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発見

4月10日(火)

先週末から新入生のオリエンテーションが続いています。日本語がわからないという前提ですから、母語ごとに分かれて、その言葉を話す事務職員が直接話すか、教師の言葉を通訳するかして進めます。日本人が日本の学校に入るのと違って、ビザの問題や母国との習慣の違いや親元を離れて暮らす際の注意など、こまごまとしたことまで意識をめぐらしてもらおうと思っています。

しかし、学生にとっては辛い時間のようです。学生がだれていたなんて愚痴をこぼす図も、毎学期おなじみの風景です。異国での生活が始まったばかりという緊張した雰囲気に包まれていたとしても、集中力が持たないでしょうし、気をつけなければならないことがあまりに多くて、頭がオーバーフローしてしまうかもしれません。私が学生でも、半日間の座学というのは相当こたえるでしょう。

だからかどうかわかりませんが、昨日タバコの吸殻が非常階段や駐輪場入口付近に落ちていました。タバコは喫煙所でという話も当然あったはずですが、いきなり破られていたわけです。タバコが吸える場所は、世界中どこでも非常に限られています。日本は緩いほうだとは思いますが、階段でタバコを吸って、なおかつ吸殻をそのまま捨てるとは、その日本ですら非常識極まりない行為です。

明日は始業日です。在校生も含めて学校のルールを再確認します。全校の学生が教師の話に耳を傾け、それにきちんと従ってくれたら、私たちの心労はどんなに減るでしょう。校舎の掃除の手間だって、かなり省けると思います。学生の皆さん、是非、ご協力を。

入学式挨拶

皆さん、ご入学おめでとうございます。このように多くの学生が、世界中からこのKCPへ来てくださったことをうれしく思います。

先日、去年の3月の卒業生、Aさんが遊びに来てくれました。Aさんは、KCP在学中は遅刻を1回しただけの出席率99.9%というまじめな学生でした。残念ながら第1志望の東京の大学には合格できず、地方の大学に進学しました。いかにも都落ちという風情で東京を後にし、それから1年間全くKCPに顔を出すことはありませんでした。やはり第1志望に落ちたことが尾を引いているのかなと密かに心配していました。

ところが、1年ぶりに姿を現したAさんは、進学した町で出会った日本人の恋人と一緒でした。そのせいかどうかはわかりませんが、とてもすっきりした顔をしていました。その恋人も、明るく気さくな人で、Aさんに大きな信頼と期待を寄せていることが、しぐさや言葉の節々からわかりました。

そんなことより何より、Aさん自身が大学で将来のためになるいい勉強ができていると思っていることが表情からほとばしり出ていたことが、私にとってはうれしかったです。入学前に想像したよりもはるかに充実した学生生活を送っていることがうかがえました。JR東日本に就職することを目標に、卒業までの計画を立てています。JRへの就職は厳しい戦いになるけれども、是非挑戦したいと意欲的に語ってくれました。

冷たい言い方をすれば、第1志望の大学に入れなかったのですから、Aさんは受験の敗者です。確かに来日前に思い描いたのとは違う道を歩んでいます。しかし、負けっぱなしではありませんでした。想定外の新しい環境で自分を最大限に生かし、当初の計画よりも彩り鮮やかな留学の果実に向かって、着実に進んでいます。

Aさんだって、東京を離れる時には筆舌に尽くしがたい葛藤があったと思います。けれどもある時点でそれを振り切り、今ここで何をするのが自分にとって最善なのかを考え、それを実行に移し、確かな手応えを得ているからこそ、笑顔でKCPを訪れることができたのです。

つまり、自分の人生は自分で切り開くべきものだということです。うまくいかなかったからと落ち込んでいたり、与えられた環境を嘆き続けたり、誰かが助けてくれるのを待っていたりするだけでは、漫然と時が過ぎていくだけです。そういう受身ではなく、積極的に何かを勝ち取る日本留学を皆さんに期待します。そのためなら、われわれ教職員一同は、喜んで皆さんの力になります。

本日は、ご入学本当におめでとうございました。

明るい町

2月21日(水)

今週になってから、御苑の駅から学校までの道が明るくなったような気がしていました。街灯がなんだかおしゃれになりました。毎朝職員室内をお掃除してくださる、地元にお住まいのHさんに事情をお聞きしたところ、新宿区と商店街と町内会がお金を出して街灯を新しくしたそうです。電球をLEDにしたので、明るさも増したとのことです。

最近引ったくりが増えており、それへの対策でもあるようです。防犯には町を明るくすることが何よりも肝心で、街灯を明るくした路地は犯罪がなくなったとHさん。「ここの前も明るくなると思いますよ。でも、まずは商店街ですよ。なんたってお金持ってるから」ということで、商店街だったのかな。

