Category Archives: 自分自身

あれ、1回だけ?

3月15日(金)

教材や教科書として使う本を探しに紀伊国屋まで行きました。開店直後だったのでわりとすいていました。1階を軽く見て、日本語学習書が置いてある7階に上がると、私が初めての客だったみたいで、直立不動の店員さんたちが一斉に私に向かって頭を下げました。

しばらくご無沙汰しているうちに、新しい教材や日本語教師側の参考書などがずいぶん出ていました。どれもみんなほしくなりましたが、そこはぐっとこらえました。そんなことをしたら破産してしまいますから。

しかし、EJU関連の本は代わり映えしませんでしたね。新しい本もありましたが、他の分野の活発さに比べると見劣りがしました。

そんな新しいEJU関連の本の1つに、2024年のEJU試験問題集がありました。2023年までは6月のと11月のと別々に出版されていましたが、2024年分は1冊にするというお知らせがだいぶ前にありました。ですから、2回分を1冊にまとめて出版されるのだろうと思っていましたが、売り場に出ていた問題集には1回分しか載っていませんでした。しかも、値上げされていました。

諸式高騰の折、値上げはやむを得ないとして、2回試験があったのに1回分しか出版しないというのはどういうことでしょう。EJUの過去問って、よっぽど売れないんですね。赤字を少しでも減らそうとして、本来2セットあるはずの問題を1回分だけにしたのでしょう。

国を挙げて留学生を呼ぼうとしているのに、こんなことでいいのでしょうか。1回分だけでも出版されるだけありがたく思えということなのでしょうか。

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早い!

3月14日(金)

数年前の卒業生のSさんが来ました。SさんはR大学に入り、そのまま大学院に進学しました。「就職が決まりました」と報告してくれたのですが、実はまだ修士の1年生で、入社は来年の4月です。なのに、もう内定をもらったのだそうです。何という早さでしょう。…と言って驚いているのは、私ぐらいなのでしょうかねえ。

この時期に内定をもらったということは、大学院入学早々から就職活動を始めて、去年の秋ぐらいから面接を受けまくっていたのでしょう。そう思って聞いてみたら、実際にその通りでした。面接はオンラインがほとんどで、東京の外の会社も受けました。Sさんが就職するのは、その東京から離れたところの会社です。勤めることになる土地へは、まだ1度も行ったことがないそうです。

私が就職した時は、修士2年になってから動き始め、内定したのは6月か7月ごろだったでしょうか。それでも早く決まったと友人に自慢したものです。1年生の頃は、企業研究なんか、まともにしていなかったんじゃないかな。今、こんなことをしていたら、就職戦線に出遅れてしまい、不戦敗になってしまうかもしれません。

Sさんにはこれから修論が待っています。修論が通らなかったら、内定は取り消しでしょう。日本人なら「バカなやつだ」と笑われるぐらいで終わりでしょうが、外国人であるSさんはビザの問題が絡んできますから、話は複雑です。むしろ、これからが大学院生活の正念場です。本当に笑えるのは、来年の今頃でしょう。

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長足の進歩

3月8日(土)

卒業式まであと4日。教職員はもちろんその準備を進めています。一方、卒業式で発表するクラブもその練習に余念がありません。私は、毎度おなじみ、演劇部の発表にチョイ役で加えてもらっています。セリフや動きは去年と同じですが、学生俳優と演技を合わせるために、先週から演劇部の練習に顔を出してきました。

私が練習に入る前からずっと練習してきたはずなのに、先週の時点では学生たちの演技はキレがなく、セリフも、覚えてはいるものの、棒読みに近かったです。指導されているN先生から厳しい声が飛ぶこともしばしばでした。しかし、今週になると、N先生の指導のレベルが1つ2つ上がりました。こうするともっと良くなるというアドバイスが増えました。これがクリアできたんだから、もう1段上をさせてみようというお気持ちだったのかもしれません。

「先生、そろそろお願いします」とお呼びがかかったのは4時過ぎ。午後からずっと6階講堂のステージで最終調整をしてきて、私たちも加えて通しでやってみようというわけです。

学生たちのステージを見て、驚いてしまいました。昨日も一緒に練習したのですが、段違いの出来栄えでした。セリフには感情がこもっているし、1つ1つの動きもきびきびしていて、目をみはるばかりでした。こちらも負けてはならじと力がこもります。こんなに急速に進歩した例は今までになかったのではないかと思います。学生側にN先生のご指導を演技に反映させるだけの力がついてきたのです。

