Category Archives: 成績

お問い合わせ

6月30日(火)

先週末から期末テストの成績の問い合わせが相次いでいます。私が担任をしたクラスは期末テストを受験しなかった1名を除いて、全員合格して進級します。ですから、問い合わせメールに答えるのは気楽なのですが、果たしてこれでいいのだろうかと思うことがあります。

たとえば、Mさんのメール。「私  4行 。心配……」とだけ書いてありました。「私はレベル4にいけるでしょうか。とても心配です…」とでもいう意味なのでしょう。確かにMさんの言いたいことも気持ちもわかりますが、こんなメールの送り主を中級に上げてしまっていいのだろうかと思ってしまうのです。

Mさんも含めて、クラス全員が私の予想を上回る好成績を挙げてくれたことはうれしい限りです。試験直前にかなり一生懸命勉強したのでしょう。でも、授業中の様子を見ていると、「この学生が中級???」という学生が何名かいることも事実です。平常テストは再テストでかろうじて合格点を確保し、期末テストの一発勝負でVサインというパターンが目立ちます。

自分は余裕たっぷりで上がったのではないという自覚があればいいのですが、そういう学生に限って上がってしまえばこっちのものと思うものです。そうすると、学期休み中ろくに勉強せず、新学期が始まるころには中級どころか初級に逆戻りとなりかねません。自分は余裕たっぷりで上がったのではないという自覚があれば、合格で安心せずに復習もするでしょう。でも、メンバーを見ると、そんな奇特な心がけの学生はいそうにありません。

上がるにしても、もっと苦しんでから上がってほしかったなというのが、正直な感想です。順調すぎて逆に最終的な勝利に結びつかなかったっていうんじゃ、全く意味がないじゃありませんか。小さな挫折で軌道修正し、大きな挫折を未然に防ぐのが理想なんですが、挫折はたとえ小さくても味わいたくないですよね。

気が付いたら今年も半分過ぎてしまいました…。

ただいま採点中

6月24日(水)

超級の読解の期末テストを採点しています。きちんと授業を聞いて、テキストを読み込んでいる学生もいれば、質問文をろくに読みもせずに答えているような学生もいます。「教科書の言葉を使わずに」と傍点までつけて注意しているのに教科書からそのまま文を抜き出してきたり、空欄の前後のつながりを考えずに単語だけ突っ込んだりしている答えもありました。

採点していて、この学生は授業のときはわかったような顔をしていたけど、本当は全然文章が読み取れていなかったんだね、ということがわかる答案がいくつかありました。EJUの翌日が期末テストでしたから、EJUに全精力を使い果たして、期末の勉強が疎かになってしまったのだろうと、好意的に受け取ることにしています。もちろん、中にはこちらの予想を上回るすばらしい内容の答案もあります。そういう学生は、やっぱりコンスタントに授業をしっかり聞いていますね。

私は満点は取らせないけど合格点は取れるテストを目指して、問題を作っています。ですから、実力差が表れる問題と、これができなかったらよっぽどサボっていたんだねという問題とが共存しています。今回は、誰でも取れるはずのサービス問題を落とした学生が多かったように思えます。でも、その割に不合格者が少なかったのは、何だかんだ言いつつも、超級の力を持っているからなのでしょう。

例文を添削したりテストを採点したりすると、いろいろと物申したくなるものですが、絶対値を測れば、KCPで超級まで上がってきたということは、かなりの日本語力を持っているということなのです。だからこそ、それをテストの成績という形で残すために、質問文ぐらいきちんと読んでもらいたいし、前後のつながりを考慮に入れてしかるべき答えを書いてもらいたくなるのです。

献血

6月23日(火)

今学期は、赤のボールペンを2本使い切りました。初級のクラスを2つ持ったので、宿題のチェックや例文・作文の添削、テストの採点などで見る間に赤ペンのインクが減っていきました。私の血が学生に吸い取られていくような錯覚に陥ったこともありました。

宿題のチェックは、間違えたところをきっちり直さなければなりません。ここで直しておかないと、間違った形で定着してしまいかねません。学生の勘違いを正し、基礎部分に穴が開かないようにしていくのが初級の教師の最重要任務です。既習の文法のミスも含めて、あらゆる間違いを一つ残らずつぶすつもりでチェックします。

