Category Archives: 試験

90%と100%の違い

8月29日(木)

Mさんはまじめな学生です。いつも積極的に授業に参加し、宿題は必ずやってきて、どんな課題にも真正面から取り組みます。Mさんの発する質問はみんなの参考になりますから、教師も力を入れて答えます。時々力を入れ過ぎて、時間があっという間に過ぎてしまうのが困った点ではありますが。

そのMさんですが、中間テストは振るいませんでした。採点された自分の答案用紙を前にして、今までこんな点を取ったことがないと肩を落としていました。肩を落とすだけならどんな学生でもできます。Mさんの偉いところは、その間違え方を分析し、今後何をしていけばいいかというところまで考察した点です。

「私は90%理解すればもう大丈夫と思ってしまいます。でも、100%理解しないとテストで点が取れません」と、濁点がないために×になった漢字の答えを示しながら話してくれました。まさにその通りで、Mさんの漢字テストはどうしようもない間違いは少なく、正解の至近距離にある誤答が目立ちました。読解も同様で、頭の中ではわかっているのでしょうが、それを答案用紙上に表す際に言葉足らずで減点された問題が多く、合格点を割り込んでしまいました。

“詰めが甘い”というやつです。授業中は口頭で答えますから、勢いで教師も他の学生もそれでいいような感じになり、微妙なずれは見逃されています。たとえ間違いに気づいても、会話や議論の流れを優先して、その場で訂正しないこともあります。そんなことが積み重なって、こうなってしまったのかもしれません。

Mさんは、これからは細かいところにも注意して、期末テストでは立派な点数を取り、学期全体で合格の成績にすると誓いを立てました。こちらも間違いを厳しく指摘することで、Mさんの意気込みに応えていくことにします。

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時間オーバー

8月9日(金)

中間テスト前の授業日としては最終日なので、私のクラスでは会話タスクを行いました。この1か月半ほど、授業で時間があればたとえ3分でも会話をしてきました。その成果を発表してもらおうというものです。

このクラスの学生たちは、授業中に疑問点をどんどん質問してきます。3分の会話でもおろそかにはしません。まじめに取り組んできたと言っていいでしょう。ですから、こちらも課題に対してどんな会話を繰り広げてくれるか、楽しみにしていました。

課題と採点基準を発表し、ペアで30分かけて会話を組み立ててもらいました。時間が来て、「じゃ、最初にやりたい人」と聞くと、即座に手を挙げたのがLさんとYさんのペアでした。一番よくできるだろうと思っていたペアでしたから、他のペアのお手本になるかもしれません。

やってもらうと、予想通り、他の学生たちにもまねしてもらいたい出来でした。今学期習った表現や語彙を上手に取り込んで、聞き手を引き込むストーリーを形作っていました。

これに刺激されてか、次から次と手が挙がり、あっという間に発表が終わりました…となるかと思ったら、1つの発表が長いんですね。3~4分という設定でしたから、中には2分台のところもあるだろうと踏んでいたところ、3分代後半から4分台が大半で、授業時間を10分もオーバーしてしまいました。こんなに長い会話を作り上げる力が付いていたのかと、ただただ驚くばかりでした。

学生たちは明日から3連休で、連休明けが読解などの筆記試験です。会話テストの前にやった総復習にも真剣に取り組んでいたし、授業後に残って質問してきた学生もいたし、大いに期待できそうです。

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道に沿って

8月7日(水)

「下井草駅南口から、線路に沿って新宿方向に3分ほど歩いてください」と指示されたら、どうすればいいかわかりますね。では、「下井草駅南口から、道に沿って新宿方向に3分ほど歩いてください」と指示されたらどうでしょう。「下井草駅南口から、道に沿ってきれいな花が植えられています」だったら、どういう情景か思い描けますね(本当に花が植えられているかどうかは知りませんが…)。

「道に沿って歩く」というと、私はどぶの中を歩くようなことを想像してしまいます。「道に沿って」と言ったら道そのものは含まれない、すなわち、歩く場所は道の外側であり、だからどぶの中を歩くイメージになるのです。同時に、道に沿って花を植えることは可能です。また、「線路に沿って歩く」とは線路の上を歩くのではなく、線路のわきか高架下の道を歩くのです。