防犯効果もあるでしょうが、街灯が明るくなると、私のように人通りが少ない時間帯に歩くことが多い人間は、交通事故の心配も減ります。濃色のコートを着ていると、夜は闇に溶け込んで忍者状態になってしまいます。でも、今の商店街の明るさだと、運転する人たちに人影としてはっきり認知してもらえそうです。

また、視線も上を向きます。新しい街灯は支柱に商店街の名前が行灯で入り、それに目が引き付けられるので、首が持ち上がるのです。そうなると、姿勢も良くなります。疲れていても、元気が出てきます。

でも、これは夜道を歩くから気がつくのであって、朝、明るくなってから、夕方暗くなる前に商店街を歩く学生たちは、あんまり気付いていないんじゃないかな。いや、学生たちは夜道だってスマホを見ながらですから、どんなにこじゃれた街灯を設置しても、全く関心を示さないかもね。

テストの教室で掃除

2月16日(金)

中間テストがありました。午前中は上級の卒業しない学生たちを集めたクラスの監督でした。来学期以降もKCPで勉強を続ける学生が主力ですから、いつもと違う顔ぶれに少し緊張気味でしたが、しっかり試験問題と取り組んでいました。

午後は諸般の都合で2クラスをまとめたクラスの監督でした。40名近い見慣れぬ学生を監督するとなると、こちらも緊張します。試験場として充てられた教室の時計は、教壇に立つ教師の真正面にあります。つまり、教壇を向いている学生から見ると背後になります。こういう教室の場合、学生は時間を確認する時後ろを振り向きます。これは試験監督をする教師にとっては実にいやなものです。カンニングをする学生などそういるものではありませんが、カンニングと同じ行為が堂々とできるのです。

腕時計をしてくればいいではないかと思うかもしれませんが、近頃の学生は腕時計を持っていません。スマホが時計の役割もしますから。テスト中はもちろんスマホ禁止ですから、教室の時計で時刻確認するしかないのです。

最後の科目は答案用紙を提出したら帰っていいことになっています。帰ることで頭がいっぱいになっている学生は一刻も早く提出しようと問題に取り組みます。そうすると、テスト用紙の裏側をやらずに提出する学生がよくいます。ですから、私は学生の答案を受け取るとき、名前と用紙の裏側を確認します。裏側が白紙だったら、すぐに用紙を突き返し、裏側の問題をさせます。この合同クラスにはそういう学生が3人いました。2人はすまなそうな顔をして裏側の問題を解き、数分後に再度提出しました。残りの1人は「大丈夫です」と言って、そのまま帰ってしまいました。君の成績は、全然大丈夫じゃないよね。

ところが、問題は早々に終わっているようなのですが、いっこうに提出しない学生が1人。答案を見直すわけでもありません。制限時間が来て答案を提出すると、その学生は机の上の消しゴムのかすを集め、机を几帳面にまっすぐに並べ直し、忘れ物のチェックまでしてくれました。「テストの日に日直をしてくれる学生は珍しいなあ」と言うと、「私は校舎のお掃除のアルバイトをしていますから」とその学生。なんとなく見慣れた顔だと思っていたら、毎晩見ていたんですね。ここまできれい好きだからこそ、お掃除のアルバイトが勤まるのです。頼もしいかぎりです。

最高

2月5日(月)

毎日、ウォーミングアップ代わりに、学生たちにあるテーマについて3分間ペアで話させます。今朝のテーマは「今度国へ帰るときのお土産」。具体的なモノのお土産でも、「私の笑顔」みたいなものでも、何でも構わないから、国のだれかにあげるお土産を語ってくれというタスクです。

3分後に何人かの学生に何を持って行くか聞いたところ、日本のお菓子という答えが多数を占めました。日本のお菓子はおいしいかときくと、教室全体がうなずいていました。

私はビジネスのお付き合いでのお土産を渡した経験しかありませんから、家族にあげる日本のお土産って何だろうと興味がありました。アメリカの大学から来ている学生は、和風の小物をよく買うようです。また、原宿あたりで買ったTシャツなんかも人気があります。でも、お菓子というのは、いても少数派でしたね。

上級はアジアの学生がほとんどですから、好みが多少は変わるでしょうが、お菓子がここまで支持されるとはねえ。中には「白い恋人」などと商品名まで挙げる学生も。商品名はともかくとして、おそらく全員が何らかのお菓子を頭の中に具体的に描いていたここと思います。

