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不安

12月3日(木)

今週は学生たちにマイナンバーについてのお知らせをし続けています。留学ビザで日本に滞在する学生も、マイナンバーの対象者だからです。私のクラスの学生はみんな進学希望なので、専門学校に入ったとしても、あと2年は日本にいますから、マイナンバーのお世話になることがきっとあるでしょう。

各方面で報じられているように、マイナンバーの配布は遅れているようですが、私のところには先月半ばに配達が来ました。あいにく留守で直接受け取ることはできませんでした。郵便受けには不在通知が入っていて、それに従って受け取りに行きました。いつもの不在通知と同じように所轄の郵便局の窓口へ行ったら、マイナンバーに関しては隣の建物だと言われ、そちらへ移動。そこで簡単な書類を記入し、免許証で本人確認し、受け取りのハンコを押して、ようやくマイナンバー通知書が受け取れました。

学生は、留守中に不在通知が届いていたら、それをきちんと処理して、マイナンバー通知書を受け取ることができるでしょうか。漢字の密度が高く、しかも見慣れぬ単語に満ちている不在通知を読みこなすことは、至難の業に違いありません。案の定、超級クラスでも、よくわからないから捨てたとか、何週間もそのままほうってあるとかいう学生が続出しました。初級の学生の実情がどうであるかは想像に難くありません。いや、想像を絶するものがあるかもしれません。

外国人である学生に限らず、日本人を80年以上も続けている私の母も、マイナンバーをもらったはいいけれども、何をどうしていいやらわからず、非常に不安がっていました。マイナンバーに数々の利点があることは認めますが、私を含めてこの国に住む人々にそれが何物であるかが十分に伝わっていないように思えます。なんか、物事の進め方が雑なような気がしてなりません。

ハンコ

11月10日(火)

2時半頃、代講をお願いしたクラスの学生が提出した例文のチェックを始めようとしたところ、「金原先生、学生が来ています」と声をかけられました。カウンターにはLさんが立っていました。Lさんは今月全然学校に顔を出さず、今日の授業も欠席。本人の携帯に電話をかけても留守電にすらならず、連絡が取れない状態が続いていました。そのLさんが姿を現したのです。

私がカウンターまで出て行くと、「先生、書類をください」と、出席成績証明書の申請用紙を担任である私に出し、ハンコをもらおうとします。学校を休んでいたことについては何も言わず、悪びれる様子もなく、いきなりこれです。カチンと来ましたね。「今月ずっと休んでいましたが、今まで何をしていたんですか」「うちで勉強していました」「あなたが勉強すべき場所はこの学校じゃないんですか」「でも7月のJLPTも合格したし、専門学校も決まったし、学校で勉強することはありません」「じゃあ、国へ帰ったらどうですか。あなたのビザはKCPで勉強するためのビザですから」「それはダメです」「どうしてですか」「卒業する前に帰国したら両親に申し訳ないですから」「両親に対して申し訳ないことをしてきたということですね」「はい。これから頑張ります」「どう頑張るんですか」「毎日学校へ来て、一生懸命勉強して…」「そんな言葉がすぐ信じられると思っているんですか」「…」「学校を好きなだけ休んでおいて、書類が必要だからハンコ押せって言うんですか。ずいぶん自分勝手だとは思いませんか」

…まだまだ続きましたが、思い出すだけでもおぞましいやり取りなので省略します。Lさんは教師を書類作成マシンとでも思っているのでしょうか。連絡もよこさず休み続けている学生の書類に素直にハンコを押せるほど、私は練れた人間ではありません。Lさんの申請書類は預かりました。Lさんが真人間に戻ったら、ハンコを押して返そうと思っています。

寝坊

11月9日(月)

昨日のEJUの話を聞くと苦笑いをする学生が多く、あまり期待しないほうがよさそうです。苦笑いした学生は曲がりなりにも出てきていますから許せますが、休んでしまった学生も結構いました。こいつらは、ちょっと感心しませんね。去年あたりは、一生懸命頑張った自分へのご褒美なんて抜かした学生もいましたが、受験はこれからなんですから、ご褒美は早すぎます。

何かと理由をつけては気を緩めたくなる気持ちは理解できますが、ここで緩めてしまうと、引き締めるのが難しくなります。大きな試験が終わったんだからっていう気持ちが強くなると、1日だけのつもりが、もう1日、もう1日と気の緩みを重ねてしまいがちです。スポーツの世界では1日練習を休むと取り戻すのに2日かかるとよく言われますが、勉強でも全く同じです。

