Category Archives: 生活

新しい食生活

6月15日(水)

学期末が近づくと、アメリカの大学のプログラムで来ている学生への発話力テストがあります。それぞれの学生のレベルに合わせて質問に答えさせたりまとまった話をさせたりしながら、文法や語彙の定着具合や発音などをチェックします。テストと言いつつも、雑談の中からそういった力を測っていきます。

Jさんは自炊をしています。日本料理が作れるというので何が作れるか聞いたら、カツ丼という答えが返ってきました。カツ丼が日本料理かなあと思いながらも、ハンバーグやスパゲティを食べてきた人から見たら、ご飯粒の上にしょうゆ味のたれがかかった料理は、十二分に日本料理何だろうと納得することにしました。

Rさんは全く料理をしません。毎日、コンビニ弁当でお腹を満たしています。国にいた時は、仕事をしながらお菓子を食べるのが食事代わりでした。不健康なにおいがプンプンしますが、目の前のRさんは顔色もよく、私の質問に積極的に答え、弱々しい感じはしませんでした。

さて、この2人、食生活が正反対でした。Jさんは朝ごはんと昼ごはんをしっかりとり、晩ごはんは食べないことが多いと言っていました。宿題をしたら、そのまま寝てしまうそうです。一方、Rさんは、朝はコーヒーだけで、昼は抜き、晩ごはんをたっぷり食べます。その晩ごはんが、コンビニ弁当なのです。夜食も少々とのことでした。

2人とも、お金がないわけではありません。Rさんなんか、ゴールデンウィークにしまなみ海道でサイクリングをしたくらいですから。最近の若者は、1日3食じゃなくても平気なのでしょうか。食事は集約して、自分のしたいことに時間を振り向けようとしているのかもしれません。すると、料理をしないRさんなんか、口が寂しくなったらサプリなんて方に進むんでしょうかねえ。

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未納

6月14日(火)

急激に進んだ円安やらロシアのウクライナ侵攻やらの影響で、中小規模の100円ショップが閉店に追い込まれているそうです。取扱商品全般の仕入れ値が上がって、100円で売っていては商売が成り立たなくなってしまったそうです。飲食店も原材料費高騰で、値上げに踏み切るところが増えています。

そんな中、Kさんが来学期の学費をまだ納めていません。KCPは学費の値上げはしていませんが、アルバイトをしているKさんには、諸物価の上昇は相当痛いようです。もしかすると、Kさんのアルバイト自体も危うい状況かもしれません。時給が下がるということはあまり考えられませんが(というか、最低賃金付近でしょうから、下がりようがないとも考えられます)、時間数を削られることはあり得ます。そうすると、ぎりぎりのところで生活しているKさんにとっては辛いでしょう。さらに、病弱なKさんはアルバイトを休んでいるかもしれません。担任の先生によると、成績も思わしくないようです。Kさん、八方ふさがりの感すらあります。

Kさんは挫折してしまうかどうかの瀬戸際に立たされています。せっかく嵐のような2021年を乗り切ったのに、思いもよらぬ経済情勢、世界情勢の余波をかぶって沈没してしまっては、泣くに泣けません。根がまじめなKさんですから、私たちも何とか助けてあげたいです。しかし、私たちにできることは限られています。

毎月100万円ものお小遣いを国からもらっている議員さんたちには、こういった留学の苦労などわからないでしょうね。票につながらない留学生のために汗をかこうなど、微塵も思っていませんよね。

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健康の源

6月7日(火)

午後3時ごろでしょうか、Xさんの姿を見かけました。「体調、良くなった?」「はい、どうにか」。実は、昨日の朝、Xさんから学校に電話が掛かってきました。

「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「おはようございます。もしかすると、金原先生ですか」「はい、そうですが、あなたはだれですか」「Xです。すみませんが、M先生はいらっしゃいますか」「はい、少々お待ちください」「はい。M先生を呼んでくださってありがとうございます」

その後のM先生とXさんのやり取りを聞いていると、どうやらXさんは体調がイマイチですが学校に出てこようとしているようでした。M先生に説得され、結局休むことに。きっと、進学フェアで志望校の話を聞きたかったのでしょうね。でも、こういう時期ですから、少しでも体調が悪かったら休んでもらっています。

