6月26日(木)
もうじわじわと2026年度入試が始まっていますが、最近は志望理由書など受験生が頭を使って考えなければならないはずの書類も、生成AIに書いてもらうのが常識となりつつあります。大学側もそれを前提に書類を受け取り、別の方法で学生の真の力を測ろうと方向転換を始めています。
だいぶ前になりますが、ZさんがA大学の志望理由書を持ってきました。文法的には直すところがほぼありませんでした。構成も非常に整っていて、このまま出してもそこそこ以上の評価はしてもらえそうでした。でも、同時に、どこかつかみどころのない、つるんとした印象も残りました。チャット君に書いてもらったのかなと思いましたが、本人に確認は取りませんでした。
私は“つるん”にとがった何かを取り付けようと、Zさんにあれこれ注文を付けました。Zさんの勉強したいことも知っていましたから、それが際立つようにと「このあたりはばっさり切ってしまえ」なんてアドバイスもしました。読み手の心に引っかかり、面接の場で議論になることを期待しました。
しかし、Zさんが書き直した改訂版は、初版とあまり変わりませんでした。私の意見は、チャット君に却下されたようです。私がZさんの心を動かせなかった、AIに負けたということです。でも、大学の先生はこんなに甘くはありません。A大学のようなレベルの高い大学なら、どこまで本気で考えているか、厳しく問うてくることでしょう。
最近、「Aiに書けない文章を書く」(前田安正、ちくまプリマ―新書)を読みました。「Aiは、文書は書けるけれども文章は書けない」と筆者は述べています。文書と文章の違いについて触れるとネタバレになりかねませんから、ここから先は「AIに…」をお読みください。
Zさんは志望理由書という文書を作成し、私は文章にしようとしたけど果たせなかったというのが、Zさんと私のやり取りの結果です。面接の場で志望理由書を文章にすべく、Zさんを鍛えていくほかないでしょう。
日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