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年末調整を済ませる

11月14日(火)

年末調整の書類が来ています。私の場合、生命保険の掛け金でいくらか戻ってきますから、毎年該当欄を埋めて提出しています。

この書類に、去年から個人番号を書くようになりました。個人番号をもらってからもう3年ぐらいになるでしょうか。でも、私が使うのは年に1回、この年末調整のときだけです。何回も使うんだったら暗記しちゃうんですが、年に1回ですから、そこまでの意欲も湧きませんし、年寄りの頭脳の貴重なメモリーをめったに使わないものには使いたくはありませんから、去年も今年も、個人番号の通知書を探す羽目に陥りました。

今年は幸いおとといの日曜日に時間がありましたから、家の机の引き出しをひっくり返して件の通知書を発見しました。そして、来年は探す時間が省けるように、他人にはわかりにくいけど私にはすぐわかる場所にしまいました。でも、去年も同じように考えて、通知書をわかりやすいと考えた場所にしまった記憶があるのですが、今年も発見までに20分ほどかかってしまいました。その20分で不要な書類の整理もできましたから、全く無駄な時間だったとは言えませんが、でもこの手のものはすっと見つけたいものです。

探し物で一番困るのは、確かにここに入れた(置いた)はずなのに、そこから見つからないという場合です。机の上や引き出しの中のファイルなら目をぐっと見開いて探せば見つけられるでしょうが、コンピューターの中のファイルやドキュメントとなると、検索で引っかかってこなかったら、モニターに映し出される細かい字を追いかけながら可能性のありそうなものを片っ端から開いて中身を確認するほかありません。老眼には辛いものがあります。発見した頃には業務継続の意欲は失われています。

個人番号はいずれ大いに活用されるようになるそうですから、その暁にはしっかりおぼえることにしましょう。コンピューター内のファイルは……どうしましょうね。

手が震えていませんか

11月10日(金)

来週の中間テストに備えて文法の復習問題をしていると、下を向いて盛んに右手の指をリズミカルに動かしているLさんが目に入りました。私がじっと見つめているのも気付かず、スマホの画面に熱中しています。無言でじっと待つこと1分ほど、隣の学生につつかれてようやく顔を上げ、決まり悪そうにスマホをノートの下に隠しました。そんなところに隠したって、もうバレバレじゃないですか。なんと無意味なことをと思いながら、「Lさん、スマホはかばんの中にしまってください」と注意して、次の問題を指名して答えさせました。もちろん、答えられるわけがありません。

Lさんは机の上にスマホを出してゲームにいそしんでいましたが、机の物入れの際にスマホを載せて何かしている学生は、どのクラスにも何名かはいます。本人たちは先生に気付かれていないと信じているのでしょうが、教壇に立っていると、意識がスマホに向いている学生は一見してわかります。そういう学生を指名すると、中には「今一番面白いところなのに」とばかりに、不満そうにこちらを見やる学生もいます。友達に教えてもらってでも答えると、またもとの姿勢に戻ろうとします。そこでもう一度指名すると、さらに不満そうに「どうして私ばかり指すんですか」と口を尖らせる学生もいます。

そんなこんなでばりばり注意しても、こちらのわずかな隙を突いてスマホをいじろうとする学生が必ずいます。今週の選択授業・小論文でも、Eさんは私がよそ見をしている間にスマホから“いい例文”を見つけてきたようです。前後はEさんの話し方そのものの文章の中に、妙にこなれた文章が挟まっているのです。

LさんもEさんもスマホ依存症なんだと思います。アルコール依存症患者が周りに隠れてお酒を飲もうとするのと何ら変わりがありません。たかだか90分でもスマホなしでは過ごせないに違いありません。私の常識ではそれではまともな人生が送れないとなってしまいますが、今の世の中ないしはこれからの世の中では、スマホを握りしめ続けるほうが常識なのでしょうか。

風邪にも負けず

11月7日(火)

Zさんは最近出席率が安値安定の状態です。先々学期、先学期の担任の先生に指導されてきたにもかかわらず、先月も相変わらずの出席率でした。指導されるたびに「これからは休まずに出席します」などと言ってきました。9月は、ついに「来月3回休んだら国へ帰ります」と宣言しました。しかし、10月の欠席は3回でとどまりませんでした。どうせ帰らせられることはないだろうとなめてかかっていることは明らかですから、今回は思いっきり強く出ることにしました。