お菓子の勉強に日本へ来る学生が毎年何人かいますから、日本はお菓子に先進国なのだと思っていました。ここまで学生たちの国々での支持が強いとなると、お菓子を武器にして日本を再興できないかと考えたくなります。学生たちが持って帰ろうとしているのは、和菓子よりは洋菓子でしょう。洋菓子と言っても換骨奪胎されて、ヨーロッパなど発祥の国へ持って行ってもその地の人々の舌を魅了するに違いありません。

卒業式が終わったら帰国する学生も多いです。その学生たちのスーツケースにはどんなお菓子が入っているのでしょうか。

寒中喫煙大会

2月2日(金)

午前中は雪が結構勢いよく降った時間帯もありましたが、お昼過ぎにはそれも上がり、先週のような大雪にはなりませんでした。低気圧の通過したコースが、先週よりいくらか南だったため、まとまった雪にはならなかったようです。

雪がやんでも気温はあまり上がりませんでした。その寒空の中、学校の前にあるホテルの敷地でタバコを吸っていた学生がいました。しかも10人も。「タバコは喫煙室で」と事あるごとに注意しているのですが、それでもまだこういう学生がいるのです。お恥ずかしい限りです。

教師をバカにしているのか、学校をなめているのか、日本社会を甘く見ているのか、ルールやマナーを守ろうとしない学生は、結局何も考えていないか考えられないかなのです。私が以前捕まえたKさんもそうでした。吸いたくなったから非常階段の踊り場で吸ったのです。「吸ってしまった」という後悔や後ろめたさは感じられませんでした。こいつはまずいなと思いました。でも、厳しく注意したことが効いたのか、その後在学中は問題になることはありませんでした。じゃあ、Kさんはタバコのルールが守れる人間になったのかというと、私は懐疑的です。非常階段はまずいということは学習できたでしょうが、さらに一般化して、吸える場所以外では吸わないという境地にまで至ってはいなかったんじゃないかな。進学先でトラブルを起こしていなければいいがと思っています。

飲食禁止の教室で休み時間にこっそりお菓子を食べたりコーヒーを飲んだりしている学生、「てやまない」は「祈る、願う、期待する、希望する」と何回も注意したにもかかわらず「国に戻ってやまない」などという例文を書いてよこす学生、授業中にせっせと内職する学生、みんな根は同じところにあるような気がします。自分の目の前のことしか見えていないのです。

視野狭窄だからこそ、視野を広げるために日本まで留学に来たのですから、親の育て方が悪いとかっては言っていられません。こういう学生に考える力を付けさせるにはどうしたらいいか考えるのが、私たちの仕事です。

寒!

1月25日(木)

ゆうべ帰宅するために校舎の外に出たら、ほっぺたに冷気が突き刺さるような感じでした。今朝、出勤のためマンションの外に出たら、耳がちぎれんばかりの寒さでした。ずいぶん気温が下がっているなと思って調べてみると、ゆうべ10時の段階で気温は氷点下となっており、冷気が突き刺さるのも無理がありませんでした。今朝はマイナス3度ぐらいからどんどん下がっているころに外に出たのですから、耳も凍えたくなるわけです。

午前6:20に記録した最低気温氷点下4度は、48年ぶりの寒さだとか。東京郊外から通学してくるLさんは、自分のうちの近くがいかに寒いかを力説してくれました。南国出身のBさんは雪の解けなさ加減に驚いていました。その一方で、Sさんは、なんと半袖。生まれ故郷はマイナス40度になるから、マイナス4度は夏の気温だと言って、笑っていました。Kさんも、年末年始に帰った国はこんなもんじゃなかったと、震えている学生たちを甘いなっていう顔つきで見ていました。世界中から学生が集まっているのですから、雪や寒さに対する反応も千差万別です。

東京の最高気温は4度、快晴だったものの気温は上がらず、積雪は7cmから全く減りませんでした。明日も同様の寒さだそうですから、雪かきで築かれた雪の小山は、しばらく消えそうもありません。そうすると、来週水曜日のバザーが気になります。いつもの売り場には雪山、しかもこの寒さ。去年の夏はあまりの暑さでバザーを延期しましたが、今回のバザーも…。

朝のメール

1月24日(水)

今朝、学校に着いてメールを見ると、FさんがC大学に合格したと知らせてきていました。Fさんは7月期に初級で持った学生で、飛び抜けてできる学生ではありませんでしたが、負けず嫌いのところがありました。私のクラスでなくなってからも、志望理由書などの面倒を見ました。それがC大学の合格につながったのかどうかはわかりませんが、御礼のメールを送ってきたということは、貢献度ゼロではなかったのでしょう。

