Category Archives: 試験

1・3・5位

10月16日(水)

JPETは、JLPTに比べると知名度も低く、受験者数もはるかに小規模ですが、国際的な外国語学習評価基準であるCEFRにのっとって受験者の実力を判定してくれます。そのJPETの2024年上半期の成績優秀者上位5名のうち、3名をKCPの学生が占めました。その賞状と記念品が届いたので、午前の授業の終了間際に、その3名が在籍している最上級クラスの教室にお邪魔して、表彰しました。

3名とも、最上級クラスの中でもトップを争う学生ですから、そのぐらいの成績を挙げて当然と言えばその通りです。でも、小規模とはいえ受験者は100人や200人ではありませんから、その中での1位とか3位とか5位とか言えば、偏差値を出すとすると80や85まで行ってしまうのではないでしょうか。またCEFRでも最上級レベルに評価されますから、その辺を歩いているバカ高校生はもちろんのこと、普通の高校生をも上回る日本語力かもしれません。クラスの先生方も、そう思ってるに違いありません。

去年は1位と2位の学生を出しましたから、KCPは2年連続で最高位に近い成績の学生を輩出していることになります。今年のJPET受験者募集の際に、去年の話をして、「今年もぜひ上位を独占してもらいたい」と発破をかけました。3名は、その期待に見事に答えてくれました。非常にうれしく、また、誇らしいことです。

この3名に、日本語で太刀打ちできる留学生はほとんどいないと言っていいでしょう。ですから、自信をもって自分の目指す道を突き進んでいってもらいたいと思っています。

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経験者は強い

10月15日(火)

日本語プラスが始まりました。午後から、11月のEJUに向けた授業をしました。

まずは記述。初めて記述に挑戦する学生もいましたから、記述の全受験生平均は33点だから、最低でも35点は取れなどという目標点数と、文章構成を説明しました。制限時間30分で400~500字の文章を書くのですが、やはり経験者は早いですね。書き上げてあまりに暇そうにしていましたから、間違いがないかどうか、もう一度読み直せと指示を出したほどです。

次は理科。こちらも2科目で80分という制限時間内でどんどん答えていかなければなりません。各問は決して難しくないのですが、1問2分程度で答えを出さなければならないところに難しさがあります。5分かけても答えが出せなかったらとりあえず後回しにしろという指示を出して、問題を解かせました。60分ほどで初挑戦組の1名がギブアップしました。知識が足りなかったと言っていましたが、問題文の日本語の読解ができなかったというのが最大の要因ではないかと思います。

さて、記述を採点してみると、やはり上級の学生は50点に近い成績でした。中級になると、35点がやっとぐらい。初挑戦組は400字に達しないというか、結論に至らなかった学生もいました。来週は、そういうあたりをフィードバックして、書くスピードを上げるようにしていきます。

理科も、経験者組が圧勝でした。ケアレスミスを犯さなければ、本番でも高得点が期待できます。経験者組は「国立」と言っていますが、十分可能性があります。

本番まで1か月足らずの短期決戦です。こちらも油断なく身構えて行かねばなりません。

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前日の面接練習

10月11日(金)

Sさんは明日が入試の面接です。慎重な性格のSさんは、すでに何回も面接練習を重ねてきました。本番前日も、先学期の担任のA先生に面接練習をお願いしていました。

午後から11月のEJUに備えた授業があったのですが、午前中のクラス授業の終了後、「先生、明日、入試の面接なので、5時からA先生と面接練習をしますから、1時半からのEJUの授業は欠席します」と言ってきました。要するに、面接練習の準備をしたいからEJUの授業を休むということです。上述の「慎重」は、これぐらいなのです。普通じゃありません。

外はすっかり暗くなった6時近くになって、A先生に伴われたスーツ姿のSさんが職員室に現れました。明日の服装で面接練習をしたそうです。ここまで来ると、もう「頑張れ」というほかありません。技術的なアドバイスではなく、精神的なエールです。

最後の面接練習も、だいぶ熱が上がったようです。A先生によると、質問によっては話が止まらなくなって、A先生が止めに入ったそうです。最初の頃は、言葉が全然出て来なくて、こちらがSさんに言いたいことを話させて、それを面接の答えになるように作り上げたりしました。それを思えば、話が止まらなくなるなんて夢のような話です。大きく進歩したものです。

