Category Archives: 生活

50年

5月16日(月)

昨日は、沖縄の日本復帰50周年の日でした。報道機関の論調は、基地負担や経済面での格差が埋まらないままだと、厳しいものが多かったです。

沖縄へは何回か行ったことがありますが、一番印象に残っているのは旧海軍司令部壕です。那覇市と豊見城市の境界線上の小高い丘にあります。地下壕にこもって戦っていたのですが、本土決戦を引き延ばすためのような戦いは悲惨を極めました。そして、ここを守っていた大田實少将は、昭和20年6月13日、沖縄戦終結の10日前、自決しました。その際に海軍次官に宛てて打電した電文が、壕の中に掲示されています。

電文の最後に、食料もない中必死に戦った沖縄「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコトヲ」という文があります。現状を見る限り、“御高配”は米軍基地です。大田少将の最後の言葉は全く無視され続けてきたと言っても過言ではありません。これを読んだ時、本土に住む日本人として恥ずかしかったです。

摩文仁の丘もひめゆりの塔も行きました。それほど有名ではなくても、沖縄はいたるところに戦跡があり、街角でよくハッとさせられます。同時に、米軍基地も普通にあります。首里城から普天間基地まで、どう測っても10キロ弱、琉球王国の陵墓・浦添ようどれからなら5キロ足らずです。皇居を基準に考えると、新宿が5キロを少し切るくらい、お台場が7キロ、高円寺で10キロです。

50年前の日本は上り坂でした。その時に“御高配”ができなかったかなあと思います。“御高配”をしなかったことで某国の覚えがめでたく、繁栄が多少なりとも長続きしたのでしょうか。昨日はニュースを聞きながら、そんなことを考えました。

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引き締める

5月11日(水)

東京の新規感染者数が増えています。といっても、先週は連休の最中でしたから、検査を受けた人が異常に少なかったのでしょう。その反動で、休み明けから新規感染者数が前の週を上回り続けているのだと思います。来週になっても前の週(=今週)よりも多くの新規感染者が現れ続けたとなると、またもや感染拡大の方向に動き始めたと見るべきなのではないでしょうか。

学校の近くの郵便局が、11時半から1時までお休みになってしまいました。感染者や濃厚接触者が増えて、お昼の時間帯の交代要員が確保できないようです。郵便局に用事がある場合は、ちょっと離れたところ(といっても、歩く距離が数十メートルから数百メートルになるくらいですが)にある別の郵便局へ行けばすみますから、仕事や生活に差し支えることはありません。でも、こういう身近なところで感染拡大の影響が出てきたとなると、先週は休みだったからなどとのんびり構えてもいられません。

私が見る限り、最近来日した学生も含めて、学生たちから動揺は感じられません。自分の部屋より学校の方が、国より日本の方が、楽しいようです。細々とではありますが、ラウンジや校庭で談笑する学生の姿が見られます。季節が進むと、進学で苦しむ顔が出てきます。だからこそ、こういう状況が少しでも長続きするように、引き締めるべきところはピシッとやらなければなりません。

卒業生はどうしているんでしょうね。それぞれの進学先で勉学を楽しんでいるんでしょうか。それぞれの学校がそれぞれのピシッとで、勉強の環境を整えているのだと思います。

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過ぎたるは

5月9日(月)

マイナンバーカードの手続きができるというので、昨日、家の近くの会場まで足を運びました。だいぶ前に番号をもらってからほったらかしにしてありました。マイナポイントとか保険証の代わりになるとか、よくわからないこともありますから、ついでに聞いて来ようと思いました。

会場の区民センターみたいなところは行ったことがありますから、すぐわかりました。案内に従ってそこの会議室に入ろうとすると、「マイナンバーカードのご申請のお手続きにいらっしゃられたのでしょうか」と声を掛けられました。うなずくと、「まず、お写真をお撮りします。こちらの椅子にお掛けになられてください。お荷物はそちらのかごに入れられて、マスクは取られてください」と指示されました。言われた通りにすると、「では、こちらの赤い点をご覧になられていただけますか」と新たな指示が。