私は4時半過ぎに引き上げてきてしまいましたが、その後も練習を続けていました。本番が楽しみです。

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練習

3月5日(水)

ちょうど1週間で卒業式です。だからというわけでもありませんが、卒業式での証書のもらい方の練習をしました。学生たちにとっては、日本式の証書のもらい方は、それこそ見たこともない、だから全くなじみのない儀礼です。何の指導もないと、少なくとも日本人にとっては頭を抱えたくなるような、目を覆いたくなるような惨状が繰り広げられてしまいます。

演台の前に立ち、授与者である私と向き合い、軽く一礼するあたりまでは、学生も想像がつきます。その後、私が差し出した証書を両手で受け取るというところが、学生たちの生まれ育った文化にはないようです。「両手で受け取る」というと、手のひらを上に向けて、私がその上に証書を載せるのを待っているというイメージになるようです。授与者が証書を差し出したら、自ら腕を伸ばして証書の両脇を持って…という手順をしっかり教え込まなければなりません。

私のクラスも含めて数クラスの卒業予定者が1人ずつそういう動作を繰り返すと、学生たちの目にもそれが当たり前のことのように映り始めたようです。しかし、どのクラスにも欠席者がいましたからねえ。そういう学生にもきちんと伝わるといいのですが…。

大学などに進学すると、2年後か4年後にKCPなんかよりもはるかに盛大な卒業式が待ち受けています。学長から直接証書・学位記を手渡されるかどうかはわかりませんが、そんなチャンスがあったら、ふっとKCPの卒業式を思い出してもらいたいですね。

1週間後には、目の前で証書の受け渡し練習をしたメンバーがみんないなくなっちゃうんですよね。一抹の寂しさを感じるのが、私にとってのこの季節の風物詩です。

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まだ週末じゃないよ

2月26日(水)

今週は月曜日が振り替え休日で、金曜日がバス旅行ですから、1週間が早いです。午前中の授業で学生にバス旅行の予定を説明し、その後に、同じバスに乗り合わせる先生方と打ち合わせをしたら、今週の仕事の大半が終わってしまったような錯覚にとらわれてしまいました。もちろん、バス旅行が今週の最大の仕事ですから、実際には半分どころか半分の半分も終わっていません。

仕事が終わってしまったように感じる1つの原因は、選択授業がないからだと思います。昨日の火曜日は卒業認定試験、金曜日はバス旅行ですから、今週は週に2日の選択授業がどちらもつぶれてしまうのです。選択授業の授業内容はすべて自分で考えなければなりませんから、それがないというのは私にとって結構大きな意味を持つのです。でも、来週は両方ともありますから、バス旅行の帰りは居眠りなんかせずに選択授業で何をするか考えなければならないかもしれません。

選択授業の代わりに、バスの中で学生たちに出す箱根クイズを考えました。私の趣味で問題を作ってしまうと、箱根の火山を形成している岩石の主なものは何かなどということになり、だれも興味を示さないことでしょう。ですから、学生が食いつきそうな事柄を見つけ出し、問題にしました。

バス旅行で立ち寄る大涌谷の名物「黒たまご」はなぜ黒いのかというのを加えようとしました。温泉中に含まれる鉄や硫化水素が反応して黒い化合物をつくると言われていました。一応ウラを取ろうとネットで調べてみると、そうではないということが、つい最近わかったそうです。勉強になりました。高校生が定説に疑問を抱き、実験を繰り返し、答えにたどり着いたとのことです。立派なものです。

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やさしい日本語に挑戦

2月20日(木)

理科の日本語プラスを取っているCさんは、とてもまじめな学生です。中級になったばかりですから日本語力はまだまだですが、授業から何かを学び取ろうという気持ちは、今学期私が多少なりとも関わりを持っている学生たちの中で1番でしょう。

「日本語力はまだまだ」と言いましたが、このごろ、EJUの理科の過去問や、物理や化学の授業内容について、日本語で質問してくるようになりました。特に、問題の解き方を詳しく説明してほしいという質問が増えました。これは、理科の学術用語を日本語で理解し、図表や式などを参考にしながら、抽象度の高い議論についていけるようになったということです。話し方が拙いですから“まだまだ”などと評されてしまいがちですが、それ以外の面ではかなり高い能力を有しているのかもしれません。こういう、グンと伸びそうな予感のする学生は、思わず応援したくなります。

