Category Archives: 自分自身

寝連休

5月6日(木)

この連休は、実に何もしませんでした。去年の連休はずっとオンライン授業でしたから毎日学校に通いましたが、今年はカレンダー通りの休みで、しかも旅行の予定を全面キャンセルしましたから、5日間完全オフでした。仕事をしようと思えばできたでしょうが、4月30日の夜に学校を出た瞬間から、今朝学校のシャッターを開けるまで、完全に忘れていました。

こういうご時世だからと、献血に協力しに池袋まで行ったのが、唯一の遠征です。あとは、自宅から歩いていける範囲をうろちょろしていました。でも、献血ルームはずいぶん混んでいましたねえ。みんな、行く場所もないしすることもないから、献血でもしてやろうかと思ったのでしょうか。

自宅近辺でくすぶっていましたから、お金も使いませんでした。5日間で1万円使ったかなあ。あ、そうだ、献血に行った日に本をまとめ買いしましたから、書籍代で1万円使いました。それを除いたら、たとえ1万円を超えていても、2万円は絶対に使っていません。旅行に出ていたら、交通費と宿泊代を含めると1日平均2万円ぐらい使っていたかもしれません。それがどう多く見積もっても3万円ですから…。日本国民がみんなこんなことをしていたら、景気が悪くなるはずです。だから菅さんは1日も早く緊急事態宣言をやめにしたいのです。

さて、連休明け。毎日、腰が痛くなるまで寝ていたので連休ボケが心配でしたが、zoomの画面に映った学生を見たら、スイッチが入ってしまいました。気が付いたら、いつもと同じように学生のいない教室で声を張り上げていました。

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iPS細胞の次

4月23日(金)

ただいま、中級の読解で使う文章を書いています。中級なら市販の読解の教科書もたくさんあるのですが、あれこれ自由に手を加えるとなると、著作権がこちらにある自作の文章が一番です。自分が書いた原稿だったら、学生の反応を見て手直しもすぐにできます。

文章の中に、それを使うまでに勉強した語彙や文法を練り込むこともできます。もちろん、無理に使おうとして不自然な文章になってしまったら逆効果です、使えるところには積極的に使うという気持ちで書き進めています。また、語彙も、これはぜひ覚えてほしいとか、初級で勉強した単語だけどこういう意味用法もあるんだとか、慣用句やコロケーションとか、そういうことを考えながら選んでいます。

肝心の内容は、理科系の話題でというリクエストがありますから、それに応えています。京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を取って間もないころ、iPS細胞について書きました。論理的な文章を読んで理解できるようになるという目的で、書き進めました。好評なようで、最近はその後のiPS細胞ということで、授業中に講演もしています。大学や大学院に進学したら、文献を読んだり話を聞いたりして理解を深めていくことの連続です。これはその練習です。

今回も、科学技術関係の論理的な文章を書くことになっています。iPS細胞は現在の技術の解説が中心でしたから、今度は技術の発展を時系列で見たお話にしようと思っています。そこに学生が「へー」と思えるような何かを加味して、学生を引き付けるような読解教材に仕上げたいです。

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3Dを伝える

4月21日(水)

今学期の受験講座理科は、先学期以前に入学した学生は対面、今学期入学で来日できないでいる学生はオンラインと、2方式併用で進めています。先学期は全面オンラインでしたから、ある意味では楽でした。目の前にいる学生と、画面の向こうにいる学生と、差を付けずに教えていくのには、独特の難しさがあります。

まず、アクションで何か説明するときには、zoomの画面内に収まるように動きを抑えなければなりません。画面を見ている学生にもわかる動作が求められます。

「メタンは、炭素原子を中心に、こことこことこことここに水素原子があります」と、左手のこぶしで炭素原子を表し、右手のこぶしで水素原子の位置4か所を次々と示します。私の目の前で見ている学生は、炭素原子と水素原子の立体的な位置関係がこれでわかります。しかし、国でパソコンの中の私を見ている学生はどうなのでしょう。大画面のモニターだったとしても、立体感はどこまで伝わったかなあ。