先週の中級クラスのテストに、「○○○に沿ってまっすぐ行くと…」 の“○○○”に適当な言葉を入れるという問題がありました。「道に沿ってまっすぐ行くと…」という答えがかなりありました。私は自信を持って×にしました。しかし、Yさんは自分の例文を先生に「道に沿って…」と直されたと、その実物を出してきました。

とすると、上記の理屈は私だけのローカルなものなのでしょうか。考えすぎでしょうかね。結局、先週のテストは特別に「道に沿って」は認めるけれども、来週の中間テストでは×にするということにしました。

このおかげで再試にならずに済んだZさん、あなたは再試のために勉強し直したほうが良かったと思いますよ。中間の前日まで勉強しないつもりなんでしょ。

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結果発表

7月24日(水)

昨日の帰り際、Tさんが「先生、EJUの点数はもうわかりますか」と聞いてきました。成績発表は7月24日とEJUのページにしっかり出ているのに、心配で心配でたまらなかったようです。もちろん、昨日の時点では発表されていません。「明日まで待っててね」と答えるほかありませんでした。

今朝、8時頃。Sさんが「先生、EJUの点数はもうわかりますか」と聞いてきました。EJUのページを見ましたが、発表された形跡はありません。「もうちょっと待っててね」と言って自分の仕事に取り掛かりましたが、Sさんは帰る気配がありません。「ちょっと待っててね」と受け取って、私が仕事を中断して点数を見つけ出すのを待っていたのです。こちらも言葉が足りませんでした。「発表、まだみたいだから…」と付け加えればよかったのです。

その後、授業に出てしまい、10:30の休憩時間に戻ってくると、発表されていました。12:15の授業終了後、大急ぎで結果を取りまとめ、先生方に知らせました。

そんなことをしていると、ゆうべ騒いだTさんと、RさんがEJUの成績を基に進学相談に来ました。2人とも、思ったよりも点が取れたようです。少し強気な大学名も出てきました。それはいいのですが、2人の課題は発話力です。今の話し方だったら、EJUの成績がよくても面接で落とされるでしょう。しかし、そういうことを注意しても、2人は成績が良かったことに浮かれて、私の言葉など聞いちゃいないようでした。こういうパターンが一番心配なんですよね。Rさんに至っては、早く合格して楽な生活がしたいと言い出す始末です。

Qさん、Pさんなど、進学相談を待ち構えていそうな学生が何人か思い浮かびます。忙しくなりそうです。

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うさぎとかめ

7月23日(火)

中級クラスでは、毎日朝一番で漢字の復習テストがあります。前日に勉強した漢字の読み書きの問題を10問出し、6問正解が合格点です。文字通りの復習テストで、出題にはひっかけやひねりなどは加えません。だから、うちでその日習った漢字を復習しさえすれば、確実に合格点が取れます。

出席を取って、すぐにその復習テストを始めました。教室内を回ってみると、Fさん、Oさんなどはかなり苦戦しているようでした。GさんやMさんは楽勝のようでした。

さて、授業後、採点してみてびっくり。今朝の受験者の約4割が不合格ではありませんか。Fさん、Oさんは全滅に近い悲惨極まる状況でした。Yさん、Jさんも、惜しいところで不合格。もちろん、満点の学生もいましたが、全体としては成績不振と言わざるを得ませんでした。

一言でまとめてしまえば勉強不足です。上述の通り、教科書を見てちょっと手を動かすだけで、合格点ぐらいは絶対にどうにかなります。現に、アルファベットの国から来たCさんとMさんは、毎回合格点を取っています。その一方で、漢字の国から来た学生は死屍累々の有様です。

漢字の国からの学生は、勉強不足と同時に油断もあります。意味がわかればそれでよしとしてしまうと、読解はどうにかなっても、漢字や語彙のテストでは戦えません。毎日の小さいテストだと、不合格に慣れてしまって、勉強のモチベーションにはつながらないのかもしれません。

こういう現象を見るにつけ、「うさぎとかめ」を思い出します。Fさんはうさぎの典型例、Cさんはかめの代表です。学期gは始まって2週間ほどで、両者の間には大差がついています。

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まだ見ぬ受講生へ

6月28日(金)

