。4年間N大学に浸りきるんだという心意気が感じられませんでした。

さて、学生募集に困っていると思われるH大学は、Sさんをどう評価するでしょう。Sさんには、上述のように、出席率が悪いというハンデがあります。今週金曜日は卒業式ですが、Sさんの背水の陣は、まだまだ続きそうです。心休まる日は、しばらく来ません。

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壁からグラデーションへ

2月9日(木)

Mさんは今学期から理科系の受験講座を受けています。しかし、最近休みがちです。そんなMさんを、授業後に呼び出して、事情を聴きました。

一言でまとめてしまうと、受験講座の内容が難しいということでした。Mさんは国の高校で理科系の勉強をしてきましたが、受験講座では国で習ったことのない内容を扱っているので、ついていけないと言っていました。

数学のS先生に聞いてみると、国によって教育課程に違いがあるのに加えて、学校によっても、同じ学校でもクラスによって、どこまで教えるかばらつきがあるそうです。理科系の場合、日本で言う数Ⅲまでがっちり勉強してきた学生から、数Ⅱ・Bをお義理で勉強したにとどまる学生まで、かなり幅広く分布しているとおっしゃっていました。Mさんは日本の数Ⅰ・Aよりも多少深く勉強しただけなのではないかという見立てでした。

日本には、私が受験生だった頃よりも前から、“文転”という言葉があります。理科系進学を目指していたけれども、数学が伸びずに文科系へと進路変更する例は、今も昔も少なくないようです。学部学科の設定も受験方式も多様化したとはいえ、文科系と理科系の間の壁は、厳然と存在しています。留学生入試では、日本人の入試に比べて、その壁がいくらか厚く高いような気がします。Mさんの国ではどうなのでしょう。

Mさんが目指している分野は、確かに理科系の範疇ですが、がりがりの理科系ではありません。理科系と文科系の境界が壁ではなくグラデーションになっていたら、Mさんはゆとりのある留学ができるに違いありません。日本の大学がそこまで変わるには、まだまだ時間がかかりそうです。

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テスト問題作成

2月8日(水)

来週の火曜日が中間テストですから、そろそろ問題作りに頭を痛めねばなりません。頭を痛めて作ったテストでいい点を取ってくれれば、作ったかいも授業をしてきたかいもあるというものです。しかし、赤点続出となると、気落ちした上にその後処理もしなければならず、骨身にこたえます。

そこで、今回は、読解の問題を学生に作ってもらいました。「はい、作ってください」と声をかけただけでは作れるわけがありませんから、まず、問題作りのポイントを説明しました。

「T先生や私が読解の授業でみなさんにした質問を思い出してください」「指示詞が何を指すかは、よく使う手ですよ」「空欄に言葉を入れる問題は、前後を読めばわかる問題にしてください。知識を聞くクイズじゃありませんよ」「漢字の読み書きは、読解の問題じゃありません」「選択肢は、微妙すぎるのはやめてください」…

こちらの手の内を明かすようなことも入っていますが、このクラスの学生は多くが今学期までですから、まあ、いいでしょう。それに、学生に教えても使いこなせないだろうなという大技は、しまったままです。

問題作りのポイントがわかるということは、読解のポイントが見えてくるということでもあります。これを通して読解力が上がることも期待しています。また、問題を作るためには、テキストをじっくり読まなければなりませんから、内容の理解が深まるはずです。学生たちは声も出さずに真剣に取り組んでいました。優秀作品は、テスト問題に採用します。来週のテストは期待が持てそうです。

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怪行動

2月7日(火)

火曜日は、前半は通常クラスで授業し、後半は選択授業です。そのため、クラスの学生がバラバラになります。すると、怪しい動きを見せる学生が現れます。

Eさんは選択授業での発表が嫌で逃げているようにしか見えません。前半はしっかり授業を受けていたのに、その後帰ってしまいました。担任のT先生には机にぶつけたところが痛むので早退したとかいうメールが届いたそうですが、教室を出るときは、「先生、さようなら」と言いながら元気そうでした。

Jさんは、その点少しだけ良心的です。授業の終わりに、「用事がありますから帰らなければなりません」と言ってきましたから、「選択授業の先生に言ってから帰ってください」と突き放しました。少しでも言い出しにくい状況を作り出そうと抵抗しましたが、どうやらきちんと断って帰ったようです。そもそも、留学生には学校の授業より大事な用事はないはずなのですが、正直に言ってきたことに免じて深くは追及しないことにしました。

先週選択授業を無断欠席したSさんにはきつく𠮟っておきました。しかし、また選択授業だけ休みました。担当のA先生にメールを入れただけましかもしれませんが、腰痛という疑問符をつけたくなる理由でした。

Bさんは、前半の授業にはいませんでした。選択授業も私のクラスなのですが、教室に入るといるじゃありませんか。授業が始まる前に前半を欠席したわけを言ってくるかなと思いましたが、出席を取るために名前を呼ぶと、素知らぬ顔で「はい」と応じました。授業が終わるとそのまま帰ろうとしたので、直ちに捕まえて「Bさん、あんた、朝の授業はどうしたの!」と聞くと、「寝坊しました」の一言。反省の色が薄そうでした。でも、消える学生よりはましかな。