それから、zoomでパワーポイントを画面共有して話を進めていても、こちらの学生には私の顔つきやらちょっとした体の動きやら、1枚1枚のスライドのプラスされた情報も伝わります。そんなことでオンライン参加の学生に差をつけてしまうことは不本意です。かといって、仏頂面で身じろぎもせずに授業をするのも不可能です。同じ教室に学生がいるのに、私がいすに腰掛けパソコンだけを見つめて授業を進めるというのも不自然です。

今のところ、対面の学生もオンラインの学生も満足そうな顔をしています。細心の注意を払いながら、ためになる授業を作っていきます。

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教え甲斐

4月13日(火)

受験講座が始まりました。初日は物理です。思えば、先学期の受験講座は完全にオンライン、先々学期はEJU直前とあってオンラインで過去問ばかり、その前の学期もそのまた前の学期もオンラインでしたから、対面授業で受験講座を行うのは1年以上ぶりということになります。

オンライン用にあれこれ手を加えたパワーポイントを使って授業を進めました。でも、いつの間にか教室のモニターの前にしゃしゃり出て、画面をなぞったりたたいたりしながら話していました。私の授業の進め方は、あまりオンライン的になっていないようです。

昨日までレベル1のオンライン授業をしてきましたが、そこでも同じことを考えました。日本語が十分に通じない学生相手の授業となると、体を張って授業をしたくなるのです。手も足も顔も全身を使って、文法や言葉の意味を説明していたことがよくわかりました。デジタルとかアナログとか以前の段階です。

オンライン授業についてもっともっと深く研究し、機器を使いこなせば、動き回ったりレアリアを見せまくったりすることなく学生の理解を進めることもできるのでしょう。ただ、私は学生が確かに理解したという手ごたえを味わいたいのです。学生が放つ“わかったオーラ”を全身で受け止めたいのです。

受験講座・物理の学生たちは、そのオーラを感じさせてくれました。力学の基礎で、国で勉強してきた範囲ですから、私が説明するまでもなくよく理解していたのかもしれません。でも、私の授業から1つでも新しいことを学んでくれたら、モニターの前で暴れた甲斐があったというものです。

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楽しみを奪われました

4月5日(月)

私は、12時ごろから1時半ごろまでは昼食を避けています。混雑のピークに、短時間とはいえ無防備な姿をさらしたくないですから。

2時過ぎでしたが、お昼に入ろうとしたお店はけっこう混んでいました。5人のグループが2つ、食事をしていました。でも、料理の残りが少なかったですから、私の料理が出てくることには食べ終わって出ていくだろうと踏んで、そのまま入りました。もう少し遠くまで行くことも考えましたが、雨が小やみになった瞬間を見計らって出てきていましたから、近場で済ませたかったのです。

注文して、料理が出てくるまでは、いつも本を読んでいます。実は、私のランチタイムは、半分以上読書タイムなのです。ちなみに、今読んでいる本は「大河ドラマの黄金時代」という本です。子どもの頃や学生時代に見た大河ドラマがよみがえってくるので、面白くて時間を忘れてしまいそうになります。

その本を数ページ読んだところで料理が出てきました。5人グループ×2は思ったより食事のスピードが遅く、まだスープをすすったり肉をつまんだりしていました。そんな状況でマスクを外すのは気が引けましたが、お持ち帰りにするわけにもいかず、口も鼻もあらわにして食べ始めました。

食べている最中も、あいつらいつまで食ってやがるんだと、気が休まりませんでした。味やにおいは感じましたから、感染はしていません。5人グループ×2はそのうち食べ終わりましたが、ご歓談が始まっちゃったんですねえ。談笑というほどではありませんでしたが、マスクを外したまま、地味に盛り上がっていました。店員さんが食器を片付けても、まだしゃべっていました。

私も食べ終わってしまいました。本来なら店で食休みも兼ねて読書にふけるのですが、5人グループ×2のじわじわと響いてくる話し声に追い立てられてしまいました。もう1セクションぐらい読めたのになあ…。

政治家や厚労省の宴会もこんな感じだったのでしょう。5人グループ×2よりも大声で派手にやっていたに違いありません。東京中、日本中こんな感じだったら、“まん防”などとのんびりした愛称の規制なんか、効き目がないこと疑いありません。

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五郎さん

4月3日(土)

