Category Archives: 生活

台風欠席

9月8日(金)

授業数分前に教室に入ると、学生がわずかに5人。荷物が置いてある机が2つありましたからそれを加えると7人になりますが、まだ半数以下です。チャイムが鳴っている最中に学生がドドトっと駆け込んできて、かろうじて半数を超えました。

私のクラスに限らず、今朝は遅刻が多かったようです。確かに台風が近づいてきていて、雨脚が強かったです。でも、傘が役に立たないほどではありませんでした。風も吹いていました。でも、人や物が吹き飛ばされるほどではありませんでした。計画運休という噂のあった東海道新幹線も平常運転でした。羽田発着の航空便もダイヤに大きな乱れはありませんでした。にもかかわらず自主休校を決め込んだ学生があちらこちらにいたようです。

こういう学生は、休むきっかけを見つけるのに必死です。私のクラスのZさんは12時まで寝ていました。Yさんに至っては、堂々と台風のためと言います。Wさんは、電話にすら出ません。遅刻してきたTさんだって、理由になりそうな理由なんかありません。気の毒だなと思ったのは、登校途中に足を滑らせて転んで服を汚してしまい、さらに膝を擦りむき、家に戻ったFさんぐらいでしょうか。WさんやYさんは、出席率に問題があります。雨どころか、槍が降っても来なければならない学生たちです。

どの学生にも、進学や勉強について厳しく指導してきました。それが嫌なんでしょうかねえ。だとしても、それは逃げです。台風の日に休むのは、雨宿りに過ぎません。台風が過ぎ去ったら、またそういったことに真正面から向き合わなければならないのです。

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のんびり留学

9月1日(金)

「私は国で悪い学生でしたから日本へ来ました」とJさん。高校の成績が悪く、国では大学に入れそうもないので、親から日本へ送り出されたと言っています。だから、日本で大学進学を目指しますが、何が何でも“いい大学”に入ろうとは思っていません。東京を離れて、のんびり勉強したいそうです。

そんな調子ですから、進学に関してはまだ何もしていないのかと思いきや、この前の学期休みに池袋で開催された、全国の大学が集まる留学生進学フェアに参加したそうです。そこでのんびり勉強できそうな大学をいくつか見つけてきたとのことですから、準備はのんびりというよりは周到に進めているようです。現に、M大学、O大学という名前がJさんの口から具体的に出てきました。そのどちらも、東京から遠く離れ、東京では有名ではありませんから、Jさんの本気度はかなり高そうです。

本人が本気でも、親が口出ししてきて、その本気の火を吹き消してしまうことがよくあります。でも、Jさんのご両親は、そんなことなさそうです。「国であきらめられていますから、日本でどんな大学に進学しても親は文句なんか言いません。大喜びです」。いい親御さんを持ったようです。

また、Jさんは、近所のお年寄りと仲良くなって、ファミレスで食事しながらお話をしているそうです。お年寄りが安保させていた犬の種類が、Jさんが国で飼っていたのと同じだったことから縁ができました。そのお年寄りにすると、孫をかわいがるくらいの気持ちなのでしょうか。ここにも、がりがり受験勉強をしないでのんびり留学しようというJさんの考えが見えます。

何だか、私まで留学したくなってきました。

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進歩は退歩

8月26日(土)

おとといから、学校にかかってくる電話が急に増えました。電話の相手は、何語かよくわからない言葉で一方的にまくしたてます。こちらは海外からの入学希望者かもしれないので誠実に対応しようとしますが、それには一切反応を示しません。昨日あたりからは、「あ、またか」という感じで、まともに取り合わないことにしています。

各方面からの情報によると、同様の迷惑電話は官公庁をはじめとして、日本中にかかってきているようです。処理水の放出に対する抗議の一端のようですが、KCPのような処理水とは全くかかわりのないところにも“攻撃”の手が伸びているようです。福島県の一般商店・飲食店も同様の電話で迷惑をこうむっているとなると、この電話の発信者を恨む気持ちしか湧いてきません。

発信者は、自分たちの行為によって処理水の放出が止まると思っているのでしょうか。確かに、処理水放出に関する日本政府の議論の進め方には感心できないものがあります。また、岸田さんは、ご本人の言葉とは裏腹に、他人の意見、特に反対意見など聞く耳を持たない人です。しかし、だからと言って、岸田さんや日本政府に向けるべき攻撃の矛先を、迷惑電話という形に変形して、処理水放出決定とは縁もゆかりもないところに向けるというのは間違っています。

