Category Archives: 試験

学期休み中の学生

12月23日(金)

朝、学校のパソコンのメールを見ると、Yさんからのメールが届いていました。大学出願に必要なKCPの書類を申し込むのを忘れてしまったとのことでしたから、午前中に学校へ来いと返信しました。Yさんは11時ごろ来ました。出願締め切りは1月7日だそうですから、十分に間に合います。今すぐほしいなんて言ったら殴り倒してやろうかと思っていましたが、暴力教師にならずに済みました。

書類を見直して自分で気づくあたり、さすが上級と言ってやりたいところです。でも、募集要項をもらったら、まず、KCPの書類が必要かどうか確かめろとも指導していますから、やっぱり減点かな。うかうかして年末年始休みに突入していたら、出願をあきらめなければならなかったかもしれません。

Yさんが書類の申し込みをしているころ、期末テストの追試を行っていました。TさんとSさんは受験のため、一昨日は期末テストを受けられませんでした。Tさんは前もって受験票を見せてくれましたが、Sさんは断りもなしに受験に行っていました。期末の前日も前々日も欠席でしたから電話を掛けたところ、受験行脚の最中だということがわかりました。追試の時に受験票を持って来いと言っておいたのに、追試の後に職員室に寄った時、Sさんは受験票など、受験したことを証明する書類は持って来ていませんでした。

うちへ帰ったら受験票の写真を送れと伝えましたが、まだ何も届いていません。受験の事実が確認できたら欠席した日も出席扱いにできますが、このままでは欠席のままです。出席率がよくないSさんにとって、期末直前の一連の欠席は大きな意味を持ちます。そういうことも説明したのに、何の反応もありません。下手をすると、大学に受かってもビザが出ないかも…。

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テスト採点

12月22日(木)

期末テストの採点をしました。読解は、テストの直前の授業で復習としてやった問題から出しました。さすがに手も足も出ない学生はいませんでしたが、90点以上もそんなに多くはありませんでした。授業でやったと言っても、「12行目の“それ”って何?」「お年寄りが買い物に行くこと」「買い物って、何を買うの?」「食料品や日用品」「それだけ?」「あ、衣類も」…などという授業中のやりとりを文章で表現しなければ点はもらえません。こうなると、成績下位グループは苦しいですねえ。解答欄は1行しかないのに、安全を見込んで本文を長々と抜き出し、やたらと小さい字でびっちり書いてくる学生もいます。老眼の私に読めない答えは、もちろん×。逆に、いつも大きい字を書くGさんは、1行に10字ぐらいしか書ないので、読みやすいけど説明不足で減点。

そんなわけですから、授業でやった問題を出しても、実力の差は答案用紙の上に歴然と現れます。教科書に線を引いてわかったつもりになっている学生は、じわじわと点を引かれ、いつの間にかやっと合格点レベルまで落ちてしまいます。教師の話や板書をノートに取っているNさんなどは、いい成績でしたね。

昨日の期末テストは、最下位のLさんでもどうにか合格点の60点を取りました。でも、合格点が取れたからそれでよしとしないで、クラス平均の80点よりはだいぶ悪いと思って、答えの書き表し方を勉強してほしいです。大学院や大学に進学したら、参考文献から読み取ったことをきちんと整理することが、研究や学問を進めていくうえで非常に重要なのです。

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敵は漢字だ

12月21日(水)

Pさんは理科系の大学進学を考えていました。受験講座も取りました。しかし、勉強したのは夏まででした。ネックになったのは、漢字でした。漢字の読み書きがどうしてもできませんでした。理科系の受験講座の資料なんて、図表や数式、反応式が多くを占め、大した量の漢字があるわけではありませんが、Pさんには大きな負担になっていたようです。

話す・聞くにかけては、Pさんはクラスでもトップを争っています。いや、2つぐらい上のクラスに入っても、決して負けることはないでしょう。本人も自信を持っているようで、それが態度に現れます。目を合わせて堂々とやり取りをします。教科書を読ませたときのおどおどした顔つきと、とても同一人物とは思えません。

そのPさんのクラスに、期末テストの試験監督として入りました。最初は作文。課題文はグラフが多いので、何とかなるでしょう。…などと思いながら教室内をうろちょろしていたら、Pさんが真っ先に提出しました。原稿用紙に名前が書いてあることを確認し、既定の文字数以上になっているか見ようとしたら、原稿用紙の大半がひらがなではありませんか。「日本」などという表記が、ちらっと目に入った程度でした。

