Category Archives: 試験

困った

3月26日(水)

超級クラスのSさんから、専門学校に落ちたという連絡が入りました。Sさんは超級クラスの学生ですから、日本語に関しては心配ありません。専門学校も、日本語で落とされたのではないことだけは確かです。では何が原因かというと、KCPでの出席率以外に考えられません。

Sさんは、もともとは大学に進学するつもりでした。その気になれば、去年の4月に進学できたかもしれません。しかし、“いい大学”に進みたかったですから、もう1年勉強する道を選びました。結果的には、この選択が裏目に出てしまいました。いろいろな理由で学校に通えない日が増えてしまい、2024年度もあと5日という押し詰まった時期において、行先が決まっていないという状況に陥ってしまいました。

もちろん、KCPも手を拱いていたわけではありません。手を変え品を変え、飴を与えたり鞭で打ったり、相談に乗り指導をし、出席率浮揚策を打ってきましたが、浮かび上がるのは一時期だけでした。やはり、合格には出席率が不可欠なのです。

最近は、出席率90%でも、「どうして10%も休んだんですか」と聞かれることがあるそうです。となると、それよりもかなり悪い数字のSさんは、どう答えても苦しい立場に追い込まれます。病気と答えたら、そんな病弱の体で留学が続けられるのかと追及されるでしょう。

在校生で一番心配なのが、Jさんです。JさんもSさんに負けないくらいの日本語力を持っていますが、Sさん以上に出席率が心配です。来年の今頃、尾羽打ち枯らして「先生、どうしたらいいですか」なんてやっているのではないかと心配しています。

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あれ、1回だけ?

3月15日(金)

教材や教科書として使う本を探しに紀伊国屋まで行きました。開店直後だったのでわりとすいていました。1階を軽く見て、日本語学習書が置いてある7階に上がると、私が初めての客だったみたいで、直立不動の店員さんたちが一斉に私に向かって頭を下げました。

しばらくご無沙汰しているうちに、新しい教材や日本語教師側の参考書などがずいぶん出ていました。どれもみんなほしくなりましたが、そこはぐっとこらえました。そんなことをしたら破産してしまいますから。

しかし、EJU関連の本は代わり映えしませんでしたね。新しい本もありましたが、他の分野の活発さに比べると見劣りがしました。

そんな新しいEJU関連の本の1つに、2024年のEJU試験問題集がありました。2023年までは6月のと11月のと別々に出版されていましたが、2024年分は1冊にするというお知らせがだいぶ前にありました。ですから、2回分を1冊にまとめて出版されるのだろうと思っていましたが、売り場に出ていた問題集には1回分しか載っていませんでした。しかも、値上げされていました。

諸式高騰の折、値上げはやむを得ないとして、2回試験があったのに1回分しか出版しないというのはどういうことでしょう。EJUの過去問って、よっぽど売れないんですね。赤字を少しでも減らそうとして、本来2セットあるはずの問題を1回分だけにしたのでしょう。

国を挙げて留学生を呼ぼうとしているのに、こんなことでいいのでしょうか。1回分だけでも出版されるだけありがたく思えということなのでしょうか。

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誰が書いたの?

3月4日(火)

来週の水曜日が卒業式なので、上級の選択授業は今週が最終回です。卒業式で大半の学生がいなくなってしまうため、それ以降は選択授業が成り立たなくなるのです。

毎週火曜日に担当してきた小論文も、最終回を迎えました。この選択授業・小論文では、しっかりした根拠に基づいて論理的に書くということを目標にして、毎週600字程度の小論文を書いてもらってきました。ですから、課題を発表してから、インターネットで調べる時間を与えました。調べ終わったらスマホなしで書くという進め方をしてきました。

そうやって書いた(はずの)学生の小論文を読むと、まとまりすぎている文章が、毎週いくつかありました。根拠を調べる時間に、それっぽいことが書いてあるページを見つけて、それを丸写ししたのかもしれません。あるいは、ChatGPTなどに書いてもらったのかもしれません。

このような文章は、まとまってはいるのですが、濁点が落ちていたり、促音の「っ」が余計なところに入っていたり足りなかったり、「、」と「。」を書き違えていたりなど、文章の内容にそぐわない間違いが随所に見られます。しかし、現場を見ていないので、「コンピューターに書いてもらったでしょう」と断罪するわけにもいきませんでした。

