Category Archives: 進学

口を大きく

9月7日(土)

今年は、昨年あたりと比べると、指定校推薦の枠を利用する学生が多いです。先週から今週にかけて、指定校推薦を希望する学生の面接をしました。推薦してもらおうというくらいですから、基本的には“いい学生”です。また、H大学やK大学など、上位校への推薦を狙っている学生は、KCPでの成績もそれなり以上です。

しかし、面接の場では、Sさんを除いて話す力に不安を感じました。何も考えていないわけではありませんが、頭の中身がスムーズに口から出てこないのです。非常に堅苦しい表現になったり、直接言えば一言か二言で済むのに山手線を逆回りするかのような遠回りの言い方をしたりして、テンポよく面接が進むことはほとんどありませんでした。しかも発音が悪いと来ていますから、私のような、日々KCPの学生の超下手な日本語を聞いて訓練されている者なら聞き取れますが、そうでない方は理解不能に陥ってしまいます。

Fさんはその最たる例で、私と一緒に面接官を務めたG先生は何を言ってるかさっぱりわからなかったとおっしゃっていました。言っている内容は、志望理由も将来の計画も、実にすばらしかったです。しかし、それが面接官に伝わらなかったら、何も言わないのと同じです、

そんなわけで、今週は授業後にあちこちで面接練習が行われていました。Fさんなどは、発声練習が必要でしょう。口を大きく開けて1音1音はっきり発音するところから始める必要があるでしょう。ほかの学生も、頭と口を結ぶ神経を太くして、考えたことが口から流れ出るような感じにまで訓練しておいてもらいたいです。

Fさんたちの本番の面接試験は、今月末から来月初めにかけてです。大いに期待していますから、しっかり練習してくださいね。

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ほめられました

8月28日(水)

12時少し前、「じゃあ、こういうテーマでグループごとに話し合っててください」と学生たちに指示を出して、私は6階へ。6階のベンチにはすでに数人の学生が待ち構えていました。講堂に入り、この蒸し暑い中、進学フェアに参加してくださった専門学校の担当の方々にご挨拶をしました。

その後すぐに教室に戻り、授業を終わらせ、諸々の作業や学生との約束を済ませて、12時半過ぎに再び6階に上がると、進学フェアの会場は結構にぎわっていました。私の知っている顔もいくつかありました。夏休みが明けてから短期決戦であおりまくったからでしょうか、どの専門学校のブースでも数人の学生が話を聞いていました。

去年は年内に定員が埋まってしまった専門学校が多く、出遅れて思うように進学できなかった学生もいました。今年はそんなことがないようにと思っていましたが、こんな感じで学生が動いてくれたら、思い通りの進学ができるでしょう。9月には推薦入学の出願が始まります。進学フェア参加校の多くから推薦枠をいただいていますから、それを活用してどんどん決めていってもらいたいです。

留学の目的が日本での就職なら、専門学校が一番だと思います。就職支援の手厚さは、なんたって専門学校です。大学や大学院を出て就職するより“いいところ”に入れるケースも少なくありません。

専門学校の方からは、「みなさん、日本語がしっかり話せますね」とおいお言葉を頂戴しました。多少のヨイショはあるでしょうが、うれしいものです。

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幸せとは

7月31日(水)

理科系志望のZさんは、6月のEJUで、非常に素晴らしいとは言えませんが、まあまあいい成績を取りました。TOEFLもすでに受けていて、こちらは素晴らしいと言って差し支えない成績でした。このような成績なら、どんな大学に入れそうかという相談に来ました。

“まあまあ”とはいえ、数学は満足できない成績でしたから、11月で更なる高得点を狙います。でも、今の持ち点で受かりそうな滑り止め相当の大学を探しています。過去の進学データを見ると、M大学、R大学、S大学あたりなら勝ち目のある戦いができそうです。K大学は難しいかもしれませんが、英語の成績がいいのでまるっきり可能性がないわけでもありません。

そういった大学で合格を1つ確保しておき、本命の国立大学に勝負をかけるという計画です。T大学やN大学あたりならベストですが、そこまでいかなくてもP大学やQ大学などに入り、大学院でT大学やN大学を目指すという手もあります。

そんな話をした後で、Zさんは、理科系の大学院を出た後にはどんな世界が広がっているのかと質問してきました。これは難しい質問です。

一口に理科系の将来と言っても、大きく科学者と技術者という道があります。暴論かもしれませんが、科学者はノーベル賞を狙い、技術者は社会を支えます。科学者は1つの専門を深く追究し、技術者はつぶしが利いてなんぼの商売です。それぞれに面白さも苦しさもあります。

