Category Archives: 生活

ストーブが欲しい

10月22日(土)

夕方、仕事をしていたら、Tさんから電話が来て、学校で相談したいことがあると言います。何事かと思って待っていると、ほどなくTさんが来ました。

相談内容を聞くと、スマホを取り出して、石油ストーブと電気ファンヒーターの写真を見せて、どちらが暖かいかと聞いてきました。国のお母さんに、寒くなったから暖房器具を買いなさいと言われたそうです。

部屋にエアコンがあるかと聞いたら、あるけどエアコンを暖房に使う空気が乾燥するので加湿器も使わねばならず、電気代がかさむと言います。最近、電気代、高いですからね。でも、乾きすぎた空気は、のどにはあまりよくありません。Tさんは、体格はいいのに病弱なところがありますから、用心に越したことはありません。

ただ、石油ストーブとなると、住んでいるところによっては禁止されていることもあります。また、灯油を蓄えておくことは、感心しませんね。春になったら、使わなかった灯油の処分をどこかに依頼しなければならないかもしれません。そういうことを考えると、石油ストーブは、なしですね。

そう話すと、Tさんは一応納得しました。しかし、スマホを操作して、1枚の写真を見せました。アルミホイルに包まれた焼き芋の写真です。石油ストーブの口コミには、ストーブで作った焼き芋を、ストーブで暖まりながら食べるとおいしいと出ていました。

本音はここにあったようですね。私が「うん」と言えば、胸を張って石油ストーブを買い、焼き芋ライフを楽しむつもりだったのかもしれません。土曜日にわざわざ学校へ出てきたということは、よっぽど焼き芋にあこがれているんですね。

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引継ぎ

10月18日(火)

私は一番下から一番上まで、どこのレベルでも教えますから、例えば初級で教えた学生を中級や上級でまた教えるなどということがあります。先週入った上級クラスには、去年、レベル1のオンライン授業のクラスで教えた学生が3人いました。「Pさんの顔はzoomの小さい画面でしか知らなかったけど、実物のほうがカッコいいね」なんて言うと、少し照れながら「先生、よろしくお願いします」なんて答えてくれました。そんな切り返しができるあたり、日本語の面でも成長しているんですね。

午後、もう一つ入っている上級クラスの引継ぎがありました。先学期担任をしていたH先生から、各学生の進路の決定状況や学業面、生活面などについての話を聞きました。このクラスにも、初級で教えた学生や受験講座で面倒を見ている学生が何名かいます。

YさんとLさんは、中級で教えました。順調に進級していれば最上級クラスにいてもおかしくないのですが、なぜかまだ上級の入口のクラスにとどまっています。Yさんは休み癖が抜けないようです。継続・積み重ねができませんから、伸びないんでしょうね。Lさんはマイペースで準備して大学院を受験し、面接で何もできずに撃沈したとのことです。Lさんもまた、授業中はいい加減でしたね。

Xさんは、初級で教えたときは危なっかしかったですが、先学期あたりはだいぶ安心して見ていられるようになったとか。こういう報告を聞くと、会うのが楽しみになってきますね。GさんやJさんは、私が受験講座で見ていた通り、話す力はかなりあるとのことです。

学生たちは若いですから、わずかな期間で大変身することもあります。1月期、私が次の先生方にどんな引継ぎをするのでしょう。これからの授業にかかっています。

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50%じゃ困ります

10月17日(月)

新学期初日から呼び出していたCさんに、ようやく会えました。私が呼び出して、しかもその召喚になかなか応じなかったということは、だいたいどんな学生か見当がつきますね。

Cさんの9月の出席率は、ちょうど50%でした。今学期も始まって1週間しかたっていないのに、すでに何日も休んでいます。このままでは、ビザの更新すら危うい状況です。また、そんなふうに休んでばかりいますから、学業面も思わしくありません。大学に進学しようと考えているようですが、見通しは暗いです。

志望校を聞いてみると、すぐに3校の名前が出てきました。その大学名も、夢物語レベルではなく、現実的な線でした。うち1校は名前を間違って覚えているようでしたが、進路についてまるっきり考えていないわけではないようです。試験日を聞いたら、ちゃんと答えられましたしね。