しかし、先月末の中間テストと卒業認定試験では、下調べは一切なしでした。すると、今まですばらしい小論文を書いていた学生が、急に意味不明の日本語の羅列を書き綴りました。見事と言うほかない落差でした。

最終回では、クラスの学生が書いた誤文をピックアップし、それを訂正してもらいました。化けの皮がはがれた学生のウルトラ誤文も載せようと思ったのですが、クラスで一番優秀な学生でも直せそうもなかったので、もう少し直しやすいのにしました。

反則技を使った学生たちは、卒業していきます。「大学に入ったら、もう少し上手にAIを使おうね」と皮肉ってやろうかとも思いましたが、誤文訂正の所でボコボコにしましたから、やめておきました。

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痛い目に遭わないと

2月17日(月)

先週の土曜日は、RさんのI大学受験日でした。お昼過ぎに、そろそろ面接の頃だろうかと思いましたが、その後は仕事に取り紛れてすっかり忘れていました。

昨日、仕事用の受信トレイを開いてみると、土曜日の夜にRさんからのメールが来ていました。本人の反省の弁が縷々書かれていました。今までに何回も面接練習をし、そのたびにあれこれ注意してきたのに、その注意が身に染みていなかったんですね。痛い目に遭って初めてそういうものなのかと理解できたのでしょう。

話すスピードが速すぎると言い続けてきたのですが、土曜日も全速力でしゃべってしまったようです。面接官が非常にゆっくり問いかけてきたのが、実は自分への注意だったのかもしれないという気付きがあった点は、進歩があったと認めてあげてもいいでしょう。

ぞんざいな言葉を使いがちな口癖も、たっぷり出てしまったようです。これも、それに気づいた点は偉いですが、抑えることができなかったのですから、面接官の印象は芳しくなかったでしょうね。

Rさんは、速くしゃべることが日本語の上手さを表すと信じていた節がありました。そうじゃないんだ、相手に伝わる話し方をすることがコミュニケーションの要だ、そして、面接はコミュニケーション力のテストでもあると、Rさんの耳はタコだらけになっているはずなのですが、まだ足りなかったようです。

結局、私の言葉もRさんに響いていなかったということは、私のコミュニケーション力も知れたものだったということです。幸いにもというか、Rさんはもう1校受験します。その面接では、Rさんの実力をいかんなく発揮させてあげたいものです。

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カワキ教授

2月10日(月)

「先生、私はこのカワキ教授の研究に興味があります」と言いながらYさんが見せてくれたB大学のページには、“乾教授”と出ていました。確かに、“カワキ教授”と読めないこともありません。でも、大学の面接試験で“カワキ教授”などと言ったら、一発アウトでしょうね。

日本人の名字は10万種類を超えるとも言われています。人口が10倍以上の中国の名字よりもはるかに数が多いのだそうです。ですから、常識では読めない苗字が出てきたとしても不思議ではありません。というか、一筋縄では読めない名字の子がクラスに1人や2人いて当たり前でした。

私も、90%以上の確率で、初対面の人から“カネハラさん”と呼ばれます。“キンバラ”は重箱読みですから、訓読みの組み合わせの“カネハラ”と読みたくなるのもわかります。ですから、病院などでは2つの名前に聞き耳を立てていたものです。最近は個人情報保護からなのでしょうか、受付番号で呼ばれることが多いですから、そこまで気を張る必要もなくなりました。

それはともかく、たとえ読みにくい名字であっても、読み間違いはいけません。今シーズンも、“カワキ教授”以外にも何人かの先生の読み方を学生に注意してきました。でも、ちょっと注意して大学のページを見れば、先生の名前の読み方はどこかに書いてあるものです。研究論文一覧を見れば、“…Inui”などと著者名が書いてありますから。

さて、Yさんは12日がE大学の合格発表です。ここに受かっていれば、余裕を持ってB大学に臨めますが、果たしてどうでしょう。

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それぞれの結果

2月8日(土)

