Category Archives: 日本語

もうすぐです

3月18日(金)

学期末が近づくと、次の学期の受験講座の準備が始まります。まず、新学期のレベル3になる進学コースの学生に対し、EJU各科目の対策講座のオリエンテーションをします。それから、進学コース以外の学生で受験講座を受講したい学生への説明会を開きます。最近は対象者のほとんどが海外でオンライン授業を受けている学生たちなので、こうしたオリエンテーション・説明会もオンラインです。

対面でもパワーポイントを使って話しますから、それをZOOMに乗せるだけなので、私にとっては大きな違いはありません。ただ、質問は対面の方が多いですね。対象が初級の学生ですから、やさしくゆっくりしゃべっても通じなかったのかなあと心配にもなります。

通じる通じない以前に、聞き取れていないおそれも感じます。パワーポイントのスライドにも明記したし、ゆっくり繰り返し話したのに、「○○について説明してください」という質問を受けることもあります。聴解力が伸びていないのでしょうかねえ。目と耳とを複合的に使って話し手の言わんとしていることを把握する力が、3年前より落ちている気がします。ある程度まとまった話を聞いて、内容を理解して、何かリアクションを起こすというのは、どこに進学しても求められる力です。KCPに受験講座は、これも自然に養えます。

夕方からの説明会に参加したHさんは、昨日来日したばかりの学生です。「受講料は日本へ来てから払ってください」と言ったら、Hさんの鼻が少し膨らんだような気がしました。画面に出ていた他の学生たちも、「そうだよね、もうすぐだよね」という顔をしていました。

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84万-145万

2月26日(土)

去年の日本の出生数は84万人で、死亡数は145万人だったそうです。人口の年間61万人減も大変な数字ですが、死亡数が出生数の1.7倍という方がショックです。感染症の影響で今年も生み控えが続き、その感染症によって毎日200~300人死亡数が上乗せされるとしたら、今年はダブルスコアになってしまうかもしれません。

リモートワークの広がりによって東京の人口が減りましたが、札幌も人口が減り始めたそうです。札幌はリモートワークによって人口が減ったとは考えにくいですから、こちらも自然減の拡大によるのではないでしょうか。もはや、日本中、人口が増える要素のある町はないのではないでしょうか。

この日本を上回る勢いで人口が減りそうなのが韓国です。出生率が0.81といいますから、あっという間に子どもがいなくなってしまいそうなペースです。中国も、国民の自主的な一人っ子政策が続いています。こちらも早晩人口減に転じるのは確かなようです。遠からず、人口世界第一位の座をインドに明け渡すことでしょう。

韓国や中国に限らず、日本語学習者の多い国々は少子化が進展しつつあります。そうなると、日本留学のお得意さんが軒並み市場縮小ということで、感染症に関して2019年以前に戻ったとしても、日本語教育界は明るさを取り戻せないかもしれません。

しかも、鎖国政策で世界中の若者の日本留学に対する意欲が衰えています。日中は春を思わせる暖かさでしたが、ちょっと先を見通すと、日本語学校の冬は当分続きそうです。86年前の雪の日のような…。

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20220222

2月22日(火)

22年2月22日は、スーパー猫の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんだからだと言っていますが、200年後にはにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんとなりますから、ハイパー猫の日とでもなるのでしょうか。

この日に合わせて、静岡県の川根小山(かわねこやま)駅は臨時に川猫山駅に改称し、特別な記念切符を発売したとか。このほかにも、全国いたるところで“記念行事”が行われたようです。こういうダジャレができるのも、それを喜んで受け入れてしまうのも、日本文化であり、日本人です。

西暦年月日の数字合わせで思い出すのは、1999年11月19日です。ご覧のように、年月日のすべての数字が奇数です。この次にこのような並びになるのは、3111年1月1日で、1000年以上も先のことです。当時通っていた会話教室で、もちろん英語でこれを熱弁したのですが、先生にはこの意義が伝わりませんでした。貴重な1日だったんですけどね。