だからこそ、出席率が大事なのです。せっかく合格したのに、出席率が悪くてビザがもらえなかったなどということになったら、泣くに泣けません。欠席することは、自分の将来を自分の手で狭めているにほかなりません。

そして、日本語です。私の言葉は通じていたみたいです。まあ、そんなに難しい話はしませんでしたから、当然といえば当然です。しかし、Cさんからの返答は普通体になってしまうことが多かったです。これが入試の面接だったら、落とす理由を面接官に与えているようなものです。また、担任のO先生によると、Cさんは授業中に母語で友達としゃべっていることがよくあるそうです。指名されて答えるときも、単語だけなんでしょうね。

今回は初回なので、激励モードで終わりにしました。しかし、次は激怒モードですよ。

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新しいマウス

10月15日(土)

今週、学校で使っているパソコンのモニター以外が入れ替わりました。前のは5年以上使っていましたから、交換どきでした。マウスは、この夏ぐらいからほとんど言うことを聞かなくなっていましたから、キーボードはまだ使えたものの、一緒に取り換えることにしました。マウスが復活すると、改めてその便利さに感心させられます。コピペをはじめ、多くの操作が片手でできますからね。

そのマウスの操作、私は左手でします。コンピューターにマウスがついたのは30年ぐらい前でしょうか、その時からずっと左手です。初めてマウスに触った時から左手だったというか、右手で触るという発想は全くありませんでした。私の中では、機械類の操作は、ボタンを押すのもつまみを回すのもタップやスワイプも、左手の仕事です。右手の役割は、箸とペンを持つのが中心です。

だから(という接続詞が妥当かどうかわかりませんが)、他人が何かをするときにどちらの手を使うかということに、私は普通の人より敏感だと思います。電車の中で周りの人が左手でスマホをいじっていると、“あ、ご同業”と思ったり、NHKの桑子アナウンサーがブラタモリで左手でお箸を持っているのを見て親しみを感じたりしています。初めてのクラスでも、左手をよく使う学生から顔と名前を覚えていく傾向があります。

横書きの書類をホチキス止めするときは、左手のほうがやりやすいと思います。いちいち上下を逆さまにしながらパチンとやっている先生を見ていると、ご苦労なことだと思います。まあ、自動改札を左手でタッチしようとする私は、右利きの人たちから変な奴だと思われているんでしょうけどね。あ、そもそも、そんなことは誰も気にしていないのかな。

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半袖の街から

10月11日(火)

東京は、最近長袖がちょうど過ごしやすい陽気が続いています。昨日も、天気予報では最高気温が29度とか28度とか言っていましたが、日がほとんど差すことなく、結局は22.8度止まりでした。沖縄は、連日30度近くまで気温が上がっているようです。まだ夏なんですね。

新学期が始まったにもかかわらず、Yさんはその沖縄にいます。当初の予定なら、今頃は会社の社長になって、KCPの学生ではなくなっているはずでした。しかし、手続きが遅れて、KCPをやめてしまうと不法滞在になってしまいますから、KCPの学生の身分をキープしている次第です。

ビザを変更するにしても、留学ビザ時代の出席率がかかわってきますから、沖縄になんかいちゃいけないのですが、Yさんにはそういう意識は希薄なようです。欠席したので様子を聞こうと電話した先生に「沖縄にいます」と答えたYさんを、素直でよいとするのか、罪の意識のかけらも感じられないとするのか、意見の分かれるところですが、私は後者のような気がします。

Yさんは国で大学を出ていますから、会社をつくればそれなりのビザを取ることはできます。しかし、会社を設立するにはお金がかかります。そのお金を、Yさんはご両親に出してもらったそうです。それも、個々の家庭の事情ですから、部外者の私がとやかく言うお話ではありません。しかし、そのお金で沖縄へ行って遊んでいるとなると、一言も二言も申し上げたくなります。どんな会社をつくるか知りませんが、今からこんな浪費を繰り返していたら、経営がうまくいくはずなどありません。また、会社設立のためにどうしても休まざるを得ないというのであれば、受験生が入試日に休むのに準じて認めてあげてもいいですが、“沖縄にいます”じゃどうしようもありません。