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辞書だって

1月27日(金)

漢字の読みの問題で、「犯人グループは地下に潜った」という例文が出てきました。クラスの学生たちは、当然のごとく読めました。

「Aさん、犯人グループはどうしたんですか。何をしたんですか」と聞くと、Aさんは、「地下に入りました」と答えました。他の学生たちも、「うん、そうだね」という雰囲気でした。「犯人たち、地下鉄に乗ったんですか。新宿駅の地下で買い物か食事したんですか」と追い討ちをかけると、ようやくクラス全体が、犯人グループはただ単に地下へと移動したのではないと気付いたようでした。

ここまでみんな「地下に潜った」をスルーするクラスも珍しいですが、どのクラスでも字義通りに受け取って平気な顔をしている学生は少なくありません。漢字の問題ですから、読めさえすればいいと思うのでしょうか。機械的に読み方を調べてふりがなを書いただけでは、上級の予習としては不十分です。視野を広く持ち、読み仮名を振ったら文を読み返し、文全体の意味を考えるくらいはしてほしいです。ほんのちょっと気を回せば、「地下に潜る」が慣用表現であることぐらい、ピンと来るはずです。

そういうことができる学生は上級になってからも実力が伸び続け、形式的に漢字の読み方を書いて済ませてしまう学生は伸び悩むのでしょう(そういえば、この「伸び悩む」も、「背が伸びて大人になったので人生について悩むようになった」とかと、ずいぶん大げさな解釈をした学生がいました)。読解も同様で、単語の意味を調べただけで勉強したような気になっている学生が目立ちます。辞書だって、読み方や単語の意味よりも高等なことを調べてもらいたいと思っていますよ、きっと。

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テスト結果

1月24日(火)

受験講座理科の新規受講生がじわじわと加わってきたので、授業を先学期からの継続生にばかり合わせるわけにもいかなくなってきました。そこで、受講生全員にテストをしました。新しい学生だって、国の高校で理科を勉強してきています。忘れている部分はあったにしても、まるっきり何もわからないとは考えられません。継続生だって、今まで勉強したことをすべて身に付けているとは思えません。これから先、どこを重点的に教えていけばいいか、それを知るためのテストです。

手っ取り早いので、EJUの化学の過去問を拝借しました。私が作った模範解答もありますから、試験後に解説するにしても容易に対応できます。授業では、化学は1セット(20問)30分以内に解けと言っています。しかし、今回はEJUの問題に向かうのが初めての学生もいますから、EJU本番の理科の試験時間・80分の半分、40分を与えました。

継続生は、先学期のうちに化学の範囲の半分ほどを勉強していますから、40分では時間が余るかなと思いました。しかし、余りませんでした。新規の学生は、何もわからずあっさりギブアップしてしまうのではないかと心配していました。しかし、杞憂でした。

授業後、学生たちの答えをチェックしてみると、新しい学生はまぐれ当たりとしか思えないような点の取り方でした。継続生は、それよりはましでしたが、年末に教えたところの問題は、ほぼ全滅でした。新規受講生に対して、思ったより差が付きませんでした。私の教え方がまずかったのでしょうか。

どうやら、継続生も1から出直しのようです。レベルが合ってよかったとも言えますが、どんぐりの背比べでは困るんですよね…。

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85%

1月16日(月)

午後、F専門学校の留学生担当の方が学生募集の説明にいらっしゃいました。KCPからも毎年のように進学している学校ですから、どこの学科が定員になったという情報以外、取り立てて新しい話はありませんでした。募集を打ち切った学科も「ぜひ学生を送ってください」と言われた学科も、恐らくそうだろうなという感じでした。年が明けても定員になっていない学科は、学生募集にテコ入れしないと3月までに定員を埋められないかもしれません。今週はこのF専門学校のほかに、もう1校来校予定があります。

「出席率の基準はどの辺でしょうか」と聞いてみると、「出願資格は“80%以上“となっていますが、今は90%以上が常識でしょうね。85%でも印象は悪いですね」という答えが返ってきました。F専門学校は学生募集にテコ入れを始めたようですが、出席率に関しては妥協するつもりがないようです。出席率85%だったら、面接で休んだ理由を聞くとも言っていました。

こちらも、そうやすやすと妥協してほしくはありません。留学ビザは勉強するためのビザですから、出席率80%=欠席率20%では留学ビザで日本にいる意味がありません。出席率80%とは、平日5日のうち1日休んでいるということです。つまり、週休3日です。仕事なら段取りを上手につければそれも可能でしょうが、語学の勉強で週休3日はいただけません。

夕方、週休3日でアルバイトに精を出している学生が叱られていました。この学生も日本で進学するつもりのようですが、受け入れ先がこんなことを考えているなんて、気づいていないでしょうね。

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