俳優の田中邦衛さんが亡くなりました。私の世代では、田中邦衛さんといえば「北の国から」の五郎です。DVDなどではなく、毎週金曜日の10時からフジテレビの放送を見ていました。シナリオが発売されたので、それも買いました。誠実だけど不器用で危なっかしい五郎に、引き込まれていました。麓郷までは行きませんでしたが、富良野の街は歩きました。

死因は老衰だそうです。88歳で老衰というのは少し早いような気もしますが、大往生だったのでしょう。少なくとも、去年の志村けんさんに比べれば、やるべきことはやったという感じで天に召されたのではないでしょうか。

ニュースでは代表作として「北の国から」を挙げています。ご本人もその気持ちは強かったでしょう。そういうだれもが認める代表作が持てたことを誇りに思っていたのではないかと思います。田中邦衛さんが五郎を演じたのが50歳になる直前。あまりに若いときに代表作を持ってしまうと、それが重荷になってしまうこともよくありますが、アラフィフならそんなこともありません。絶妙の時期でした。

その年齢に、純と蛍、吉岡秀隆さんと中嶋朋子さんがなっています。純と蛍はお2人にとって20年以上演じ続けた分身のような役ですが、それに押しつぶされることなく立派な俳優に育っています。ここでもう一つ、田中邦衛さんのように後半生を代表する作品に巡り会えると、名優として語り伝えられるでしょう。

ご遺族によると、葬儀は行わないそうです。でも、純と蛍はお別れとお礼の言葉をかけたいんじゃないかな。葬式は生きてる人のためにあるって言いますが、本当にそうだと思います。

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待てない

3月12日(金)

だいぶ時間がかかってしまいましたが、昨年11月のEJU・理科の模範解答をどうにか作り終えました。単に解くだけならすき間の時間にできますが、受験講座で使うつもりで解説まで書くとなると、ある程度まとまった時間が欲しいところです。学生が見るだけではありません。何か月か後で私自身がそれを読んで授業をするのですから、そこまで考えて模範解答を作っておく必要があるのです。

物理と化学と生物で50問余りを解きましたが、1問だけ問題集についている正解が納得できません。問題を読み返しても選択肢を再チェックしても、問題集の正解表の答えが正解だとは思えませんでした。日を改めて解き直してみても、やっぱり正解表の答えにはなりません。私が持っている教科書や参考書をひっくり返しても、結果は同じです。その問題を忘れたころに、もう一度やってみるつもりです。

私は博物館や名所旧跡などで、掲げられている説明や解説をわりとじっくり読みます。すると、明らかな間違いが意外と多いのです。誤字脱字もありますが、人名地名などの固有名詞が間違っていたり、年号が変だったり、前後の解説板で内容が矛盾していたり、などというのによく出くわします。そういう時は、もう二度と来ることがないかもしれないからと、係の方に伝えます。時には私の勘違い記憶違いだったりすることもありますが、ほとんどは「ご指摘ありがとうございました」となります。

今回もそのたぐいかなと思います。でも、だいぶ前に、最初は正解表が間違っていると思ったのですが、しばらく経ってから解き直してみると、巧妙なひっかけ問題だったということがありました。だから、もう少し待ちます。

私は待てるからいいですが、実際に受験した学生たちは待てません。偉いなあと思います。

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10年

3月11日(木)

気が付いたら、2:53でした。午後クラスではオンラインで黙とうをすると聞いていましたから、私もひそかに黙とうをささげようと思っていたのですが、タイミングを逸してしまいました。2:46は、たぶん、お昼を食べた店から学校へ戻るためにわき目もふらず歩いている最中だったのでしょう。

十年一昔と言いますが、旧態依然としている面も多々あります。原子力行政なんか、その最たるものでしょう。原発への依存度を多少は下げるようですが、基本が動いたとは思えません。社会のあまりの変わらなさに業を煮やした神様が、新型肺炎というショック療法を与えたような気すらします。

冗談はさておき、震災でも大きく変わらなかった日本社会ですが、新型肺炎の流行を契機に、大きく変わろうとしているように思えます。少子化の影響も看過できないレベルにまで達し、AIによる技術革新など、もろもろの因子が相乗的に働き、変革の波を起こしつつあります。

