Category Archives: 生活

本当にするの?

7月14日(木)

安倍さんが亡くなって(ご本人の無念さを思うと、“暗殺された”と表現すべきかもしれません)1週間になろうとしていますが、政府は国葬にする方針を固めたと報じられています。安倍派の下っ端議員が「国葬、国葬」と騒いでいたのに乗せられたのでしょうか。

私は、国葬はふさわしくないと思います。だって、戦後は吉田茂元首相だけですよ、国葬は。安倍さんは、首相の在任期間は史上最長でしたが、業績は吉田さんに比べたら3段落ちぐらいじゃないかな。ノーベル平和賞の佐藤栄作元首相ですら、国葬じゃありませんでした。リオでマリオになったくらいじゃ追いつきませんよ。

モリカケ桜は不問に付すとしても、安倍さんの仕事の評価はまだ定まっていません。せめてあと10年長生きしてくれれば、国葬に値するという声が自然発生的に湧き上がったかもしれません。誰かが変な忖度をした結果だとしたら、泉下の安倍さんも苦笑いじゃないでしょうか。いずれにしても、早すぎる死です。

安倍さん自身は、10年と言わずもっと長生きして、中曾根さんみたいになりたかったのではないかと思います。中曾根さんは、衆議院議員を引退してから自由な立場でのびのびと言いたいことを言っていたような気がします。中曾根さん自身、けっこう気分がよかったと思いますよ。亡くなる直前まで血色もよかったし。毎日何時間もかけて、新聞を隅から隅まで熟読していたと言います。安倍さんがそういう立場から歯に衣着せずに政治を斬りまくる激辛評論を聞いてみたかったですね。

当時の小泉首相(自民党総裁)に言われて、中曾根さんに国会議員引退の話を持って行ったのは、幹事長だった安倍さんです。

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大成長

7月9日(土)

午後、パソコンに向かってうなっていたら、「金原先生、きれいな女子大生が会いに来てくれましたよ」と声を掛けられました。職員室の入り口に、2年前の卒業生のGさんとWさんが立っていました。KCPにいた頃と比べてすっかりあか抜けていて、掛け値なしに”きれいな女子大生“でした。

話を聞くと、KCPに入学したのは高校卒業直後だったとのことですから、失礼を承知で言わせてもらえば、山出しだったわけです。右も左も日本語もわからず入ってきて、KCPでがっちり訓練され、進学先でさらにもまれて、気が付いたらすっかり大人になっていたのです。そうそう、「あか抜けたね」と言ったら、「そうですか。あんまり変わった気がしないんですが」と、明らかに言葉の意味を理解している反応が返ってきました。

2年前の卒業生ということは、第1波で卒業式が中止になった代です。密にならないように、予約制で証書を取りに来てもらった時にも、GさんとWさんは一緒でした。進学してからはオンライン授業で苦労もしたようです。2人とも授業は対面が好きだと言っていました。

Gさんは、もうすぐインターンシップをします。もう3年生ですから、それぐらい不思議ではありません。就職前提じゃないと言っていましたが、全然考えていないわけでもないでしょう。でも、大学院進学の目もありそうなことを言っていました。

Wさんは、自分の大学の学生課でアルバイトをしています。たくさん書類を提出し、面接に通って採用されたそうです。80%は日本人学生を相手に話を聞いたり指示を出したりで、留学生相手に母国語を使うのはせいぜい20%だとか。日本人学生のアルバイトと同列に扱われているようです。それから、学部で2人しかもらっていない奨学金ももらっているとか。KCPにいた時から頑張り屋さんでしたから、らしいなっていう感じでした。

KCPへ来たのは、別の用事で曙橋まで来て、地図を見たらすぐそばだと気がついたからだそうです。うれしいじゃありませんか。そうやってわざわざ足を延ばしてくれるのは。

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ささやかなセレンディピティ

7月2日(土)

(この稿は臭いがプンプンしそうなお話ですから、お食事前またはお食事中の方は、お食事を済ませてからお読みください)

もう何年も前のことですが、ある日、「大」の用事を終えて水を流そうとしたところ、うっかり「小」のボタンを押してしまいました。あちゃっと思いましたが、まさか手で流れを止めるわけにもいかず、成り行きを見守るほかありませんでした。水が止まり、便器の中を見てみると、きれいさっぱり流れているではありませんか。ペーパーの切れ端一つ残さず、澄んだ水がたまっていました。「小」って、けっこう強力なんだなあと思いました。

