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1分差

11月6日(金)

Yさんが久しぶりに登校しました。第一志望の大学への出願が1分差で間に合わなかったためにショックで落ち込んでいたというのがもっぱらの噂でした。電子出願のため、1分差でも冷たくシャットアウトされたのです。先週はその大学への志望理由書を何度も書いては私に添削を求めていました。真っ赤に添削された原稿を入力しているうちに遅くなってしまったのかもしれません。

でも、私はあまり気の毒だとは思っていません。Yさんは初級の頃から自分勝手なところがあり、無理が通れば道理引っ込むを地で行くような学生でした。そのYさんが頭を下げて志望理由書の添削を依頼してきたのですから、今までの行いを少しは悔い改めたのかと思い、手を貸したのです。当然、余裕で間に合うタイミングで原稿を返しました。にもかかわらずアウトになったのですから、同情の余地はありません。

1分差でダメというのは国際標準ですから、Yさんが大人になっても変わりません。むしろ、100分の1秒とか1万分の1秒とかを争う激烈な競争に晒されることすら出てくるでしょう。だから、若いうちに志望校に出願できなかったぐらいの痛みを味わっておいたほうがいいのです。仕事には納期があり、先んずれば人を制すというのが今の世の常識です。

これを薬に、無理が通れば…をやめてくれればいいのですが、それは淡い願いだったようです。出てきたものの、教室に存在していただけで、やる気は感じられませんでした。負のオーラを発散しまくり、クラスの雰囲気を悪くしかねず、それを防ぐのに気を使いました。こちらから慰めの言葉をかけてもらえると思っていたのでしょうか。慰められるなんてYさんのプライドが許さないから、バリアを張っていたのかもしれません。

あさってはYさんもEJUを受けます。まさか、試験に遅刻はしないでしょうね。

コートがいっぱい

10月26日(月)

24日(土)の深夜、東京に木枯らし1号が吹きました。土曜日、帰宅するころは風がちょっと強いという程度でしたが、夜中にかけて次第に風が強まり、寝る頃には音を立てて吹いていました。日曜日の朝はきれいに晴れ上がりましたが、ベランダには隣の家から飛んできたと思われるサンダルが、片足ずつ2種類。私はサンダルを室内にしまっておきましたが、飛んできたのは私のと同じくらい安物の軽いやつでしたから、出しておいたら行方不明になったでしょう。

昨日の日中は陽もあったのでそんなに寒いと思いませんでしたが、家の目の前にあるショッピングモール内のユニクロで冬物のジャケットを買ってしまいました。今朝は、先週よりも厚手のスーツを着たのですが、少々寒さを感じました。気象庁によると、最低気温は11.7度、コートを着るほうが当然の気温でした。そのため、遅くお見えの先生はコートをかけるハンガーを見つけるのが大変そうでした。

でも、学生の中には半袖で平気な顔をしているのがいます。風邪を引きさえしなければ薄着は結構なことですが、半袖を着ていたJさんは受験生ですから、健康管理には十分気を使ってもらいたいものです。

10月は季節がグンと進む月です。新学期の準備をしていた頃は腕まくりをするくらいの陽気でしたが、今朝なんかはとひざ掛けがほしいと思いました。暖房は入れませんでしたが、私がアサイチでする仕事が増えるまでに、そんなに長い時間はかかりそうもありません。

食費はいくら

10月16日(金)

朝刊に日本の大学生の生活費に関する調査の記事が出ていたので、上級クラスでその記事を取り上げました。記事によると、親元を離れて暮らす大学生の場合、全支出の約4割を住居費に使い、食費は2割だそうです。食費を削ってでも、住環境を整えたいようです。

記事を読ませる前に学生に聞いてみたところ、食費は2~3万円ぐらいが相場で、家賃はもうちょっと高いという学生が多かったです。つまり、日本人の大学生と同じ傾向です。学生たちが家賃に振り向けるお金は、食費よりも低いんじゃないかと思っていましたから、学生たちの答えはちょっと意外でした。でも、確かに、学生たちの住所にはマンションっぽい名前が目立ち、ストリートビューで見てみても、こじゃれた建物が多いです。