「はい、どうにか」と答えたXさんの顔色はよく、声もしっかりしていました。100%ではないにせよ、体調も回復したのでしょう。それに比べて、昨日の進学フェアの会場にいたHさんはなんだかむくんでいました。前から大きかった体がさらに一回り膨らんだ感じがしました。ジャージがはちきれそうでした。聞くところによると、Hさんは何かというとすぐ休んでいるとか。骨と皮になっているよりはましかもしれませんが、見たところ締まりがなく、不健康な感じがしましたねえ。あの体をスーツに包んだとしても、面接官に与える印象は芳しくないでしょう。

Xさんは校舎の掃除のアルバイトをしています。夕方、ぱきぱき働いてゴミ捨てなどをしてくれました。体を動かすことをいとわないところが、Xさんの長所であり、少しの病気ぐらい跳ね返してしまう原動力になっているのです。Hさんにも見習ってほしいですね。

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5倍、8倍、10倍、12倍‥‥

5月27日(金)

私のうちの近くにあるドラッグストアAは、税抜き100円ごとに1ポイントもらえるポイントカードを発行しています。これは普通のことですね。私もそのカードを作りました。Aは、時々ポイント10倍セールをします。そうすと、私のようなけちんぼは、10倍セールの日を狙って買い物します。何が何でもAで買わなければならないものもなければ、急にAで売っているものが必要になることもありませんから、10倍セールの幕が出ていたらAに入ってみるのです。仕事帰りにふらっと立ち寄って、これはと思うものがあれば買います。

ところが、去年、Aは10倍セールをやめてしまいました。その代わり、8倍セールと5倍セールを始めました。10倍だとポイントをあげすぎて、もうからなくなったのでしょう。私はAに寄らなくなりました。10倍セールの存在を知っていますから、8倍や5倍で買うのは忌々しい感じがします。うちの近くには、AのほかにドラッグストアBや、ホームセンターCもあります。マスクなら、スーパーDにも置いてあります。

私みたいな客が多かったのか、いつの間にかAは10倍セールを復活させました。幕が新しくなったような気もします。入ってみると、以前と同じようににぎわっていました。そういえば、1割引きの日が、月に1日から3日に増えていました。

そして、3月ごろでしょうか、なんと、Aの店先に12倍セールの幕が出ているではありませんか。10倍では客が戻ってこなかったのでしょうか。12倍の日に店をのぞいてみましたが、ほしい物は特になく、何も買いませんでした。こうなると、15倍セールを期待したくなります。

こんなことをしている人が多いから、日本の景気って良くならないんですね。でも、本格的なインフレが来そうだと聞くと、15倍どころか20倍セールまで待ちたくなります。岸田さん、こんな私は非国民ですか。

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テーブルを挟んで

5月24日(火)

5月も下旬となれば、かなり高い位置から日が差してきますから、ビルの谷間にあるKCPの校庭も、昼は太陽光の恵みにあずかることができます。半袖だと風が肌寒く感じることもありますが、日が当たっていればそんなことなど忘れさせてくれます。このところ、校庭で勉強する学生が出てきました。うちで宿題をするよりも図書室で教科書を広げるよりも、校庭のほうが気持ちよく、はかどるのかもしれません。

談笑している学生もいます。校庭のテーブルにはいつの間にか椅子が2脚ずつ配置され、授業後のひと時を過ごすにはうってつけの場所となっています。去年は椅子を1脚ずつにして、学生同士が集わないようにしていました。それを思うと、笑い声こそ聞こえてきませんが、テーブルの周りでいかにも楽しそうにしている学生たちが現れたのは、日常復帰への第一歩か二歩です。

このところ、屋外などではマスクを外そうという動きが少しずつ出てきました。談笑だとマスクを取るわけにはいきませんが、校舎の外ならもっとはしゃいでもいいのかなあと思います。今までの自分の世界よりも広い世界から来た友人と知り合うことは、留学の主要な意義の一つです。2階のラウンジではしてほしくないですが、校庭はどんどん活用してもらいたいですね。

ある程度の新規感染者を出しつつも、日々の活動を可能な限り元に戻していくという流れができつつあります。この流れが滞ることなく太くなっていってほしいです。最初はほんのちょっとの間だけ我慢すればと思っていたのが、もう3年目ですからね。