Sさんは、自分は日本語ができないと思って、志望校を決める前の4月期あたりから入試の面接を意識して、自分の考えを話す練習をしてきました。確かに私たちも手を貸しましたが、自分で上り詰めたようなものです。明日は今までの練習の成果を出し切って、ぜひとも合格をつかんでもらいたいです。

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採点

9月27日(金)

昨日の期末テストの読解を採点しました。一番熱心に授業に参加しているJさんが一番いい成績だったという、実にまっとうな結果となりました。授業中もスマホを握りしめている学生たちは、軒並み沈みました。教科書の文章に集中しなければならないのに、右手の指先にばかり神経が行ってしまっていたら、頭の中には何も残りませんよ。

全体的なことを言うと、学生たちは質問文をよく読んでいないんだなということがわかりました。“当時”とはいつのことですかと聞いているのに、“大学生の私”などと答えてしまった学生が1人や2人ではありませんでした。せめて“私が大学生の時”と答えてくれたら、部分点はあげられたのですが…。授業では“筆者が大学生だった時”と教えたような気がするんですが、耳よりも指先に精神を集中していたら、そんなことは覚えちゃいませんよね。

比較的よくできたのは、本文から言葉を選んでくる穴埋め問題でした。これだって、できない学生はとんでもないところから言葉を引っ張ってきたり、5文字分ぐらいのスペースしかない解答欄に無理やり本文1行を押し込もうとしたり(その1行の中のキーワードを答えてほしかった)と、やりたい放題をしてくれました。かなり好意的に採点しましたが、それでも点をあげられない答えがザクザク出てきました。

こんなふうに学生に対して愚痴をこぼしたくもなりますが、こちらにも改めるべき点がなかったかと反省もしています。各段落の、文章全体の肝をつかませるにはどうしたらいいか、これは永遠の課題です。また、Jさんの授業の受け方を、次の学期の学生たちにいかに伝えるか、そして実践してもらうかということもそうでしょう。

今度は、新学期までの期間が短いです。その間に態勢を立て直さねばなりません。

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年に1回に

9月21日(土)

次の学期はEJUがありますから、ちょっと遅くなってしまいましたが、今年6月の過去問を仕入れて理科3科目の模範解答を作っておかねばと思い、過去問を出版している凡人社のサイトを見たら、発売された形跡がありません。EJUを実施しているJASSOのページを見ると、2024年度から過去問は年1回の出版になったと出ているではありませんか。今度の11月の分と合わせて、来年3月に出版予定だと書いてありました。

6月のEJUは、出願者数が国内外計26,088人、受験者数は22,688人でした。このうち過去問を買う人はどのぐらいでしょう。国内受験者は大半が日本語学校生でしょうから、個人で買う人はそんなにたくさんいるとは思えません。こう考えると、EJU過去問の販売部数は2,000冊とかというレベルではないでしょうか。この部数だと赤字かもしれません。また、EJUの対策本や練習問題集もあまり出ていません。紀伊国屋で探しても、顔なじみの本しかありません。作っても慈善事業になってしまうのでしょうね。

JLPTは、今年の7月のデータがまだ発表されていませんから去年の12月のデータで言うと、N1の受験者が45,000人強、N2は67.000人強です。こちらは、EJUの数倍の受験者がいて、ビジネスパーソンが個人で受験することも十分考えられます。ですから、過去問も対策本も問題集も、EJUとは比べ物にならないくらい種類が豊富です。こちらは事業的にペイするのでしょう。

国は外国人留学生を増やそうとしています。しかし、足元がこれだと、その努力が実るかどうか怪しいのではないでしょうか。

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不合格

9月20日(金)

授業後、Sさんが先週のテストの再試を受けました。先週は残念ながら合格点には届きませんでしたから、もう一度よく勉強して再挑戦したというわけです。

このテストには、友達同士の会話のスクリプトを作るという問題がありました。この問題には、勉強した表現や語彙を使うことはもちろん、“友達同士の会話”らしい文末表現で答えてもらおうという出題意図がありました。授業でも練習したのですが、この問題で点が取れたか取れなかったかで、成績に大差がつきました。