明日はYさんのクラスに私が入りますが、きっと会えないでしょうね。

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期末テストの日

9月28日(水)

「はい、あと10分です。できた人は、出して静かに勉強してもいいですよ。教室の外に出る場合も、他のクラスはテスト中ですから静かにしていてください」と声を掛けると、数名の学生が提出しました。机を抱いて寝ていたSさんも、むっくり起き上がって教卓まで解答用紙を持って来ました。

そのSさんをはじめ、提出した学生全員が、かばんからスマホを取り出しました。外に出た学生はおらず、全員が教室内でスマホをいじり始めています。Sさんは、いつの間にかイヤホンを突っ込んでいるではありませんか。残念ながら、次の試験科目の教科書を開いて勉強を始めた学生はいませんでした。

学生たちはデジタルネイティブですから、スマホに教科書やノートを取り込んでいるのかもしれません。でも、スマホを操作する学生の顔つきや指先を見る限り、勉強している感じはしませんでした。デジタルネイティブだからというよりも、試験時間のほんの数十分スマホから離れただけで、スマホに飢えてしまったといった勢いで、スマホをなでたりたたいたりしていました。その後に提出した学生も、1名を除いてみんな、まずスマホでした。

試験監督が終わって一息ついていると、H先生が「図書室の辞書は借りられますか」と聞いてきました。常識的に辞書類は禁帯出です。H先生がそんなことをご存じないはずがありません。「入試で辞書可なんですが、『紙の辞書に限る』なんですよ」ということでした。学生御用達のスマホは、当然不可。かといって、たった1日の試験のために何千円もする辞書を買うかというと、それもちょっと…。そして、学校に頼ろうとしているわけです。2日が試験で、3日に返すという条件で貸すことにしましたが、その学生、紙の辞書が引けるのでしょうか。

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秋模様

9月21日(水)

朝(私にとっての“朝”は、普通の人にとっては“未明”か、下手をすると“夜更け”かもしれませんが)、窓を開けると、ひやんとしました。気象庁の観測によると、東京の明け方の最低気温は午前3:58の16.5度です。建物の中には夏の熱気が残っていますが、16.5度は十分すぎるくらい秋です。明後日はお彼岸です。週間予報を見る限り、大汗をかくような気温にはなりそうもありません。まさに、暑さ寒さも彼岸までです。

外がそんな状況でしたから、今朝は半そでシャツに薄手のカーディガンを羽織って出勤しました。自分がそういう格好だからなのかもしれませんが、電車内の半そでの人が寒々しく見えました。でも、フリースのお姉さんはやりすぎなんじゃないかなあ。

教室に入ると、暑がりのTさんは相変わらず半そで短パンです。でもTさんは丸々としていて、適度に焼けていますから、見ているほうに鳥肌が立ちそうな様子ではありませんでした。学期の初めにエアコンの吹き出し口を避けて窓際に避難していたHさんが、教卓の近くに戻ってきました。1か月ぐらい季節を先取りといった感じのジャケットを着込んでいました。

教室は、カーディガンを脱いで教壇に立った私を含めても、半袖が少数派でした。エアコンなしで、窓とドアを開けて風が通るようにすると、暑からず寒からず、ちょうどいい温度です。6月末の連続猛暑日のころは秋まで体がもつだろうかと心配もしましたが、どうやらもっちゃったようです。10月1日の衣替えまであと10日、今年最後の半袖を楽しみましょう。

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学生の食生活

9月15日(木)

学期末が近づくと、アメリカの大学のプログラムで来ている学生へのインタビューテストがあります。その学期に習った文法や単語が使えるか、それまでに勉強した事柄を組み合わせてまとまった話ができるか、こちらのナチュラルスピードについてこられるか、コミュニケーション力はどうかなどということを、話をしながらチェックします。しかし、私にとってこのテストの一番の楽しみは、学生の生活の一端を知ることです。

Eさんは料理には自信を持っています。しかし、今住んでいる寮はキッチンが狭いので、その料理の腕が発揮できません。やむを得ず、コンビニ弁当が食生活の中心です。「Eさんが作った料理とコンビニで買ったお弁当と、どちらがおいしいですか」と聞いてみました。「コンビニのお弁当はいろいろありますが、私の料理の方がおいしいです」とちょっと誇らしげに答えました。今はお好み焼きに挑戦していますが、きれいな形にならないと嘆いていました。たこ焼きもよく食べるそうです。