退学届けの用紙を突きつけられたZさんは、さすがに顔色を変えました。確かに欠席したけれども、それは病欠だからやむをえないというのがZさんの論法です。しかし、そもそも病気にならないことにどれだけ気を使ってきたか不明ですから、この話は受け入れられません。11月だって、既に1日休んでいます。マスクをして、のどが痛いと言っていますが、そんなに体調を崩しやすいのなら、外国での生活が長続きするわけがありません。日本の風土が合わないのでしょうから、即刻帰国して、自分の体にあった故国でゆっくり養生すべきです。

まあ、要するに、大した理由もなく怠けているのです。大学院入試のための準備がどうたらこうたらと言い訳に努めていました。でもそれは言い訳に過ぎず、また、たとえそれが真実であったとしても、Zさんの出席率では進学してからビザがもらえるか覚束ないということもまた事実です。Zさんは、もはや、風邪を引くことすら許されません。

退学届けは、Zさんに持たせました。今月も出席率が改善しなかったら、それを書いて持って来いと言ってやりました。さて、どうなることでしょうか。

夢を砕く

11月2日(木)

身近な科学の1つの楽しみは、地震の講義をすることです。学生たちは、日本は地震が多いと言います。でも、その地震がどんなにとんでもない自然災害なのかは、あまりよくわかっていません。そこを集中的につっついて、自身の本当の怖さと、日本にすむ限りその地震からは逃れられないということを力説し、学生たちの日本留学の夢を木っ端微塵に打ち砕くのです。

今学期もその日がやってきました。日本付近は、4つのプレートが交錯し、そのため全世界の10%もの地震が発生します。日本列島は活断層だらけで、断層のずれによる地震はどこでも発生し得ます。東日本大震災の例からもわかるとおり、プレート境界型地震では大津波が発生することがあり、それに襲われたら人間はなす術もありません。また、日本は古来大地震が頻発し、そのたびに甚大なる被害が出ています。そういったことを延々と説き続けました。ことに、地震発生地点を赤い点でプロットした世界地図では、日本は真っ赤になるのに対して、学生たちの母国は真っ白けで、「何でこんな危ない国に留学に来ちゃったの?」と問いかけると、学生たちは笑うほかありません。

でも、これは本当にそうで、日本で暮らすとは地震と共存するということを意味します。揺れたか揺れないかわからないくらいの地震でびくびくしたり大騒ぎしたりしてはいけません。身近な科学では地震のメカニズムなどで精一杯でしたが、地震を想定してふだんからどんな心構えを持つべきか、地震が起きた後いかに行動すべきか、そういうことを日々考えておく必要があります。そうすれば、地震などおそるるに足りないとは言いませんが、地震後を生き抜き、何があっても肝の据わった人間に成長できるんじゃないでしょうか。

授業後のミニテストを見る限り、学生たちは私の話をまじめに聞き、地震についての基礎知識は根付いたようです。

仮装

10月31日(火)

昨日は台風一過で木枯らし1号が吹き、ゆうべの帰宅時もけっこう寒いと感じましたが、今朝はマンションの外に出たら、思わずぶるっと来ました。10月中はコートを着まいと思っていましたが、少し後悔しました。最低気温は10度を割っており、今年も短い秋が終わったようです。明日も今朝と同じくらいの最低気温が予想されていますから、伊達の薄着はやめてコートを着たほうがいいのかもしれません。

受験講座を終えてラウンジに顔を出すと、ハロウィーンの仮装をした学生が何名かいました。その中の1人、Sさんに国でも仮装をしているのかと聞いたところ、日本へ来て初めて仮想したと言っていました。ハロウィーンの仮装をネタに、クラスもレベルも国籍も違う学生たちが談笑していました。日本でハロウィーンが広まったのはここ数年のことだと思いますが、欧米系ではない学生にとっては、日本はハロウィーン先進国の映るのでしょうか。

Sさんと同じテーブルにいたOさんは、図書室で借りた読書週間の課題図書を持っていました。もう3分の1ほど読んでいて、やさしい日本語で書かれているから読みやすいと言っていました。内容も十分に味わっているようで、昨日から募集を始めた読書感想文コンクールに応募すると言っていました。Oさんなら、ユニークな視点からの感想文を書いてくれるでしょう。私が推薦した本でもあるので、今から楽しみです。

11月に入ったら、すぐにEJUです。ハロウィーンで騒いでいた学生たちも、プレッシャーをはねのけながらEJUに向けて勉強していくことになります。冬の入口で風邪などにかないように最終調整に入ってもらいたいです。

1年経つと

10月28日(土)

