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受験講座開始

7月14日(火)

私の今学期の受験講座は、今日が初日。物理をしました。先学期から、教科書の勉強中心のクラスと、問題を解くのが中心のクラスとに分けています。どちらも面倒を見るのですから、理科がある日は忙しいです。

問題を解く演習クラスは、先学期はEJUの過去問が中心でしたが、今学期は過去問に加えて大学独自試験を意識した問題も解かせることにしました。選択肢のあるEJUの選択問題ばかりやっていたら、自分で答案を作る筆記問題の力はつきません。また、口頭試問で物理の原理みたいなものを聞かれても何とかなるようにという気持ちもあります。

こういうことを通して学生たちに本当に学んでもらいたいのは、科学の根幹を成す発想です。順序だてて論理的に考えて結論を得る問題の解決法です。科学者として過ごしていく上でどうしても必要な考え方です。今思い返すと、私も受験勉強のときにそんな発想法の芽となるものを身に付け、それを大学から大学院にかけて育て上げていったような気がします。そしてそれを学生たちにも身に付けてもらいたいのです。

だから、EJUを基準に考えると、私の授業は理屈っぽいでしょう。でも、無駄なことをしゃべっているつもりはありません。ほんのかけらでもいいですから、私が持っている経験や感覚を伝えていきたいと思っています。

手直し

7月4日(土)

今学期は超級クラスを担当しそうなので、教材集めをしています。といっても、新しく見つけ出すのではなく、以前使った教材を再利用しようと考えています。このレベルともなると、外国人向けの市販の教科書をそのまま使うわけにはいきません。それでは易しすぎるし授業が単調になってしまうし、こちらで補助教材を用意するなど、かなり手を加えなければなりません。それをやるのはかなり大変なので、昔の教材のリバイバルとなるわけです。

昔の教材を使うとなると、教材の鮮度が問題となります。3.11より前の教材は、現在では的外れなことになっていることもありますから、ことに要注意です。文法の例文も漢字のテスト問題も、手直しの必要なことがあります。そのときアップ・トゥー・デートな話題であるほど、その時期が過ぎると急に古臭くなってしまうものです。

そういう目で見ていくと、そのまま使える教材のなんと少ないことでしょう。ゼロから作るよりはましですが、やっぱりかなりの労力がかかります。また、教材を作ってから今までの間に、学生の志向や嗜好や思考が変わったという面も見逃せません。進学志向が強まり、多かれ少なかれサブカルを嗜好し、個人主義的な思考法が広まったと思います。そんなことも反映する必要があります。

それから、受験シーズンに入っていきますから、志望理由書の書き方やら面接の受け方やら大学の独自試験対策やらもしていかなければなりません。以前の資料を見ると、われながら甘いなと思うところもありますから、やっぱり何かすることになるでしょう。

来週は新入生の受け入れと養成講座の授業のかたわら、こんなことをしていきます。

爆弾作り

7月2日(木)

来週の木曜日は始業日なので、先生方の打ち合わせがありました。スピーチコンテストの概要や、進学に関する情報などをお伝えし、新学期への準備を進めました。K先生がスピーチの指導方法について詳しく講義してくださり、また、今までよりぐっとすてきな今年の会場の写真を見せられたりして、ああ今年も夏学期が始まるんだなという気分になってきました。

私は明日も来週も養成講座の授業があるので、そっちに頭を使っていると、ついつい新学期の準備が疎かになってしまいます。別に現実逃避しているわけではありませんが、受講生には全力で立ち向かいたいですから、授業の下調べに力こぶが入るのです。まあ、語彙論とか意味論とか形態論とか日本語の歴史とか、授業内容が私の好きな分野ですから、なおさらそっちのほうに目が向いてしまうのでしょう。

それでも、新学期に私が担当することになりそうなクラスの授業構想を立て始めています。教材集め、教材作りにも取りかかっています。こちらもやり始めると結構熱中してしまうもので、この教材は今学期は難しいかもしれないけど、学生たちが力をつけた来学期ならこなせるかななんて、3か月も先のことまで心配しちゃったりしています。仕事のしかたが散漫でいけませんね。

今度のクラスは進学希望の学生が大半ですが、進学するのに役に立つ日本語だけではなく、進学してから勉強しておいてよかったと思ってもらえるような日本語を教えていきたいと思っています。1年後か2年後に爆発するような時限爆弾を仕込んでいるような感じです。そう考えると、教材作りがおもしろくなります。

三平方の定理

6月2日(火)

漢字の授業では、教科書に出てくる熟語のほかにいくつかの言葉を紹介します。どの先生がどんな単語を取り上げているかはわかりませんが、私はどうしても理系的な言葉を入れたくなります。たとえば「直」では、直す、直接、正直の3つが「直」の字の用例として挙げられています。理系人間にとって「直」は「直角」「直線」「直流」の直です。初級の学生に対して「直流」の説明は難しいですが、「直角」は絵を描けばすぐにわかってもらえます。

確かに、日常生活において「直角」とか「直線」とかを使うチャンスはありません。そんなのよりも「素直」とか「やり直す」とかなんていうのを教えたほうがよっぽど役に立つでしょう。でも、それじゃあ私は面白くありません。数学アレルギーの学生もいるでしょうけれども、「直角三角形」なんていうのはどこの国でも勉強している事柄ですし、そういう純粋に学問的な言葉を日本語でどういうかを知るというのも、学生たちの喜びにつながっていると思います。学生たちはテストになんか出るわけがないことを承知の上で、板書をノートに書き写しています。