EJUの過去問には、必ず模範解答を作っています。解説も兼ねていますから、大学入試の答案より多少詳しく正解を得るまでの道のりを書いています。この模範解答、どうしても格調高く作りたくなるんですねえ。そうすると、自ずとCさんのような“まだまだ”にとってはわかりにくくなってしまいます。やさしい日本語に背を向ける形なのですが、型がある程度決まっていますから、書くのが楽なのです。表向きは格調高くなどと言いながら、内実は学生のためになる教材づくりを怠っているに過ぎません。

B社のページによると、去年のEJU2回分の過去問集は、3月下旬に刊行されるそうです。それが出たら、今年こそ、やさしい日本語で答案を書きたいものです。Cさんがすぐわかる解説を心がけます。

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ご利用いただけます

2月15日(土)

「当店では、各種QRコード決済がご利用いただけます」という表示を見かけたら、あるいは店員さんからこのように言われたら、みなさんはどうお感じになりますか。私は苦笑いしながらスマホの操作を始めるでしょう。

国文法の問題です。“いただきます”は、尊敬語ですか、謙譲語ですか。高校までの国語の時間に、謙譲語だと習ってきたはずです。謙譲語の主語(動作主)は誰ですか。“私(たち)”ですね。

ここで、もう一度「当店では、各種QRコード決済がご利用いただけます」を見てください。誰が“ご利用いただけ”るのですか。素直に解釈すれば、来店したお客さんですよね。つまり、この文は謙譲語の動作主がお客さんになっているのです。何と失礼なことでしょう。これが、私の苦笑いの原因です。

もちろん、店の側にそんな気持ちなどみじんもないことは百も承知しています。だから苦笑いしつつもスマホを操作し、支払おうとするのです。でも、文法の誤りは見逃すわけにはいきません。

この手の誤りは、至る所にあります。「こちらから富士山がご覧いただけます」「こちらにキーを差し込んでいただくと、部屋の電気がつきます」「特急券のないお客様は、ご乗車いただけません」…。なぜ、みんな平然と同じ誤りを犯しているのでしょう。

文化庁は、2007年に謙譲語を2つに分けました。謙譲語Ⅰは、申し上げる、伺うなど、謙譲語Ⅱは、参る、申すなどです。謙譲語Ⅱは丁重語とも呼ばれ、物事を相手(多くの場合、目上)に向かって丁重に伝える時に用います。「社長、お時間です。会議室に参りましょう」「社長、お時間です。会議室に行きましょう」の2つを比較すると、前者の方が丁寧な感じがしますね。参るのは、私だけではなく、社長もです。会議室にいるのがお客様ではなく、社長にとっては部下ばかりでも、“参る”という謙譲語Ⅱが使えるのです。物事を丁重に伝えるのですから、同僚に対して“おい、佐藤、時間だから会議室に参ろうぜ”などとは使えません。“おい、佐藤、時間だから会議室に行こうぜ”なら問題ありません。“参ろう“は、丁寧さのない普通体の1つであり、終助詞“ぜ”は、丁重さとは正反対の雰囲気をもたらします。

“いただく”は、本来、謙譲語Ⅰですが、これを謙譲語Ⅱと勘違いして使っているのが“ご利用いただけます”だと考えられます。“ご利用いただけるよ”は丁寧さのバランスが悪いですよね。

でも、全国津々浦々にこのような誤用が浸透しているとなると、もはや誤用ではなく、“いただく”に丁重語としての機能が加わったと考えるべきでしょう。とはいえ、学生には“ご利用になれません”と教えるでしょうね。JLPTなどで間違えられちゃったら困りますから。

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気の迷いをなくせ

2月5日(水)

久しぶりに推薦書を書きました。昨日、私が担任をしているクラスのHさんから頼まれたのですが、ゆうべはドライアイがひどくて書く気になれず、今朝、授業の準備を終えてから取り掛かりました。しばらく書いていなかったのですぐに筆が進むだろうかと心配していましたが、書き始めたら1行目が終わるころにはペースを取り戻していました。自転車と同じで、体で覚えているんでしょうか。

HさんはKCPに入学してからN2とN1に合格しました。これは、「志願者Hは、当校入学以来、精力的に日本語の習得に努め、JLPTのN2、N1にも合格するなど、順調に日本語力を伸ばしてきた」なんていうふうに推薦書に反映させました。これでペースをつかみ、クラブ活動で活躍したことも書き、読み手にHさんの特徴が見えてくるような推薦書の下書きができました。

これをすぐ清書するかというと、1日置いておきます。明日の朝読み直して違和感がなかったら、本物の用紙に丁寧な字で清書します。こういうのは、書き上げた余韻に浸りながら読み直したって、文章のアラは見えてきません。そういう熱が冷めて、公平かつ冷静に文章を見つめられるようになってからでないと、本当の意味でのチェックはできません。でも、1晩おいてから読み直すと、新しいエピソードを付け加えたくなることもしばしばです。

さて、明日の朝はどんな気持ちでこの下書きを読むのでしょう。あまり迷わずに仕上げたいですが、Hさんはまじめないい学生だけに、推薦書にとっては余計なことを思い出してしまうかもしれません。

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言葉の変化?

