Category Archives: 自分自身

急下降、急上昇

7月27日(火)

梅雨明け以来、ずっと窓を開けて寝ていますが、今朝は雨音とその窓から忍び込む寒気で目が覚めました。久しぶりのお湿りと思っていたら、現時点での24時間雨量が34.5ミリと、まとまった雨になりました。でも、最大でも1時間15.5ミリですから、このところ頻出の記録的豪雨というほどではありませんでした。おととい・昨日あたりの予報に比べたら、降水量は少なかったと言えるでしょう。

気温のグラフを見ると、ちょうど日付が変わるころに、雨の降り始めとともに、30分ほどで4度ぐらい気温が下がっています。この冷気が部屋の中にしみついた熱気を駆逐するのに2、3時間かかり、その後私の目を覚ましたようです。さすが台風、文字通り空気を入れ換えてくれました。

その台風、勢力を弱めながら関東東方沖をうろうろしています。遠ざかるか完全に弱まるまでは安心はできませんが、厳重警戒の域は脱したのではないでしょうか。オリンピックへの影響も最小限に抑えられたようで、泣きっ面に蜂にはならずに済みそうです。

しかし、新規感染者数は予想を超えるペースで増えています。今朝の気温のグラフを逆さまにしたような感じで絶壁を築きつつあります。しかし、私たちの感覚もマヒしているようで、1年前の10倍ぐらいの数字なのに、絶望感とか緊張感とかはありません。明日も来週も来月も、ごく普通に授業を続けている自分の姿が頭の中のモニターに映し出されています。しかし、厳重警戒を解くわけにはいきません。

雨が上がり、日が差し始めると、気温も上がってきました。明日の朝は、また熱帯夜かどうか微妙なラインになりそうです。やっぱり、窓を開けて寝ましょう。

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一瞬で

7月19日(月)

T先生は痛くて腕が全然上がらないと言い、土曜日に打ってもらってから出勤してきたF先生も腕が重いと言っていました。私は、箸と鉛筆は右ですが、その他は左もよく使います。「利き腕じゃない方」と言われても、困ってしまいます。普通の人に比べて左手ですることが多い分、どちらかの腕が使えなくなると被害が大きいのです。

そんな不安を抱えながら、昨日、予防接種を受けてきました。会場はうちから歩いて10分ほどのところですが、昨日は梅雨明け10日の真夏全開でした。予約時間は11:30でしたが、暑くなり過ぎないうちにと、11時前に会場へ。あっさり受け付けてくれて、数分のうちに医師の予診。それが終わって待合室の椅子に腰かけると、待ち時間に読もうと思って持参した本を取り出す間もなく看護師さんが来ました。

「左腕でよろしいですか」「はい」「じゃあ、腕の力を抜いてだらんと垂らして…。アルコールでかぶれたりしたことはありませんか」「はい、全然ありません」などとやり取りをしていたら、もう絆創膏を張っているではありませんか。針の痛みを感じることなど全くなく、接種が終わってしまいました。私は子どもの頃病弱でしたから、注射も数えきれないほど打たれました。針が刺さる瞬間を見るのが趣味みたいなところがあるんですが、昨日はじっくり観察する隙もありませんでした。

それから経過観察の15分間、今度は本を読む時間がありました。全く何ら異状はなく、無事会場を後にしました。お昼過ぎまでかかるかもしれないと覚悟していましたが、うちへ戻ってもまだ11時半前でした。夕方になって、多少腕に違和感が出てきましたが、何かができなくなるほどではありませんでした。今朝は筋肉に痛みがないわけではないという程度でした。普通に授業も受験講座もこなし、今はもう全く何ともありません。

どうやら今回も、注射を打たれ慣れている私にとっては、荷が軽かったようです。副反応は2回目の接種の後で現れることが多いと言われていますから、まだ油断はできません。でも、乗り切れちゃう感じがしてきました。

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例文

7月15日(木)

日本語教師養成講座は、「中上級の文法」の最終回。最終回は、毎クール、理論というよりは授業準備の実態みたいなことをお話しします。中上級の文法授業にはこんな準備が必要なんだ、こんな苦労をしているんだという舞台裏を少しだけ御覧に入れています。

