Category Archives: 学校

好スタート

4月12日(金)

新学期が始まり、1週間が過ぎました。見慣れぬ顔があちこちでおしゃべりしたりお菓子を食べたりラウンジや図書室で勉強したり、学校に新しい風を吹き込んでいます。初級はもちろんのこと、上級までどのクラスにも新入生が入り、在校生も影響を受けているようです。

今週の出席状況を見ると、先学期は出席率が低くて要注意リストに載っていた学生の多くが、休むことなく学校へ来ているようです。教室にいる方が珍しいくらいだったTさんやDさんも、毎日出席しています。Rさんは1日だけ欠席してしまいましたが、先学期までのように休み癖がついてガタガタに崩れるということにはなっていません。新年度になり、入試本番に向けて気が引き締まっていることもあるでしょうが、新入生からの刺激もかなり効いていると見る方が自然です。

昨日とおとといは、初級レベルの学生向けに日本語強化のオリエンテーションがありました。とても活気がありました。新入生の意欲に在校生も引っ張られて、初級全体にやる気モードが漂っているように感じました。おかげでこちらの見込みを大幅に上回る登録者数で、教室をどうしようかとうれしい悲鳴を上げています。

出席率が下がってしまったTさんやDさんやRさんも、新入生の時期がありました。その頃は在校生に喝を入れる側だったはずです。その後どこかで何かにつまずいて、先生からにらまれる存在になってしまったのです。今学期の新入生がそうならないように、過保護じゃいけませんが、つまずきの元はできるだけ取り除けてあげたいです。

Tさんたちも、理想に近い形で再スタートが切れました。この好調さを持続して、志望校の合格証をつかんでもらいたいです。

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敏勘

4月8日(月)

朝、一人で仕事をしていると、電気のついていないロビーに人影が表れました。シルエットからするとKさんのようでした。ああ、そうだ、新学期が始まるんだよね。今学期も毎朝一番乗りのつもりかな、Kさんは。

他の先生方はクラス授業でしたが、私の今年度の始業は養成講座の講義でした。初回の講義はいつも日本語文法ですが、まずは日本語文法的な発想、文のとらえ方、もっと大きく言ってしまえば世の中の見方を身に付けていってもらいます。

「彼は学生ですか」「はい、そうです(よ)」(1)は会話として成り立ちますが、「彼は元気ですか」「はい、そうです(よ)」(2)は不自然ですよね。こんなことは、高校までの国文法の時間でも取り上げません。普通の日本人は一切気にも留めません。本能的に(1)は〇だけど(2)は×だと判断し、無意識のうちに(2)を避けています。その避けている(2)にも目を向けて、あえて疑問に思う癖をつけてもらうのが、この文法シリーズの狙いでもあります。

さらに根本的なところには、日本語文法に対する勘を養うということがあります。文を読んだり聞いたりした瞬間に、誤用に気がつく(内容についてはともかく)とか、より適切な表現が思いつくとか、言い回しの違いによるニュアンスの違いを感じ取るとか、そんなことができるようになってもらいたいのです。

勘を養うことの重要性は、日本語文法に限ったことではありません。私が担当している理科や数学の受験科目だって、勘が働くかどうかで問題が解けるかどうかが決まることがよくあります。料理だって、ここでコショウを一振りなんていうのは、クッキングブックではなく勘のささやきではないでしょうか。

最後の例のように、勘は言語化しにくいものです。だから、“習うより慣れろ”的な訓練が必要です。養成講座のみなさんもそうですが、新学期を迎えた学生のみなさんも、勘を鋭くしていってください。

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緑の落ち葉

3月27日(水)

このところ、春雨前線と言ってもいいような前線が太平洋岸に停滞し、パッとしない天気が続いていましたが、久しぶりに抜けるような青空が広がりました。昼間に外に出たら、日の光の強さ、まぶしさに驚かされました。桜の開花は遅れていますが、お天道様はもう春の装いなのです。

だから、私が出勤する時間帯も結構な明るさで、もはや夜明けではなく、完全な朝でした。

毎朝出勤すると、学校の前に落ちているゴミを拾います。吸殻はほぼ毎日、食べ物の包装材や紙くず、缶、ペットボトルなどを拾い集めます。時々、マスクも捨てられています。先週は、強風で道路の白線がはがれて学校の前に散らばっていましたから、1か所に集めておきました。

昨年の秋の終わりごろからでしょうか、きれいな緑の葉っぱが落ちているようになりました。触って確かめるまでもなく人工物です。どこから飛んでくるのだろうとあたりを見回しても、それらしき発生源は見当たりませんでした。どこかの打ちの庭先かベランダにあれば疑似観葉植物でしょうけど、KCPの前まで飛ばされてきてしまっては、もはやゴミです。美観を整えていたものが、ほんのちょっとの旅の末に、美観を損ねると私に拾われ、ゴミ箱に直行です。気の毒な気もしますが、しかたありません。

