Category Archives: 学生

ペットボトル

10月13日(金)

学生がみんな出た後、教師は教室をざっと確認します。机の中をのぞいて忘れ物がないか見ます。机の中に限らず、教室中を見まわします。もちろん、授業の最後に忘れ物がないかどうかよく見てから帰れと注意します。傘の忘れ物はそのまま傘立てに置いておきますが、机の中に突っ込まれたごみは回収するほかありません。次に教室を使う学生たちにも気持ちよく使ってもらいたいです。ごみに紛れて、返却したテストや宿題が丸まっていることもあります。こういうテストや宿題は、概して成績が悪いですから、他のクラスの学生には見せるわけにはいきません。このクラスの恥です。これも回収して、翌日の先生から説教の上、本人に渡していただきます。

午後の授業が始まって受付が落ち着いた頃、Eさんが来て、「教室にペットボトルを忘れたんですが、届いていませんか」と尋ねられました。水筒ならきちんと回収して翌日本人に返すようにしていますが、飲みかけのペットボトルは、回収して中身を流してボトルも捨ててしまいます。大量生産の飲み物なら翌日誰のか聞いてもわからないでしょう。翌日まで取っておいたら、中身が発酵してそれを飲んだ学生がお腹を壊したなどということも起こりかねません。すぐお腹が痛くなって休む学生たちですから。

そういうわけで、Eさんのものらしいペットボトルもありましたが、すでに処分してしまいました。そう伝えると、たった一口しか飲んでいなかったのにと、盛んに残念がりました。そんなに残念がるのなら、なおさら机の中や周りをよく見て、忘れ物をしないようにしておいてもらいたかったです。

おとといは、Wさんが財布を丸ごと机の中に置いて帰りました。本人も気づいて、メールを送ってきました。飲み物なら100円台ですが、Wさんの財布は、カードも入っていましたから、全財産だったかもしれません。こういう忘れ物は困りますが、1学期に何人かいるんですよね…。

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3時に寝る?起きる?

10月12日(木)

授業後、欠席したCさんに電話をかけると、あっさり本人が出ました。

「Cさんですか」「はい」「KCPの金原です。こんにちは」「こんにちは、先生(明るく元気な声)」「Cさんは、今日、学校を休みましたが、どうしましたか」「寝坊しました。先生、すみませんでした」「そうですか。何時に起きたんですか」「12時半です」「12時半? ついさっきじゃないですか」「はい…」「昨日、何時に寝たんですか」「3時に寝ました」「3時? それは昨日じゃなくて、今朝ですね」「あ、はい…」「じゃあ、何時に寝れば、学校に間に合う時間に目が覚めるんですか」「11時ごろに寝れば…」「わかりました。今晩は11時までに寝て、明日は寝坊しないで学校へ来てください」「はい」「じゃ、明日、学校で会いましょう」「はい、先生」。

Cさんの住所からすると、8時に起きればどうにか遅刻しないで登校できるはずです。それなら、3時にベッドに入っても5時間寝られます。十分な睡眠時間とは言えませんが、授業中爆睡するほどでもないでしょう。そもそも、3時から12時半まで9時間半もなんて、受験生にあるまじき睡眠時間です。

次はKさん。

「Kさんですか」「はい」「KCPの金原です。こんにちは」「こんにちは、先生(明るく元気な声)」「Kさんは、今日、学校を休みましたが、どうしましたか」「寝坊しました。先生、すみませんでした」「そうですか。何時に起きたんですか」「11時半です」「11時半? 昨日、何時に寝たんですか」「3時に寝ました」「3時? それは昨日じゃなくて、今朝ですね」「あ、はい…」「じゃあ、何時に寝れば、学校に間に合う時間に目が覚めるんですか」「1時ごろに寝れば…」「わかりました。今晩は1時までに寝て、明日は寝坊しないで学校へ来てください」「はい」「じゃ、明日、学校で会いましょう」「はい、先生」。

