Category Archives: 試験

始動

2月18日(土)

この週末や来月に入ってから受験する学生がいる一方で、今週の月曜日から6月のEJUの出願が始まっています。2024年度の入試が動き始めました。

受験講座を受けている学生たちは意識高い系ですから、6月に向けて準備もしていますし、だからこそ、心配もしています。6月の成績を使って出願して、早々とどこかに合格しておけと発破をかけていますから。

去年の4月に入学したときは何が何でも東大に入る、東大以外は大学じゃないとまで言っていたPさんは、穏やかな表情でEJUの目標点を語っています。自分の実力を冷静に見極められるようになり、自分の実力の相場を知り、それを少しでも高めるにはどうしたらいいかと考えられるようになりました。大人になったというのか、人間的に丸くなったというのか、この1年で大きく変わりました。20歳前の1年は“長い”と感じさせられます。Pさん自身も自分の成長を感じていて、1年前の話をすると恥ずかしがります。

現在一番危ないのは、昨年10月に入学した初級の学生たちです。「6月はまだ日本語が下手ですから、EJUは受けません」と言っている学生が少なくないのですが、それが困るのです。たとえ低くてもEJUの点数がないと出願すらできない大学が結構あります。そういう大学の受験のチャンスを、自らの手で摘み取ってしまうわけですから。中には後期とか3期とか言って、11月の成績でも出願できる入試制度を設けている大学もあります。でも、そういう大学は早い入試ほど入りやすいのです。6月に受けたという実績が必要なのです。

しかし、これがなかなか伝わらないんですよね。毎年、6月を受けずに後悔する学生がいます。6月の受験をかたくなに拒否した学生に限って、「先生、どうしよう」ということになるのです。そんな学生は「自己責任」と突き放すのが今の日本のやり方なのでしょうが、結局世話を焼いてしまうんですよ、私たちは。

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突然の席替え

2月17日(金)

教室に入ると、いつも最前列の入り口近くに陣取っているFさんが、最後列の窓際の席にいるではありませんか。対角線の視点から終点に動いた形です。Fさんは昨日が入学試験でした。面白くない結果になってしまったのでしょうか。マスクの外に出ている眼だけでは、表情が十分に読み取れません。

授業を始める準備をしていると、Rさんが来ました。Rさんは、今まで毎日、今Fさんがいる席に座っていました。自分の指定席に向かって踏み出そうとしましたが、Fさんの姿を認め、窓際の反対側に向かいました。すると、いつもその席だったSさんが…という具合に、次々と玉突きが起こり、今までとはまるっきり違う席順となりました。雰囲気もガラッと変わりました。

入試がかかわっていなければ、授業の最初の緊張をほぐす話題としてFさんに席を変えた理由を聞くところですが、さすがにそれはできません。どことなくぎこちない感じで授業を始めました。学生たちもFさんがおとといまでとは正反対の位置にいることに気づいていますが、誰もそれに触れません。仲のいいWさんも、気づかぬふりをしているようでした。

でも、指名すれば普通に答えるし、わからないことは質問するし、Fさんは落ち込んでいるふうでも受かれているふうでもありませんでした。10:30の休憩時間になると、大半の学生がラウンジかコンビニへ行きました。教室に残ったFさんに、少しこわごわと、昨日の試験はどうだったかと聞きました。

「小論文は時間内に書き終わりませんでした。面接で小論文の内容について聞かれましたから、そこで詳しく話しました。ちょっと話が長くなりすぎたかもしれません。それ以外はうまく答えられたと思います」とのことでした。ショックに打ちひしがれているわけではないようで、少しホッとしました。「じゃあ、あとは合格を祈り続けるだけだね」と、明るく声を掛けました。そんなやり取りをしているうちに学生たちが戻ってきましたから、席を変えた理由は聞きそびれてしまいました。

Fさんの合格発表は来週の金曜日です。授業中に合格メールが届いてガッツポーズ…という図を思い描いています。

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苦すぎるチョコレート

2月14日(火)