Gさんは、朝、ポテト料理を40分ぐらいかけて作ります。このポテト料理は絶対おいしいのだそうですが、どんな料理かは、まだ初級のGさんには説明できませんでした。日本の料理では、カツ丼やカレーがおいしいと言っていましたが、アメリカ人のGさんから見ると、カレーは日本料理何ですね。「納豆は食べられますか」と聞いたら、「食べようと思いましたが、ダメでした」と、鼻をつまんで答えてくれました。

2人は今学期が終わったら帰国します。またたこ焼きを食べに、納豆に再挑戦しに、ぜひ来てもらいたいです。

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何が売れるでしょう

9月10日(土)

「輸出産業は円高で経営が苦しくなっているので、為替を円安に誘導する」などということが、昭和末期か平成初期の、“Japan as No.1”のころにはよく言われました。事実、円高不況というのがあり、数字の上では確かにそうなのですが、自国の通貨が強いことのどこがいけないのだろう、わざわざ自国の通貨を弱くする必要があるのだろうかなどと、経済のよくわからない私はそう思っていました。強い円のおかげで、外国に対して意味も根拠もない優越感に浸っていただけかもしれませんが。

政府と産業界の“努力”が実って、半導体も電気製品も自動車も、バンバン輸入するようになりました。それに代わる産業が国内で生まれたかというと、アニメなどのコンテンツとインバウンドの観光業ぐらいでしょうか。しかし、観光業はこの2年余り、目に見えないほどの大きさのウィルスにやられっぱなしで、全く振るいません。世界中のだれひとり予測できなかったこととはいえ、実に脆弱な基盤の上に立っていたものです。

今、日本を代表する産業って何でしょう。サブカルは産業って呼べるのかなあ。日本留学は知識や技術の輸出を考えられないこともありませんが、日本を支える産業とは言い難いです。それに、日本の国が弱ってしまったら、前途洋々たる若者は寄り付きませんよ。“円安をフルに活用して、日本で遊んじゃおう!”なんていう人たちが中心になっちゃうかもしれません。

1ドル150円が目の前です。ロシアのルーブルに対してすら安くなっているそうじゃありませんか。こうなったら、大昔に1ドル250円で作ったトラベラーズチェックが日の目を見る日が来ることを楽しみに待つほかありません。

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何のために?

8月29日(月)

Cさんは2020年末に来日し、入管の特例措置で来年3月までKCPで勉強する予定の学生です。本来だったらすでに上級まで行っているはずなのですが、毎学期成績が芳しくなく、いまだに中級です。先日の中間テストもさんざんな成績で、早くも来学期の進級に赤に近い黄信号がともっています。

Cさんの不成績の原因は、一つには、対面授業を避けていることです。授業に集中できているか怪しい面があります。また、話す訓練が不十分ですから、教師とのコミュニケーションさえもうまく取れません。オンライン授業は、学習者側の意欲が伴って初めてうまくいくのです。

オンライン授業を受け続けているのは、国のご両親からの影響もあるようです。Cさんはワクチンを打っていません。日本のではなく国のワクチンを打てというのが、ご両親のお考えです。ワクチンを打ちに一時帰国するというのも、前後の手続きの煩雑さを考えれば、現実的ではありません。朝のラッシュが怖いと言います。だったら、ラッシュの前に来いと言いたいです。午後の授業なら出られると言います。午後は初級の授業しかありません。まあ、中間テストの成績のひどさや、話す力のなさ加減を見れば、初級クラスに格下げしても妥当かもしれませんが。

どうやらご両親はCさんを帰国させたいようなのです。でも、Cさんは日本にいたいと思っています。しかし、KCPを出た後、日本で何をするつもりかというと、はっきりしません。志望校も漠然と有名校を並べているだけで、本気で考えているとは思えません。Cさんは支払った授業料がもったいないから3月までKCPで勉強したいと言います。でも、私から見ると、それは時間の無駄に過ぎません。今すぐ帰国して、転進を図るべきだと思います。

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