それ以後、学校のトイレを始め、「大」を致すたびに「小」で流していますが、ブツが流れ切らなかったためしがないと言っても過言ではないと思います(歯切れが悪いのは、「小」のさらに下の「極小」とかいうのを押したときには残念な結果に至ったからです)。レストラン、スーパー、駅、大学、図書館、ホテル、東京でも西日本でも北日本でも、「小」で「大」が流れてしまいます。お腹の調子が悪くて若干緩くても、だから大量のペーパーを使っても、お腹が快調でよくぞこんな大量にというときでも、黄土色のかけらも残すことなく、始末してくれます。今では、何の躊躇もなく、「大」のときでも「小」を選びます。こういうのも、一種のセレンディピティなんでしょうか。

「小」と「大」の使用水量の差を1リットルとしましょう。おむつと便秘の人を除いて、日本で1億人が1日に1回「大」して、それを「小」で流すようにすると、1億リットル=10万立方メートルの節水になります。ダムの総貯水量って何億立方メートルですから、1日に10万立方メートルなんて誤差にもならないでしょう。でも、異常に早い梅雨明けによって渇水が懸念されていますから、何もしないよりはましです。これをお読みのみなさん、「大」は封印して、「小」を活用しましょう。

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前に立った2人

6月30日(木)

先日、電車の中で本を読んでいると、誰か私の前に立ちました。ふっと見上げると、私の目の前にいるのは、別に知った顔でもなく、健康そうな大学生ぐらいの2人でしたから、私が席を譲る筋合いはないと思い、また、視線を本の上に移しました。

ところが、視野の上辺ぎりぎりぐらいのところで、何かがうごめいているような感じがするのです。気になってしかたがありませんから、またもや見上げると、例の2人が盛んに「手」を動かしていました。腕も指も手のひらも、一瞬たりとも止まることがありません。時には相手をつついたり体を揺らしたりもしています。そうです。手話で会話をしていたのです。相手をつつくという手話表現があるかどうかまではわかりませんが…。

たまに政府発表や政見放送などで手話を目にすることはありますが、それは一方的に情報を伝えるだけです。しかし、この2人の手話はまさに会話で、相手の話が終わるか終わらないかのうちに自分の話を始め、手の動きから想像するに、かなりの早口です。お互い目を真剣に見つめ合い、だから目にも物を言わせ、会話を弾ませていました。

見ていてほのぼのとしてきました。とても楽しそうでしたから、私も加わりたくなりました。でも、私が知っている手話は「ありがとう」ぐらいですから、仲間入りできる由もありません。

健常者はマスクで口を封じられ、どんなに仲が良くても電車の中では会話はできません。一方、この2人は、マスクをしなくてもよかったころと変わることなく、おしゃべりを楽しんでいます。耳には補聴器らしきものが入っていましたが、最近の若者はみんな耳に何か突っ込んでいますから、ちょっと見では違いがありません。健常者って、不便ですね。

2人は2駅ぐらい先で降りました。ようやく、本に集中できるようになりました。

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暖房?

6月29日(水)

トイレに立ち、職員室出入り口のドアの所まで行くと、半袖の腕と首筋に風が柔らかく当たりました。冷房特有の、肌を刺すようなひんやりとする風ではありません。暖房のように体をふわっと包み込むような生暖かい風でした。“えっ、この部屋、暖房入ってんの?”と、思わず天井を見上げてしまいました。見上げたところで、暖房か冷房かなんてわからないのにね。

換気用に開けてある本棚の上の窓から入った空気が、ドアからロビーを吹き抜けて玄関から出ていく、その風に襲われたのです。夕涼みの風なら“気持ちいい”となるところですが、明らかに不快感を伴う温風とも熱風ともつかない中途半端な風でした。涼風なら風の通り道で仕事をしたいところですが、こんな風だったら仕事の能率がかえって下がってしまいます。

私がトイレに立ったころ、東京は最高気温を記録したようです。またもや猛暑日で、この分だと明日もそうでしょうから、6月末は6連続猛暑日で締めくくられそうです。梅雨明けが異常に早かったのも、その後半端じゃない猛暑が続いてるのも、ラニーニャ現象が原因です。ラニーニャ現象は、エルニーニョ現象の裏返しで暑い夏になります。でも、その影響がこれほど顕著に現れるとなると、地球の破滅に1歩近づいたのではないかと、心配にもなります。

