Category Archives: 卒業生

もう卒業?

11月20日(金)

ZさんがR大学の志望理由書をメールで送ると言っていたので、来週の教材を作りながらそれを待っていたら、職員室の入り口にあやしい影が。どうやら私を呼んでいるようです。行ってみると、卒業生のSさんとYさんとHさんでした。やはりマスク顔だとわかりにくく、声を聞いたりしぐさを見たりして、やっとわかりました。みんな大学4年生です。ついこの前卒業したばかりだと思っていたんですけどね。

Sさんは今通っているA大学の大学院のほかに、B大学の大学院にも受かったそうです。B大学の方が有名だからそちらにするとのことです。「将来はノーベル賞だね」などと、YさんやHさんにからかわれていました。

Hさんは、今通っているC大学の大学院にそのまま進学します。チューターとして、国の後輩に指導したり相談に乗ったりすることもあるそうです。

Yさんは留年です。人生に迷っていると明るい顔で言っていました。自分と向き合い、将来の道を見つめ直したいから、敢えてモラトリアムの道を選んだと、雄弁に語っていました。悩むのも、若者の特権です。

3人とも4年生ですから、授業がたくさんあるわけではありません。その数少ない授業もオンラインですから、暇でしょうがなく、だからKCPへ来たと言っていました。3人そろったのだから食事でもするのかと思ったら、それはしないのだとか。外食よりもコンビニ弁当だそうです。

Sさんは「Go To」を使って地方から東京へ出てきました。Go Toの地域限定チケットを見せてもらいました。菅さんは何をやっているんだとか言いながら、恩恵にあずかっているようです。伊勢丹で靴下でも買って帰りななどと言われていました。

進学指導を受けに来た学生を見て、懐かしがっていました。そう言えば3人とも、何回も面接練習したっけ。志望理由書をめぐって、議論も重ねました。そういう日々を思い出しました。

それはそうと、Zさんからの志望理由書のメール、まだ届きません…。

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やっと始まります

11月17日(火)

昼に中間テストの採点をしていると、M先生が私を呼びます。悪い学生に説教をしろというのでしょうか。出席率が悪いのか、成績が悪いのか、素行が悪いのか、いずれにせよ気が重い話です。

行ってみると、マスクで顔が半分以上隠れた青年が立っています。???という顔をしていると、「先生お久しぶりです」と言いながら、マスクを外して顔全体を見せてくれました。卒業生のNさんでした。「今度、姉がお世話になります。よろしくお願いします」と、隣に立っているNさんよりやや小ぶりな、少し緊張気味な顔をした女性を紹介しました。2週間余り前に来日し、待機期間を終えてようやく登校したという次第です。

先月から少しずつ新入生が入国し、先週あたりからぱらぱらとクラスに入り始めています。Nさんのお姉さんもその1人で、おそらく明日からKCPの授業を受けることになるのでしょう。去年までのように、一斉に固まって入ってきてくれませんから、受け入れ担当者は連日大忙しです。今までも遅れて来日した学生はいましたが、ごく少数でしたからどうにかなっていました。しかし今回は全員がそうですから、大変さは桁違いです。まだ始まったばかりで、これからどんどん入ってきます。学期末にはどうなっているのでしょうか。

ところが、このところ新規感染者数が増え続けています。このまま入国を進められるのか、若干暗雲が漂ってきました。1月期は通常に近い受け入れができるかなあと期待していましたが、見通しは明るくありません。まさか4月期に影響が及ぶのではと、不安は拡大する一方です。

でも、それはさておき、Nさんのお姉さんをはじめ、この厳しい時期に、それこそ万難を排して入学してくれた学生たちを大切に育てていきたいです。

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カビとオンライン

10月30日(金)

日本への入国規制が緩和され、KCPに入学する予定だった学生も少しずつ来日することになっています。入国しても自由に歩き回れるわけではありませんが、かと言って待機しているホテルなどに何もせずにいさせるわけにもいきません。学校に通えるようになったらすぐに授業ですから、少しでも準備をしておいてもらいたいところです。現在、学校を挙げてその対応に当たっています。

午後、卒業生のLさんが来ました。卒業後、わりと頻繁に顔を出してくれていましたから、また暇つぶしにでも来たのだろうと思っていました。ところが、涙なくしては聞けない事情が隠されていました。