お昼から帰ってくると、書類を取りにでも来たのでしょうか、ちょうど学校から出てきたPさんとLさんとすれ違いました。「こんにちは」とあいさつしてくれました。Lさんは進学先が決まり、Pさんは3月で帰国の予定です。先月あたりまでずいぶん悩んでいたPさんでしたが、もう吹っ切れたみたいです。明るい顔つきをしていました。

3月10日の卒業式までは2週間ちょっと。その日は水戸の日であり、佐渡の日であり、砂糖の日だそうです。にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんも含めて、2人ともこういう言葉遊びが理解できるまでになったかな。ここでニヤッとして上級なんですよ。

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資料を作り直しているんですが

2月7日(月)

養成講座の資料を作り直しています。先週末から「んです」に関わる部分に手を付けています。「んです」は、私たち日本人は無意識に使っていますから、日本語教師でもない限り、その存在には気づいていません。私のこの仕事を始める前までは、「んです」という言葉の区切りを全く知りませんでした。

しかし、日本人はこの「んです」を上手に使って、自分の心のひだを相手に伝えたり、相手の気持ちの微細な部分まで理解したりして、コミュニケーションを深めています。小学校に上がる前の子供ですら、「んです」を巧みに使っています。だからこそ、日本人は「んです」に意識を回すことができないのです。

これに対して外国人は、「んです」の機微を知りません。教わってもすぐに理解できる代物ではありません。また、自分が使うとなると、これほど難しいものもありません。使い方を間違えると、コミュニケーションが進むどころか、誤解を与えることにもなりかねません。私たちのような誤用に慣れている者でも、耳にした「んです」に一瞬カチンと来てしまうことが少なからずあるのですから。

正しく使えるようになるには習うより慣れろなのですが、学生にとってはこれが難問なのですね。N1の問題集に取りつかれているような学生は、いつまで経っても「んです」抜きの、不細工な話し方しかできません。逆に、日本人の友達がいるとか、アルバイト先で鍛えられているとかという学生は、漢字の読み書きは全然できないくせに、妙にこなれた話し方をするものです。

さて、ここまでに、かぎかっこでくくった「んです」以外の「んです」及びその活用形はいくつあったでしょう。意識して抑えたので、そんなに多くはありませんよ。

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受験以前に

1月24日(月)

昨年12月のJLPTの結果がオンラインで発表になりました。例年より受験者数は少なかったですが、合格率は特別良くも悪くもなく、いつもどおりでした。昨年7月にN1に1点差で落ちたGさん、2点足りなかったSさん、Oさんは順当に合格。全く歯が立たなかったCさんやTさんも余裕の合格でした。かなり努力したのでしょうね。中には返り討ちにあった学生もいましたが…。

JLPTは19点未満の科目があると、他がたとえ満点でも合格できません。つまり、極端に弱い科目を作ってはいけません。そういう目で見て心配なのが、漢字が足を引っ張ったと思われるJさん、Eさん、Kさん、読解に手も足も出なかったみたいなDさん、Kさんなどです。N1に合格したけど読解が危なかったLさんは、いい気にならなければいいのですが…。

今回は、当日欠席の学生が少なかったことも特徴と言っていいでしょう。受けるべき学生がしかるべき準備をして受けた結果で、記念受験的な学生が少なかったのです。しかし、敵前逃亡したのは、ああやっぱりと思えるような学生ばかりでした。

涙を誘われたのは、出願したのに来日できずに受験できなかった学生たちです。意欲的に勉強していた学生たちには気を落とすことなく努力を続けてもらいたいです。とはいえ、いかに精神的にタフでも、明るい日の光が差すことを信じられなくなったら、挫折してしまってもおかしくはありません。

もはや水際作戦など用をなしていません。今年のJLPTにはこんな受験生が出ないことを願うばかりです。

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更新

1月21日(金)

日本語教師養成講座の講義資料を再構成しています。最初に資料を作ってから軽く10年以上経っていますし、その間にあれこれ継ぎ足してきましたから、かなり不細工になっています。目にしたり耳にしたりした日本語の用法をもとに調べたことを付け加えたり、専門書を読んで得た情報や知識から新しい文法のとらえ方を編み出してみたりということをしてきた結果、真に重要な事柄が埋もれがちになっています。そういう点を修正し、伝えるべきことがきちんと伝わるように教材を作り直しているのです。