中級までのレベルでC大学ほどの大学に受かる学生には、どこか見所があるものです。Fさんの場合は、自分の弱点を正確に把握していたことでしょうか。聴解が弱いということを自覚し、それを補うためには何でもしていました。足りないところを正視しようとせず、できるふり、わかっているつもりを続ける学生は、結局沈んでいくのです。痛くても辛くても、欠けている部分をしっかり見つめ、そこを補強していく気持ちが、自分を伸ばすには必要なのです。

それよりも何よりも、こうして義理堅く合格を知らせてきてくれることがうれしいじゃありませんか。こういう気持ちは、進学してからも就職してからも、忘れてほしくないものです。もしかすると、人のつながりを大事にする姿勢が、面接か何かの際にC大学の先生方に伝わり、合格に結びついたのかもしれません。尋常ではなく一生懸命面倒を見てくださった先生に合格も知らせずいい気になっていたHさんの合格までの道のりが遠かったのも、そんな神経が相手方に垣間見えてしまっていたのでしょうか。

今年度は、まだまだ世話を焼かねばならない学生が大勢います。

ゆがんだ三分粥

12月21日

午前中のテストが終わった後、EJUの結果がほしいと、Kさんが私を訪ねてきました。EJUの成績通知書はKさんあての信書ですからそれはそのまま渡しますが、Kさんは今月のというか、今学期の出席率がひどいので、そちらについて話をしなければなりません。

今学期、Kさんは本当によく休みました。理由を聞いてもはかばかしい答えが返ってくることはなく、のらりくらりと追及をかわしていました。それで全てが済んでやりたいことがし放題と思っていたら大間違いです。Kさんの今の出席率では、たとえ進学できたとしてもビザが出ないおそれがあります。今までにそういう話もしてきましたが、軽く受け流していたようです。来学期、卒業式までの実質2か月間100%出席したとしても、出席率の危険水域を脱することはできません。事態がそこまで悪化しているのにKさん自身は全く気付いていません。

EJUの成績にしたって、封を開けたとたん顔をゆがめていましたから、思い通りの成績が取れなかったのでしょう。調べてみると、案の定、6月より下がっていました。あんなただれた生活をしていたんじゃ、退化こそすれ進化など望むべくもありません。行き先がまだ決まっていないKさん、果たしてどうなるのでしょう。

期末テストの日の夕方は、いつも、アメリカの大学のプログラムで勉強に来ている学生たちの修了式があります。修了生は、修了証書をもらったらスピーチをすることになっています。みんな、この1学期間、実に濃厚な留学生活を送ってきたことがよくわかりました。3か月と期限が切られているからこそ、オーバーフローしそうになりながらも、貪欲に何でも吸収しようとしてきたのでしょう。その拙い日本語を聞きながら、Kさんだったらどんなスピーチをするのだろうと考えてしまいました。三分粥みたいなうすーい留学生活を送っていたら、なんにも話せなくなっちゃいますよ。

特権階級

12月19日(火)

1年に計は元旦にありと言いますが、KCPではちょっと先走って、年内に来年の目標を書いてもらうことになりました。来学期の初日でもいいのですが、1年の反省をしたこの時期に、その反省を踏まえて次の年の目標を定めてしまおうという考えです。

私のクラスの学生たちは、最初はブーブー言っていたのですが、主旨を説明して書かせると、全員結構真面目に取り組み始めました。そして、一人ひとりの目標を見ると、1年後の自分のあるべき姿を言葉に表していました。このクラスの学生は大半が3月で卒業しますが、ここで書いた目標は進学先にまで持って行って、その実現に向けて努力を続けてもらいたいです。

学生たちが真剣に目標を考えた1つの原因は、この目標を書きっぱなしにしなかったことです。学生証に挟める大きさ(小ささ)の用紙にきれいな字で書かせて、学生証と一緒に肌身離さず持ち続けてもらうことにしたのです。目に付くところに目標が書かれていればそれを再認識することも多く、いい加減なことを書いたら自分自身が恥ずかしくなります。

目標を書くことに集中している学生たちを見ているうちに、彼らがうらやましくなりました。学生たちには今年と違う1年が待っています。大きく進歩する可能性を秘めた1年がもうすぐ始まります。私にも今年と違う来年が待っているかもしれませんが、学生たちに比べたら変化に乏しいものになるでしょう。自分の人生の新局面を切り開くような、胸が躍るような1年を迎えることってあるのかなあって考えると、否定的な答えになってしまいます。

こういうのが、若さの特権なのですが、当の若者は往々にして気付いていないようで、もどかしい限りです。