Lさんは、現在、M大学の3年生です。昨年度の後期の授業や試験が終わったころ、一時帰国しました。世界的に見ても、新型肺炎の患者数が少ないことでした。ところが、新学期が始まるので日本に戻ろうとしたその日に、Lさんの国は出国禁止令をだしたのです。以後半年、鎖国状態の日本に戻れず、ずっと国で過ごしていました。そして、今月、入国規制緩和の恩恵にあずかって、やっとの思いで日本への再入国を果たし、規定の自宅待機期間を何事もなく過ごし、自由の身になって初めて訪れたのがKCPということでした。

半年間家賃だけ払って空き家だったLさんの部屋は、上の階からの水漏れのせいでカビだらけだったそうです。カビの胞子なんか吸い込んだら、肺炎よりもひどい病気にかかりそうな気もしますよね。

踏んだり蹴ったりみたいなLさんでしたが、大学の授業は完全オンラインだったので、国で何の支障もなく受けられたそうです。世界中どこからでも受けられるんですね。そういう話は耳にしていましたが、実際にその恩恵にあずかった人を目の当たりにして、非常に腑に落ちました。

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今の授業は

10月14日(水)

昼休みに、Xさんが来ました。Xさんは2年前にR大学に進学しました。しかし、1年でやめて、W大学に入り直し、今は2年生です。

Xさんが進んだ学科は、後期になってもオンライン授業が続いています。キャンパスへ行くのは試験の日だけだそうです。確かに、その学科は実験や実習はなさそうですから、その気になれば全面オンライン化も難しくはないのでしょう。でも、Xさんは、言葉には出しませんでしたが、ちょっと寂しそうな顔をしていました。

R大学だって十分以上に伝統があり、有名であり、教育力の高さには定評があるのに、そこを捨ててW大学に入ったのです。それにもかかわらず、家で自習に近い勉強しかできないというのは、さぞかし辛いことでしょう。W大学がいい加減なオンライン授業をしているとは思えませんが、学生の立場からすると、どんなに素晴らしいオンライン授業でも満たされないものがあるのではないかと思います。

今後は、大学の授業において、一定の割合のオンライン授業が定着すると言われています。オンライン授業は、現時点では緊急事態に対処する体制の1つですが、ごく近い将来、恒久的な大学教育の手法になるのかもしれません。そうなると、高等教育とは何ぞやという議論も湧き上がってくることでしょう。

私たちは、学生が大学や大学院に入るのをお手伝いするという立場です。高等教育のあり方が大きく変わるとなると、私たちの進路指導の方向性も変わってきますし、そもそも国境を越えて学生が移動するだろうかというところまで考えを及ぼさなければならなくなります。

Xさんは、また来ますと言って去っていきました。マスクを外して撮った写真のXさんは、笑顔だったでしょうか。

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あれは3年前

10月7日(水)

昨日の夕方、3年前にO大学に進学したGさんが来ました。Gさんは、私をロビーに呼びスト、私がGさんをすっかり忘れているものと思って自己紹介を始めました。でも、Gさんは粘りに粘って卒業式後にO大学の合格を決めた学生で、私にとっては印象深い学生でした。

Gさんは夏ぐらいからいろいろな大学を受け続けました。そのたびに面接練習をたっぷりしました。自分の思いの丈をすべて語ろうとするので、1つの質問への答えが長くなり、そのうち自分でも何を言っているのかわからなくなるというパターンに陥るのが常でした。私だけではなく、K先生やH先生など、他の先生を捕まえて面接s練習していました。

しかし、なかなか芽が出ませんでした。卒業式でKCPとお別れするはずができず、残されたのは最難関のO大学だけとなり、本人も教師ももう1年頑張ることになりそうだと覚悟を決めた時、O大学合格の報が届きました。それをGさんの口から直接聞いた時、私はGさんに向かって深々と頭を下げました。「よくやった」「本当におめでとう」「お疲れさまでした」…、いくつもの感情が入り混じった最敬礼でした。

そのGさんも4年生です。大学院に進学することにしました。大学の勉強だけではなく、学外でも自分の好きな道を追求していると言って、Gさんが発行人になっている同人誌を1冊くれました。編集の大変さを身に染みて知ったと感想を一言。自分の思いを面接官役の私にぶつけることしかできなかったGさんが、多くの同人の思いを受け止めて同人誌を編んだのです。大きな成長を感じずにはいられませんでした。