写真の次は、書類作成。「こちらとこちらにご記入されてください。お写真の裏側にお名前と生年月日を書かれてください。そうしたら、お写真をお貼りになられてください。こちらののりを使われて大丈夫です。はい、では、こちらの封筒に入れられて、こちらにご住所とお名前を書かれてください」「はい、ありがとうございました。お帰りの際にポストにお出しになられてください。1か月ぐらいしましたら、区役所からご連絡がありますから、取りに行かれてください」

なあんだ、その場でもらえるのかと思ったら違うんだ。世の中、そんなに甘くないよね。写真代が浮いただけでも、よしとしなければ。

いかにもアルバイトという感じの若者が世話をしてくれましたが、言葉遣いには辟易しました。私のようなはるかに年上の人を相手にするのですから、失礼のないように丁寧に話さなければという気持ちは伝わりました。でも、居心地は悪かったですね。この人にマイナポイントとか聞いても絶対にわからないだろうと思い、あきらめました。

会場出口に立っていた案内の人に、「ここから一番近いポストはどこですか」と聞いたら、「少々お待ちください」と言って誰かに聞きに行ったきり、5分ぐらい戻ってきませんでした。会場でポストに投函と言っているんだから、ポストの位置ぐらい調べておけよ。

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はじめまして

5月7日(土)

朝から仕事をしていて目が疲れてきたので、ちょっと息抜きにロビーに出たら、「すみません。M先生はいますか」と、話し掛けられました。年格好からすると学生なのですが、あまり見かけない顔です。私もすべての学生の顔と名前を知っているわけではありませんし、つい最近入国したばかりの学生なのかもしれません。また、ちょうどJLPTやEJUのための受験講座が始まる時間帯でしたから、その関係の用事なのかなと思い、M先生を呼びました。

しかし、M先生もその学生(?)の顔に見覚えがない様子でした。「お名前は?」とM先生が聞くと、「Hです」と答えるではありませんか。M先生も私もびっくりしました。この稿にも何回か登場している、教師のだれもが1日も早く教室で会いたいと願っていた、あのHさんが目の前に立っているのです!!

2人同時に思わず「えーっ」と声を出し、M先生が「ねえ、Hさん、ちょっとマスク、取ってみて」と促すと、Hさんはマスクを外しました。その口元は、オンラインの画面で見慣れたHさんのものです。でも、何か違います。そう、メガネをかけていなかったのです。髪型もオンラインの時とは違っていました。でも、声は確かにHさんです。

Hさんは、これから行われるウェルカムミーティングで代表あいさつをします。その練習をしに、早めに学校へ来たのでした。「やっとここまで来たねえ」と声を掛けると、少し笑みをこぼしながら軽くうなずきました。

Hさんのあいさつは立派なものでした。去年の漢字が「待」だったHさん、今年は飛躍の年にしてくださいね。大いに期「待」していますよ。

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連休前なのに

4月27日(水)

M先生は、出勤するなり、仕事をしていた私に、「先生、Hさん、明日出発するんですよ。待機期間が終わるのが来月の6日か7日で、そうしたら学校へ来るんですよ」と声をかけてきました。Hさんは、去年の4月からオンラインでずっと勉強を続け、昨年末、来日できそうになったとたん再度の鎖国でそれが流れ、そして、ようやく、もう間もなく、KCPに姿を現します。

Hさんはまじめな努力家で、毎日の授業に全力で取り組んできました。だから、所属したどのクラスの先生も、高く評価しています。私も、クラスに入ってHさんに教えるのが楽しみでした。これはHさんに質問してみようなんて、Hさんを中心に授業を組み立てることもよくありました。

先月から留学生の入国が再開されましたが、いつまで待ってもHさんの順番が来ませんでした。Hさんにこそまっ先に入国して学校へ来てもらいたかったのに、Hさんの渡航日程はなかなか決まりませんでした。オンラインでやる気があるのかないのかわからないような学生が、お前なんか日本で勉強する意味があるのかと言いたくなるような輩に限って、さっさと入国してきたんですよね。

そのHさん、今学期は数学の受験講座を受けています。午後、数学の問題が届いていませんなんていうメールがHさんから来ました。おとといの講座で宿題を出したつもりだったのですが、メールに添付されていなかったのです。日本行きの準備で忙しいので今週は期日までに提出できないと添えられていました。こういう、勉強を第一に考える姿勢が、教師の心をくすぐるんですね。