だから、学生によっては、提出した宿題が真っ赤になって返ってくることもあります。チェックする立場としてはこんなに赤を入れたら受け取った学生は読みたくなくなるんじゃないかと思うこともあります。でも、その真っ赤な宿題で自分の実力を知り、さらに勉強に励んでもらいたいのです。

作文は、学生たちをたたき続けた結果、文法や表記の間違いが確実に減りました。まだ期末テストは採点していませんが、最初はC評価ばっかりだった学生たちがどこまで成績を伸ばしてくるか楽しみです。

今日は漢字テストの採点をしました。私の受け持ちのクラスじゃありませんでしたが、概していい成績でした。私のクラスもこのくらいいいと幸せなんですけど、果たしてどうなんでしょう。

漢字も文法も読解も、私のボールペンの血を吸い取ってどこまで成長したか、楽しみのような恐怖のような…。

そのねじ曲がった根性を

6月12日(金)

午後クラスの前半が終わった後の休憩時間に、私が教えている初級クラスを一緒に担当しているF先生が怒りのオーラを発散させながらやって来ました。「Zさん、漢字のテストの最中にケータイを見たんですよ。先生、授業の後できつくしかってください」「わかりました。私もこれから受験講座がありますが、終わったらすぐそちらの教室へ行きます」というやりとりをして、受験講座のあと、すぐにF先生の教室へ行くと…。

「先生、Zさん、帰っちゃったんですよ。私が1階で先生と話している間に」と、先ほどにも増して憤懣やるかたない表情のF先生。こうなったら、月曜日は私がそのクラスの担当ですから、授業後にたっぷり油を絞ってやることにしましょう。

Zさんは今学期入学の進学コースの学生です。でも学期の最初から、どこか斜に構えているというか、授業での勉強をなめてかかっているというか、教師の立場からするとカチンと来る学生でした。それでもテストではとりあえず合格点を取ってきましたから、こちらも我慢していました。しかし、カンニング疑惑となれば、遠慮はしません。

Zさんはノートも取らなければ教師の話もあまり聞いていません。ノートに書きなさいと言っても、ちょろちょろっとメモする程度。動詞の活用形などを席の順に言わせていっても、友達の答えをまともに聞いていませんから、すぐには答えられません。テンポよく進んでいってもZさんのところで必ずつっかえます。宿題やテストの字は汚くて読みにくいです。ついこの前は、手ぶらで登校し怒られました。

でも、まるっきりのバカじゃないのと、国で勉強してきた貯金があるため、テストはどうにかパスしてきたのです。学校外の塾に通っているから日本語も受験勉強も大丈夫だといいますが、そういった優位性がなくなってきたところのカンニング疑惑じゃないかと踏んでいます。休み時間に逃げ帰ったのは、悪いことをしたという気持ちと、そういうことをしないと点が取れなくなってきた自分の現状を認めたくないのとの両方からじゃないでしょうか。それだったらまだいいのですが、今日は旗色が悪いけれども来週になれば風向きが変わるだろうと、とりあえず首をすくめとこうっていう根性だったとしたら、もう救いようがありませんね。

来週早々嫌な仕事を抱えてしまいました。

自覚を待つ

6月8日(月)

Sさんは次のレベルに上がれないかもしれないという危機感を抱き、今日から授業の前に職員室で勉強することになりました。今日は文法のテストがあったので、その勉強をしました。しかし、なかなか勉強が進みません。語彙が足りないのです。クラスの他の学生は知っているはずの単語でも「何ですか」と聞いてきます。

SさんはKCPに入る前にワーキングホリデーで日本にいました。ですから、日本語ゼロで入学したわけではありません。本人もそれは承知していますから、今までどことなく「自分はわかっている」という意識が感じられました。確かにそうでしたが、もうすでにその貯金も使い果たしており、テストで合格点を取るのも厳しいという現実があります。「うさぎとかめ」のうさぎですね。

それでもSさんはそれに気が付き、勉強を始めようとしました。それに気づかず、あるいは気付いても認めようとしない学生を大勢見てきましたから、そんな学生に比べればSさんは立派です。しかし、もう少し早く気が付くべきでしたね。今日の語彙のわからなさ加減を見る限り、ちょっと手遅れではないかと思えてきました。