今シーズンも何人かの学生の面接練習に付き合っていますが、Gさんほど思いを受け止めるのに覚悟のいる学生はいません。Gさんに面接官役をやってもらいたいなと思いました。

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可能性を求めて

8月28日(金)

先月の大学・大学院の進学フェアに続き、専門学校の進学フェアが開かれました。今年は、4月以降、人の行き来に関しては実質的に鎖国状態ですから、新しい学生が入ってきていません。そのため、学生数も例年の半分ぐらいです。また、その在校生も多くが大学・大学院志望ですから、現時点において専門学校を第一志望とする学生は多くありません。

でも、毎年、秋から冬にかけて、学生たちは悩むのです。自分は本当に大学や大学院に進学したいのだろうかと。自分の本当にやりたいことは大学や大学院にあるのだろうかと。そして、考えに考え抜いた末に、専門学校に進路を変える学生が必ずいます。

Cさんもそんな学生でした。MARCHぐらいの経営学部か商学部を目指していましたが、夏の入り口ぐらいから悩み始めました。学校を休むことすらありました。写真が好きで、そちらの勉強をする夢を捨てきれなかったのです。そして、夏にあったD専門学校の写真コンテストに応募し、見事に入選しました。そこからCさんは、専門学校進学を本気で考え始め、親とも激論を交わし、最終的にD専門学校に進学しました。

今年はほとんどすべての行事が中止になってしまいましたから、Cさんと同じ道を歩むことは難しいです。しかし、学生たちに道は1本しかないと思い込まないでほしいです。いくつかの可能性を持っておいたほうが、明るい未来につながるのではないでしょうか。

進学フェアにいらっしゃったD専門学校の方が、Cさんは成績優秀で大いに活躍していると教えてくださいました。きっと充実した留学生活を送っているのでしょう。

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目を開く

7月31日(金)

7月が終わります。でも、学生の進学に向けての動きがあまり活発ではありません。EJUがなかったため、受験モードになる機会が失われ、本試験の壁に弾き飛ばされて自分のできなさ加減に気づくこともなく、みんなどことなくのんびりしています。TOEFLなど英語試験を受けた学生ですら、私の目からすると「キミは何年計画で大学に入るんだい」と言いたくなるくらい緊迫感がありません。

だから、尻に火をつけるべく教師側も動いています。先週の進学フェアも、昨日のH大学の説明会も、指定校推薦の大学名を公表したのも、その希望者受付を始めたのも、そういう意味合いを込めています。私も、授業をしたクラスでEJU中止の影響を解説したり、志望校の選び方の手ほどきをしたりしています。

今年はJASSOの進学フェアも中止になりましたから、学生が多くの大学を知る機会が奪われました。また、オープンキャンパスは中止か、開催されてもオンラインで、学生たちの動きが鈍いように見えます。というわけで、受験生なのに大学の名前を知りません。「早稲田に慶應にMARCH、あとは…???」というレベルの学生が少なくありません。これでは困りますから、各大学の詳しい内容はさておき、せめて名前だけでも覚えてもらおうと、東京近辺の大学紹介をしました。

ただ大学の名前だけ羅列したにでは学生の興味を引きませんから、KCPから進学した学生の声も交えました。また、その大学を卒業した学生がどんな仕事をしているかなども、可能な限り紹介しました。そうすると、学生たちの知らない大学が、意外に“いい大学”だったりするのです。学生の顔つきを見ていると、少しは学生の視野を広げられたかなと思います。

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進学したけど

7月11日(土)

3月の卒業したSさんが、ビザ更新に必要な書類を取りにKCPへ来ました。第一志望のR大学に進学したSさんですが、キャンパスでの対面授業はもちろんのこと、オンライン授業もほとんどありません。一部の語学の授業を除いて、実質的に学生が自習することになっています。自分で教科書を読んで、演習問題をやって…という毎日だそうです。前期は定期試験もなく、後期も対面授業は望み薄のようです。

教師が計画的に授業を進めていくのなら、科目間の連絡も取れていて、学習がスムーズに進むことでしょう。しかし、学生が自分で教科書を読み進むとなると、そのバランスも崩れてしまいます。授業Aで習ったことを応用すると授業Bの理解が深まり、それを基礎に演習科目Cに取り組むとその専門分野が立体的にとらえられる―というようになっているはずです。Sさんはそれがうまくできず、進んだり戻ったりしていると言っていました。