Cさんほどではないにせよ、8時間半の睡眠時間は十分すぎます。そもそも、2人ともなんで3時まで起きてるんでしょうかねえ。この2人以外にも、3時4時まで愚にもつかないことをしながら起きている学生がおおぜいいます。朝型の私にとって、3時と言えば就寝時刻ではなく、起床時刻です。日の出から日の光を有効に使わなきゃとは思わないんでしょうか。日足が短くなったのを、夕方ではなく朝に感じる生活の方が、ずっと健康的だと思うんですが、いかがでしょうか。

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受かったよかった  

10月11日(水)

今学期の水曜日は、事実上先学期からの持ち上がりのクラスです。2/3ぐらいが先学期私のクラスだった学生で、それ以外に顔と名前を知っている学生が何名かいて、まるっきり初顔合わせは新入生のAさんはじめ、片手ほどの数でした。授業中盛んに指名して、覚えてしまいました。

持ち上がり組のSさんは、学期休み中に受験がありました。授業直後の1時に合格発表ということで落ち着きがないかと思いきや、先学期のSさんからは想像もつかないくらい積極的に質問してきました。先学期は受験のことで頭がいっぱいで、授業どころでなかったのでしょう。

一方でHさんは、これから大学院の受験を控えています。明るくしゃべってはいますが、内心はかなり焦りを感じています。試験対策に打ち込みたいから楽なレベルに入りたいと思っていたそうですが、下のレベルから飛び級でこのクラスに入りました。このクラスは難しいと言いつつも、誇らしげな表情もチラッと見せていました。Hさんが狙っている大学院はレベルが高いですから、KCPにいるうちに可能な限り高度な日本語を身に付けておいてもらいたいです。そういう意味からも、引っ張り上げたわけです。

授業後、数学の質問に来たPさんに対応したり、クラスで書かせた例文の添削をしたりしていると、Sさんからメールが届きました。合格通知が張り付けてありました。よかった、よかった。

さらに仕事をしていると、私目当ての卒業生が来ていると呼び出されました。この3月に卒業したLさんでした。KCP時代のLさんは、大学進学を目指していたものの、教師の注意に全く耳を貸さず、昼夜逆転した生活を送り、自分自身が何を目指しているかわからなくなっていたきらいがありました。当然受験校すべて不合格で、どうにか拾ってくれた学校に進学しました。

そのLさんが、憑き物が落ちたようなすっきりした顔立ちで、受付に立っていました。「先生、G大学に合格しました」と報告に来てくれたのです。学部学科を聞くと、G大学の中でも最難関と言ってもいいところで、競争率も6倍だったそうです。

去年の今頃は、半分けんか腰でかなり厳しいことも言いましたから、恨まれてもおかしくなかったのですが、わざわざ合格報告に来てくれました。1年たってようやく私たちの言っていたことを理解してくれたのでしょうか。Sさんも一歩間違えば第2のLさんになりかねないような勢いでした。どうにか踏みとどまってくれたので、一安心です。明るく外交的なHさんはそういう方面に進まないでしょうが、注意して見ていきましょう。

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一期一会?

10月10日(火)

新学期の初日は、午前中に養成講座の授業をして、午後は教科書販売の補助をすればいい予定でした。ところが、レベル1のM先生が急病で、午後はその代講をすることになりました。お昼の時間は新入生の日本語プラスの登録をすることになっていましたから、朝から夕方まで一気に予定がびっしり詰まってしまいました。

養成講座の授業は受身と使役が中心でしたから、こちらは快調に進みました。最近巷にあふれている「~させていただきます」について議論したり、「太郎は映画を見ます」は受身の文にできないことについて語ったり(みなさん、受身の文を作ってください。意味不明の文になります)、という調子で、快調に飛ばしました。

お昼の時間の日本語プラス登録も、入学式後にオリエンテーションをしていますからさほど大きな問題もなく済みました。早くも進学相談に乗ったり、理科系志望の学生が2人いたので喜んだりしているうちに、無事終了。