学生たちは学期休み、先生方は今学期の成績不良者の対応と新学期の準備にいそしんでいます。私は毎日のように養成講座の授業があり、私の周りだけ別の時間が流れているかのようです。

私が担当している養成講座の授業は多岐にわたり、なおかつ半年に1回のペースですから、授業の前に資料を読み込んでおかないと立ち往生しかねません。しかも、コース名で「少人数」とうたっていますから、受講生のペースに合わせて講義の中身も多少調整します。

現在の受講生の方々は優秀ですから、ちょっと難しめの話題を盛り込んだり、あるテーマについて深掘りしたりして、受講生に押し負けないようにしています。そのためには、結果的に没になることも覚悟のうえで手持ちの資料を膨らませておきます。これは、頭を悩ませられることではありますが、やっていて楽しいことでもあります。今朝も2時間ばかりあれこれ考え、一応この線で行こうと、以前の資料を手直ししました。

授業は順調に進みましたが、優秀なだけに質問も多く、その方面の議論が盛んになりました。その議論は考えさせられるところが多く、私自身も勉強になりました。そのかわり、今朝の2時間は、出番がありませんでした。

午後は、通信で養成講座を受講している方の試験問題を作りました。申し訳ありませんが、通信の方には実際にお会いしたことがありません。どんな方がどんなふうに、私が作ったオンライン教材を使っているのか見えません。私がカメラの前で力を込めたことが、パソコンの向こう側の受講生に伝わっているのでしょうか。そんな心配をしながら、キーボードをたたきました。

このテストは、来週行われるそうです。採点が、ちょっと怖いです。

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はじめまして

6月18日(火)

朝一番の仕事は、新入生へのインタビューでした。先週実施した7月期の新入生のプレースメントテストの結果中級以上と判定された学生に、改めてインタビューして、レベルを決定しようというわけです。

Yさんは今アメリカにいます。時差の関係で、日本の早朝が向こうでは昨日の昼下がりです。プレースメントテストは夜に頑張ってもらいましたから、インタビューはYさんの頭が一番活発に動いている時間帯に設定しました。

オンラインがつながると「こんにちは」とYさん。「日本はおはようございますの時間です」「あ、そうですね」「今、東京は雨が降っていますが、そちらはどうですか」「いい天気ですよ」といった調子で緊張をほぐしながらインタビューを進めました。

Yさんはずっと国で勉強していましたからでしょうか、日本語を話し慣れていない感じがしました。現に、KCPでは会話の勉強がしたいと言っていました。

午後もインタビューでした。RさんはJLPTを5回受けました。だいぶ前にN1に合格したのですが、去年はN2を受けました。N2はN1に比べて実用的な日本語が出てくるので、その勉強をしたうえで受験したそうです。結果は満点。数年前の在校生Nさんが、同じようにN1に受かった後でN2を受けて満点を取りました。Nさんは話す、聞く、書く、読む、すべてに秀でていて、どんな日本語にも対応できました。そんな学生が入ってくるのでしょうか。

最後はLさん。雑談の時に日本でどこへ行ってみたいかと聞いたら、熱海という答えが返ってきました。関西とか北海道とか富士山とか広島とかというのは聞いたことがありますが、熱海は初めてでした。レベル判定そっちのけで、興味本位で「どうして?」と聞いてしまいました。熱海の花火大会の映像を見てきれいだと思ったので、ぜひ実際に見てみたいのだそうです。今年はKCPの夏休み期間中の8月18日にあるようですから、ぜひ見に行ってほしいです。

入学式までまだ間がありますが、Yさん、Rさん、Lさんに会うのが楽しみです。

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シャープペンシル禁止

6月14日(金)

EJU本番前最後の授業日ですから、EJU受験の際の注意事項を学生たちに伝えました。受験票と一緒に注意事項も送られているはずですが、ろくに読みもせずにほったらかしにしているおそれが多分にありますから、各クラスで注意喚起をしてもらいました。

EJUを実施しているJASSOが公表している注意を読むと、試験会場外と連絡を取っての不正行為に非常に神経をとがらせていることがわかります。シャープペンシルも使ってはいけないというのは、小型の発信機と区別がつかないからでしょう。うっかりシャープペンシルを使って失格にでもされたら、今シーズンを棒に振ってしまうことにもなりかねません。一罰百戒の“一罰”として血祭りにあげられたらたまりません。