確かに、R大学には優秀な学生が集まっていますが、大学院生ではなく学部の1年生に専門分野の自習を求めるのはかわいそうです。1年生の授業に集中的に教師を割り当てられなかったのでしょうか。Sさんはそんなことは言っていませんでしたが、「授業料半分返せ」という声も十分理解できます。

他の大学に進学した卒業生たちはどうしているでしょう。どこも去年までとは全然違う形の授業になってるでしょうが、多少なりとも大学生活らしい生活が送れていることを祈るばかりです。同時に、在校生への進路指導も、こういう異常事態下であってもきちんとした勉強ができるところを薦めるようにしていきたいです。

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厳しい戦い

6月23日(火)

昼食から戻って職員室で仕事をしていると、スーツ姿の見慣れぬ若者が入ってきました。新しい先生が来るという話も聞いていないし、このご時世ですから新入生という線も考えにくいです。それに、私の方を見て妙になれなれしく微笑みかけています。私の顔がよっぽど怪訝そうだったのでしょうか、マスクを外してくれました。笑顔の元が見えました。小さめの歯が隙間なく生えそろった口元は、まぎれもなく卒業生のYさんのものでした。

Yさんは、就活の真っ最中です。やはり、コロナの影響はかなりあるらしく、「採用は厳しい」とはっきり言われることもあるそうです。オンライン面接でも通常の面接でも、難しさは変わりないと言っていました。2種類の難しさのポイントが違う面接をこなさなければならないのですから、去年までの就活生より精神的にきついんじゃないでしょうか。

大学で何が一番大変かと聞いたら、「論文」と即答が返ってきました。Yさんの先生は、論文に関しては一家言ある方のようで、3年生の時に出した論文はボコボコにされたそうです。そういう厳しい訓練を受けたおかげでしょうか、Yさんが使う語彙は社会人のものになっていました。専門分野についても、今の社会についても、実のある議論ができる実力が備わっています。私はいわば身内の人間ですから採点が甘いのかもしれませんが、こんな学生を採ったら、その企業は10年後にきっといい人材を採ったと思うことでしょう。

去年の今頃は、世界中のだれもが1年後にこんな状況になっているなんて、夢想だにしませんでした。Yさんの同級生たちは、みんなどこかで就活に苦戦していることでしょう。どうにか勝ち抜いてほしいと、ひたすら願うのみです。

さて、私は、明日から遅ればせながらのゴールデンウィークと、少々早めの夏休みをいただきます。このブログも、しばらくお休みです。

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アンケート

6月17日(水)

留学生に推薦したい専門学校・大学・大学院を挙げてほしいというアンケートが来ました。確かに私は学生の進路指導もしていますが、日本全国の専門学校・大学・大学院を知り尽くしているわけではありません。まさに管見の及ぶ限りで答えるほかありません。

私が持っている管は、各校の留学生担当の方や、何かの折に見た学校の様子や、卒業生から聞いた話や、一般に報じられている各校に関わるニュース程度です。私自身、専門学校や大学に対して何の影響力も持っていませんから、特別なパイプを握ってもいません。こんな狭い視野から見た評価を答えてしまっていいのだろうかと思いつつ、用紙に記入しました。

まず選んだのが、進学した学生がいい学校だと言っているところです。学生自身、志望校選びの際には情報収集に努め、それなりに取捨選択した結果が、現在の在籍校です。しかし、第一志望校に進学したはずなのに不満を述べる学生もいます。そういう学校は見掛け倒しなんだなあと思います。逆に、滑り止めくらいの気持ちで受かったところに進学せざるを得なくなった学生から、「後輩にぜひ薦めてください」と言われる学校は、きっと人生を豊かにできる留学ができるところだと思います。

私なりの“いい学校”の判断基準に、入試問題の質があります。その問題を解くことによって、受験生に新たな視点が生まれるような出題をする学校は、きっと学生を伸ばしてくれるだろうと思います。おざなりだと感じられるような問題や、落とすためとしか思えないような問題や、問題のための問題みたいな問題や、いわゆるクソ問題を平気で出してくるようなところは評価が低くなります。

来学期になったら、進路指導が本格化します。今年は今までとは違う条件で戦うことになりますから、こちらとしても怠りなく研究し続けねばなりません。というか、もう、ちびちびろ情報を集め始めています。

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