私は技術者でした。何が専門家はっきり言えないほど、あれこれいろいろなことに手を出しました(出させられました?)。そのおかげで、科学者タイプの同僚に比べて、科学技術(という言葉はあまり好きではないのですが)を広く眺められたと思っています。科学技術にとどまらず、日本語文法まで興味の対象にしてしまったので、今、こんな仕事をしているとも言えます。

最後に、「先生、今、幸せですか」と聞かれました。まるっきり質の異なる人生を2つ経験させてもらいましたから、幸せなのかなあと思います。

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先生、さようなら

7月19日(金)

終業のチャイムが鳴ると、「先生、さようなら」「先生、また来週」と、学生たちが思い思いの挨拶をして、教室を去っていきました。その直前まで書いていた作文を提出して。

数名の学生が残りました。諸般の事情で作文を書く時間が予定より短くなってしまいましたから、多少の時間オーバーは大目に見ることにしました。それでも、1人を除いて10分もしないうちに書き上げて出して教室を後にしました。ただ1人取り残されたのは、Lさんでした。見ると、原稿用紙の半分も埋まっていないではありませんか。

Lさんは、大学の直接募集で、日本語学校を経由せずに、文字通り国から“直接”日本の大学に進学しました。この4月に初めて来日し、留学生活を始めたものの、自分の日本語力のなさを痛感し、KCPで日本語を勉強し直そうとしています。

ペーパーテストはそこそこできるに違いありません。直接募集に合格したのだし、KCPのプレースメントテストでも中級と判定されたのですから。しかし、コミュニケーション能力には大きな疑問符が付きます。大学生活がうまくいかなかったのも、おそらく先生方とのやり取りに支障が生じるほどのコミュニケーション能力のなさゆえでしょう。文章を書くにしても、他の学生の半分以下のスピードでしかなかったから、時間を大幅にオーバーしても原稿用紙半分以下しか書けなかったのです。

訥々と語るLさんの言葉によると、国では例文レベルの長さの日本語しか書いたことがないようです。しかも、丁寧体でしか書いたことがないので、普通体と指定された今回の作文は、その時点で混乱してしまいました。

日本の教育機関(大学に限りませんから、こういう言い方をします)は、最近直接募集に力を入れていますが、Lさんのような学生を大勢入れてしまっているおそれがあります。Lさんは勇気をもって勉強し直す道を選びましたが、それもできずに、わからない日本語に囲まれて、コミュニケーションも取れずに、孤独と不安にさいなまれている留学生も少なくないことでしょう。

月曜日までに書いてくるようにと宿題にすると、Lさんは表情を和らげ、「先生、さようなら」と言って、教室を出ていきました。

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今度こそ

7月18日(木)

午前の授業後、Kさんが職員室に姿を現しました。日本語プラスの授業に登録していないけれども、授業を受けたいと言います。Kさんは入学以来先学期まで、6月のEJUに照準を定め、日本語プラスの授業も受けてきました。しかし、体調を崩し、精神的にも落ち込んで、どうやら不本意な受験に終わってしまったようです。

さらに話を聞くと、Kさんは、自分に残されたチャンスは11月だけだから、それに向けて最善の努力をしていくと、今までになく神妙な顔つきで決意を語りました。その表情は、先学期のような目に力のないどよ~んとしたものではなく、明るく前向きな力強さが感じられました。

これなら立ち直ってくれるだろうと、数学のS先生に私も一緒に頭を下げ、午後の授業から出させてもらうことにしました。S先生は、最初の学期からKさんの頭脳明晰さを高く評価されていました。先学期は欠席続きだったKさんのことを気にかけてくださっていたようで、逆に元気づけてくださいました。

Kさんは、数学の後、私の物理の授業にも出ました。今学期は6月のEJUの後ですから、基礎から始めます。Kさんの再スタートにはちょうどよかったかもしれません。Kさんにとっては2度目の授業ですが、以前よりもよくわかるのか、疑問点がはっきりしてきたのか、質問が多かったです。やる気に満ちている証拠だとも言えます。

始まったばかりですから予断は禁物ですが、この勢いを保ってくれさえすれば、受験に関しては十分に逆転可能です。受験校選びも含めて総合的に指導していけるのがKCPの強みですから、これからしっかりフォローしていきます。