昔、チェルノブイリ原発が事故を起こした時、放射性物質の拡散を恐れて世界中が縮こまりました。でも、このような迷惑行為はなかったと思います。当時に比べると、今は、通信技術の進歩によって、世界中どこからでも、どこへでも、気楽に電話がかけられるようになりました。進歩の悪用は、人間の退歩につながります。電話をかけている人(かけるように機会に命じた人?)は、こんなことすらもわからなくなっているのです。

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想像力

8月21日(月)

夏休みは、愛媛県松山にずっと泊まっていました。松山の近辺を中心にあちこち見て歩きましたが、1日で四国1周という強行軍もしてしまいました。

松山と言えば道後温泉でしょうが、私は、例によって、そういうメジャーな観光地へは行きません。その代わり、道後温泉のすぐ隣の湯築城跡を見てきました。湯築城は水軍で有名な河野一族の城でした。秀吉の四国征伐の際に降伏して、城は廃城になり、河野一族は滅びました。城跡は江戸時代を通して立入禁止で、戦後動物園ができ、その動物園が移転した後で発掘が行われ、かつて湯築城という立派な城があったことがわかりました。

湯築城跡よりも前に、松前城跡と港山城跡へも行きました。松前を「まつまえ」と読むと北海道になってしまいますが、「まさき」と読むと松山の隣町、私が行ったところになります。松前城跡は住宅地の中にあり、草むらに紛れて碑が立っているだけです。しかし、こここそ加藤嘉明が松山に築城する前に居城としていたところなのです。現存12天守の1つである松山城の原点が松前城だとも言えます。

港山城は、河野氏の水軍の拠点になった城です。松山の郊外三津浜の小高い丘の上にあります。水軍の拠点だけあって、海がよく見渡せます。この城跡の麓から対岸の三津浜まで、松山市営の無料の渡し船が運行されています。どう見ても50mほどしかなく、瀬戸内海の内湾のそのまた入江みたいなところで、その気になれば泳いで行けそうです。

どうして城跡巡りをするかというと、城跡は無限に想像を膨らませられるからです。松山城は立派なお城です。姫路城はさすが世界遺産です。しかし、それらは現物が目の前にあり、想像の起点がすべてそこに規定されてしまいます。ところが、松前城は「跡」ですから、いかようにも想像できます。取り囲んでいる住宅が御殿や武家屋敷に見えてきます。湯築城の周囲に土塁を巡らしたり、港山城に物見やぐらを建てたり、そんなことが自由にできます。それが魅力なのです。

今回は行きませんでしたが、国分寺跡にもそんな魅力があります。礎石から伽藍を想像したり、五重塔を見上げたつもりになったり、そこで修業をしている僧を思い浮かべたりする自由があります。法隆寺も中尊寺も心惹かれるものがあります。しかし想像の広がり具合は豊後国分寺跡や但馬国分寺跡の方が壮大です。

さて、今朝のクラス。学生たちに夏休みの様子を聞いたら、ずっと引きこもっていたとか、毎日15時間ゲームしたとか、ろくな答えが返ってきませんでした。みんな、私の日焼けした腕と顔を不思議そうに見ていました。

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好奇心

8月10日(木)

7月期の中間テストは、アメリカの大学のプログラムで来ている学生たちの一部にとっては、期末テストです。午前中に試験監督に入ったクラスにも、期末テストの学生が何名かいました。たまたま、その学生たちの会話テストをした関係で、このクラスの授業には入ったことがないのですが、この学生たちだけ知っているのです。みんな明るくよくしゃべる学生ですから、夏休み明けにこの学生たちが消えてしまったら、このクラスは成り立つのだろうかと心配になってしまいました。

この学生たちは、帰国するとすぐ国の大学の授業が始まります。時差ボケが治ったくらいのタイミングで新学期です。だから、中間テストまでしかKCPにいられないのですが、会話テストの時に聞いた話によると、かなり濃密な短期留学だったようです。日本語の勉強はもちろんのこと、留学の期間が短いことが最初からわかっていましたから、休みの日にもというか、休みの日だからこそ、ハードなスケジュールを組んでいた人が多かったみたいです。東京近郊に限らず、函館とか京都とか名古屋とか、日本全国をまたにかけて動き回っていました。学生たちにとっては幸いにも円安ですから、動き回りたくなるのかもしれません。