同じクラスのKさんは、EJUの模擬テストで上級の学生をも上回る成績を挙げました。「喜びすぎちゃダメですよ」と言ってその成績表を渡しましたが、今日の文法テストは不合格でした。直前に必死になって勉強したSさんを30点も下回る点数でした。EJUの模擬テストはマークシート方式ですが、KCPの文法テストは記述式です。Kさんの答案は正確に覚えていないがための減点が目立つのです。マークシートならごまかせても、文で答えるとなるとそれがあらわになってしまいます。

SさんにしてもKさんにしても、できない学生、見込みのない学生ではありません。しかし、今のままではこれ以上の日本語力向上は望めないでしょう。Sさんはそれに気付き軌道修正を始めたところですが、Kさんはどうなるのでしょうか。今日のテストは木曜日に返されます。それを見て奮起してくれればいいのでが。

わかってるつもり

5月27日(水)

中間テストの結果をもとにした面接が始まりました。

Hさんは芸術系の大学を目指している初級の学生です。中間テストはかなり自信を持っていたようですが、かろうじて合格点を超えたという点数に愕然。面接の直前まではにこやかだったのに、成績を見たら顔つきが暗くなってしまいました。授業中の様子を見ても、Hさんはできない学生ではありません。しかし、すばらしくできる学生かというとそうではなく、自分を過大評価しているところが感じられました。ですから、やっと合格という今回の成績は相当ショックだったに違いありません。

間違い方を見ると、濁点がないとか小さい「っ」がないとか、単語や活用を正確に身に付けていないことによるものがほとんどでした。その間違い方が、Hさんの話し方そのものなのです。テレビドラマやバラエティーで日本語を覚えたといいますから、不正確にとらえた音をそのまま口から出したり文字にしたりしていたのです。

多少発音が狂っていても、意思疎通はできるものです。しかし、1点を争う入試の場となると、その不正確さが「なんだかこいつ、日本語がヘタだな」という印象をもたらし、不合格につながらないとも限りません。ショックを受けている今こそと思い、多少の脅しもこめて、その点をうんと強調しておきました。

もちろん、落ち込ませることが目的ではありませんから、その後きちんとフォローをしました。こういう勉強や練習をすれば今回のようなミスは防げる、という前向きな結論にもっていきました。さて、これからの後半戦、Hさんは、心機一転、巻き返してくれるでしょうか…。

クラス替え

5月26日(火)

レベル1の進学コースは、今日からクラス替え。今までの成績によって、メンバーの入れ替えをしました。レベル1は日本語がゼロに近い学生が入ってきますから、国でちょっとでも勉強してくると、学期の初めはいい成績が取れてしまいます。しかし、中間テストも終わったとなると、本人の地力や理解力、あるいは努力の多寡が物を言うようになってきます。ですから、能力別のクラスにしたときクラスのメンバーが大きく入れ替わることも不思議ではありません。進学しようと思っている人たちで、しかも入学間もない人たちですから、この時点で努力をしていないようだと先の見込みはありません。ということは今回のクラス分けが本当の実力を反映したものだと言えます。

そんなことを考えて授業に臨みました。いきなりテストをしましたが、思ったより差がつきました。先週までのクラスが上だった学生が必ずしも上位に入ったわけではありません。トップは先週まで上から3番目のクラスだったOさんでした。Oさんは、おそらく、日本へ来てから本気で日本語の勉強を始め、この1か月半ほどで基礎知識が堆積し、頭の中に日本語のネットワークが構築されつつあるのでしょう。

Oさんはペーパーテストではよかったのですが、口頭の質問にはあまりうまく答えられませんでした。こちらは先週まで上位クラスにいた学生のほうが上でした。でも、だからと言って焦る必要はありません。Oさんたちは2017年の進学を目指していますから、これから長丁場が待ち構えています。大化けする可能性もあれば、再逆転されるおそれもあります。照る日曇る日、大波小波、いろいろあるでしょうが、一時的な追い風向かい風に惑わされることなく自分の道を進んでいってもらいたいです。