さて、レベル1の初日の授業ですが、上述のようにほとんど何の準備もなく教室に飛び込むことになりました。でも、レベル1の初日は発音練習やひらがなの書き方、簡単な自己紹介などが主たる内容ですから、度胸1つでどうにか乗り越えられます。確かに日本語が通じない人が多いですが、1人ぐらいはこちらの日本語から何かをつかんでうまく反応してくれる学生がいるものです。うん、やっぱりいました。

そんな言葉の通じない不便さも、留学の醍醐味なのです。いや、その何とも言えない不安をばねに学習意欲が湧くようでないと、留学は成功しません。このクラスの学生たちは、そういう意味では、やってくれそうな感じがしました。M先生のご病気が長引かない限り、このクラスに入ることはないと思いますが、袖振り合うも他生の縁で、陰ながら応援していこうと思っています。

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入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。このように世界中の国々からたくさんの若者がこの学校に入学してくれたことをうれしく思います。

日本語に限らず、語学の勉強は、それを専門にしようと思っている人、あるいは外国語の勉強が趣味だという人以外、それ自体がゴールになることはありません。ある言語を身に付け、それを使って何かをするところにゴールが設定されるものです。みなさんは、日本語で何をしようと思っていますか。

大学院や大学への進学を考えている人は、その進学先での研究や勉強が当面のゴールでしょう。専門性を身に付け、磨き、その後、仕事を通して世の中に貢献しようと考えているのではないでしょうか。芸術系志望の人は、先生からの教えを吸収して自分の技量を上げるために、日本語を学ぶという人も多いと思います。

このように、みなさんにとって日本語は、そしてそれを学ぶ場であるKCPは、人生における通過点に過ぎません。勉強の時期が過ぎたら日本語はそれ以上必要なくなるかもしれませんし、KCPは学歴としてみなさんの履歴書を飾るわけでもありません。しかし、私たちはみなさんにKCPで濃密な日々を送ってもらいたいと思っています。

日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、さらにはアルファベットまで加えれば4種類の文字で構成されるという、世界に類を見ない言語です。それだけに難しくもあり、挑戦のしがいがある言語です。語彙面では擬音語擬態語、文法面では敬語や授受表現など、上級になっても学ぶことが多い、奥深い言語です。

最近は自動翻訳が発展し、レベル1の学生も立派な日本語で欠席理由をメールしてくることもあります。私たちも、時には翻訳ソフトを便利に使わせてもらいます。だからといって、進学先での勉学において日本語の重要度が下がることは考えにくいです。勉強内容が高度になればなるほど、日本語学習の重要度は増します。

日本で就職しようと思っている人は、仕事を円滑に進める上で、日本語は必要不可欠です。大きな仕事をなすためには、良好な人間関係が欠かせません。日本語が理解できずに良好な人間関係を築くことは不可能です。それも、表面的な日本語力ではありません。相手の心の内を推し量れるレベルの日本語力です。

KCPは、このような、いくらでも深掘りできる日本語を、みなさんの実力に合わせて、みなさんが満足するまで教えていきます。みなさんが設定したゴールによっては、みなさんに嫌がられてもそのゴールに到達できるレベルの日本語力にまで、みなさんを鍛え上げていきます。覚悟していてください。

それと同時に、KCPでの生活がみなさんの人生を彩るものとなるように、様々な企画を用意しています。みなさんのクラスには、みなさんにとっての外国人が必ずいます。みなさんが今までに在籍した学校よりも幅広い年齢層の同級生がいます。そういった人たちと刺激し合って、みなさんの人間性を豊かにしていってください。

また、クラブ活動や学校行事も、みなさんの留学生活を豊かにするものと信じています。それらを通して、交友関係を広げたり日本に対する理解を深めたりしてください。こうしているうちに、日本語もKCPも、みなさんにとって単なる通過点ではなくなっていきます。これこそが、有意義な留学生活なのです。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

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リモート

10月4日(水)

KさんがR大学の志望理由書を書いたので見てくれと送ってきました。初稿は、意気込みは買えますがそこ止まりという感じで、最初と最後で書かれていることが微妙に食い違っていました。そういう点を細かくチェックして送り返すと、第二稿が届きました。日本人の友だちに見てもらったそうで、文章が整っていました。しかし、手垢のついた表現が目立ち、これではR大学の先生の記憶に残る志望理由書にはならないでしょう。