次は読解、文法。やはり、一番に提出ですが、今度は空欄が目立ちます。読解の問題テキストは授業でがっちりやっているんですが、ふりがながないと皆目わからないようでした。文法も同様で、選択肢の問題はどうにかなったものの、短文作成などは沈没でした。

最後の漢字・語彙は言うに及ばず。明らかに勉強していません。捨てていると言ったほうがより正確です。

入学試験においてもきっとこんな感じでしょう。EJUは漢字が読めずに問題が理解できず、大学の独自試験に小論文などあろうものならお手上げに違いありません。面接の評価が素晴らしかったとしても、合格には至らないのではないかと思います。

漢字さえ勉強すればと思いますが、その漢字の勉強がPさんにとっては苦痛以外の何物でもないのです。こういう学生に勉強させてくれる大学、ないのでしょうか。

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寒い教室の中で

12月1日(土)

去年まで着ていたコートが擦り切れて色もあせてきましたから、手ごろなコートを探していました。先月の中頃、家の近くのUでコートが安くなっていましたから、まだ暖かかったですが、キープしておきました。今朝、そのコートに初めて袖を通しました。買ったときには気づきませんでしたが、重いなと思いました。これだけ重いと、3月ぐらいに暖かくなってコートを脱いだ時、春をより一層強く実感できるのではないかと、まだ冬が始まったばかりですが、今から楽しみにしています。

12月になったら急に寒くなると天気予報で言っていましたが、本当にそうなりましたね。気象庁の観測によると、最高気温は日付が変わった直後に出て、日中は10℃に届かなかったようです。すでに気温が10℃を切っていた11時ごろ、PさんがK大学のオンライン面接を受けるために教室を使いたいと言ってきました。担任のH先生から話を聞いていましたから、すぐに空き教室に案内しました。鍵を開けると、曇り空で何となく薄暗いことも手伝って、寒々しい雰囲気が満ち満ちていました。

小一時間すると、Pさんが「先生、終わりました」と報告に来ました。緊張して思ったことがうまく話せなかったとも言っていました。初めての面接試験だったそうですから、やむを得ない面もあります。Pさんが緊張したのだったら、他の受験生も同じくらい緊張しているはずです。そこを気に病んでもしかたがありません。もう何校か受けるそうですから、その時の糧にすればいいでしょう。

Pさんの使った教室の確認と施錠に行くと、教室の暖房は使った形跡がありませんでした。受験のことで頭がいっぱいで、寒さも感じなかったのでしょうか。あとは、合格を祈るのみです。

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コミュニケーション力

11月16日(水)

昨日に引き続き、中間テストの採点をしました。問題文をきちんと読んでいない学生のなんと多いこと。「あなたの考えを書きなさい」ときいているのに、本文中から長々と抜き出してきたり、「具体例を挙げなさい」という問題に“頭の中の考え”とかという漠然としたお話を書いたりと、×以外つけようのない答えが山ほど出てきました。

この学生たちも、大学院や大学の入試を受けます。筆記試験において的外れな答えは、どんなにたくさん書いたところで、1点ももらえません。出題者が答えてほしいと思っていることに答えなければ、低い評価にしかならないでしょう。これは、文章表現におけるコミュニケーション力だとも言えます。

面接試験でも、同じようなことをやらかすんじゃないかと、心配です。面接官の前置きの言葉を聞いて、それに対する返答を考えているうちに本題を聞き逃し、面接官を苦笑させるような答えを言っちゃうのでしょう。また、面接官の言葉のうち、自分の知っている単語のみを拾い出し、それを組み合わせて質問内容を想像し、“???”な答えを返しちゃうかもしれません。

学生たちの今学期の目標を見ると、「コミュニケーション力を伸ばす」などという文言がちらちらとあります。だけど、中間テストの答えを見る限り、コミュニケーション力が伸びた感じはしません。コミュニケーション力というと、とかく発信力に目を向けがちですが、相手の考えや気持ちなどを正確に受信する力も侮れません。その力あってこその話す力です。頓珍漢なことを雄弁に語っても、コミュニケーションは成り立ちません。

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質問

11月14日(月)