5月7日に行われる歓迎イベントで、Hさんに会えそうです。終わるのが楽しみな連休なんて、初めてです。

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新規感染者数と好奇心

4月23日(土)

東京の新規感染者は5387人で、先週の土曜日よりも1400人ほど減りました。これで12日連続、前の週の同じ曜日よりも少なくなっています。減ったとはいえ5000人以上の感染者を出しているのですから、感染予防に気を抜くわけにはいきません。

東京は順調に(?)新規感染者が減りつつあり、かろうじて第7波を防げたのかなあという雰囲気ですが、それどころではない地域も方々にあります。北でも南でも、西でも東でも、過去最高やそれに近い新規感染者が発生しています。東京みたいなちょっと前までひどすぎる数字を出していたところが大口で減らしていますから、全国の数字にしてしまうと目立ちません。しかし、増えている自治体の面積で見ると、日本は危機を脱したとは到底言えません。日本地図が真っ赤になるでしょう。

そんな中、来週は連休です。「宣言」とか「措置」とかのない連休は2019年来です。そのころほどではないにせよ、人出が回復する見込みだと報じられています。私も出かけますからあまり大きな声では言えませんが、連休明けが心配です。来日したばかりの学生が浮かれてあちこちはしゃぎ回らなければと思っています。

でも、ようやく憧れの日本にたどり着いたのに部屋に閉じ込められたら、学生としてはたまらないでしょうね。何より、若者は好奇心の塊です。外国の町を探検したくなる方が当たり前です。おととし、去年の学生たちは、それを押さえ込まれていたのですから、気の毒でした。はしゃぎ回らずに未知の扉を開けて、新鮮な驚きと感動を味わってもらいたいです。

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急にダイエット

4月15日(金)

ちょっと席を外して戻ってくると、机の上に「Yさんが受験講座を受けたいと言っていますから、授業後本人から話を聞いてください」という、H先生からのメモが置いてありました。午後から受験講座がありますからあまり時間がありませんが、受験講座の説明ぐらいはできるでしょう。

12:15にYさんのクラスの授業が終わり、いつ来るかと思って待っていましたが、なかなか来ません。途中で呼び出されても続きがすぐできるような仕事をしながら1時近くまで待ちました。授業後の学生対応が終わって職員室に戻ってきたH先生に「Yさん、まだ来ないんですけど…」というと、H先生はすぐにYさんに電話をかけました。すると、Yさんは「用事があるので帰った」と言いました。

収まらないのがH先生です。「授業が終わったらすぐに金原先生の所へ聞きに行くようにって言ったら、『はい』って答えたんですよ」と憤っていました。Yさんは中級の学生ですから、用事があるのだったら、話を聞くのを月曜日にするくらいの交渉はできるはずです。Yさんの用事が急用だとしても、一言断りを入れてもよかったんじゃないかな。H先生の憤りの原因はそんなところでしょう。

何でも取りあえず予約して、気軽にキャンセルするというのが最近の風潮だそうです。時間が来たら自動的にキャンセルになるというシステムも珍しくありません。そういう方式に慣れていると、自分の言葉の重みが実感できないのかもしれません。

Yさんのおかげでダイエットができました。お昼抜きでしたから。

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成長を感じる

4月8日(金)

Tさんは1年前にオンラインクラスのレベル1で教えた学生です。まじめな学生でしたが、鋭さに欠ける感じがしました。基礎問題はできても、応用問題は解けないというタイプでした。成績はクラスの真ん中か少し下ぐらいで、レベル2には上がれても、その後順調に進級できるだろうかと密かに心配していました。

そのTさんが、今学期、日本へやって来ました。順調に進級を重ね、今学期はレベル5です。来学期からは上級ですよ。ナチュラルスピードで話しかけても応じてくれますからね。立派に成長したものです。そして、義理堅いことに、この1年間にお世話になった先生方に、国から持ってきたお土産を配ってくれました。私は、健康にいいという干したきのこ(?)をいただきました。かけらにお湯を注いで、しばらく経ってから飲むのだそうです。この稿を書き終えたら、帰宅する前に飲んでみようかな。