この問題をほぼノーミスで答えられたJさんは、満点に近い成績で、クラスで一番でした。しかし、Jさんは例外で、多くの学生がこの問題で沈みました。配点が大きかったこともあり、少なからぬ学生がこの問題で失点を重ねたせいで不合格になりました。Sさんもその1人でした。

Sさんの答案は、先週よりはいい点でしたが、合格点にはわずかに届きませんでした。先週と同じく、会話のスクリプトを作る問題ができませんでした。Sさんはまじめな学生ですから、教科書に載っている事柄は確実に覚えます。しかし、会話の文末表現は今学期だけでなく、先学期も先々学期も、会話の時間に練習しているのですが、教科書に出ているわけではありませんから、Sさんはスルーしてしまったのでしょう。

そして、Sさんがテストの答えとして書いた会話スクリプトは、Sさんのしゃべり方そのものなのです。まるでSさんが答案用紙に乗り移って私に話しかけてきたかのようでした。今は、ろくな会話をしなくても生活できてしまいます。ですから、Sさんのように非常にぎこちない会話しかできなくても生活に不便を覚えないのです。

Sさん、あなたは努力を惜しまない学生ですから、進級させてあげたいです。でも、その努力の方向を考え直さないと、ごく近い将来、身動きが取れなくなってしまいますよ。

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説明する

9月19日(木)

WさんとZさんは、理科系志望の良きライバルです。もうすぐ入試本番を迎えます。その入試に、口頭試問があります。理科系大学の口頭試問は、「どうして本学を志望したんですか」などという一般的な面接の質問に加え、理科や数学に関する質問もなされます。例えば、数年前のある卒業生は、「ニュートンの法則を説明してください」と聞かれたそうです。

ニュートンの法則といえば物理の基礎の基礎ですから、理科系の受験生なら誰でも知っています。しかし、それを改まって説明しろと言われると、言葉に詰まってしまいます。頭でわかっていること、国の言葉で理解していることを日本語わかりやすく説明するというのは、留学生にとってはかなり高度な口頭発表です。

大学によっては、それほど難しくない問題をその場で解かせて、答えを導くまでの過程を説明させることもあります。口頭試問の時間は1人当たり20分ぐらいですから、長考に沈まなければならないような難問は出されません。数分以内で解ける問題ですが、答えに至るまでにどんな道筋をたどったかわかりやすく説明するとなると、話は別です。

物理の時間に、EJUの過去問を使って、WさんとZさんに口頭試問の練習をしてみました。2人とも、EJUの過去問ぐらいは解けます。しかし、予想通り、説明する段になると、しどろもどろの支離滅裂、ホワイトボードには前衛芸術並みの絵と国籍不明の文字、一緒に説明を聞いた学生も“???”でした。

WさんとZさんも、もどかしく悔しいに違いありません。合格はその悔しさ、もどかしさを越えた先にあります。まだまだ鍛えなければなりません。

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読み書きができても

9月6日(金)

漢字テストがありました。毎度のことですが、読み書きの問題は比較的できますが、教科書に出てきた漢字熟語の使い方となると、とたんに正答率が落ちます。正答率が落ちない学生は、日々の授業の予復習を欠かさず、勉強した熟語を例文や作文などで使ってみようという姿勢の持ち主です。

フランス語は、使用頻度の高い単語を1000語知っていれば、約80%理解できるそうです。2000語なら90%だそうです。これに対し日本語は、上位1000語で60%、2000語でも70%弱という話です。90%理解しようと思ったら、1万語ぐらい知っていないといけないようです。日本語は単語の数が多い言語なのです。

だから、授業でも、学生の理解語彙をちょっとでも増やそうと心がけています。そして、それを無理やりにでも使わせて、使用語彙に格上げさせようとも試みています。しかし、テストの結果を見る限り、これらが実を結んだとは言い難いのが現状です。