12月のJLPTのデータをまとめました。良い方にも悪い方にも、大きな番狂わせはありませんでした。授業中ほとんどしゃべらないAさんが意外と高い点数でN1に合格したことや、授業中の様子を見ている限りAさんよりずっとよくできそうな感じがするNさんが落ちたことぐらいでしょうか。12月の時点でレベル1だったTさんが、ぎりぎりではない点数でN2に受かったことは、レベルだけを見れば番狂わせに加えてもいいですが、毎日Tさんを見ていたクラスの先生はどうご覧になるのでしょうか。

番狂わせはなくても、毎回出てしまうのが、合計点では合格ですが、ある科目が合格基準点に達していないために不合格になってしまう例です。読解が60点満点で9点では、聴解が満点でもN2の実力があるとは言えないでしょう。基準点未満の科目があって落とされる学生は、ほぼ全員漢字がネックになっています。Gさんの先学期の面接記録を読むと、予復習は全然していないと書かれていました。また、中間テストに比べて期末テストは、成績がガタッと落ちていました。これからすると、むしろ、聴解でよく満点が取れましたねということになります。

就職が決まっているHさんはN1に合格しました。技術を見込まれて入社試験に通ったとはいえ、N1はあって困るものではありません。日本でずっと暮らしていくつもりなら、なおさらのことです。

ZさんがN1の、CさんがN2の、それぞれ校内最高点というのも妥当なところでしょう。CさんはN1を受けても受かったかもしれません。

一番困るのは、出願したのに受験しなかった学生たちです。試験日に体調不良だったのかもしれませんが、試験日に体調を最高のコンディションに持って行くのも、試験の1科目です。

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夢を抱いて

1月22日(水)

Sさんは理科系の進学を考えている学生で、午後、進路相談に来ました。高度なVRを作りたいという希望を持っています。現時点での志望校を聞くと、まっさきにW大学の名前を挙げました。でも、本当は国立大学に行きたいそうです。

大学を卒業したら、大学院はアメリカで進学したいと思っています。そして、将来はVRの制作会社を立ち上げたいと言います。だったら、アメリカの大学院で経営学を専攻したらどうかとけしかけたら、そういう考え方もあるのかという顔をしていました。

SさんのVRのアイデアと技量がどれほどのものなのか私には見当もつきませんが、MBAでも取れば世界進出も夢ではありません。もちろん、そう簡単な道ではありませんが。でも、その険しい道をあえて進もう、難関に挑もうとする意気込みが、Sさんの顔からあふれていました。

しかし、そもそものところに難題が立ちはだかっています。国の言葉で書かれた物理や化学の問題なら解けるのですが、日本語だと問題文の意味が理解できないのだそうです。これではいい点の取りようがありません。KCPでの読解の成績はいいんですがねえ…。

というような相談をしていたころ、先週から今週にかけて何回も面接練習をしたAさんは、E大学の面接試験に臨んでいました。つい先ほど、そのAさんが受験の報告に来てくれました。他の受験生よりも日本語が上手だったと、自信満々の様子でした。口頭試問も、うまく答えられたそうです。発表は来月半ばです。果報は寝て待てといきますでしょうか。

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話すのは苦手

1月16日(木)

AさんはG大学に落ちてしまいました。6月のEJUでいい点が取れたので、面接なしの書類選考だけで合否が決まるG大学に出願しました。しかし、倍率が5倍ほどとAさんの予想をはるかに上回り、合格証を手にすることができませんでした。話すのに自信がなかったので面接なしのG大学なら受かるかと思ったのでしょうが、Aさんと同じ発想をした受験生が多かったようです。

G大学は滑り止めのつもりでしたが、それに落ちてしまったので、背水の陣で来週のE大学の入試に臨まなければならなくなりました。G大学に受かったら気楽にのびのびとE大学が受けられるはずでしたが、その構想が崩れ去ってしまいました。落ちてもいいぐらいの気持ちでしたから、自信のない面接もあまり練習していませんでした。しかし、どうでもこうでもE大学に引っかからねばならなくなりました。