30年以上も昔の、私の学生時代と比べること自体がナンセンスかもしれませんが、この間に食はさほど変わっていないのに対し、住は大きく変わりました。イタリア料理が流行ったり、韓国料理が広まったり、マクドナルドのメニューもいくらか変わったりってことはありますが、食の基本ラインは同じです。ところが、私が住んでいたバストイレなしの4畳半なんて、もうどんなに探しても見つからないでしょう。

学生たちに家賃にお金をかける理由を聞いてみると、これまた日本人大学生と同じように、いいところに住みたいからという答えです。学生たちの家庭が豊になったのですね。快適な部屋で勉強に集中してもらおうというのが、学生たちの親の考えなのだと思います。

ただ、安くておなかが膨れる食事というと、おにぎり、パン、カップラーメンなど、炭水化物を挙げて来ましたので、太りすぎに注意してもらわなければなりません。そして、ビタミン豊富な果物を、是非、積極的に取って、健康維持に努めてもらいたいです。

四半世紀の時を越えて

9月26日(土)

富久クロスにできたイトーヨーカ堂へ行って来ました。昨日オープンだったので、授業が終わってからでものぞきに行こうと思っていたのですが、あいにくの雨であきらめていたのです。薄曇りの暑からず寒からずのお天気に誘われてか、私と同じ考えの人たちで結構な人ごみでした。オープンセールで何か安い物がないかと探してみましたが、ヨーグルトやキャベツじゃ持って帰るのが一苦労ですから、手を伸ばせませんでした。私より一足先に行ったK先生やS先生は、店内で美味しいものを食べたそうです。

富久クロスの住居部分への入居はもう少し先のようですが、ずっと工事中だった周囲の道路は黒光りしたアスファルトで開通しました。また、内科や歯科などの医療機関も内覧会をしていました。そのうち人が住む街らしくなるのでしょう。

私なんかにとっては、「富久町」といえばバブル期の地上げの象徴です。不動産屋だか開発業者だかがあこぎなやり方で土地を買い占めたあげく、不動産価格の下落で塩漬けになったという印象です。古くからのコミュニティーが破壊され、砂漠のような駐車場になってしまいました。どういうフレームワークの下でか知りませんが、それがようやく立ち直って、富久クロスという形で結実するまでに、四半世紀もの時を必要としました。

その間に日本の経済繁栄は終わりを告げ、富久クロスの最上階は中国人実業家が買ったという噂もあります。3.11の不連続線を越え、社会の様相も人々の考え方も大きく変化しました。地上げ当時の計画よりも成熟した街ができるのだとしたら、それもまた一興です。

イトーヨーカ堂へは、靖国通りを越えねばなりませんから、そうそう行けるわけではありませんが、学校指定の中華料理屋・明京園さんのそばですから、そこで食事したついでにたまには寄ってみましょう。

退学2名

9月24日(木)

PさんとWさんが退学しました。2人とも日本での大学進学を夢見ていましたが、志半ばで帰国することになりました。学力的に無理だからではなく、生活習慣がどうにもならなかったのです。Pさんはそれに加えて、体も壊してしまいました。

進学先の授業は午前が中心だからということで、上級を始め、進学希望の学生はなるべく午前クラスにしています。午前クラスは9時からですが、9時までに登校することがどうしてもできない学生が毎年何人もいます。PさんもWさんも、先生に説教された直後の数日は何とか9時に来るのですが、いつの間にか元に戻ってしまいます。朝型人間の私には理解しがたいことなのですが、10時ぐらいまで軽く寝られてしまうというか、頑張っても10時ぐらいまで目が覚めないそうです。目覚まし時計も全く無力です。

現代社会は時間を守ることで成り立っています。だから、PさんやWさんのような人は、進学に限らず、どこでもまともに相手にされないでしょう。親か誰か、時間をがっちり管理してくれる人がそばにいないと、社会生活が送れそうもありません。2人も帰国して親元で生活するようになれば、“普通の”生活ができるかもしれません。でも、早晩、親から離れて自立することが求められます。今回の留学は、それに失敗した形で終わります。国へ帰ったら、この点を訓練して、一刻も早く自分の脚で歩けるようになってもらいたいものです。

それができなければ、2人の頭脳が生きません。遅刻・欠席が多いにもかかわらずテストで結構な点が取れるということは、優秀な頭脳の持ち主だということであり、それが生かされずに文字通りベッドで眠ったままになっているのは、もったいないこと極まりありません。

学力不足なら私たちが渾身の力で指導すればどうにかなることもあります。しかし、生活習慣となると、一緒に寝起きするわけにもいきませんから、指導にも限度があります。その点をいつもむなしく感じます。同時に、そういう形で退学していった学生たちが、その後どのように生活を立て直して社会生活を送っているのかも、とても気になります。何か私たちの指導のヒントになることがあれば、是非参考にしたいです。

見られた?