13日(土)にJRをはじめ、多くの鉄道会社でダイヤ改定が行われます。目玉は終電の繰り上げです。リモートワークや夜の活動自粛で乗客が減ったこともその一因ですが、夜間工事の要員確保が難しくなったことも理由に挙げられています。また、電車の自動運転が試験的に行われるそうです。

もし、昨年何事もなくオリンピックが行われ、今も2019年の延長線上だったら、こういうダイヤ改定にはならなかったにではないでしょうか。いずれ行わざるを得ないとしても、今年ではなかったように思います。そういう意味で、社会が根底から動き始めた感じがするのです。

報道によると、復興どころか衰弱し続けている被災地が多いとのことです。今、起き始めている変革が、被災地を明るい方向に引っ張ってくれることを切に祈っています。

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雑談好き

2月19日(金)

午前中は、仕事で日本へ来ているPさんのプライベートレッスン。一応教科書はありますが、それにとらわれず、会話(雑談?)をしながら日本語を身につけていくというスタイルです。Pさんはビジネスパーソンですから、動詞や形容詞などの活用をドリルしながら覚えるというのではなく、公私を問わず興味のある話題について何かを語るのに必要な文法や語彙を覚えていこうとしています。JLPTなどの日本語力を測る試験も受験する予定がないそうなので、カリカリした雰囲気はありません。

どんな話題が出てくるかわからないという面はありますが、Pさんのような学習者は、私にとって一番やりやすい相手です。また、Pさんは日本の文物に大いに関心を持っていますから、私としては雑談のしがいがあります。雑談を通して多様な日本を見せていこうとすると、いくらでも話がはずみます。

日本語教師になって最初に教えた人たちが、ビジネスパーソンでした。銀行員、個人経営者、技術者など、多様な職種のさまざまな国籍の老若男女を教えました。語学の学習ですから「若」に偏ってはいましたが。ですから、Pさんのレッスンをしていると、どこか懐かしさが湧いてきました。20年ぐらい前のことですから、社会情勢も大きく変わりましたし、私も経験を積んで気持ちに余裕が持てるようになりました。ビデオを撮って学習者への対し方を比べたら、ずいぶん違っていることでしょう。

Pさんは、先週末の地震のとき、仙台にいたそうです。大きな揺れに非常に驚いたと、熱弁してくれました。新幹線が動いているところまで車で送ってもらい、日曜日にどうにか東京へ帰りついたとのことでした。こういうビビッドな話ができるところが、ビジネスパーソン相手のプライベートレッスンの醍醐味です。

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いい陽気ですね

2月2日(火)

初級クラスの漢字の時間に、「陽」の字を教えました。「陽」を使う熟語として「陽気」が挙げられていました。「陽気」には形容詞の用法と名詞の用法があります。形容詞の方は、教科書に出ている英語訳が“cheerful”、中国語訳が“快活的”となっており、「トムさんは陽気な人です」という例文も、まあ問題ないでしょう。

もう一方の名詞の「陽気」の英語訳は“weather”、中国語訳は“天気”となっていました。「天」の字を勉強した時に日本語の「天気」を勉強しており、その英語訳、中国語訳も“weather” “天気”でした。これだと、陽気=天気になってしまいます。

例文として出ている「いい陽気になりましたね」は、日本人の感覚では、絶対に「いい天気になりましたね」と同じではありません。後者は「晴れました」「青空が広がりました」に近い意味ですが、前者はそういう意味ではありません。2月の初旬に「いい陽気になりましたね」と言ったら、「暖かくなりましたね」でしょう。

じゃあ、天気と陽気は何が違うのでしょう。「東京は、5月が1年でいちばん陽気がいい」と言ったら、過ごしやすいという意味です。そもそも、「悪い陽気」とか「陽気が悪い」とかって、あまり言わないんじゃないでしょうか。「じめじめした陽気」ということもありますが、一般には「快適」というのが暗黙の了解になっていると思います。

お天気マニアとしてはいい加減に済ますことができませんから、無理を承知で初級の学生にそういう話をしました。しかもオンラインですから、こちらの気持ちがどれだけ伝わったかはなはだ心もとない限りです。初級担当のT先生がご覧になっていたら、即刻授業停止命令が出たことでしょう。

朝はけっこうな雨が降ってどうなることかと思いましたが、午後からはいい陽気になりました。124年ぶりの節分にふさわしい2月2日でした。

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