午後、そんなAさんの面接練習をしました。わざわざE大学に提出した志望理由書まで持って来てくれたのですが、いやあ、ひどかったですね。志望理由書に書いてある内容について質問したのに志望理由書とは違う答えが返ってきたり、あまりに早口で聞き取れなかったり、口頭試問に至ってはどうでもいいことを延々と話す始末でした。そういうダメな点を指摘するのに小一時間かかったほどでした。

すでに進学先が決まっているSさんも一緒に聞いていましたが、Sさんからも厳しい指摘を受けていました。あと1週間足らずでどうにか仕上げなければなりません。今まで授業でも話す練習をおろそかにしてきたつけが、こういう形で回ってきました。私ももちろん全面協力をしますが、前途多難です。後輩を戒めるのには好適な実例にはなりますが…。

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再挑戦

1月8日(水)

あさってから新学期ですが、学生たちはぎりぎりの攻防を続けています。先学期の成績が振るわなかった学生に「もう一度同じレベル」という連絡をしたところ、どうしても進級したいという学生が何名か現れました。毎学期のことですが、今学期はお正月休みが長かったため、始業日の直前までごたごたが続いています。

Bさんは“もう一度”の連絡を受けた1人です。進級したいと訴えてきたため、一番点数の悪かったテストを受け直してもらうことにしました。もちろん、誰にでもこういうチャンスを与えるわけではありません。Bさんは意見を積極的に発表するなど、授業への貢献が大でしたし、授業中の活動を見る限り進級する学生に劣るとは思えませんでしたから、チャレンジさせようと思いました。結果は、こちらの期待に応えてくれました。

Cさんも同様に訴えてきました。授業中の発言などからは進歩が感じられました。しかし、Bさんに比べてどのテストも成績が劣り、特に文章力のなさが目立ちました。再チャレンジも意味不明の文が多く、あえなく失敗となりました。今学期は卒業の学期ですから、卒業証書が手にできるように努力してもらいたいものです。

Dさんも力及ばずでした。Dさんはすでに進学先が決まっていますから、無理して難しいことを勉強してわからないことを増やすより、先学期よくわからなかったことを確実に身に付けて卒業したほうが、進学してからのためになります。

まるっきり問題外のEさんからは、何の反応もありませんでした。本人も納得しているのでしょう。Eさんはこれから受験の本番ですから、それどころではないのかもしれません。

職員室には、新学期の教科書や教材が積み上げられて、学生たちを待ち構えています。

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大躍進

12月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。まず、聴解。Nさんの解答用紙には、最初の2問しか答えがありませんでした。その2問は正解だったのですが、あとが白紙では点数をあげようにもあげられず、あっさり不合格。日頃のNさんの様子を見る限り、2問しかできないなどということは絶対にありませんから、テスト中に寝込んでしまったのに違いありません。ほかは、よくできる学生が満点近くを取り、怪しい学生は合格点に届かず…という感じで、大きな番狂わせはありませんでした。

次は作文。Nさんの作文は2行で終わっていました。ここでも寝たのでしょうか。こんなに寝てばかりだとすると、どこか具合が悪かったのでしょうか。それとも、進級をあきらめたのでしょうか。受験で頭がいっぱいで、期末テストになんか、構っていられなかったのかもしれません。そうだとしたら、年明け早々の入試にぜひとも合格してもらいたいものです。

作文で驚かされたのは、Kさんです。今学期勉強した論理構成に則って、持論を堂々と展開していました。クラスの学生にこういう作文を書いてほしかったのですが、なかなか書いてくれませんでした。Kさんも書いてくれない1人でしたが、最後に立派な文章を書いてくれました。どんな授業も真剣に聞いているKさん、ついに華が開いたと言ったところでしょうか。

そのKさん、EJUでもやってくれました。今朝ほど公表された11月のEJUの結果によると、Kさんは6月のEJUに比べて、日本語の成績を60点以上も伸ばしました。地道に努力を続けてきたKさんの面目躍如です。そして、この時の記述の成績が40点。でも、昨日の期末の作文なら、50点取ってもおかしくないです。1か月前のEJUではできなかったことが、昨日はできたのです。大躍進じゃありませんか。

惜しむらくは、Kさんはすでに指定校推薦で進学先が決まっていますから、このEJUの好成績を活用する場がありません。でも、自信だけは持ってもらいたいですね。

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