文法をはじめ、いろいろな科目を担当していますから、科目間で内容が重複しているところや、有機的に連携した方がいいところも見えてきました。最近買い込んだ専門書も研究して、どこかに組み込みたいとも思っています。これらの事柄を整理整頓して、すっきりまとめたいところです。

日々、日本人は日本語を使っていますが、助詞の「に」の用法を10以上に細分して考えるなどということはしていません。そんな必要もありません。しかし、日本語教師は、日本語とは言語体系の違う言葉を操ってきた人たちに、日本語という新たなシステムを導入するのですから、日本人の気が付かない日本語の裏面まで知りつくしておかなければなりません。そのお手伝いをするのが、養成講座です。

半年ごとぐらいにこの講義資料を使って講義をしてきたのですが、作り直すつもりで講義資料を読み返してみると、今まで気づかなかった発見もあります。私もパワーアップしなきゃね。

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耳を鍛える

1月15日(土)

今学期の受験講座が始まりました。土曜日のメニューは、毎学期、EJUの日本語と、JLPTのN1とN2です。私はEJUの日本語を担当しました。「さあ、過去問やるよ」でもよかったのですが、受講する学生の意識を高めようと、先学期末に発表された昨年11月のEJUの結果について触れました。

やはり、留学生が入国できない影響は大きく、昨年11月のEJUの受験者数は、その2年前までの半分程度に落ち込みました。平均点があまり変わっていないのは、問題の質が安定しているからでしょうか、得点等化のおかげでしょうか。

EJUが始まったころは300点というのが一つの目標でしたが、今は300点では「悪くはないね」というくらいです。今回の結果に当てはめると、上から26%、偏差値で58ぐらいです。学生たちが考えている大学のレベルには距離がある感じです。偏差値65というと343点ですから、かなりがっつり訓練しなければ手が届きません。

そのぐらいの点を取るには、苦手分野を作ってはいけません。KCPの学生は、押し並べて聴解・聴読解が弱いようなので、今学期の受験講座では聴解力の強化に力を入れます。今までの分析によると、教授の講義を聞くタイプでつまずきやすいという結果が得られていますから、そこを重点的にやっていきます。大学に進学しようという人が教授の講義の内容をつかみかねていては、話になりません。

学生の手ごたえはどうだったのでしょう。大あくびをしていたCさんは、楽勝宣言かな、それとも集中力が途切れちゃったのかな…。

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何も書かない

1月13日(木)

私は、仕事柄、人前で話す機会が多いのですが、きっちりした原稿はあまり書きません。おとといこの稿に書いた修了式にしても、Aさんの人となりを思い浮かべつつ、こんなことを話そうといくつかのポイントを頭の中に入れておいただけでした。卒業式をはじめ、学校行事での挨拶も、まあこんなもんです。時事問題も織り込みつつ、持ち時間にも合わせて、話の内容を決めていきます。唯一、原稿をしっかり書くのが入学式での挨拶です。こちらは各国語に翻訳されて画面に映し出されますから、書かないわけにはいかないのです。

今、日本語教師養成講座の講義資料を作り直しています。こちらは、話そうと思ったことをワープロベタ打ちにしたメモがパソコンのそこかしこに散らばっています。そういうのを結集し、再編し、受講生の理解の助けになるようなパワーポイントなんかも作ろうという魂胆です。几帳面な方なら、パワーポイントのノートの欄に、せめて話の要点ぐらいは書き込むのでしょうが、私はしません。受講生の興味対象や、その時々の話題なども織り込んで、オーダーメイド感たっぷりの講義にしたいのです。

だから、出来上がったパワーポイントを使って講義のシミュレーションをすると、さっきと今とでセリフがかなり違うということが起きます。もちろん、根幹をなす部分は同じですよ。でも、そこまで持って行く部分とか、そこから派生した話とか、そんなあたりがやるたびに違ってくるんですねえ。講義の品質を管理するという意味においては困った現象かもしれませんが、そういうしゃべりが楽しくてこの仕事を引き受けている面も見逃せません。入学式は原稿通りに話さなくてはという意識が強く、セレモニーを楽しむ境地には至っていないのです。