世の中はバレンタインデーでしたが、KCPは中間テストでした。私が担当している上級クラスには漢字が弱い学生が多いですから、漢字を直接読んだり書いたりする問題は出さないことにしました。その代わり、漢語や漢字を使った慣用表現の意味を問う問題を出しました。例えば、「非常においしい」だったら「とてもおいしい」、「手を貸す」ときたら「手伝う」と答えるという具合です。上級ですから、もう少し難しくしました。こういう出題形式なら漢字が苦手でもどうにかしてくれるだろうと思いました。しかも、昨日の授業で、ダメ押しのつもりで、こういう問題を出すと、答え方まで説明しておきました。

午後、さっそく採点してみると、惨敗でした。部分点まであげたのに、大半の学生が半分以下の点数でした。これが足を引っ張り、赤点続出となってしまいました。出題者としては大失敗でした。

同時に、「漢字」という授業名にすると、学生は漢字しか見ないんだと痛感させられました。「語彙を増やす」というのはレベルの目標として挙げていたのですが、学生たちには伝わっていなかったんですね。意味を問うた語句は日常生活でも使われており、奇をてらったものではありません。学生たちが進学先で机を並べる日本人の学生はみんな知っていそうなものばかりです。

さて、明日からこの落とし前をつけなければなりません。教科書の新しいページに進むのではなく、今学期歩んできた道を振り返ることが先決のようです。文法テストも同様の傾向が見られますから。

学生から、特別苦いチョコレートを贈られた気分です。

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就職面接

2月13日(月)

KCPの卒業生のPさんは、現在ある団体の非常勤職員をしています。このたび、正職員への登用試験を受けることになり、その面接練習に付き合いました。Pさんは在学中からも、何事に対しても熱心で全力に取り組み、アルファベットの国出身ですが最上級クラスまで上り詰めました。Pさんがいることにより、そのクラスは非常に活気を帯びていました。

そんなPさんですから、就職先でも頭角を現すことは十分想像できました。周囲で働いている人たちからも、強い信頼感を得ているようです。それゆえ、こういうチャンスが巡ってくるのは当然のことであり、このチャンスを生かしてぜひワンランク上を目指してもらいたいと思っています。

大学入試の面接練習は数えきれないほどしてきましたが、就職の面接はとんと記憶にありません。以前の会社は、そういう面接をするほど偉くなる前に辞めてしまいましたから、各方面の面接に関するうわさからどんな質問がなされるのか想像してみました。私が面接官なら、私が経営者なら、こんなことを聞いてみたい、こんなことで評価したいという質問を、Pさんにぶつけてみました。

Pさんは、さすがに社会経験があるだけあって、大学受験の若造とはだいぶ違いました。落ち着いてもいましたし、何かを丸暗記というのではなく、自分の言葉で語ってもいました。私が指摘したのは、自分を売り込む力が弱いという、その一点でした。Pさんはいつの間にか日本人っぽく自己主張が穏やかになりすぎていました。

その点を指摘し、明日の面接に送り出しました。

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雪が降りました

2月10日(金)

「東京地方は大雪」と言われ、大雪警報まで出された割には、何事もなくという感じでした、新宿近辺は。ネットに出ている画像によると、練馬あたりでも真っ白ですね。O先生のご自宅のあたりは、雪だるまが作れそうなくらいです。羽田発着便に数十便の欠航が出ましたから、それなりに大雪だったのでしょう。

今朝は遅刻が多かったですね。私のクラスは、9時3分前の時点で学生が3人しかいませんでした。始業チャイムと同時に駆け込んできたのが数名で、そのあと堂々の遅刻が駆け込みと同数ぐらい。他のクラスも似たり寄ったりだったようです。電車の遅延証明を持ってきた学生はいませんでしたから、外の寒さに打ち震えて歩みが遅くなってしまったのでしょうか。私の出勤時間帯には3度程度あった気温が、学生たちが登校してきたころには0度台を上下していました。雪がちらつき始めるとともに、気温はガタッと下がったのです。

授業後に面接練習をする予定だったCさんは、寒さで体がおかしくなったと断って、帰ってしまいました。Cさんに限らず、学生たちはどうも虚弱体質でいけません。ラウンジでおしくらまんじゅうもどきをして体を温めているグループもありました。去年の今頃なら「密!」と言って解散命令例を出したことでしょう。でも、もうすぐマスク規制も緩和されるとのことです。大目に見てあげました。