毎朝拾う緑の葉っぱのルーツが気になっていたある日、6階の外階段からぼんやり外を見ていたら、校庭をはさんだ隣のマンションの屋上近くに、あの葉っぱの茂みがあるではありませんか。そこからだとすると、飛ばされたというより舞い落ちたと言うべき軌跡を描いて学校の前までやってきたことになります。

毎朝2、3枚ずつ、風の強い日はもう少し拾っています。塵も積もればというやつで、すでに相当な枚数がKCPのゴミ箱をにぎわせています。1か月ごとぐらいに散った分を補っているんですかねえ。今朝は、雨で拾えなかった昨日おとといの分もあわせて7枚拾ったんですけど…。

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新クラス

3月12日(火)

今学期中級のKさんは、現在6月のEJUに照準を合わせて、日本語プラスにも参加しながら勉強を進めています。卒業式の前までは紛れもない中級のクラスでしたが、今は上級の学生に交じって勉強しています。

上級は卒業していった学生がおおぜいいますから、卒業式後にクラスを編成し直しました。その際、一部の中級の学生を上級クラスに引っ張り上げました。Kさんはその1人に選ばれたのです。

中級クラスでは上位に位置していたKさんですが、上級の学生と机を並べると、やはり引け目を感じざるを得ません。教材も「こんなの楽勝」とは言えなくなり、先生の教え方も上級を基準にしていますから、中級のつもりでいると置いていかれてしまいます。

そういう綱渡り的な面もありますが、Kさんはこの難しさがいい刺激になっていると楽しんでいるようです。そういうことができそうな学生を選んで上級にしているのですから、担任教師の読みの通りだったとも、好ましい方向に反応が進んでいるとも言えます。そういう気持ちで向かって行ったら、これからも日本語力は伸びるでしょうし、4月からはKCPの屋台骨を支えてくれる学生になっていくに違いありません。

でも、そのクラスにSさんやTさんの名前はありませんでした。2人とも直接教えたことはありませんが、入学してから何回か接触する機会があり、ひそかに期待していた学生です。クラスの先生の目には、Kさんほど伸びていないと映ったのでしょう。

もちろん、現時点で卒業までの運命が決まってしまったわけではありません。これからいくらでも逆転のチャンスはあります。とはいえ、漫然と今までと同じ発想と行動を繰り返していたら、伸び悩みのままでしょう。留学の目的が果たせるかどうか、今が正念場ですよ。

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愛着の度合い

3月7日(木)

卒業式は、卒業生に学校に対する愛着の度合いがわかります。

無断欠席は、論外。私のクラスではAさん、Bさん、Jさん。この3人は出席していてもやる気があるのかないのかわからず、特に今学期は消化試合的な態度が見られました。卒業式には来ないかもしれないと思っていたら、予感が当たってしまいました。

普段着での出席は、もらえるものはもらっておこうという発想でしょうか。Dさん、Yさんあたりは、そこまで悪気はないのかもしれませんが、「フォーマルな服装で」と言っておいたのにラフな格好なのですから、学校への愛着は薄いのかな。

それなりの格好で来ているけど、証書の受け取り方がいい加減な学生は、予行演習欠席か、予行演習はしたけれども、そんなに真剣ではなかったので頭に残っていなかったのでしょう。あるいは、本番で悪い例をたくさん目にしたので、それに合わせて予行演習の手順を省略してしまったとも考えられます。私の手から奪うようにむしり取っていった学生たちは、何かうらみでもあるのでしょうか。

きちんとした作法で証書を受け取った学生は、KCPに愛着を感じてくれたと考えていいでしょう。悪い噂しか入ってきていなかったTさんがきっちりやってくれました。先生方の愛情に、やっと気づいたのでしょうか。最後の最後で見直しました。

受け取った後で何か一言つぶやいた学生は、学校に対してなにがしかの感謝の気持ちを表したいのでしょう。Pさんは「お世話になりました」と言ってくれました。「ありがとうございました」は結構多かったですね。このレベルの学生は、しっかり目を合わせて受け取ってくれます。こちらも「本当におめでとう。これからが本当の留学だからね」と声をかけてあげたくなります。