このところ、最高気温の予報に40度というのがよく現れます。明日の熊谷もそうです。私は中国の砂漠で40度を超える気温を味わったことがあります。砂漠だけに乾燥していたせいか、それに短時間だったので、どうしようもないという暑さではありませんでした。でも、日本の40度はどうでしょう。その気温に長時間さらされるとなると、体が受けるダメージは相当なものに違いありません。

これから2か月半ぐらい、こういう暑さに加えて電力綱渡り状態も続くのかと思うと、げんなりしてきます。でも、受験生にとっては実力を伸ばす夏です。そのお手つだをしなければ…。

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1日早いです

6月22日(水)

参議院選挙が公示されました。投票日の7月10日から逆算すると、公示日は明日・6月23日になるはずでした。みなさんは6月23日が何の日かご存知ですか。沖縄慰霊の日です。1945年6月23日に、太平洋戦争における沖縄での組織的な戦闘が終わりました。心静かにこの日を迎え、犠牲になった方々に思いをはせるべきだと考えたのでしょう。明日の沖縄本島地方の予報は晴れ。すでに梅雨が明けていますから、夏至の翌日の、まさに頭の真上から照り付ける太陽の下で、慰霊の儀式が行われるのでしょう。

沖縄戦は、もっとずっと早く終わってしかるべきだったと言われています。最後の何か月間かは、本土決戦を遅らせようと、米軍を足止めするために降伏せずに戦ったとのことです。この、しなくてもいい戦いによって、多くの一般庶民が道連れにされました。沖縄戦が2か月ぐらい早く終わっていれば、原爆も落とされなかったのでしょうか。

学校の近くの、40枚ぐらい貼れるポスター掲示板は、10枚分ちょっとが埋まっていました。東京選挙区の立候補者は34名だそうですから、半分弱と言ったところでしょうか。34名がどんな考えを持ち、どんな政策を掲げているか、私にはよくわかりません。なぜ公示日が1日前倒しになったか知っている人がどれだけいるでしょうか。そもそも選挙戦が1日長くなったことに気付いていない方も少なくないんじゃないでしょうか。

東京選挙区選出とはいえ国会議員なのですから、沖縄のことにも真摯に向き合ってくれそうな人に票を投じたいです。

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倒れた鳥居と、暑さに耐える

6月20日(月)

能登半島で地震が相次いでいます。震度5~6ですから、“ちょっと揺れたね”ぐらいでは済みません。現に、昨日の地震では震源地近くの神社の鳥居がばったり倒れました。崩れ落ちたのではなく、根元からぽっきり折れて、そのまま90度のめったみたいですね。志賀原発は異状なしとのことですが、震度6弱だったらねじ1本緩んでも困ります。

地震、原発と言えば3.11ですが、先週、あの事故で国には責任はなかったという最高裁判決が出ました。国や原発推進に関わる人たちは喜んでいるようですが、それは皮相的な物の見方だと思います。考えようによっては、国には責任能力がなかったという判断だとも言えます。つまり、国には原発に対してどうのこうのと言えるだけの知識も判断力もなかった、当事者能力が備わっていなかったということです。

あれから11年余り、国はそういった能力を磨いてきたか、許認可を与える責任能力をつけたかと言ったら、大いに疑問です。そういった方面においては何の進歩もなく、温暖化防止には原発がいちばんと旗を振っているに過ぎません。私にはそう見えます。

原子力発電は、原理的にはすばらしいと思います。デコピンをしただけで巨大なエネルギーが生まれるのですから。しかし、現在の科学技術をもってしても、その制御ができているとは言いかねます。エンジニアリング的には非常に大きな不安があります。つまり、原理の高尚さにエンジニアリングが追いついていないのです。

国が原発に責任を負えるようになるのがいつなのか、私にはとんと見当がつきません。この夏は電力事情がひっ迫するとのことですが、だれも責任が負えない怪しげな電力に頼るよりは、汗をだらだら流しながら、猛暑日と熱帯夜に耐えましょう。

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新しい食生活

6月15日(水)

学期末が近づくと、アメリカの大学のプログラムで来ている学生への発話力テストがあります。それぞれの学生のレベルに合わせて質問に答えさせたりまとまった話をさせたりしながら、文法や語彙の定着具合や発音などをチェックします。テストと言いつつも、雑談の中からそういった力を測っていきます。

Jさんは自炊をしています。日本料理が作れるというので何が作れるか聞いたら、カツ丼という答えが返ってきました。カツ丼が日本料理かなあと思いながらも、ハンバーグやスパゲティを食べてきた人から見たら、ご飯粒の上にしょうゆ味のたれがかかった料理は、十二分に日本料理何だろうと納得することにしました。