あした京都で受験のTさんは、無事現地に着いたでしょうか。東海道新幹線は定刻で動いていたようです。あさって茨城遠征予定のLさんは、冬晴れの中の移動ですね。吉報をお待ちしております。

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テスト問題作成

2月8日(水)

来週の火曜日が中間テストですから、そろそろ問題作りに頭を痛めねばなりません。頭を痛めて作ったテストでいい点を取ってくれれば、作ったかいも授業をしてきたかいもあるというものです。しかし、赤点続出となると、気落ちした上にその後処理もしなければならず、骨身にこたえます。

そこで、今回は、読解の問題を学生に作ってもらいました。「はい、作ってください」と声をかけただけでは作れるわけがありませんから、まず、問題作りのポイントを説明しました。

「T先生や私が読解の授業でみなさんにした質問を思い出してください」「指示詞が何を指すかは、よく使う手ですよ」「空欄に言葉を入れる問題は、前後を読めばわかる問題にしてください。知識を聞くクイズじゃありませんよ」「漢字の読み書きは、読解の問題じゃありません」「選択肢は、微妙すぎるのはやめてください」…

こちらの手の内を明かすようなことも入っていますが、このクラスの学生は多くが今学期までですから、まあ、いいでしょう。それに、学生に教えても使いこなせないだろうなという大技は、しまったままです。

問題作りのポイントがわかるということは、読解のポイントが見えてくるということでもあります。これを通して読解力が上がることも期待しています。また、問題を作るためには、テキストをじっくり読まなければなりませんから、内容の理解が深まるはずです。学生たちは声も出さずに真剣に取り組んでいました。優秀作品は、テスト問題に採用します。来週のテストは期待が持てそうです。

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漢字テストの結果

1月26日(木)

木曜日のクラスは、先週も今週も漢字テストがありました。このクラスは中国人学生が主力ですが、漢字テストの好成績者は、2回ともアルファベットの国やハングルの国から来た学生でした。もちろん、中国人学生も何人かは満点近い成績を挙げます。しかし、そういう学生は少数派で、箸にも棒にも掛からぬ不合格点が成績簿のそこかしこに散らばっています。

最大の原因は、勉強せずにテストを受けることです。35点とかという学生が、家でまじめにテスト勉強をしてきたとは到底思えません。Sさんのようにすでに進学先が決まっていて、あとは4月になるのを待つばかりという学生のモチベーションを高めるのは、東大に入るより難しいです。

それから、漢字は意味さえわかっていればそれで十分だという考えの持ち主が多いことです。EJUの読解の点数が聴解・聴読解に比べてやたらに高い学生は、こんな発想だと思います。確かに、漢字は表意文字ですから、読み手に意味を伝えることが主たる働きです。漢字テストの成績の悪い学生は、読み方は二の次だと思っているのではないでしょうか。しかし、そんな発想では、日本人とコミュニケーションが取れません。Sさんのように、もう消化試合だと思っている学生が、こういう安易な考えをしがちです。スマホの翻訳機能で世渡りができると思っているのかもしれません。

漢字が障壁となって日本への留学が進まないと言われることがよくあります。これは欧米の学生を念頭に置いた意見ですが、中国の学生にも当てはまります。Sさんが進学先で日本人の学友と談笑している図が、思い浮かびません。

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安全運転

1月20日(金)

Sさんはこれから何校か受験します。去年のうちに滑り止めのつもりで受けたT大学に落ちてショックを受けていましたが、ようやく立ち直ってきました。どうにか春までに行き先を決めて、3月にKCPを出ようと考えています。授業後、そのSさんの面接練習をしましt。

一度落ちているからでしょうか、答えがすべて安全運転でした。当たり障りのない答えで、内面を面接官役の私に見せることはありませんでした。Sさんでなくても誰でも答えられるものばかりで、Sさんの特徴が全く感じられませんでした。これでは面接官の印象に残らず、落ちること請け合いです。