9月15日(火)

昨日は新聞休刊日で、朝、時間に余裕があったので、国勢調査のインターネット入力をしました。今回の調査は「〇5年」に行われる簡易調査なので、入力もすぐに済みました。朝刊を読む時間に比べてずっと短時間で終わってしまいましたから、時間をもてあまして読書までしてしまったくらいです。

楽勝、楽勝とかって思っていたら、そのインターネットで入力する国勢調査のIDとパスワードが盗み見られているかもしれないって言うじゃありませんか。まあ、私の回答など覗いてみたところで何の御利益もありませんし、知られて困るようなデータもありません。とはいえ、気分は穏やかじゃありません。

調査用紙を配布に行ったものの、留守で直接渡せなかった場合、郵便受けに入れることもあるのですが、この入れ方が悪いと、ID・パスワードが盗まれてしまうそうです。私も、不在で郵便受けに入っていた調査用紙を受け取って、それに従って入力しました。調査用紙が郵便受けに完全に入っていないと、それが抜き取られて、そういうことが起きるかもしれないとのことですが、私の調査用紙がどうだったか、よく覚えていません。

配布担当者への教育が不徹底だったからこのようなことが起きたそうです。日本は仕事をする人への教育レベルの高さでもってきた国です。それが、対象者が70万人もいるとはいえ、国がする仕事でこのざまです。頭の中で、貧すれば鈍すということばが、フルカラーLEDで光りました。

今日はお預け

9月5日(土)

NHKのブラタモリが好調だそうです。視聴率10%台をキープし続け、伸び悩んでいる大河ドラマを上回ることも多いようです。私も毎回楽しみにしています。

今シーズンのブラタモリは、笑っていいとも!がなくなったタモリが地方遠征している点が、今までと大きく違うところです。京都、長崎、金沢、仙台など、歴史のある有名な土地を回っていますが、観光ガイドブックには載っていないところにその街を形作る特徴を見出しています。そういう志向が私の趣味とぴったり合うので、非常に引き付けられるのです。

番組を見ていると、スタッフが毎回取り上げるそれぞれの街をかなり深く研究していることがわかります。それは大変な仕事でしょうが、やっていて楽しいだろうなとも思います。私も夏休みなどの長い休みになると関西やら九州やらへと出かけますが、出かけるたびに勉強不足を痛感させられています。下調べをきちんとして、見るべき点をしっかり頭に叩き込んでから出かけたいと思うのですが、それをしている時間がなかなかありません。

でも、たまにそういう時間があると、それは至福の時間です。本当に時の流れを忘れてしまいます。関連事項に次から次へと手を広げていくと、時空を飛び越えて遊びに行けます。しかし、私は凡人ですから、実際に足を運んで目で見ないと納得できません。そういう下調べが進んだところだけ見に行けばいいものを、貧乏性ですから一度にあれもこれもと手を出すものですから、不完全燃焼に陥ってしまうのです。

これから帰ってブラタモリと思ったのですが、今週は残念ながらお休み。来週の土曜日までお預けです。

任命責任

8月21日(金)

奨学金をもらっていたQさんがちょっとした問題を起こし、奨学金を打ち止めにすることになりました。奨学生ともあろう者が校則を破ってしまったのですから、黙過するわけにはいきません。Qさんは、奨学生として選ぶときの面接で、卒業式まで模範生であり続けると約束したにもかかわらず、模範生なら間違ってもしてはいけないことをしたのです。多少厳しい処分かもしれませんが、甘んじて受けてもらわねばなりません。