「昨日のEJUはどうでしたか、Pさん」と、クラスの中で弁が立つPさんに聞きました。EJUの様子を詳しく語ってもらおうと思ったのですが、「まあまあです」とはぐらかされてしまいました。Pさんならそんなかわし方もできるということを見落としていた私の負けです。Yさんみたいな朴訥な学生のほうがかえってしゃべってくれたかもしれません。他のクラスの学生に聞いたところ、数学が難しかったと言っていました。

昨日はEJUでしたが、明日は中間テストです。学生にとっては「前門の虎、後門の狼」みたいな感じかもしれません。このクラスは文法テストの出来があまり芳しくありませんから、文法の復習をすることにしました。今学期勉強した内容をかいつまんで私がもう一度解説するというのは、あまりに親切すぎます。ですから、「まあまあです」の敵を取るつもりも加わり、「今学期勉強したところで質問がある人、どうぞ」と聞いてみました。ちょっと意地悪かなと思いつつも、だれが手をあげるだろうかという興味のほうが勝りました。

しばらくの沈黙ののち、「先生」と遠慮がちに質問したのはKさんでした。Kさんは、去年、レベル1で教えた学生です。中級で1回つまずいて、レベル1で同じクラスだった学生より1つ下のレベルで勉強しています。先学期の先生からの引継ぎでも、“できる”グループには入っていませんでした。「まあまあです」なんて気の利いた答え方は、無理でしょうね。しかし、休まずに学校に通い、真剣に授業を受けるKさんは、今までの蓄積がかなりあります。その蓄積がものを言い始めたのではないでしょうか。Kさんの質問は、実はみんなの疑問であり、私の板書をみんなが書き写していました。

まあ、昨日までEJUの勉強で、文法の復習にまで手が回らなかったということにしておいてあげましょう。でも、テストの採点は、そんなの関係なしですからね。

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シャープペンシル禁止令

11月12日(土)

明日は11月のEJU本番です。学生たちには、昨日、受験に際しての諸注意を伝えました。脱いだり着たりして温度調節できる服装で行けとか、お昼を持って行けとか、ごく一般的な事柄のほかに、EJUを実施するJASSOから発表されている注意事項も伝えました。こちらも、大学によっては複数のキャンパスがあるところもあるから注意せよとか、身分証明書として在留カードを持ってこいなど、当たり前のものが大半です。

その中に、シャープペンシルでは試験が受けられないというのがあります。マークシート方式のテストの場合、HBの鉛筆で記入するというのが一般的注意事項ですが、シャープペンシルで記入しても普通に採点してもらえます。しかし、JASSOの注意事項には、「シャープペンシルは使用できません」と明示してあります。

ここからは私の想像ですが、JASSOは問題を撮影されたり、聴解聴読解の音声を録音されたりするのを恐れているのではないかと思います。だから、受験生にシャープペンシルのようなメカニカルな小物を手にしてほしくないのです。EJUには毎回のようにカンニング疑惑、問題外部持ち出し事件が発生しています。全受験生にとって公平な試験が行えるよう、シャープペンシル禁止令を出したのです。

このテストの結果いかんで自分の人生が決まると思っている受験生も少なくないでしょう。だから1ミリでも背伸びをしたくもなります。でも、そうやって手に入れた“いい大学”の学生の身分も、進学してからもしかるべき成績を収め続けなければ、はく奪されてしまいます。また、“いい大学”の卒業証書の効き目が意外なほど薄いことも、卒業後ほどなく気づかされます。大きなリスクを冒すわりに、得るものは少ないですよ。

明日、学生たちがEJUの問題に取り組んでいるころ、私はワクチン接種です。

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何が必要?