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日本語強化の威力

7月4日(木)

Cさんは先学期レベル1の新入生でした。すばらしい成績を挙げ、期末テスト後にジャンプテストを受けて合格し、今学期はレベル3に上がります。レベル3からは進学に備えた日本語プラスの授業が受けられますから、午後、その説明を聞きに学校へ来ました。

ジャンプを希望する学生は、ジャンプ先のレベルのクラスで中位から上位に食い込めるぐらいの実力がないと、ジャンプは認められません。レベル1の勉強をしながら、レベル2の勉強も自分でこなさなければなりません。そして、レベル2の学生は70点が合格点のテストで満点に近い点を取らないと、レベル3には上がれません。かなりの努力を要します。

Cさんは、先学期、レベル2の学生向けのも含め、日本語強化の読解や聴解などを6科目も受けました。このくらいいろいろな先生に鍛えてもらったことが、ジャンプ成功の一因でしょう。レベル3ともなれば結構な長さの文章を読みますから、普通にレベル1の授業を受けるだけでは太刀打ちできません。そう考えると、Cさんはこれだけの日本語強化を受けてきたということは、入学の時点からジャンプを狙っていたのかもしれません。

日本語プラスの説明はあっという間に終わってしまいました。Cさんは聴解力も鍛えられていますから、同じような話を繰り返す必要もなく、すっと理解してくれました。これだったら、レベル3でも十分やっていけるでしょう。それと並行して、進学の準備も始めなければなりません。Cさんが考えている“いい大学”となると、それでも間に合うかどうかわかりません。26年進学になってもいいですから、安易に妥協しないと言っています。頼もしい限りです。

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低空飛行の果てに

6月25日(火)

今学期の出欠状況を見てみると、まだ6月なのに出席率が崩れてしまった学生がいます。本人はあれこれ理由を並べ立てますが、多くは私を含め第三者が納得できるものではありません。

進学のための塾に通っているから、疲れてKCPには出て来られないと言い訳する学生が少なくありません。塾に100%出席しても、KCPを休んだら出席率は下がります。出席率が下がると、最悪の場合、ビザが出ません。ビザが出なかったら、日本で勉強を続けることはできません。

確かに、音楽大学に進学したいという学生に対し、KCPは音楽の専門的な授業はしていません。美術の指導ができる先生はいらっしゃいますが、音楽の指導ができる先生はいらっしゃいません。私も理科系出身ではありますが、大学院入試の物理や化学や数学は全くできません。EJUの試験科目にしても、週末も含めて毎日ビシバシ鍛えるほうが、学生の目には効果的に映るのでしょう。だから、塾に通うななどとは言いませんが、本末転倒はいけません。

出席率だけではありません。学校に出て来なくなると、日本語力が如実に落ちます。日本語に対する反応が鈍くなるのです。こちらが何か問いかけても、ぽかんとしていたり的外れな応答をしたりして、コミュニケーションが進展しなくなります。となると、留学生入試に付き物の面接試験で落とされてしまいます。書類審査だけの所に合格しても、入学してから苦労することは明らかです。2年生に上がれずに退学を余儀なくされた学生もいます。

進学してから驚くほど会話力をつけた卒業生もいます。しかし、そういう学生はKCPでその素地を身に付けていたのです。机に向かって勉強することしかしなかったら、そうなる可能性は0と言っていいでしょう。

ところが、少子化にともなって日本人の志願者が減ってしまい、海外で直接募集する大学が増えてきました。しかるべき選抜が行われていれば、日本で勉強したい学生のためになります。しかし、そうでもなさそうなケースも見られます。選抜らしい選抜をせずに連れて来た留学生にどんな教育をするのでしょう。日本に留学したばかりに人生を捻じ曲げられた、などと思う人を量産されたら、日本の国益にも悪影響が及びます。

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初面接練習

6月13日(木)

初級の学生対象の進学準備授業が最終回だったので、思い切って模擬面接をしてみました。先週自己紹介文を考えさせていますから、それを入試の面接の場という想定で発表してもらおうと考えました。学生にとっては初めてのことですから、いきなりうまくいくとは思っていませんでした。

Kさんは左手で右手の手首をつかみ、放そうとしません。Jさんはしゃべり出すたびに右手をひらひらさせます。緊張していることが丸見えでした。模擬面接が終わった後で見ていた学生に「どうでしたか」と聞くと、「Kさんは緊張でした」という感想が即座に返ってきました。でも、そういう感想を漏らした当の本人が、同じように異常な行動を示しました。みんな緊張するものなんだと悟ってくれれば、次回以降、多少はリラックスして話せるのではないかと期待しています。