受けて気を緩めるならともかく、受ける前から気が緩んでいて昨日寝坊して受けなかったという剛の者もいます。ここまで来ると、言うべきことばもありません。それでも日本で進学したいと言われると、担当教師はEJUなしで受験できる大学を探します。いろいろと段取りを整えてやっても、そういう学生は、えてして、その教師の努力を無にするものです。今年はどうなのでしょう。

さらに、おととい受験日だったA大学の二次試験を、これまた寝坊で受けなかったという学生もいました。自分でつかんだチャンスをみすみすどぶに捨てるようなまねを、どうしてこうも気楽にしてしまうんでしょう。ほかの大学も受けるからどうにかなると思っているのでしょうが、チャンスを生かそうとしない人間に対しては、世の中そんなに甘くはありませんよ。

そんながっかりさせられるような学生どももいれば、出願準備に余念のない学生もいます。そういう学生にこそ、光が当たってほしいと、切に願っています。

1分差

11月6日(金)

Yさんが久しぶりに登校しました。第一志望の大学への出願が1分差で間に合わなかったためにショックで落ち込んでいたというのがもっぱらの噂でした。電子出願のため、1分差でも冷たくシャットアウトされたのです。先週はその大学への志望理由書を何度も書いては私に添削を求めていました。真っ赤に添削された原稿を入力しているうちに遅くなってしまったのかもしれません。

でも、私はあまり気の毒だとは思っていません。Yさんは初級の頃から自分勝手なところがあり、無理が通れば道理引っ込むを地で行くような学生でした。そのYさんが頭を下げて志望理由書の添削を依頼してきたのですから、今までの行いを少しは悔い改めたのかと思い、手を貸したのです。当然、余裕で間に合うタイミングで原稿を返しました。にもかかわらずアウトになったのですから、同情の余地はありません。

1分差でダメというのは国際標準ですから、Yさんが大人になっても変わりません。むしろ、100分の1秒とか1万分の1秒とかを争う激烈な競争に晒されることすら出てくるでしょう。だから、若いうちに志望校に出願できなかったぐらいの痛みを味わっておいたほうがいいのです。仕事には納期があり、先んずれば人を制すというのが今の世の常識です。

これを薬に、無理が通れば…をやめてくれればいいのですが、それは淡い願いだったようです。出てきたものの、教室に存在していただけで、やる気は感じられませんでした。負のオーラを発散しまくり、クラスの雰囲気を悪くしかねず、それを防ぐのに気を使いました。こちらから慰めの言葉をかけてもらえると思っていたのでしょうか。慰められるなんてYさんのプライドが許さないから、バリアを張っていたのかもしれません。

あさってはYさんもEJUを受けます。まさか、試験に遅刻はしないでしょうね。

コートがいっぱい

10月26日(月)

24日(土)の深夜、東京に木枯らし1号が吹きました。土曜日、帰宅するころは風がちょっと強いという程度でしたが、夜中にかけて次第に風が強まり、寝る頃には音を立てて吹いていました。日曜日の朝はきれいに晴れ上がりましたが、ベランダには隣の家から飛んできたと思われるサンダルが、片足ずつ2種類。私はサンダルを室内にしまっておきましたが、飛んできたのは私のと同じくらい安物の軽いやつでしたから、出しておいたら行方不明になったでしょう。

昨日の日中は陽もあったのでそんなに寒いと思いませんでしたが、家の目の前にあるショッピングモール内のユニクロで冬物のジャケットを買ってしまいました。今朝は、先週よりも厚手のスーツを着たのですが、少々寒さを感じました。気象庁によると、最低気温は11.7度、コートを着るほうが当然の気温でした。そのため、遅くお見えの先生はコートをかけるハンガーを見つけるのが大変そうでした。

でも、学生の中には半袖で平気な顔をしているのがいます。風邪を引きさえしなければ薄着は結構なことですが、半袖を着ていたJさんは受験生ですから、健康管理には十分気を使ってもらいたいものです。

10月は季節がグンと進む月です。新学期の準備をしていた頃は腕まくりをするくらいの陽気でしたが、今朝なんかはとひざ掛けがほしいと思いました。暖房は入れませんでしたが、私がアサイチでする仕事が増えるまでに、そんなに長い時間はかかりそうもありません。