そこに手を入れた第三稿が送られてきました。だいぶよくなりました。でも、欲を言うと、R大学のネットのページなど、関連資料を読み込んで書いた文章とは思えません。R大学の試験官、面接官の先生方に訴える力を強めるには、資料を読んで、それに基づいてR大学で何を学び、どのように成長したいか、といったあたりを書く必要があるでしょう。そういったコメントを返信し次を待っているのが、今の私の状況です。

そんな面倒くさいことをするくらいなら、学生を呼び出せばいいじゃなかとお考えになるかもしれませんが、Kさんは一時帰国中です。海外にいる学生に志望理由書の指導ができるのですから、便利な世の中になったものです。出願もすべてオンラインでできたらさらにありがたいのですが、そこまでには至っていないようで、Kさんは日本に戻ったら、速攻で出願することになっています。

朝、Oさんも出願の最終チェックに来ていました。担任のM先生たちが寄ってたかって指示を出していました。お昼ごろラウンジで会ったら、自慢げに「出願は終わりました」なんて言っていました。午後はS大学の留学生担当の方が留学生入試の説明に。10月期は、入試本番の学期です。

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前日

9月29日(金)

明日D大学の面接試験を受けるXさんの面接練習をしました。Xさんは先週から集中的に面接練習をしてきました。本番前日にその成果を確認しようというわけです。

まず、面接室の入り方は軽くクリア。まあ、入り方が多少雑だったとしても、それが原因で落とされることはないでしょうが。声もよく出ていました。目をそらすことなく、また、貧乏ゆすりなど面接官に悪印象を与えそうな癖もなく、面接を受ける際の態度も問題がありませんでした。

入試に限らず面接試験では、面接官の印象に残らなかったら合格はできません。その点、Xさんには秘密兵器があります。自作のおもちゃです。これを出すタイミングの研究をしました。「こんなものを作ってしまう私は、貴校の建学の精神そのものです」という流れが一番自然ではないかということになりました。おもちゃそのものは、くだらないと言ってしまったらXさんに失礼ですが、それが正直な感想です。でもその制作過程は確かにD大学好みの香りが漂い、そこを起点に口頭試問になだれ込むことも可能です。

その口頭試問ですが、先週出した宿題は少々荷が重かったようです。結果を暗記する勉強を積み重ねてきたXさんには、暗記しているその結果を導き出すというのは、かなりの難事業でした。考え方を教えると、目からうろこみたいな顔つきになりました。

Xさんは、面接官の頭と心に印象を残せそうなネタは持っています。それをうまく使えば、D大学の先生が乗ってきてくれれば、勝ち目は十分にあります。もはや私にできることは祈ることしかありませんが、明日のお昼ごろ、Xさんが面接を受ける時間あたりに、精一杯念を送ることにしましょう。

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書類不備

9月27日(水)

O先生のところにJさんから電話がかかってきました。Jさんは先月末にK大学に出願しましたが、K大学から受験料を返すというメールが届きました。そのメールについてO先生に聞こうと電話を掛けたのです。O先生が席を外していたので、A先生が対応しました。

A先生がいろいろ聞き出すと、K大学は、Jさんの書類に不備あるので受理できず、したがって受験もできないので、受験料を返還するということのようでした。Jさんはそのメールの内容が理解できず、学校に電話を掛けたという次第です。

K大学に出願したJさんの友だちにはK大学から連絡が来て、足りない書類を追加で送ったりした人もいたそうです。でも、Jさんは締め切り日ぎりぎりに出願したので、K大学の書類チェックが遅れたのでしょう。

「願書をK大学に送る前に先生に見てもらいましたか」「はい」。O先生がチェックしたのにこのざまだとしたら、大問題です。「O先生に?」「いいえ、塾の先生に」。ということで、Jさんは担任のO先生をスルーして塾の先生に最終チェックをしてもらったのですが、結果的に書類不備のまま送ってしまったのです。