午後はEJU日本語の強化クラスを担当しました。読解でも聴解・聴読解でも、本文に書かれている言葉やスキットで使われた言葉が、選択肢中では言い換えられている例が多数あります。最低でも理解語彙を増やしておかないと、“いい学校”に手が届く成績は得られません。クラスの学生たちは、その言い換えに気づかなくて苦戦していました。

学生は、漢字以外にも覚えなければならないことがたくさんあり、時間も脳みその空き容量も余裕がないのかもしれません。でも、この秋に鍛えて語彙の壁を乗り越えない限りは、光明が見えてきません。

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発想の転換

9月4日(水)

「Gさんの行きたい大学は?」「東大です」「6月のEJUは?」「受けませんでした。11月に頑張ります」「東大だと、ほとんど1問も間違えられないよ」「はい、わかっています。だから、毎日午後1時半から9時半まで塾で勉強しています」「点数を増やすための勉強も必要だけど、1問も間違えないようにするには、間違いを減らす、なくす訓練の方がそれ以上に必要だよ。学力じゃなくて、集中力、注意力の問題なんだ」

学生面接の場で、Gさんとこんなやり取りをしました。Gさんが考えているような最難関の大学を狙おうとすると、EJUでの1問のケアレスミスが命取りになりかねません。また、GさんはEJUの数学や理科は易しいと言っています。しかし、そう言いのけた学生が実際に取った点数がかろうじて平均点を上回る程度だったという例は、枚挙にいとまがありません。KCPの学生の通弊かもしれませんが、詰めが甘い学生が多いです。だから、間違いを減らす・なくすという発想を持たなければならないのです。

練習問題を解いて答え合わせをして、答えが間違っていたことがわかった時、多くの学生が“これは勘違い・ケアレスミスだから、実質的に○だ”というような反応を示します。全然わからない問題ではないから、この問題にはもう触れなくてもいいとして、ほったらかしにしてしまいます。これでは間違いは減りません。どこで勘違いを起こしたのか、なぜ“ケアレス”に陥ってしまったのか、そこをつぶすのが間違いを減らす勉強なのです。

CさんもSさんも、“ああ、わかったわかった”組です。力がないわけではありませんが、6月のEJUで力が反映された点数が取れたかというと、ぜんぜんそんなことはありません。口を酸っぱくして間違いを減らせと言ってきましたが、通じませんでした。Gさんも同じ組だったら、東大はせせら笑いながらGさんを切り捨てるでしょう。

まだ2か月ありますから、今舵を切りなおせば、どうにか間に合うでしょう。問題は、どうすれば学生たちの発想を変えさせられるかです。

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映像を見ながら

9月3日(火)

火曜日は、午前の授業が終わると進学の授業があります。進学までのスケジュール管理とか、出願に必要な書類とか、志望理由書の書き方とか、受験科目そのものではなく、全体共通の諸々の事項を扱ってきました。9月に入り、試験日の早い大学の本番が近づいてきましたから、今週は面接の受け方を勉強しました。

ちょうどうまい具合に、日本人の高校生向けですが、面接試験の入室から退室までの一連の動きをまとめた動画を発見しましたから、それを教材として使わせてもらいました。面接の受け方を文字にして配っても、学生はこちらが意図したとおりに想像してくれるかどうかわかりません。映像ならそういう誤解が少ないだろうと思っていましたが、適当なものが見つかりませんでした。昨日の夜、ようやく、学生たちが理解できて、しかも参考になる、ほどほどの長さの動画が見つかりました。今朝、大急ぎでパワーポイントも作り、お昼の授業に間に合わせました。

試験日が比較的近い学生は、やはり真剣に見ていました。年末ないしは年が明けてからと考えている学生は、まだ他人事みたいな顔をしていました。本当は全然他人ごとではないんですがね。

動画を見終わり、まとめのパワーポイントで復習をし、じゃあ実際にやってみましょうとういことで、Aさんを受験生役に指名しました。予想通り、ボロボロでした。教室への入り方がいい加減だったり、お辞儀がぎこちなかったり、所作だけが原因で落とされることはないにしても、ちょっといただけない内容でした。

「来週はみんなにやってもらいますからね」と、予告とも脅しとも取れる言葉で授業を終わりました。

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