食費はいくら

10月16日(金)

朝刊に日本の大学生の生活費に関する調査の記事が出ていたので、上級クラスでその記事を取り上げました。記事によると、親元を離れて暮らす大学生の場合、全支出の約4割を住居費に使い、食費は2割だそうです。食費を削ってでも、住環境を整えたいようです。

記事を読ませる前に学生に聞いてみたところ、食費は2~3万円ぐらいが相場で、家賃はもうちょっと高いという学生が多かったです。つまり、日本人の大学生と同じ傾向です。学生たちが家賃に振り向けるお金は、食費よりも低いんじゃないかと思っていましたから、学生たちの答えはちょっと意外でした。でも、確かに、学生たちの住所にはマンションっぽい名前が目立ち、ストリートビューで見てみても、こじゃれた建物が多いです。

30年以上も昔の、私の学生時代と比べること自体がナンセンスかもしれませんが、この間に食はさほど変わっていないのに対し、住は大きく変わりました。イタリア料理が流行ったり、韓国料理が広まったり、マクドナルドのメニューもいくらか変わったりってことはありますが、食の基本ラインは同じです。ところが、私が住んでいたバストイレなしの4畳半なんて、もうどんなに探しても見つからないでしょう。

学生たちに家賃にお金をかける理由を聞いてみると、これまた日本人大学生と同じように、いいところに住みたいからという答えです。学生たちの家庭が豊になったのですね。快適な部屋で勉強に集中してもらおうというのが、学生たちの親の考えなのだと思います。

ただ、安くておなかが膨れる食事というと、おにぎり、パン、カップラーメンなど、炭水化物を挙げて来ましたので、太りすぎに注意してもらわなければなりません。そして、ビタミン豊富な果物を、是非、積極的に取って、健康維持に努めてもらいたいです。

四半世紀の時を越えて

9月26日(土)

富久クロスにできたイトーヨーカ堂へ行って来ました。昨日オープンだったので、授業が終わってからでものぞきに行こうと思っていたのですが、あいにくの雨であきらめていたのです。薄曇りの暑からず寒からずのお天気に誘われてか、私と同じ考えの人たちで結構な人ごみでした。オープンセールで何か安い物がないかと探してみましたが、ヨーグルトやキャベツじゃ持って帰るのが一苦労ですから、手を伸ばせませんでした。私より一足先に行ったK先生やS先生は、店内で美味しいものを食べたそうです。

富久クロスの住居部分への入居はもう少し先のようですが、ずっと工事中だった周囲の道路は黒光りしたアスファルトで開通しました。また、内科や歯科などの医療機関も内覧会をしていました。そのうち人が住む街らしくなるのでしょう。

私なんかにとっては、「富久町」といえばバブル期の地上げの象徴です。不動産屋だか開発業者だかがあこぎなやり方で土地を買い占めたあげく、不動産価格の下落で塩漬けになったという印象です。古くからのコミュニティーが破壊され、砂漠のような駐車場になってしまいました。どういうフレームワークの下でか知りませんが、それがようやく立ち直って、富久クロスという形で結実するまでに、四半世紀もの時を必要としました。

その間に日本の経済繁栄は終わりを告げ、富久クロスの最上階は中国人実業家が買ったという噂もあります。3.11の不連続線を越え、社会の様相も人々の考え方も大きく変化しました。地上げ当時の計画よりも成熟した街ができるのだとしたら、それもまた一興です。

イトーヨーカ堂へは、靖国通りを越えねばなりませんから、そうそう行けるわけではありませんが、学校指定の中華料理屋・明京園さんのそばですから、そこで食事したついでにたまには寄ってみましょう。

退学2名

9月24日(木)

PさんとWさんが退学しました。2人とも日本での大学進学を夢見ていましたが、志半ばで帰国することになりました。学力的に無理だからではなく、生活習慣がどうにもならなかったのです。Pさんはそれに加えて、体も壊してしまいました。

進学先の授業は午前が中心だからということで、上級を始め、進学希望の学生はなるべく午前クラスにしています。午前クラスは9時からですが、9時までに登校することがどうしてもできない学生が毎年何人もいます。PさんもWさんも、先生に説教された直後の数日は何とか9時に来るのですが、いつの間にか元に戻ってしまいます。朝型人間の私には理解しがたいことなのですが、10時ぐらいまで軽く寝られてしまうというか、頑張っても10時ぐらいまで目が覚めないそうです。目覚まし時計も全く無力です。