11月10日(木)

今度の日曜日がEJUの本番ですから、今週までの受験講座はそれに向けての授業をしてきました。過去問解説が中心ですが、問題を解くのに使う理論や公式や知識・常識について質問が出てくることもあります。この期に及んで基礎に戻って…というのはやりたくないのですが、質問されたら答えなければなりません。

Nさんは、先学期まではそういう質問をよくしてきましたが、今学期は全然しません。理解が進んだのか、丸暗記に頼っているのかわかりませんが、ひたすら私の話を聞いています。それに対して、今学期から受験講座を受けているAさんは、わりと遠慮なく質問します。説明が長くなりそうな場合は、授業後に残すこともありますが、嫌がらずに残って解説を最後まで聞いてから帰ります。

Aさんの話によると、国では「これはこういうものだ」という授業ばかりで、“これ”を裏付ける理論やその周辺事項や応用展開などには触れられることがなかったそうです。疑問に思っても、聞ける雰囲気ではなかったと言っていました。どうやら、日本へ来て初めて、Aさんは知的好奇心が満たされ始めたようです。

昨日の文科系数学では、2次方程式の解の公式を導出しました。これは、できない学生には暗記せよと言います。式の変形を見せても混乱するだけですから。でも、昨日の学生たちは筋がいいので、最後までついてきてくれました。解の公式の導出なんか、EJUには絶対に出ません。にもかかわらず興味を持ってくれたことが、とてもうれしかったです。

大学は、知的好奇心の強さがものをいうところです。今のうちから鍛えておいてほしいと思いながら、授業をしています。

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共通テスト

11月8日(火)

数学のS先生が、盛んにJさんを褒めます。Jさんは今学期から受験講座数学を受け始めましたが、他の受講生と比べると、段違いによくできるのだそうです。みんなが1問目で頭を抱えている間に、最後の問題まで解いてしまいます。そして、答えも正しいのです。

受験講座化学の後で、Jさんに話を聞きました。すると、Jさんは国の理科系の大学を中退して日本へ来たと言うではありませんか。数学がよくできるわけです。高校の数学は忘れてしまったと言っていましたが、忘れていても段違いによくできるのだったら、思い出したらどのくらいのレベルになるのでしょう。Jさんは11月のEJUは受けないのだそうですから、その数学的直観力を11月の受験生に貸してもらいたいくらいです。

Jさんが何を狙っているかというと、2024年の大学入学共通テストです。日本人の高校生と同じ一般入試で進学するつもりなのです。最近、そういう外国人留学生が少しずつ増えています。KCPにも3年前ぐらいから現れ始めました。面接試験がないから話すのが苦手な学生にとっては、そのほうが有利かもしれません。また、留学生入試の定員が極端に少ない学部学科なら、一般入試のほうが入りやすいことだってあり得ます。

数学と理科の基礎はできていて、英語も大学で鍛えられたでしょうからひどいことにはならないとすると、Jさんにとっての難関は国語の古典です。来年になったら予備校に通ってそこそこの力はつけると言っていました。

そこまで計画的に考えているのなら、私もできるだけの支援はしましょう。驚いてばかりいるわけにはいきません。

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右の耳から入って・・・

11月2日(水)

KCPでは、前の月の出席率が80%未満の学生には、欠席理由書を書かせます。これは内々の資料ではなく、入管への提出資料として使うことだってあります。公的書類の側面もあるのです。

Cさんは、残念ながら、欠席理由書を書かなければならない学生の1人です。私の授業の日にも姿を見せなかったこともあるし、遅刻も少なくないです。授業後に教室に残して欠席理由書の用紙を渡すと、Cさんはまず欠席日の欄に目をやりました。「先生、私、20日は入試でした。入試の日も欠席ですか」と、少し不満げな口調でクレームを付けました。

入試日は出席扱いにします。しかし、それには条件があります。事前に担任に欠席届を出す必要があります。急いで探してみましたが、Cさんの欠席届はありませんでした。

「Cさん、欠席届を出しましたか、これくらいの小さい紙の」「M先生にもらった紙ですか。それならうちにあります」「Cさんのうちに置いといても意味がないでしょう。どうして出さなかったの。欠席届がなかったら入試の日でも欠席です」「え、そんなこと知りませんでした。いつ言いましたか」「今学期の最初の日のオリエンテーションで言ったはずです」

学生は人の話を聞いていないんですね。うなずいていたからって安心してはいけません。Cさんの場合、先月11日の始業日の時点で、入試まで9日でした。入試まで90日だったら欠席届は他人事でもしかたありませんが、直前と言ってもいいタイミングだったのに、なんで自分事として聞かなかったのかなあ。また、M先生から用紙をもらったのなら、その時点で確認することだってできましたよ。

休み明けの金曜日もこのクラスですから、もう一度注意を促しましょう。ちなみに、Cさんは20日が出席になっても10月の出席率は80%に届きません。そちらも大問題です。

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