それから、初級ですから語彙がないのでやむを得ないのですが、自己紹介の内容が浅いですね。自分をアピールする、面接官の印象に残る言葉がありませんでした。「趣味は○○です」で終わりにするのではなく、一言何か付け加えてほしいところです。今回は私から質問を繰り返すことでその“一言”を引き出しましたが、これは次学期の課題です。上級にも「趣味は○○です」でお茶を濁してしまう省エネ学生がいますが、そんなふうに成長しないように鍛えていかねばなりません。

来学期は本番の面接を迎えるかもしれません。その面接練習の時に、この面接練習を思い出してもらえれば、何にもなしの学生よりは上手にできるでしょう。

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背中を押す

6月10日(月)

開場の12時少し前に私が挨拶をしていると、学生が入口からちらっと顔をのぞかせました。ほどなく挨拶が終わり、会場の外で待っていたその学生に中に入るようにと言いました。さらにもう3名ほど、続いて入場しました。今年の大学・大学院進学フェアは、こうして始まりました。

12時は、中上級クラスはまだ授業中ですから、1番に入った学生たちはみんな初級の学生です。でも、果敢に志望校のブースに向かい、拙いながらも日本語で質問していました。大学や大学院の話を聞くというよりも、自分の日本語がKCPの先生以外の日本人に通じたことを喜んでいるようにも見えました。

12:15、午前の授業が終わると、中上級クラスの学生がやって来ました。こちらは今年が勝負ですから真剣です。でも、その真剣さがあだとなり、きちんとした日本語で質問しなければと思ってしまった学生が少なくなかったようです。Sさんもその1人で、どこのブースにも行こうとしませんから、たまたま席が空いたA大学のブースに座らせようとしたら、「先生、ちょっと緊張しています」と言って動こうとしませんでした。でも、勇気を振り絞ってA大学の先生と話をしてみると案外通じたのか、C大学、H大学、F大学などを回っていました。教師の役割は、学生に大学・大学院で勉強したいことを聞いて、それにふさわしい大学のブースに学生を送り込むことです。Sさんのように、背中を押せば前進できる学生が多いのです。

今年の進学フェアは、国立大学のT大学とY大学が参加してくださいました。どちらのブースも、多くの学生でにぎわっていました。この中から何人でもいいですから、本当にT大学やY大学に進学する学生が現れたら、企画した側としてはうれしい限りです。

フェアの終了間際に、何校かの先生に直接お話を伺いました。「いい学生さんが多いですね」と、半分ヨイショでしょうが、そう言ってくださいました。本当にいい学生だったかどうかは、半年前後先の入試の結果でわかります。気を引き締めて指導してゆかねばなりません。

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医学部に挑戦?

5月30日(木)

Sさんは非常に優秀であり、努力家でもあります。成績がよくてもそれに慢心することなく、“もっと上を”という気持ちを決して忘れません。出席率も100%です。授業中は自分から積極的に手を挙げることは少ないですが、教師に話は一言たりとも聞き漏らすことはなく、ここぞという時にクラスのみんなを感心させる発言をします。

そんなSさんは、医学部を目指しています。いくら優秀だとは言っても、医学部はそうやすやすと入れるところではありません。しかも、多くの大学の医学部は、留学生を進んで入学させようは考えていないように見受けられます。面接をしてみて“これはいける”と思った留学生がいたら合格にするけれども、そうでなかったら留学生の合格者はゼロでもいいといった考えではないかと思います。

確かに、日本人の入学生と同等以上にできないと勉強についていけないでしょう。また、将来医者になった時、患者の訴えを確実に受け止められるコミュニケーション力が必要とされます。そうなると、並の日本語力では合格できないのもうなずけます。

しかし、これから先は日本も外国人が増えていきます。患者は日本人だけとは限りません。Sさんの国の人も、数多く日本で生活しています。そんな人たちを診るのは、日本人の医者よりもSさんが向いているかもしれません。また、医学を勉強した人が全員医者になって患者を診るとは限りません。iPS細胞でノーベル賞を受賞した京大の山中先生がいい例です。Sさんなら、ノーベル賞は取らないまでも、医学研究者として足跡を残すことは十分にあり得ます。ですから、医学部はもう少し外国人留学生を入れてくれてもいいのではないでしょうか。

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