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季節外れの卒業証書

5月20日(金)

夕方、卒業証書を渡しました。もちろん、5月20日などという中途半端な時期に卒業する学生はおらず、今年の3月の卒業生でもありません。なんと、2年前の学生です。

2年前の3月は海外からウィルスが入ってきて感染が広がり始めたころです。卒業式は中止になり、日時予約制で学校へ来た卒業生に証書を渡していました。「不要不急の外出は避けましょう」という時期でしたから、学生たちには無理に証書を取りに来いとは言っていませんでした。そのため、取りに来る時機を逸してしまった学生もいました。そんな1人のSさんに渡したというわけです。

Sさんは進学先を卒業し、明日、一時帰国するそうです。3年ぶりに家族に会って充電したらまた日本に戻ってきて、仕事を始めると言っていました。国へ帰る前に証書をもらってけじめをつけようという気持ちが、Sさんの心の中にあったのかもしれません。

バタバタしているうちに過ぎてしまった2年ですが、Sさんのような若者にとっては重い意味を持つ2年だったはずです。現に、どうにか日本語が使えるだけだったSさんが、仕事を始めるだけの能力実力技術力を付けたのですから。そして、一時帰国してすぐに戻って来られるくらいにまで、海外との行き来が復活しつつあるというのも、驚きであり、うれしくもあります。

2年前に職員室の片隅で証書を渡した卒業生たちは、どんな学生生活を送ったのでしょう。専門学校や大学院に進んだ学生たちは、Sさんと同じ立場です。苦しみながらも新たな道を歩み始めていると信じたいです。

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50年

5月16日(月)

昨日は、沖縄の日本復帰50周年の日でした。報道機関の論調は、基地負担や経済面での格差が埋まらないままだと、厳しいものが多かったです。

沖縄へは何回か行ったことがありますが、一番印象に残っているのは旧海軍司令部壕です。那覇市と豊見城市の境界線上の小高い丘にあります。地下壕にこもって戦っていたのですが、本土決戦を引き延ばすためのような戦いは悲惨を極めました。そして、ここを守っていた大田實少将は、昭和20年6月13日、沖縄戦終結の10日前、自決しました。その際に海軍次官に宛てて打電した電文が、壕の中に掲示されています。

電文の最後に、食料もない中必死に戦った沖縄「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコトヲ」という文があります。現状を見る限り、“御高配”は米軍基地です。大田少将の最後の言葉は全く無視され続けてきたと言っても過言ではありません。これを読んだ時、本土に住む日本人として恥ずかしかったです。

摩文仁の丘もひめゆりの塔も行きました。それほど有名ではなくても、沖縄はいたるところに戦跡があり、街角でよくハッとさせられます。同時に、米軍基地も普通にあります。首里城から普天間基地まで、どう測っても10キロ弱、琉球王国の陵墓・浦添ようどれからなら5キロ足らずです。皇居を基準に考えると、新宿が5キロを少し切るくらい、お台場が7キロ、高円寺で10キロです。

50年前の日本は上り坂でした。その時に“御高配”ができなかったかなあと思います。“御高配”をしなかったことで某国の覚えがめでたく、繁栄が多少なりとも長続きしたのでしょうか。昨日はニュースを聞きながら、そんなことを考えました。

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引き締める

5月11日(水)

東京の新規感染者数が増えています。といっても、先週は連休の最中でしたから、検査を受けた人が異常に少なかったのでしょう。その反動で、休み明けから新規感染者数が前の週を上回り続けているのだと思います。来週になっても前の週(=今週)よりも多くの新規感染者が現れ続けたとなると、またもや感染拡大の方向に動き始めたと見るべきなのではないでしょうか。

学校の近くの郵便局が、11時半から1時までお休みになってしまいました。感染者や濃厚接触者が増えて、お昼の時間帯の交代要員が確保できないようです。郵便局に用事がある場合は、ちょっと離れたところ(といっても、歩く距離が数十メートルから数百メートルになるくらいですが)にある別の郵便局へ行けばすみますから、仕事や生活に差し支えることはありません。でも、こういう身近なところで感染拡大の影響が出てきたとなると、先週は休みだったからなどとのんびり構えてもいられません。