ゆうべは今年の3月の卒業生といっしょに食事をしました。正確に言うと、私以外の卒業生と先生方はお酒も飲み、私は食事だけいただきました。

MSの卒業生ですから、集まった卒業生たちは全員それなり以上に名の通った大学・大学院に進学しています。ですから、みんな胸を張って自分のこの半年あまりの学生生活を語っていました。教室ではいつもドヨーンとした顔をしていたLさんは、とてもすっきりした明るい顔をしていました。レポートと発表に追い立てられて忙しいといいつつも、Yさんの目は輝いていました。理系大学に進学したWさんは、女子学生がいないと言いつつも、どこか誇らしげに見えました。

Kさんは、留学生向けの日本語の授業が簡単すぎて取らなかったそうです。KCPの最上級クラスで鍛えられていたんですから、そりゃ当然ですよ。そのKさんですら、入学当初は講義の日本語がよく聞き取れなかったとか。Kさんのしゃべりは日本人となんら変わるところがありませんから、在校生にそういう話をして刺激を与えてもらいたいところです。

KCPにいたときは出席状況に大いに問題のあったBさんも、進学先ではほとんど欠席していないとか。欠席したらその次から自分の席がなくなっていたという事件を経験し、それに懲りて休まずに通っているそうです。KCPもそれぐらい厳しくしなきゃいけないのかな。

幹事役のMさんは相変わらず生真面目な性格です。私のグラスが空くと、「先生、お飲み物は?」と気を回してくれました。将来は研究者を目指していますが、偉ぶらない態度は人望を集め、きっとすばらしい研究業績につながることでしょう。

今朝、私のパソコンにはCさんからの志望理由書が届いていました。Cさんも、1年後はゆうべの面々と同じくらいに成長しているのでしょうね。

楽天家

10月13日(金)

夕方、明日から始まる受験講座の準備をしていると、先学期私のクラスだったHさんから電話がかかってきました。Hさんは水曜日に新学期が始まってからずっと休んでいたので、ゆうべ、メールを送りました。それに反応して連絡してきたのかと思ったら、どうやら違うようでした。

「今、何してるんですか!」「東京で〇△@★×をしています」「学校は水曜日から始まっているんですよ」「始まる日を間違えました」「先学期の終わりに10月は11日から学校が始まりますよって、私、クラスで言いましたよねえ。私以外の先生もおっしゃっているはずです。聞いていなかったんですか」「いいえ、聞いていました」「ふざけるのもいい加減にしろ!」と、電話をたたき切りました。

すると、またすぐ、かかってきました。「先生、どうもすみません」「何がどうすみませんなんですか」「学校を休んですみませんでした」「あなた、そんなに気安く休んでいい出席率だと思ってるんですか」「いいえ…。これからは気をつけます」「気をつけるだけですか。気をつけたけどダメだったって言うつもりなんでしょ」「いいえ、もう絶対に休みません」「私は信じられませんね。同じことばを私や他の先生に何回言いましたか」

Hさんのように、事の重大さを感知せず、学校というか海外留学というか世間をなめてかかる学生が後を絶ちません。こういう学生に共通しているのは、自分だけは大丈夫という根拠のない信念を抱いていることです。自分に都合の悪い情報は聞き流し、都合のいい情報だけを信じるのです。

確かに、それでどうにかなる場合もありますが、どうにもならない場合は、傷口が大きくなってしまいます。Hさんも去年の入試で痛い目にあっています。あれほど面接が重要だと口を酸っぱくして注意したのに、同じ大学に受かったSさんの10分の1も練習せずに、あっさり墜落しました。少しは教師の言葉に耳を傾けるようになるかと思いきや、出席率で注意しても馬耳東風、耳の痛い話をされそうになると巧妙に逃げを打ちます。今回だって、始まる日を間違えたなんて、おそらく嘘でしょう。その場しのぎであることが見え見えです。

早くも、学生との激戦が始まってしまいました。

掲示板

10月4日(水)

お昼を食べに外に出たら、学校のすぐそばの公園に衆議院議員選挙のポスターを貼る掲示板が立てられていました。公示が10日ですから、そういう準備が始まっていても当然です。

それにしても、今回の選挙は、いろんな意見を総合して私なりに公平に判断しても、安倍さんのわがままのような気がしてなりません。「大義がない」とよく言われていますが、そういう面が多分にあると思います。だから、安倍さんのチームに1票を入れたくはありません。