こういう学生は、いわば短距離走のランナーです。一方、日本で進学するためにKCPで勉強している学生たちは長距離走者です。ですから同列に並べてはいけませんが、それでもこうした好奇心とかバイタリティーとかは、長距離走者にも必要です。マラソンランナーたちは、もうすぐ帰国するスプリンターたちから何かを吸収できたかな。吸収した学生は、この先きっと、吸収したことが物を言う場面に出くわすはずです。

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夏をしのぐ

8月4日(金)

Tさんは初級クラスの学生です。初級の授業は午後1時半からですから、通学時間約50分のTさんの場合、12時過ぎに家を出れば楽に授業に間に合います。ところがTさんは、10時ごろに学校へ来ます。

授業に間に合うかどうかだけを考えれば、昼ご飯を済ませてから家を出ても遅刻することはないでしょう。どこかで昼食をとるにしても、出るのが11時半では早すぎるくらいです。どうして10時ごろに学校にいるのだと思いますか。

それは暑さを避けるためです。Tさんの家から最寄り駅までは、歩いて20分ほどです。その間、快晴の空から降り注ぐ直射日光を浴びたら、駅に着くまでに大汗をかいてしまいます。それを避けるために朝だいぶ早く家を出るのです。確かに、電車は、ラッシュの終り頃ですから、まだ混んでいます。しかし、電車内はエアコンが効いていますが、駅までの道のりや、新宿御苑前からここまでは、エアコンがありません。35℃以上の暑さの中を歩くのは、自分にはには耐えられないということです。それに、学校へ来れば勉強の雰囲気が整い、予習も進み、一石二鳥です。

今年の夏は半端じゃありません。国連事務総長が言うように、まさにboiling です。暑い盛りの時間に炎天下を歩くのは、避けられるのなら避けた方が100倍も1000倍も賢明です。今朝は7:20に早くも気温は30℃になりましたが、Tさんが本来登校する時間帯は35℃を上回りました。5℃涼しかったら、体が受ける負担はかなり違うでしょう。

来週は曇りがちで猛暑日からは脱しそうですが、湿度は高そうです。Tさんの早出は、しばらく続くことでしょう。

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暑い

8月2日(水)

朝、教室に入ると、まだ始業10分前だというのに、昨日・おととい休んだKさんがいました。私が授業の準備をしていると、近寄ってきて「先生、授業の後、時間がありますか。進学について相談したいです。それから、昨日とおととい休んだことについても」と言ってくるではありませんか。欠席理由については話を聞かなければと思っていましたから、もちろんOKです。

授業中のKさんは特に変わったところもなく、いつものように発言したり机にもたれかかったりしていました。クラスの学生も、そんなKさんにツッコミを入れたりディクテーションの答えを教え合ったり、ごく普通に相手になっていました。

授業後、Kさんは教室に残って、まず、昨日とおとといの欠席理由を。本人は軽度の熱中症と言います。Kさんの生まれ育った町は冬の寒さが有名で、夏はたまに30度を超えることがある程度です。ところが、今年の東京の夏は連日35度以上で、Kさんにとっては生まれて初めての暑さです。気温は夜になっても下がらず、でも電気代節約のためにエアコンをつけずに寝て体調を崩したのが先週のことです。たまらずエアコンを最強にして寝たら、半日以上も眠り続けてしまったというのが、昨日とおとといです。そして、昨日から眠らずに、今朝早く学校へ来たということでした。今学期に入ってから精彩を欠くことが多かったのは、そういうわけでした。

Kさんは来年大学進学を考えています。M大学を第1志望にしています。6月のEJUの成績を見る限り、十分勝負ができます。第2志望のA大学、T大学も有望です。それが、進学についての相談でした。でも、夏になるたびにこれだと、勉強が続けられるでしょうか。3つの大学の、夏休みの期間もきちんと調べたほうがいいかもしれません。

入試のある秋以降は、Kさんの季節です。きっとすばらしい結果を出してくれることでしょう。

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こんなに暑いのに

7月28日(金)

暑い日が続いています。東京の最高気温は36.2度でしたが、全国で暑い方からの第10位が38.5度ですから、2度余りも及びません。こんなに暑いのにベスト(ワースト?)10にも入れないのですから、日本全土が熱波に包まれていると言っていいでしょう。