同じクラスだったMさんにも生で会えました。思ったより背が高く、自室で受けていたオンラインの時より髪型が整っていて、見違えてしまいました。Mさんは大変な努力家でした。字が汚いと指摘を受けると、丁寧にきれいに書くようにし、会話練習には誰よりも真剣に取り組んでいました。そのおかげなのか、私の軽口にも笑顔でこたえられるだけの日本語を身につけていました。

TさんもMさんも、日本で何を勉強するか目標が明確になっています。だからこそ、監視の目が弱いオンライン授業でも努力を続け、力を伸ばしてこられたのです。日本へ来ただけで安心してしまう人たちではありませんから、これからも期待しつつ厳しく指導していきたいです。

夕方、同じく1年前にレベル1だったJさんが入国し、待機場所のホテルに着いたという連絡が入りました。しばらく、楽しみな日々が続きそうな雰囲気です。

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今ごろどうしてるかな

4月4日(月)

東京の日本語学校に入学する留学生の多くは、漠然と東京で進学することを考えています。東京大学とか早稲田大学とかの憧れレベルから始まり、そこが無理ならMARCH、そこも難しかったら、それでも都内にというように志望校を選んでいく人が大半と言っていいでしょう。マンガ・アニメ関係なら京都精華大学をはじめ、京都の大学も有力な進学先になりますが、それ以外は、何はともあれ東京です。

Sさんもそんな学生の1人でした。横浜まで出るのが精一杯でした。しかし、自分の本当の実力を知ろうとしたのか、最後の最後に東北大学を受けました。受験直後は受かる可能性はないと言って、すでに権利を確保してあった都内の大学に進学する準備を始めていました。ところが、合格してしまいました。多少悩んで、結局、仙台へ行くことにしました。日本人の目からすれば悩むまでもなく東北大学なのですが、やはり東京に未練があったようです。仙台は小さな町だと言っていました。

でも、仙台で4年間暮らしたら、絶対仙台を離れたくなくなります。学問的にもそうでしょうし、町の魅力に取りつかれることは疑いありません。仙台が小さな町なのではなく、東京が肥大しすぎているのです。世界の潮流に取り残されることなく、ほどほどに田舎で心身ともにくつろげる町と言ったら、仙台や福岡、あるいは札幌か広島あたりではないでしょうか。名古屋はぎりぎりこのグループかな、それともちょっと大きすぎちゃってるかな…。

そのSさん、先週末に仙台へ旅立つ前にあいさつに来てくれました。名残惜しそうに、会う先生ごとに「ありがとうございました」「お世話になりました」と言っていました。

仙台は、これから花の季節です。満開の桜に迎えられての入学式かもしれません。それを見ただけで、東京よりいい所だと思うんじゃないかな。

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18歳になりました

4月1日(金)

新年度が始まるとともに、成人の年齢が18歳に下げられました。すでに選挙権が18歳から与えられていますから、当然と言えば当然です。親とかかわりなく契約が結べるようになるのは問題も大きいなどと議論も盛んになっています。

成人の年齢が下がっても、お酒が飲める年齢は20歳のままで下がりません。勘違いしないようにというキャンペーンが行われていると報じられていました。投票とか契約とかは社会の変化に応じてそれができるようになる年齢が決定されますが、お酒が飲めるかどうかは肉体的な完成度が関わることです。ローンが組める年齢が下がったからといって、その年齢でお酒も飲み始めていいというわけにはいきません。お酒を飲み始める年齢が早いほど、お酒にまつわる病気にもなりやすいと言われています。

KCPには、高校を卒業するかしないかのうちに入学する学生もいます。その歳で、外国でひとり暮らしとは、その辺をうろちょろしている日本人の大学生よりよっぽど大人だと思います。でも、これは平均値であって、学生一人一人をつぶさに見ると、しっかりしているのから、同郷の先輩たちに支えられてもふにゃふにゃしているのまで、十人十色です。

学生たちは自分の国の法律に基づいてお酒やたばこを始めるきらいがあります。ふにゃふにゃに限って背伸びしたがるものですから、大人のつもりでお酒を飲んじゃうんですよね。お前が酒を飲むのは、2年どころか20年早いと言ってやりたくなります。お酒を飲んだり契約を結んだりするということは、それに伴う責任も負うということを意味します。ここがわかっていない若い人が多いのが実情です。

もうすぐ、そういう勘違いをしている人も含めて、大勢の学生たちがKCPにやってきます。

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