初級なら、例えばみんなの日本語の文法解説書などが実際に教えるにあたっての手引書になりえます。みんなの日本語の教案を集めたサイトも、簡単に見つかります。中上級の文法となると、そういう書籍やサイトが少ないです。自由裁量の範囲が広いと言えば聞こえはいいですが、現実は道なき道を進むようなものです。

私がよくやっているのは、その文法の意味する範囲を明確化するための例文作りです。いろいろな状況や条件を想定し、その文法による表現が成立するかどうかを見ていきます。一種の思考実験です。こういうことをすると、文型辞典などには書かれていない裏の意味が浮かび上がることもあります。この文法で使う「た形」はテンスの過去なのか、アスペクトの完了なのかなど、普通の日本人にとってはどうでもいいようなことを、例文を作りながらあれこれ考えています。

しかし、こうして発見した新事実を授業で話すかと言えば、そういう機会はほとんどありません。ただ、このような訓練が、学生からどんな質問が出ても対応できるという自信につながっているとは思います。学生の質問に対して、例文で答えることだってできます。

養成講座はこれでしばらくお休みかと思ったら、一休み程度で次の授業が待ち構えています。すぐに準備に取り掛からねば…。

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再起動

7月10日(土)

今学期は久しぶりに数学の受験講座を担当します。以前使ったプリント類を引っ張り出して、頭の中を数学モードに動かしていきました。

目的地が11月のEJUですから、4か月ほどしかありません。その間に文系も理系もその範囲を一通り触れなければなりません。少なくとも、理系なら微分積分に関しては、しかるべきレベルにまで持って行く必要があります。文系も、図形や整数論など、問題としてよく出るところは押さえておかないと、学生たちに志望校が狙える点数を取らせることができません。

4か月と言っても、本番直前は80分という試験時間内に過去問を解く訓練も必要ですから、いわゆる「勉強」に充てられる時間は、決して長くはありません。学生たちに自宅学習をする癖を付けさせることも、今学期の私の仕事です。理系だと、毎日2時間ぐらいは数学の勉強に使ってほしいですね。理科の勉強も2時間、日本語の勉強も2時間となると、これだけで6時間。TOEFLなど英語の試験も受けるなら、そのための勉強も欠かせません。受験生は時間がいくらあっても足りません。

私が担当している養成講座の講義の試験問題も作りました。こちらも、他の先生の講義や実技系の授業の準備もありますから、睡眠時間を削って取り組んでいます。ですから、教壇実習にどうしても必要な項目とか、日本語教師的な発想をするのに不可欠な内容とか、焦点を絞って問題を作りました。

来週からレベル4のクラスです。去年もおととしも、代講でちょいと入ったくらいじゃなかったかな。私の頭の中も、改造していかなければなりません。

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難問に挑戦

7月8日(木)

今月に入ってから、毎日のように養成講座の授業をしています。今担当しているのは、中上級の文法です。日本語の文構造とか用言の活用とか助詞の意味用法など、文法の根幹をなす事柄は、初級のうちに勉強してしまいます。みんなの日本語の50課まででやりつくします。中級以上は、もっぱら小技を身につけていきます。

小技とは、状況や心情をより鮮明に相手に伝える表現や、相手の言わんとしていることを正確に受け取る力などです。そういった小技の背景には、言語学や音声学など、純粋な文法以外の分野の応用も控えています。ですから、私の養成講座では、そう言ったところまで含めて、学習者が日本語でコミュニケーションできるようになるには何が必要か、教師は何を教えるべきかまで踏み込んでいきます。

受講生のみなさんに、中上級の教室でどんなことが行われているか実感してもらうために、私が最上級クラスで使っていた練習問題をやってもらいました。クラスでは時間をかけて説明した後に解かせた問題を、日本語ネイティブの受講生にはごく簡単な講義だけで挑んでもらいました。

説明を聞いた上で解くことが前提の問題にいきなり取り組んでもらいましたから、みなさん大変苦労していました。逆に言うと、いかに日本語ネイティブでも、最上級クラスの問題は本気でかからないと解けないのです。かなり荒っぽい形でしたが、どのくらいの授業をしているかおわかりいただけたようでした。