「万有引力」とか「光合成」とかを授業で語彙として取り上げることは、日本語教師としての私のとがっている部分だと思っています。学生も私が受験講座の理系科目を教えていることを知っていますから、そういう言葉が出てくることを半分期待しているところもあります。自分自身仕事を楽しむという面からも、私はこういう授業をやめるつもりはありません。

さて、明日の漢字には「定」の字がありますから、「三平方の定理」なんてやっちゃおうかな…。

毎日続ける

5月23日(土)

昨日が運動会でしたから、今日の受験講座は気が抜けて休んでしまう学生が多いだろうと思い、プリントの印刷部数を少なめにしようと思いました。でも、それは学生に対して失礼だと思い返し、先週の出席者数と同じ部数だけ刷りました。

少し早めに教室に入ると、机がまばらに埋まっている程度でした。やっぱりなと思いながら始業のチャイムと同時に出席を取り始めると、数名がばたばたと駆け込んできました。出席を取り終わってプリントを配ろうとすると、さらに何名かが入り、この時点でプリントにほとんど余裕がなくなりました。その後、学生たちがプリントの問題をやっているときにもう3名入室し、ついにプリントが足りなくなってしまいました。結局、出席者数は先週より2名多くなりました。

遅刻はほめられたことではありませんが、運動会の翌日で休みたい気持ちもあったにもかかわらず学校まで出てきたのは、立派な心がけです。毎日勉強しなければならないことはわかっていても、「運動会の翌日だから」「誕生日だから」「久しぶりに国の友達にあったから」などと、何かと理由をつけてサボりたくなるものです。しかし、受験の神様は、そういう気持ちを抑えて毎日コツコツと努力を続けた受験生にだけ微笑むのです。

勉強に例外を設けてはいけません。例外は「アリの一穴」です。どんどん広がって、やがては土台から崩れ去ってしまいます。どんなに苦しくてもペースを乱さず続けることが肝心です。「じゃあ、風邪をひいて熱があっても頭が痛くても、頭に何も入らなくても勉強しなければならないんですか」と聞かれそうですが、私は病気にならないことも受験生のすべきことだと思っています。健康管理も受験勉強のうちです。

今日の受験講座に出てきた面々は、みんな努力が続けられそうな学生たちです。これからも勉強する気をくじくようなことにぶつかるかもしれませんが、そんなことに負けずに前進し続けてもらいたいです。

全員出席

5月11日(月)

やっぱりクラス全員がそろうと気分がいいですね。教室に入った瞬間パッと見渡して空いている机がなく、出席を取って全員から返事があると、こちらも気合が入るというものです。学生たちも、スカスカの教室より友達が全員顔を見せているほうがやる気が湧くんじゃないのかな。教室は多少狭く感じるくらいでちょうどいいのです。

もちろん、日本語学校のような20人ぐらいのクラスの教え方もあれば、10人ぐらいのクラスや数人規模の学習者への教え方もあります。だから、20人のクラスで10人欠席したら10人クラスの教え方をすればいいというものではありません。表面的にはそうするかもしれませんが、学生側の気持ちや教師のノリが10人のクラスで10人が来たときとは大きく違うのです。

私は、欠席が多かったら、出席した学生に出てきた甲斐があったと思ってもらえるような授業を心がけます。何かそういう目標を掲げないと気力が続きませんし、スーパーの雨の日サービスじゃありませんが、お得感も持たせないとね。

今日のクラスは最初から全員出席で、気持ちよく授業ができました。予定よりみっちりした授業ができました。密度の高い授業は、学習者の数が少ないときにできるものではなく、最適の学習者数のときになされるのであり、その最適の学習者数とはクラスの学生数なのです。

ここしばらく誰かが欠席しているという状態が続いていたので、なんだか学生の顔つきも明るく感じられました。これは私の思い込みも入っているでしょうが、今日の教室に活気があったことは確かです。明日は別のクラスですが、またこういう授業ができるといいと思っています。

効き目なし

5月8日(金)

Xさんは毎日のように授業中ケータイをいじっては先生に叱られています。今日も私がふとXさんに目を向けるとケータイをいじっている様子でした。

「何をしているんですか。授業中にケータイはダメだと毎日先生が言っているでしょ」「すみません」「どうして授業中にケータイを見るんですか」「すみません」「理由を聞いています。理由を答えてください」「ありません」「理由がありませんがケータイを触ります?」「はい」「じゃあ、病気ですね。病気の人は出て行ってください」「病気じゃありません」「じゃあ、勉強したくないんですね。うちへ帰ってください」「勉強します」「勉強したいんですね」「はい」「じゃあ、立ってください。立っていたらケータイに触れませんね」

ということで、その後Xさんを立たせたまま授業を進めました。かなり本気だったつもりですが、その本気がどうも伝わらなかったようです。周りの学生たちは私が怒っているのを見て相当ビビッたみたいですが、Xさん本人はケロッとしていました。肝が太いと言ってしまえばそうかもしれませんが、こういう肝の太さは周囲の顰蹙を買うだけで、本人に幸せをもたらすとは思えません。

最近この手の若い学生が増えてきた気がします。よく言えばマイペースですが、単にわがままで他人の心を推し量ることができないというのが実情だと思います。こういう学生が日本の大学や大学院に進学したらどうなるのでしょうか。進学先でもトラブルメーカーになるんでしょうね。そうならないようにと、勉強以外の面のしつけにも力を入れてきましたが、力及ばずと感じることもままあります。

Xさんには来週の月曜日にもクラスで顔を合わせます。どんな態度で授業を受けるのでしょうか。連休のリフレッシュがいっぺんに帳消しになってしまったできごとでした。