Rさんは全く料理をしません。毎日、コンビニ弁当でお腹を満たしています。国にいた時は、仕事をしながらお菓子を食べるのが食事代わりでした。不健康なにおいがプンプンしますが、目の前のRさんは顔色もよく、私の質問に積極的に答え、弱々しい感じはしませんでした。

さて、この2人、食生活が正反対でした。Jさんは朝ごはんと昼ごはんをしっかりとり、晩ごはんは食べないことが多いと言っていました。宿題をしたら、そのまま寝てしまうそうです。一方、Rさんは、朝はコーヒーだけで、昼は抜き、晩ごはんをたっぷり食べます。その晩ごはんが、コンビニ弁当なのです。夜食も少々とのことでした。

2人とも、お金がないわけではありません。Rさんなんか、ゴールデンウィークにしまなみ海道でサイクリングをしたくらいですから。最近の若者は、1日3食じゃなくても平気なのでしょうか。食事は集約して、自分のしたいことに時間を振り向けようとしているのかもしれません。すると、料理をしないRさんなんか、口が寂しくなったらサプリなんて方に進むんでしょうかねえ。

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未納

6月14日(火)

急激に進んだ円安やらロシアのウクライナ侵攻やらの影響で、中小規模の100円ショップが閉店に追い込まれているそうです。取扱商品全般の仕入れ値が上がって、100円で売っていては商売が成り立たなくなってしまったそうです。飲食店も原材料費高騰で、値上げに踏み切るところが増えています。

そんな中、Kさんが来学期の学費をまだ納めていません。KCPは学費の値上げはしていませんが、アルバイトをしているKさんには、諸物価の上昇は相当痛いようです。もしかすると、Kさんのアルバイト自体も危うい状況かもしれません。時給が下がるということはあまり考えられませんが(というか、最低賃金付近でしょうから、下がりようがないとも考えられます)、時間数を削られることはあり得ます。そうすると、ぎりぎりのところで生活しているKさんにとっては辛いでしょう。さらに、病弱なKさんはアルバイトを休んでいるかもしれません。担任の先生によると、成績も思わしくないようです。Kさん、八方ふさがりの感すらあります。

Kさんは挫折してしまうかどうかの瀬戸際に立たされています。せっかく嵐のような2021年を乗り切ったのに、思いもよらぬ経済情勢、世界情勢の余波をかぶって沈没してしまっては、泣くに泣けません。根がまじめなKさんですから、私たちも何とか助けてあげたいです。しかし、私たちにできることは限られています。

毎月100万円ものお小遣いを国からもらっている議員さんたちには、こういった留学の苦労などわからないでしょうね。票につながらない留学生のために汗をかこうなど、微塵も思っていませんよね。

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健康の源

6月7日(火)

午後3時ごろでしょうか、Xさんの姿を見かけました。「体調、良くなった?」「はい、どうにか」。実は、昨日の朝、Xさんから学校に電話が掛かってきました。

「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「おはようございます。もしかすると、金原先生ですか」「はい、そうですが、あなたはだれですか」「Xです。すみませんが、M先生はいらっしゃいますか」「はい、少々お待ちください」「はい。M先生を呼んでくださってありがとうございます」

その後のM先生とXさんのやり取りを聞いていると、どうやらXさんは体調がイマイチですが学校に出てこようとしているようでした。M先生に説得され、結局休むことに。きっと、進学フェアで志望校の話を聞きたかったのでしょうね。でも、こういう時期ですから、少しでも体調が悪かったら休んでもらっています。

「はい、どうにか」と答えたXさんの顔色はよく、声もしっかりしていました。100%ではないにせよ、体調も回復したのでしょう。それに比べて、昨日の進学フェアの会場にいたHさんはなんだかむくんでいました。前から大きかった体がさらに一回り膨らんだ感じがしました。ジャージがはちきれそうでした。聞くところによると、Hさんは何かというとすぐ休んでいるとか。骨と皮になっているよりはましかもしれませんが、見たところ締まりがなく、不健康な感じがしましたねえ。あの体をスーツに包んだとしても、面接官に与える印象は芳しくないでしょう。

Xさんは校舎の掃除のアルバイトをしています。夕方、ぱきぱき働いてゴミ捨てなどをしてくれました。体を動かすことをいとわないところが、Xさんの長所であり、少しの病気ぐらい跳ね返してしまう原動力になっているのです。Hさんにも見習ってほしいですね。

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