1月20日(月)

今学期は、月曜日と水曜日は最上級クラスを担当します。中には1年間ずっとこのクラスで勉強してきたというツワモノもいます。話すときに手加減する必要がないというのが、教師にとってやりやすいところですね。だからといって、気が緩んで山口弁全開などとなったら、最上級クラスでもさすがに通じないでしょうけどね。

初級や中級では、学生たちが知っている文法や語彙を組み合わせて話さないと、意図していることが通じません。それを補うために、時にはジェスチャーなどを交えたり、パワーポイントや板書を活用したりと、あれこれ頭を使います。最上級クラスは、それが省けます。

しかし、その代わり、学生は何でも知っていますから、学生たちの知識欲や向上心を満足させるにはどうしたらいいかという点に気を回さなければなりません。何か考えてもらう、考えさせる、そういう授業を作り上げるにはどうしたらいいかという点が、授業を計画する上での最重要点となります。

初回は、復習ということで、敬語を取り上げました。“書く⇒書かれる”というように、まずは尊敬動詞へお変換。ですが、“降る”みたいに目上の人が動作主になりえないものや、“盗む”みたいに非道徳的な動作で、そんなことをする人は尊敬に値しないようなものも混ぜ込んでおきました。このトラップには引っ掛かりましたね。「“雪が降られます”と言ったら、あなたは雪を尊敬していることになるんですよ」「社長に財布を盗まれた時、社長を尊敬しながら“社長は私の財布を盗まれました”と言うんですか」と指摘したら、気づいたようでした。

謙譲語も引っかかりましたね。目上の人にかかわる動作でないと謙譲語にならないのですが、“お起きする”なんていうのを作っちゃいました。“私は毎朝6時にお起きします”なんて言ってはいけないのですが、学生たちは“毎朝6時に起きる”を非常に丁寧に言うとこうなると思っていた節がありました。

それ以上に、どの言葉に“お”や“ご”を付けるかということを聞いた時に、意外な答えが返ってきました。学生たちが“お”や“ご”を付ける範囲は、私たちより狭いようです。お野菜、お車、ご休憩といったあたりも、付けないと判定していました。学生たちが付き合っている若い日本人はそうなんでしょうかね。

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2通りの読み方

1月17日(金)

授業が終わって職員室に戻り、メールをチェックすると、T先生から昨日から話題になっていたある学生に関する報告が入っていました。それをずっと読んでいくと、最後に「…今日本人に確認します」と書いてありました。

さて、みなさんは、この「今日本人に確認します」をどう読みましたか。私は、最初、「いまにほんじんにかくにんします」と読んで、“???”となってしまいました。その後、「きょうほんにんにかくにんします」と読むんだと気付き、腑に落ちました。「今日、本人に確認します」と読点をしっかり打っておいてくれればすんなり読めたんですがね。

つまり、「今日本人に確認します」は、読点の打ち方によって2通りの意味の取り方が可能です。これを英訳ソフトにかけたらどうなるかなと思って、実際にやってみました。

DeepLは、“I’ll check with the Japanese today.”と訳しました。todayが気になりますが、「いまにほんじんにかくにんします」派です。代案として出された訳も、にほんじん派でした。Google翻訳も同じでした。みらい翻訳も“I will check with the Japanese now.”と、にほんじん派。

しかし、Weblio 翻訳は“I confirm it to the person today.”でしたから、「きょうほんにんにかくにんします」派でした。

このように、翻訳ソフトでは、にほんじん派が優勢なようでした。T先生の意をくんでくれたのは、Weblio 翻訳だけでした。私の頭はコンピューター並みということにもなりますが、これは喜んでいいものでしょうか。

それ以上に、こんな不思議な挙動を示す文はほかにないものか、作れないものかと考えてみました。残念ながら、簡単には見つかりませんでした。もう少し、考えてみます。

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