超級の学生は、KCPを出たらすぐに日本人の学生に伍して大学や大学院で勉強していきます。しかも、“いい大学”に入ったら、周りはかなりの知的レベルの日本人ですから、いい加減な日本語では相手にされません。学生たちの日本語力をそこまで引っ張り上げるには、教師側はそれ以上の日本語が整理された形で頭の中に格納されていなければなりません。私の講義は、それを目指しています。

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6月23日

6月22日(火)

先週末、区役所から封書が届きました。一瞬、これが噂のワクチン接種券かと思いましたが、表書きには赤字で「選挙」。都議選の告示まで間があるのに、早々と投票所の入場券が来たのです。私の区では、一般庶民のワクチン接種受け付けは、来週になってからだとか。

ワクチンを打っても感染を完全には防げないとか、でも感染率は大幅に下がるとか、しかし、ある変異種には効きが弱いとか、いろいろ言われています。現時点では打たないより打った方がよさそうだし、私は副反応を起こしやすい基礎疾患も持っていませんから、接種券が来たらできるだけ早く打ってもらおうと思っています。

昨日、去年までKCPにいらっしゃったO先生が、新たな職場・沖縄に向かわれました。沖縄は、唯一、緊急事態宣言が発せられたままの県です。O先生がワクチン接種済みかどうかわかりませんが、職場が感染者の多い本島ではないので、多少は安心できるかもしれません。

O先生がこの時期に沖縄へ行くと聞いて、うらやましいことが2つあります。1つは、沖縄の夏至が体験できることです。晴れれば、南中高度ほぼ90度の直射日光を浴び、影のない昼が味わえます。もう1つは、明日6月23日を沖縄で迎えられることです。6月23日は何の日か知っていますか。慰霊の日です。沖縄戦が実質的に終了した日です。今年も大規模な式典は行われないでしょうが、沖縄の人の心に触れる絶好の機会です。13日に自決した大田實司令官は「沖縄県民斯く戦えり 県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」と書き残しました。“特別の御高配”が米軍基地だとしたら、本土は沖縄をあまりに知らなさすぎます。本土のものが6月23日を沖縄で過ごすのは、このギャップを少しでも埋める意味もあるのです。

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さび落とし

6月16日(水)

自分が受け持っているクラスの授業は、1週間に1回か2回ありますから、連続的とは言えないまでも、継続的ないしは断続的に追跡できます。初級クラスなら、今、みんなの日本語のどの辺をやっているかは把握できているものです。流れに乗っているとも言えるでしょう。3か月で1クールですから、次の学期にまた同じレベルを担当するとしても、多少の新鮮さとともに、すぐにその流れがつかめます。

受験講座理科は、6か月で1クールぐらいのペースですが、各学期に最初からの学生がいますから、実質的には3か月で回転しているようなものです。前学期の反省を踏まえて多少資料をいじったり作り替えたり新機軸を加えたりなどしています。

ところが、日本語教師養成講座となると、6か月ごとですから、忘れたころに授業の担当が回ってきます。大筋は変わっていませんが、半年前に作ったパワーポイントを見て、「これで一体何をしたんだっけ」となってしまうこともあります。

あさってから、その久しぶりの養成講座です。先週から資料を見始め、少しずつ手直しをしています。こういうことをしながら、養成講座の頭を作っていきます。学生に教える授業とは違う発想が求められますから、それぞれの資料で何を言わんとしているか再確認しておかないといけません。

でも、そうやって準備しても、受講生を目の前にしたとたんに、「そういえば前回こんなことをしたっけ」などと思い出し、予定外の方向に進んでしまうこともあります。さて、今回はどうなるでしょう。

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本を読みながら

6月1日(火)

今、「ポストコロナのSF」(ハヤカワ文庫、日本SF作家クラブ編)というアンソロジーを読んでいます。ポストコロナというくらいですから、各小説とも昨年来の異常事態を踏まえた内容になっています。SFですから、実際にあり得る話かどうかとなると、そうでもないのですが、どれもこれも非常に引き付けられるストーリー展開です。

数えると19人の小説家の作品が載っています。しかし、その19人全員を知りませんでした。略歴を見ると、みんな何らかの賞を取ったことがあるようです。だから、SFの世界ではそれなり以上に知られた存在なのに違いありません。私は普通の人より本を読んでいますから、作家も多少は知っているつもりです。でも、こんなに力のある人たちを知らなかったのです。世の中、広いものですね。