昔は、試験での不正行為と言えば、他人の答案用紙をのぞき込んだり、カンニングペーパーを見たりといった古典的手口でした。しかし、昨今は外部の人に答えを教えてもらうなど、大掛かりになりました。通信技術の発展の負の一面と言っていいでしょう。

そんな無理をしてまで進学しても、卒業できなければ意味がないでしょ。留学生の場合、日本語力で背伸びしても、進学先で苦しくなるだけです。分相応の所に進学するのが、その学生にとって一番幸せな結果をもたらします。“いい大学”に入りたかったら、日本語学校でもう1年日本語を鍛えてから挑戦すべきです。

泣いても笑ってもあと2日です。ここまで来たら、勉強するより体調を整えて、ベストコンディションで16日の試験に臨んでもらいたいです。

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朝の採点

6月12日(水)

今朝、出勤して最初に取り組んだ仕事は、昨日の日本語プラスの時間に学生に書かせたEJU記述の採点でした。昨日のうちにざっと目を通してだいたい何点ぐらいか見当をつけておきましたから、2度目はじっくり読んで添削しながら最終的に採点しました。今度の日曜日がEJUの本番ですから、急いで採点して午前の授業の時に、学生に返してもらおうと思ったわけです。

EJUの記述は、独創性はあまり要求されません。何と言っても論理構成が採点のポイントです。文法の間違いや誤字脱字もないに越したことはありませんが、それよりも話の筋が通っているかどうかです。問題文の指示に従って、自分の意見まで書けたら、毎回35点前後の平均点ぐらいはどうにかなるでしょう。

さて、採点してみると、初級のLさんは最後の段落が書ききれませんでしたが、言いたいことは十分にわかりました。自分の考えが書きかけでしたから、ちょっと厳しいかもしれませんが、35点。Sさんは制限時間の数分前には書き終わっていたようでした。文章全体の骨組みはできているのですが、1つ1つの文がひどすぎます。KCPの学生たちの例文や作文によって日々鍛えられている私が、添削という和文和訳をしながら読んでもピンとこなかったのですから、EJUの採点官にわかってもらえる可能性は低いでしょう。25点じゃ甘いかな。Tさんはさすが上級で、内容はよくわかりました。話の進め方が若干強引なので、45点。Cさんもまとまっていましたが、Tさんのよりいくらかわかりにくかったので、40点。

こんな調子で全員分採点し、午前の先生方にお渡しできました。多少なりとも学生たちの成績を伸ばすことに貢献できたら、うれしい限りです。

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時間との闘い

6月11日(火)

先週から、日本語プラスの理科は、EJUと同じ試験時間、80分で過去問2科目を解き、マークシートまできっちり塗る練習をしています。EJUの理科の問題は、時間さえあれば必ず解けます。1題1題は決して難しくないのですが、受験生は問題数で圧倒されてしまうのです。科目間の時間配分と、それを守るためのスピード感を実地に体験して、本番に備えてもらおうという趣旨です。

授業では計算のスピードを上げる方法を伝授しています。問題を解いている最中にそれを思い出せうるかどうか、思い出してその方法で答えを出すに至ったか、そういったことも確かめてもらいたいです。先週はこの点があまりうまくいかなかったようでした。まじめな学生たちですから、みんな真正面から計算してしまいます。そうすると、80分で2科目は厳しくなります。果たして、今週はどうだったのでしょう。

80分で2科目、40問弱を解かなければなりません。マークシートを塗りつぶす時間を含めて、1問2分ほどです。計算問題が多い物理に少し長めに時間をかけるとすると、化学にかけられる時間はおのずと限られてきます。また、ある問題を10分かけて正解を得たとしても、その時間で他の問題4~5問解いた方が、いい点数が取れるでしょう。5分かけても解けなかったら、スパッとあきらめることだって必要です。

ほとんどの学生が80分をフルに使いました。解答用紙を集めてから、正解+解説を配りました。毎期、正解の番号しか見ない学生が多い中、今学期はみんな解説まで読んでいましたから、希望が持てそうな気がします。

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