私がよく行く狭い範囲での感覚でしかありませんが、近ごろは、お昼の食べ物屋さんがいくらかすいているような気がします。昼食を取りながらお店で涼もうとしても、お店までの暑さに耐えられず、そこまでに至らないのかもしれません。近くのお店で我慢しようとか、あまりの暑さで食欲そのものが減退してしまったとも考えられます。新宿駅付近なら地下街に逃げ込むという手もありますが、ここからではその地下街にたどり着くまでにどうにかなってしまいそうです。

わりと最近まで、36.2度なんていうと、年に何度もない異常な暑さでした。気象庁が最高気温35度以上の日を猛暑日と呼ぶようになった2007年あたりから、36.2度がありふれた暑さになり始めたのではないでしょうか。東京の36.2度は、現時点で今年の7位タイです。この調子で行くと、夏の終わりには上位10位から落ちているでしょう。2007年以降、36.2度でその年の最高気温になれるのは、タイも含めてわずかに6回です。2014年までに5回、最後はタイの2019年です。

世界気象機関とEUの気象情報機関・コペルニクス気候変動サービスが、7月の世界の平均気温が観測史上最高になることが確実になったと発表しました。日本全土どころか、全世界が熱波に包まれているのです。

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納税意欲

7月19日(水)

先日、信号待ちの時に、暇つぶしに交差点の近くにあったたばこの自動販売機を眺めました。今は、たばこが1箱600円もするんですね。びっくりしてしまいました。私が学生の頃は、100円台だったような気がします。たばこを吸わない人間の記憶ですから、信頼性は著しく低いですが…。

そのうち税金はいくらぐらいでしょう。300円ということはないと思います。400円ぐらいは取られているんじゃないかな。1日1箱の人は、月に1万円、年間12万円ぐらいの税金を払っていることになります。なんと納税意識が強いことでしょう。私は、たばこだけでなく、お酒もやりませんし、車も持っていませんから、所得税と住民税と消費税以外はろくに税金を納めていません。

明日のコトバデーを控え、各クラスは練習に余念がありません。私のクラスの練習に立ち会い、先週とは比べ物にならないほどの進歩に目を見張りました。その一方で、最近学生の喫煙マナーが乱れていますから、学校近辺でむやみにたばこを吸って教職員に摘発された学生を相手に、注意を与えました。明日の会場は喫煙厳禁です。トイレなどで吸われでもしたら、KCPは出入り禁止になってしまいます。タバコを吸った学生個人の問題にとどまりません。

その際に、たばこの値段の話題を持ち出しました。学生たちも、600円は高いと感じているようでした。でも、やめられないみたいです。「私の代わりに日本の国に税金を払ってくれてありがとう」と言ったら、苦笑いをしていました。その学生は、概略10万円ちょっとを日本国政府に寄付してくれています。

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初熱帯夜

7月8日(土)

今朝の東京の最低気温は25.2度で、どうやら今シーズン初の熱帯夜だったようです。予報を見ると、来週は毎日熱帯夜の真夏日みたいです。しかも、最高気温は33度ぐらいまで上がるそうです。“曇り時々晴れ、降水確率40%”ぐらいの日が続きますから、梅雨明けはまだまだでしょう。

始業日前にやっていたアメリカのプログラムできている学生への授業で、“暑いです=hot”を入れて、「毎日、暑いですね」なんてやっていました。すると、Tさんが、“How do you say humid?”と聞いてきました。アメリカの学生たちにとっては、東京の夏はhotではなくhumidなのです。「蒸し暑い」と答え、直訳するとsteamy hotになると付け加えると、教室にいた全学生がうなずいていました。Tさんは、早速、「毎日、蒸し暑いですね」などと言っていました。

Tさんは“蒸し暑い”がよほど気に入ったのか、“蒸し”の部分を“無視”と同じアクセントで発音し、強調していました。アメリカの内陸部出身だそうですから、気温が高いのはともかく、湿度が高いところで暮らすのは初めてなのに違いありません。ですから、自分のhometownと東京との違いは“蒸し”だと主張したいのでしょう。

Tさんは、ゆうべの熱帯夜はどう過ごしたでしょう。湿度は一晩中70%前後でしたから、エアコンつけっぱなしだったかもしれません。でも、それは一歩間違えると風邪にまっしぐらです。蒸し暑い夜への対処法なんて、ガイドブックにもネットのサイトにも載っていないでしょうから、自分で編み出すしかないのかな。それも、留学の思い出として、笑い話にしてもらいたいです。

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