資料を作りながら、私の講義って与太話が半分だなって思いました。入学式のようにきちんと原稿を書いて無駄を省いたら、講義の時間が半分になるかもしれません。短期集中で、受講生からは歓迎されるかな。でも、パワーポイントの真っ白なノート欄が、私の個性なんだと思っています。

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久しぶりの超級クラス

1月12日(水)

今学期から、午前クラスの始業時刻を30分遅らせました。9時だとラッシュのピークにかかりますが、9:30始まりなら山場を越えていますから、多少なりとも密が避けられます。午後のクラスは、逆に、始業を30分早めました。そうすると、学生の帰宅時間帯が夕方のラッシュの直前になります。学生の安全を考えての変更ですが、学生たちは、「朝寝坊できていいや」とか「早く帰れてラッキー」とかって思っているだけかもしれません。

最上級クラスに代講が生じたので、そこに入りました。さすが最上級クラスだけあって、先学期の中級クラスとは日本語の通じぐあいが全然違います。ビザや日本語学校の在籍期間に関する複雑な話も、1回説明しただけで理解してくれました。

学生資料を見ると、このクラスの学生はみんな“いい学校”に進学することを目標に勉強してきました。すでに目標を達成した学生も、この3か月に勝負をかける学生もいます。いずれにしても、日本人の大学生や大学院生の中でも優秀な人たちに伍して勉強や研究をしていくことになります。とすると、進学したらおちおち日本語など勉強している暇などありません。

学問は議論です。議論とは相手の意見を正確に理解し、自分の主張を明確に相手に伝えることです。その繰り返しでお互いの考えが深まり、アウフヘーベンが生まれ、高みに達することができるのです。一方的にまくしたてたり、相手の言い分に聞き耳を立てたりしているだけでは、高い授業料を支払って高等教育の場に身を置く意味がありません。

だから、卒業式までにそういうことができるだけの日本語力を付けていってもらいたいのです。

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はんそう現実

12月23日(木)

期末テストが終わったら、教師はまず採点です。私は自分の受け持ちレベルの読解を担当しました。

テスト前日に問題を見せられた時、漢字の読み方を答える問題がありました。私は読解のテストに漢字の読み書きの問題は出しませんから、その問題が何となく引っ掛かっていました。でも、問題になっている単語は、どれも本文のキーワードと言ってもよかったですから、“ま、しょうがないか”というくらいの気持ちでいました。

最初に採点した学生は、「仮想」を「はんそう」と読んで×になりました。どうしてこんな間違いをしたのだろうと思いながら次の学生を採点したら、また「はんそう」でした。まさかカンニングではと思いましたが、他の問題の答えが違いすぎます。こんな調子で「はんそう」が次々と出てきました。この問題、学生たちには意外と荷が重かったようです。

どうやら、「仮」を形成文字と判断して、「反」の音読みを書いたようです。中級ともなればそのぐらいの知恵は働きますが、今回はそれが裏目に出ました。「仮」は確かに形成文字ですが、その音符は旧字体の「假」のつくり、「叚=カ」なのです。漢和辞典を繙くと、「叚」は被せる、覆うという意味があると書かれていました。これににんべんを付けると、「仮面をかぶる」とか「うわべを繕う」とかとなり、「仮」につながるというわけです。

読解の授業では、予習の1つとして、本文に出てくる漢字の読み方も調べてくることになっています。学生たちは「仮想」も調べたはずなのですが、記憶に残っていなかったのでしょう。いや、読み方は「はんそう」と頭から決め込んで、調べなかったとも考えられます。「はんそう」のほうが「かそう」より多かったのですから。

こちらも反省点があります。“「かそう」ぐらい、ちょっと調べりゃわかるだろう”と思ってはいけませんでした。学生を疑ってかかるわけではありませんが、きちんと確認を取ることが、学生に対して本当の意味で親切だったのです。

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