SさんはT大学に落ちたあたりから、メンタル面が崩れてきました。不安で眠れないとか、だから遅刻欠席が多いとか、授業中も受験勉強が気になって問題集をやってしまうとか、入学したばかりの頃の、やる気にあふれたはつらつさが消えてしまいました。外見も、いかにも寝起きといった風情で登校してきます。

また、Sさんは結構滑らかにしゃべれてしまいますから、安全運転の答えがなおのこと形式的に聞こえてしまいます。面接という火の粉を振り払っているだけという感じを、面接官に与えてしまうような気がします。滑らかすぎて余計なことも言っていました。

以上のようなことをフィードバックしたかったのですが、Sさんのメンタルを考えると、とても伝えられませんでした。ですから、自分を売り込むことに力を入れてほしいとだけアドバイスしました。試験日まで時間がありますから、まだ面接練習のチャンスはあります。少しずつレベルアップしていきましょう。

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実力が発揮できない

1月10日(火)

Yさんが志望校に落ちてしまいました。私も面接練習をしたのですが、面接試験にたどり着く前に、小論文ではねられてしまいました。

Yさんは、どうも自己表現が不得手なようです。授業でも、作文の成績は文法や読解などと比べると見劣りします。話をさせると、よく聞くと筋が通っているのですが、よく聞かないとそれがわかりません。面接練習ではパッと聞いてすぐわかる話し方を練習しましたが、その成果を発揮する以前に散ってしまいました。

最近は日本人の入試でも総合選抜が幅を利かせ、面接や小論文で合否が決まる例が増えているようです。でも、ペーパーテストの良し悪しで合否が決まる入試も残っています。これに対して、留学生入試は大半の大学学部学科で面接があり、文系学部を中心に小論文を課すところも多いです。つまり、日本人ならテストの点だけで入れる試験方式もあるのに、留学生にはそういうチャンスが与えられないケースも少なくないのです。

となると、Yさんのような不器用な学生は、不利な立場に置かれることになります。確かに、大学に進学したら、どんな学問をするにせよ、文章力は必要です。自分の意見や考え、あるいは疑問を語れなかったら、学術的な探求をしたことにはならないでしょう。私たちも、テストの点数だけがいい学生には、こうした自己表現の力も養うように指導しています。ただ、人間には得手不得手があります。不得手な部分を克服しようと努力を続けている学生が壁に跳ね返されるのを見ると、ひときわ心が痛みます。

1か月くらいかけてYさんを観察してくれたら、どんな大学だってYさんが欲しいと言いますよ。だから、より一層残念です。

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初面接練習

1月5日(木)

早速面接練習がありました。相手は、今度の日曜日がS大学の入試本番というHさん。クラスで教えたことのある学生ですが、約束の時間の10分前に来て職員室で面接の想定問答の最終チェックをしている背中は、今までになく緊張の色がにじみ出ていました。

「Hさんですね。あなたはなぜ本学で勉強したいのですか」と質問すると、Hさんは一語たりとも言い漏らすまいと答えます。しかし、その気持ちが強すぎて早口になってしまい、しかもマスク越しですから、聞き取りにくくなってしまいました。これでは逆効果です。Hさんの話し言葉を聞き慣れている私ですらわからない部分がありましたから、S大学の面接官にはHさんの熱い思いが伝わらないでしょう。

その後、S大学で何を勉強したいか、卒業後どうするつもりかなど、面接の常道ともいえる質問をしました。それなりには答えていましたが、“それなり”止まりでした。Hさんの狙っている学部学科はS大学の中でも難関ですから、このままでは入れません。フィードバックを兼ねて、S大学のページを見ながら答えのポイントを説明しました。S大学卒業後は帰国して故郷の街の発展に貢献したいというHさんの将来計画を、より輝かしいものに聞こえる工夫を伝授しました。

Hさんは、自分をよく見せるということに関しては不器用な学生です。思いも人間性も能力もあるのに、それを伝える点において要領が悪いのです。ここを補って学生を志望校に入れるのが教師の役割です。この学期は、多くの“Hさん”の面倒を見ていくことになります。

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