出願の時には塾を頼るのに、問題が発生するとこちらに持ち込みます。学生によくあるパターンです。塾の先生は国の言葉を話しますから、学生にとっては相談しやすいです。しかし、学生の進路に関して最終的な責任を持つのは、日本語学校です。責任を持つからには、学生にもすべての情報をこちらに回してもらいたいものです。

それはともかく、K大学からのメールも持て余しているようだとしたら、たとえK大学を受験しても受からなかったでしょう。むしろ、受験料を返してもらってラッキーと思わなければならないかもしれません。

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語彙テストと想像力

9月26日(火)

テストが終わったら採点というのが、教師の宿命です。昨日の初級クラスの漢字に引き続き、朝から採点三昧でした。

中級クラスの聴解は、EJUの聴読解を想定した問題と、カタカナディクテーションでした。この問題は担当のH先生の温情で、誤字1か所につきマイナス1点という採点法でした。私が担当だったら〇×式にして、“ディクテーション”を“ティクテーション”と書いたら1点もあげないんですがね。でも、この採点方法で何名かの学生が不合格を免れました。

ディクテーションは、一面では語彙テストです。たとえ自分の耳には“ティクテーション”と聞こえても、日本語にはそんな単語はないと判断し、“ディクテーション”と書かなければならないのです。しかも、昨日のテストは前後の文脈がある中でのカタカナ言葉ですから、なおのこと“ディクテーション”とする必然性があります。そう考えると、ちょっと長めの単語のスペリングミスが目立ちました。私もカタカナディクテーションの授業を担当しましたから、責任の一端を感じなければなりません。

上級クラスの文法は、選択式の穴埋め問題と決められた表現を使う短文作成でした。穴埋め問題は、はっきり言って、学生に点数をあげるための問題です。この問題を全問正解かそれに近い点数で通過したうえで、実力差を見る短文作成問題に取り組んでほしかったです。しかし、クラスの下位集団は穴埋め問題でガタガタになり、短文作成では挽回するすべもなく、あえなく討ち死にしました。

穴埋め問題をクリアした中位と上位の学生の差は、想像力の差のように思いました。想像力を働かせて、与えられた条件を上手に生かしてきれいな文が書けた学生が高得点で、こちらが想像力を働かせないと状況が理解できないような文しか書けなかった学生は、そこまでには至りませんでした。

さて、明日は、最難関の作文の採点が待っています。・・・そういえば、昨日も「明日」って書きましたね。

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のんびり屋

9月22日(金)

昨日のこの稿に取り上げたJさんが、授業後にやって来ました。私宛にメールを送ったのですが、アドレスが間違っていたようです。

Jさんは、志望校としてK大学、R大学、M大学、O大学などを考えています。そのうち、R大学は出願締め切り日が来月早々に迫っています。ところが、Jさんは何もしていません。Web出願に必要なマイページも作っていませんでした。そのくせ、期末テストが終わったら一時帰国することにしています。ですから、Web出願の手続きのうち、今すぐにスマホでできるものをやらせて、手書きの志望理由書の用紙などをプリントアウトし、土日で考えてくるように命じました。R大学の明日すぐに締め切りがあるM大学の用紙も持たせて帰しました。

Web出願の中に、数百字のまとまった文章を書く部分がありました。Jさんは即興でそれを考え、スマホで打ち込みました。「先生、これでいいですか」と見せられた文章は、ネイティブチェックレベルの修正を加えれば、どこに出しても恥ずかしくない文章でした。Jさんにこんな力があるとは思ってもみませんでした。授業で書かせた作文だけでは、文章作成能力は見えてこないものなんですね。

でも、Jさんは、手書きはあまり好きではないようです。「日本の大学は遅れてますね」などと言いながら、志望理由書を考え始めていました。日本には手書き信仰みたいな文化(?)、伝統(?)がありますから、手書きの書類を提出させる方式は、もうしばらく残るでしょう。いや、生成AIの影響を少しでも小さくしようという切ない抵抗かもしれません。

週明けには、Jさんから志望理由書が届きます。期末テストの試験監督は、それを直しながらすることになりそうです。

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