現代社会は時間を守ることで成り立っています。だから、PさんやWさんのような人は、進学に限らず、どこでもまともに相手にされないでしょう。親か誰か、時間をがっちり管理してくれる人がそばにいないと、社会生活が送れそうもありません。2人も帰国して親元で生活するようになれば、“普通の”生活ができるかもしれません。でも、早晩、親から離れて自立することが求められます。今回の留学は、それに失敗した形で終わります。国へ帰ったら、この点を訓練して、一刻も早く自分の脚で歩けるようになってもらいたいものです。

それができなければ、2人の頭脳が生きません。遅刻・欠席が多いにもかかわらずテストで結構な点が取れるということは、優秀な頭脳の持ち主だということであり、それが生かされずに文字通りベッドで眠ったままになっているのは、もったいないこと極まりありません。

学力不足なら私たちが渾身の力で指導すればどうにかなることもあります。しかし、生活習慣となると、一緒に寝起きするわけにもいきませんから、指導にも限度があります。その点をいつもむなしく感じます。同時に、そういう形で退学していった学生たちが、その後どのように生活を立て直して社会生活を送っているのかも、とても気になります。何か私たちの指導のヒントになることがあれば、是非参考にしたいです。

見られた?

9月15日(火)

昨日は新聞休刊日で、朝、時間に余裕があったので、国勢調査のインターネット入力をしました。今回の調査は「〇5年」に行われる簡易調査なので、入力もすぐに済みました。朝刊を読む時間に比べてずっと短時間で終わってしまいましたから、時間をもてあまして読書までしてしまったくらいです。

楽勝、楽勝とかって思っていたら、そのインターネットで入力する国勢調査のIDとパスワードが盗み見られているかもしれないって言うじゃありませんか。まあ、私の回答など覗いてみたところで何の御利益もありませんし、知られて困るようなデータもありません。とはいえ、気分は穏やかじゃありません。

調査用紙を配布に行ったものの、留守で直接渡せなかった場合、郵便受けに入れることもあるのですが、この入れ方が悪いと、ID・パスワードが盗まれてしまうそうです。私も、不在で郵便受けに入っていた調査用紙を受け取って、それに従って入力しました。調査用紙が郵便受けに完全に入っていないと、それが抜き取られて、そういうことが起きるかもしれないとのことですが、私の調査用紙がどうだったか、よく覚えていません。

配布担当者への教育が不徹底だったからこのようなことが起きたそうです。日本は仕事をする人への教育レベルの高さでもってきた国です。それが、対象者が70万人もいるとはいえ、国がする仕事でこのざまです。頭の中で、貧すれば鈍すということばが、フルカラーLEDで光りました。

今日はお預け

9月5日(土)

NHKのブラタモリが好調だそうです。視聴率10%台をキープし続け、伸び悩んでいる大河ドラマを上回ることも多いようです。私も毎回楽しみにしています。

今シーズンのブラタモリは、笑っていいとも!がなくなったタモリが地方遠征している点が、今までと大きく違うところです。京都、長崎、金沢、仙台など、歴史のある有名な土地を回っていますが、観光ガイドブックには載っていないところにその街を形作る特徴を見出しています。そういう志向が私の趣味とぴったり合うので、非常に引き付けられるのです。

番組を見ていると、スタッフが毎回取り上げるそれぞれの街をかなり深く研究していることがわかります。それは大変な仕事でしょうが、やっていて楽しいだろうなとも思います。私も夏休みなどの長い休みになると関西やら九州やらへと出かけますが、出かけるたびに勉強不足を痛感させられています。下調べをきちんとして、見るべき点をしっかり頭に叩き込んでから出かけたいと思うのですが、それをしている時間がなかなかありません。

でも、たまにそういう時間があると、それは至福の時間です。本当に時の流れを忘れてしまいます。関連事項に次から次へと手を広げていくと、時空を飛び越えて遊びに行けます。しかし、私は凡人ですから、実際に足を運んで目で見ないと納得できません。そういう下調べが進んだところだけ見に行けばいいものを、貧乏性ですから一度にあれもこれもと手を出すものですから、不完全燃焼に陥ってしまうのです。

これから帰ってブラタモリと思ったのですが、今週は残念ながらお休み。来週の土曜日までお預けです。