私が見る限り、最近来日した学生も含めて、学生たちから動揺は感じられません。自分の部屋より学校の方が、国より日本の方が、楽しいようです。細々とではありますが、ラウンジや校庭で談笑する学生の姿が見られます。季節が進むと、進学で苦しむ顔が出てきます。だからこそ、こういう状況が少しでも長続きするように、引き締めるべきところはピシッとやらなければなりません。

卒業生はどうしているんでしょうね。それぞれの進学先で勉学を楽しんでいるんでしょうか。それぞれの学校がそれぞれのピシッとで、勉強の環境を整えているのだと思います。

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過ぎたるは

5月9日(月)

マイナンバーカードの手続きができるというので、昨日、家の近くの会場まで足を運びました。だいぶ前に番号をもらってからほったらかしにしてありました。マイナポイントとか保険証の代わりになるとか、よくわからないこともありますから、ついでに聞いて来ようと思いました。

会場の区民センターみたいなところは行ったことがありますから、すぐわかりました。案内に従ってそこの会議室に入ろうとすると、「マイナンバーカードのご申請のお手続きにいらっしゃられたのでしょうか」と声を掛けられました。うなずくと、「まず、お写真をお撮りします。こちらの椅子にお掛けになられてください。お荷物はそちらのかごに入れられて、マスクは取られてください」と指示されました。言われた通りにすると、「では、こちらの赤い点をご覧になられていただけますか」と新たな指示が。

写真の次は、書類作成。「こちらとこちらにご記入されてください。お写真の裏側にお名前と生年月日を書かれてください。そうしたら、お写真をお貼りになられてください。こちらののりを使われて大丈夫です。はい、では、こちらの封筒に入れられて、こちらにご住所とお名前を書かれてください」「はい、ありがとうございました。お帰りの際にポストにお出しになられてください。1か月ぐらいしましたら、区役所からご連絡がありますから、取りに行かれてください」

なあんだ、その場でもらえるのかと思ったら違うんだ。世の中、そんなに甘くないよね。写真代が浮いただけでも、よしとしなければ。

いかにもアルバイトという感じの若者が世話をしてくれましたが、言葉遣いには辟易しました。私のようなはるかに年上の人を相手にするのですから、失礼のないように丁寧に話さなければという気持ちは伝わりました。でも、居心地は悪かったですね。この人にマイナポイントとか聞いても絶対にわからないだろうと思い、あきらめました。

会場出口に立っていた案内の人に、「ここから一番近いポストはどこですか」と聞いたら、「少々お待ちください」と言って誰かに聞きに行ったきり、5分ぐらい戻ってきませんでした。会場でポストに投函と言っているんだから、ポストの位置ぐらい調べておけよ。

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はじめまして

5月7日(土)

朝から仕事をしていて目が疲れてきたので、ちょっと息抜きにロビーに出たら、「すみません。M先生はいますか」と、話し掛けられました。年格好からすると学生なのですが、あまり見かけない顔です。私もすべての学生の顔と名前を知っているわけではありませんし、つい最近入国したばかりの学生なのかもしれません。また、ちょうどJLPTやEJUのための受験講座が始まる時間帯でしたから、その関係の用事なのかなと思い、M先生を呼びました。

しかし、M先生もその学生(?)の顔に見覚えがない様子でした。「お名前は?」とM先生が聞くと、「Hです」と答えるではありませんか。M先生も私もびっくりしました。この稿にも何回か登場している、教師のだれもが1日も早く教室で会いたいと願っていた、あのHさんが目の前に立っているのです!!

2人同時に思わず「えーっ」と声を出し、M先生が「ねえ、Hさん、ちょっとマスク、取ってみて」と促すと、Hさんはマスクを外しました。その口元は、オンラインの画面で見慣れたHさんのものです。でも、何か違います。そう、メガネをかけていなかったのです。髪型もオンラインの時とは違っていました。でも、声は確かにHさんです。

Hさんは、これから行われるウェルカムミーティングで代表あいさつをします。その練習をしに、早めに学校へ来たのでした。「やっとここまで来たねえ」と声を掛けると、少し笑みをこぼしながら軽くうなずきました。

Hさんのあいさつは立派なものでした。去年の漢字が「待」だったHさん、今年は飛躍の年にしてくださいね。大いに期「待」していますよ。

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