野党のほうも「希望の党」が、急に湧いて出たように現れて、いつの間にか結構な支持を集めています。それにあおられて民進党が実質的に解党してしまいましたが、前原さんは何のために党の代表になったんでしょうね。前原さんは以前民主党の代表になったときも、偽メール事件で党の足を引っ張ったあげく、辞任していますよね。何だかひ弱な感じがして、いまひとつ信頼できません。まあ、民進党というか旧民主党は選挙のための互助組合みたいな性格がありましたから、解党して各人が自分自身の政治思想をしっかり固め、それに一番合う政党を選ぶか、それを実現していく力になる政党を作るかしたほうが、政治家として正直な生き方ではないでしょうか。

小池さんも、動けば動くほど都知事に当選したころの清新なイメージが薄汚れていく感じがします。だんだん都民ファーストじゃなくなっていく気もします。むしろ、石原さんのほうが、豊洲を始めいろいろと問題もありましたが、“都民ファースト”だったとも思えてきます。

夕方、1日中ラウンジで勉強していた学生が質問に来ました。こういう留学生に光が当たる世の中を作ってくれる人に、私の1票をささげたいです。でも、そういう人が見つかるかなあ…。

ブラックリスト

9月27日(水)

KCPでは、毎月出席率が悪い学生をリストアップし、学生指導するとともに、学生自身にどうすれば出席率がよくなるかを考えさせています。Sさんは9月の出席率が悪く、そのリストに載ってしまいました。私は、Sさんが欠席・遅刻した日を調べ、その日付を書いて、いったいどうしてこんなに休んだり遅刻したりしたのかを説明するように求めました。

Sさんは手帳を見ながらこの日は休んでいないなどと言い出しました。でも、その日は休んではいませんでしたが、大幅な遅刻をした日でした。たとえその日が全面的に出席であっても焼け石に水で、Sさんがリストから外れることはありません。そもそも、休んで日を手帳につけているくらいなら、呼び出しを食らうほど休むなといいたいです。

Nさんはボーダーラインをわずかに下回り、リストアップされてしまいました。入学以来今学期の初めまでは出席率が100%でした。ところが、風邪をこじらせて1日休んでしまいました。これがきっかけになって崩れなければいいのだがと思っていましたが、遅刻が目立つようになり、休むようになりと、転落していきました。出席が悪いことで呼び出されたこと自体、Nさん自身にとってショックだったと思います。ここでギュッと締めておけばきっと復活してくれると信じていますが、新学期はどうなるでしょう。

SさんやNさん以外にも何名かの出席率の悪い学生から事情を聞きましたが、同情に値する話はありませんでした。要するに、たるんでいる、緊張感・切迫感がない、勉強や進学を軽く見ているのです。学生たちが休んでも、私はこうやって嘆くだけで済みますが、休んだ学生自身は自分の人生を食いつぶしていることに気がつかないのでしょうか。

でも、本当に困った学生は、リストを突きつけようにも休みやがってできなかった学生どもです。今までにもさんざん注意してきた連中です。さて、どうしてやりましょう…。

和服とぬいぐるみ

9月13日(水)

7月は雨に見舞われ、8月は暑さに負けて延び延びになっていた今学期のバザーが、ようやく開かれました。校舎の前の、通りに面したところに店を開くため、KCPの学生・教職員に限らず、近所の皆さんや通りがかりの人たちもフリーマーケットのノリで品物を手に取り、時には買ってくださいます。このバザーの売り上げは、親と離れて暮らさざるをえない子どもたちのために使われますから、少しでも多くの物が売れてほしいものです。

今回のバザーには、和服が多く出ていました。学生たちも盛んに手にとって眺めていました。また、ぬいぐるみも大小取り混ぜてたくさんあり、あれこれなでたりひっくり返したりしながらしばらくその前から離れようとしない学生もいました。私はポケットファイルやせっけんなど、いつも狙っている物が出ていないか見てみましたが、思ったようなものがありませんでした。

最近は、何でもインターネットで買い物する学生が増えてきました。受験講座で参考書や問題集を紹介すると、その場でアマゾンに発注してしまいます。今すぐ食べたり飲んだりする物以外は、お店では買わないと言っている学生さえいます。そんな学生も、バザーの品物には自然に手が出て、売り上げに貢献してくれたようです。

必要な物、欲しい物はインターネット経由で手に入れつつも、やっぱり実物を目で見て手で触ってみるショッピングも魅力的なんでしょうね。いや、もしかすると、そういうショッピングの味を知っている世代は、今の学生たちが最後になるかもしれません。インターネットのお店しか知らない世代は、バザーにどんな反応を示すのでしょう。見てみたいような見てはいけないような…。