さて、その内容ですが、私たちがウィルス防御を題材にしたり、リモートの人間関係を描いたり、オンラインを取り上げたりと、実に多彩です。去年から今年にかけて書かれたのでしょうが、完成度が高いと思わせられました。短い時間のうちにここまで書けるのかと感心してしまいました。もしかすると、おうち時間を活用して実のある物を書き上げたのかもしれません。

今まで読んだ小説の大半が、現在の状況がずっと続くという設定でした。やっぱり、これを奇に世界が大きく変わるのでしょうね。このSFのとおりになるとは思いませんが、2019年以前には戻らないということも確かなのでしょう一大変革期に出くわしたというのは、果たして幸せなことなのでしょうか。学生たちみたいな若者には、チャンスの塊に見えるのかもしれません。

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お互いに緊張

5月18日(火)

中間テストがありました。レベル1のクラスの試験監督は何度もしたことがありますが、オンラインの試験監督となると初めてです。自分のクラスの学生たちですから、パソコン上には見慣れた顔が並んでいます。しかし、平常テストとは違って、みんないくらか緊張気味でした。こちらも、その緊張がうつってしまい、心拍数が上がった状態で問題を送信しました。

学生たちは問題を受け取ると、すぐに解きにかかります。すると、学生たちの目がすべて私の方を向くのです。学生たちは私を見ているのではなく、各自のパソコンのモニターを見ているのですが、パソコン内蔵のカメラを通すと、さも私を見つめているように見えるのです。学生たちを見張っていなければならないのですが、束になって突き刺さってくる視線に耐えきれず、しばらく目をそらしてしまいました。

トラブルがないことを祈っていましたが、途中でWiFiが不調になった学生が1名。そうなんですよね。オンラインはこれがあるんです。KCPの中間テストぐらいならどうにでもしてあげられますが、もっとずっと大事なテストだったらどうなるのでしょう。幸い、機転が利く学生でしたから、被害は最小限に抑えられました。

試験の終了時刻は、いつもの授業より少し早かったですが、「答えを送ってください。送りましたか。じゃあ、終わりましょう。さようなら」とあいさつすると、学生たちはみんな脱兎のごとくzoomから消え去りました。やっぱり、かなりのプレッシャーだったんでしょうね。今晩はゆっくり寝てください…としたいところですが、しっかり宿題を出してしまいました。

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共同作業

5月17日(月)

現在、KCPの中級で使っている読解の教科書に、私が書いた文章が入っています。iPS細胞の入門講座みないなもので、これぐらい知っていればiPS細胞に関しては恥をかかないだろうという程度の内容です。

それを書いてからだいぶ時間が経ちましたから、最近はその後のiPS細胞的な、もう少し掘り下げた話を、読解のそのセクションが終わった後でするようにしています。一般論ではなく、最新の研究も交えて話しますから、毎回iPS細胞界(?)の動向を調べます。

今学期はオンライン参加の学生を加えても、いつもの学期より少ない学生に向かって話をしました。少人数ですから毎日先生の厳しい目が隅々まで行き届いているのでしょうか、学生たちは全員真剣に私の話を聞いていました。メモを取っている学生も少なくありませんでした。これだけ鋭い視線が集まると、話す方もおのずと気合が入ります。「20分ぐらいでも行けますよ」と先週末に話していましたが、気が付いたら30分を超えていました。また、質疑応答もいつになく熱がこもっていて、結局、40分以上時間を使ってしまいました。

教科書の文章を書いた本人とすれば、読んだ学生にiPS細胞に興味を持ってもらいたいことはもちろんそうですが、さらに科学の少しでも広い範囲に目を向けてもらいたいと切に思っています。ですから、今回のように私の話を真正面から受け止め、それに関して熱く議論してくれることは大歓迎です。一番たくさん質問した学生は文科系大学院志望だそうですが、そういう学生にこそ、話を聞いてもらいたいのです。

授業は学生・教師の双方で作り上げるものです。そういう意味では、“いい授業”ができたのではないかと思います。

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