Qさんもそういう処分を覚悟していたのか、処分を伝えたときも平静を保っていました。確かにQさんは奨学金が取り消されるような大きな間違いを犯しました。しかし、Qさんの真価が発揮されるのはこれからです。これでいじけてしまったら所詮はそれまでの人間だったのです。この不名誉をすすぐべく再び立ち上がってこそ、器の大きさが示されるのです。

Qさんにしてみれば、校則を破ったことは一時の気まぐれか悪魔のささやきに応じてしまったか何かでしょう。それが重大な結果をもたらしたことを忘れないでほしいです。軽はずみな行為によって非常に大きな不利益を被ったこと、自分自身だけでなく周りにも痛みを与えたこと、そういったことを肝に銘じて、再起を図ってもらいたいです。

私たちも、処分を伝えてそれで終わりだとは思っていません。これからも今まで以上にQさんを見ていくことが、一度は奨学生としてQさんを選んだ私たちが負うべき責任です。

再挑戦しなさい

8月8日(土)

非常に残念なことですが、どうしても出席率がよくならない学生がいます。注意された直後は出席率が上向くのですが、いつの間にかもとの木阿弥に戻ってしまうのです。かつてはひたすらアルバイトに励んでいて学業がおろそかになってしまった学生が目立ったのですが、最近はそういう学生は少ないです。ゲームにおぼれる学生も、最近は減少傾向にあると思います。

私の周辺で出席率が問題になっている学生は、生活習慣が確立できていません。勉強する気はあるのですが、それにふさわしい生活リズムに乗ることができず、学校を欠席しがちになり、呼び出しを食らって油を絞られ、その直後は改善が見られるのですが、気がついたら元に戻っていた、ということの繰り返しです。

年齢的には大人かもしれませんが、精神的には子供のままなのです。親か誰かがそばにいて、常に矯正してもらわないと、同じ時刻に起きるということすらできないのです。親元を離れて独立したつもりかもしれませんが、独立なんか全然していません。そういう学生には、私たちは帰国を促しています。帰国して、親元でもう一度独立の準備と訓練をしてから再挑戦したほうが、その学生自身のためになります。

最近は入管のビザの基準が甘くなっていますから、こういう学生たちにもビザが出るかもしれません。そして、彼らの能力を考えると、受験したら合格できる大学も少なくないでしょう。しかし、今のままでは人生に資する勉強など、到底できません。青春の無駄遣いに終わってしまいます。だから、急がば回れで、出直してくるべきだと思うのです。そろそろ、帰国請負人の出番でしょうか…。

リーダーになった

8月4日(火)

Aさんは、今、私のクラスのエースです。スピーチコンテストの応援の企画から演技指導、音楽・効果音の準備まで、大車輪の活躍です。クラスのみんながAさんを頼りにしていますし、Aさんもその期待にこたえています。まだ本番が終わったわけではありませんが、私の心の中ではAさんは大いに株を上げました。

今までのAさんは、頭はいいのですがその自分の頭を使いこなせていないきらいがありました。学校も時々休むし、やる気に満ちあふれて授業に臨むのとも違いました。はたで見ていてもどかしさを感じさせられる学生でした。しかし、今学期のスピーチコンテストの応援に取り掛かるや、俄然やる気を見せ、上述のように何でも自分で引き受けました。先週末、わざわざ応援練習に時間を取った日にぽっこり休んだときには、また悪い癖が出て途中で放り出そうとしているのかと心配しましたが、それは杞憂でした。

Aさんは休みがちな学生が出てきたときにしっかり声をかけて、仲間に引き入れました。自分がまず動いたり提案したりして、周りを動かそうとしています。クラスのみんながAさんの指示を尊重し、その通りに動きます。

Aさんは今回の応援を通して、周りの人を動かして何かを成し遂げることを覚えたのではないでしょうか。これはとても貴重な経験で、得がたい財産となるでしょう。Aさんが自覚するかどうかはわかりませんが、この仕事を完成させた暁には、一回り大きな人物に成長しているに違いありません。

人間的に成長するチャンスって、求めて得られるものではありません。めぐってきたチャンスを自分のものにする度胸と集中力が欠かせません。すべての学生にそういうチャンスを与え、学業以外の面でも大人になってもらいたいのですが、なかなかそううまくはいきません。Aさんの成功体験は、私にとってもめったに得られぬ成功体験なのです。