特別な服装で壇上に登った学生は、単に目立ちたいだけかもしれませんが、式を盛り上げよう、楽しもうという気持ちも感じられます。王様にも見えてしまう民族衣装をまとったEさんが登壇するや、会場全体から歓声があがりました。Sさんも国の伝統衣装を着てきてくれました。問題児のRさんに式後に服装を褒めると、うれしそうに服の解説をしてくれました。意外といい奴だったのかな…なんて思ってしまいました。

みんな、出ていってしまいました。明日から、学校が寂しくなります。1年後の別れがたい別れの日に向けての歩みが始まります。

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3月の定番2

3月6日(水)

明日に迫った卒業式を前に、卒業証書の受け取り方の練習をしました。KCPの卒業式は、壇上でひとりひとりに証書を手渡します。その証書を受け取る作法を教えるのです。

日本人の教師は、いつどこで教えられたのか、年齢によらず、片手ずつ出して証書の横をつかんで受け取って礼をする作法を、細かいところは多少違っていても、知っています。しかし、それは日本独特のものであり、学生たちは、国籍を問わず、そんな作法は知りません。卒業式のセレモニーとしての格調の高さを維持する上でも、学生たちにはあの作法を覚えてもらわなければなりません。何も教えないと、ステージのまんまん中で校長に正対して、早くよこせと言わんばかりにいきなり両手の手のひらを上に向けて差し出す学生が続出します。

最初に教師が実演しながら受け取り方を説明します。次に、学生たちに実際にやってもらいます。ステージのどこにスタンバイして、証書と記念品を受け取ったら、どこからステージを下りて自席に戻るかという、証書受け取りの前後も含めて予行演習します。

教師が実演したくらいですから、また、こういうことはするなと注意もしていますから、受け取り方はわかっているはずです。でも、毎年のことですが、教えられたとおりにきちんとこなす学生と、何じゃお前はと言いたくなる学生とが出てきます。後者はスマホに集中していたのでしょう。正対した時の目を見れば、前者か後者かだいたい見当がつきます。失敗は今ここでしておいて、明日きちんとやってくれればそれでいいんですがね。

終業のチャイムが鳴ると、予行演習を済ませた学生たちが帰っていきました。明日は会場の四谷区民センター集合ですから、もしかすると、予行演習でさんざん叱られたのが、この校舎の最後の思い出になってしまったかもしれません。

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過半数確保

2月27日(火)

卒業認定試験翌日の上級の教室は、悲惨なものでした。9時1分前ぐらいに教室に入ると、片手をちょっと上回るほどの学生しかいませんでした。階段を駆け上がった方が早いのにエレベーターを待って乗ってくる学生がいますから、その学生たちに合わせてノロノロとタブレットを立ち上げ、出席を取る準備をしていると、予想通り、数名の学生が駆け込んできました。これでやっと過半数が確保できました。

教室を見渡すと、もともと出席率の高い学生と、出席率が悪いのでビザ更新に備えて0.1%でも数字を上げておこうと学校へ来ている学生と、その中間の学生と、それぞれ1/3ずつぐらいでしょうか。私が学生の立場だったら、やっぱり休んじゃうかなあ…。私はケチですから、支払った授業料分は取り返さねばと、しぶとく通い続けるような気がします。

ゆうべから今朝授業が始まる直前にかけて、昨日の認定試験の採点をしました。私が作問したクラスは、どこも「できるやつはできる、できないやつはできない」という順当な結果に落ち着きました。テストの時の“わからなかった”という記憶を学生たちが鮮明に持っているうちにテストの反省会を開きたかったのですが、過半数をやっと超える程度ではその意味も薄れてしまいます。でも、せっかく来た学生には有意義な授業をしてあげたいですから、予定通りに授業をしました。テスト前の授業では気づかなかった点に目を向けられた学生もいたみたいです。

それから、あさってのディズニーシー行きの説明もあったのですが、こちらも欠席組には伝わっていません。ネット経由でアップしてあるしおりを見てもらうほかありません。でも、行事の時って、説明を聞いていない学生に限って何かしでかすんですよね。一抹の不安が拭い切れません。

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雪でわかる

2月6日(火)

昨日は、完膚なきまでにやられました。寒気が予報ほど強くないのではないかと見込んで、新宿付近は、雪は降っても積もるほどではないだろうと予想していました。ところが、ゆうべの帰宅時に、家の近くで日比谷線が地上に顔を出すや否や、稲光が見え、雷鳴がとどろきました。私の想定よりもはるかに強い寒気が下りてきて、東京上空がとんでもないことになっていることを悟りました。私の予報は完敗でした。

後で気象庁の天気図を見ると、南岸低気圧も絶妙の位置を通過したようです。結果的に、昨日は、東京が雪になる典型的なパターンでした。しかし、南岸低気圧が通過した後は冬型になることが多いのですが、今回はそうなっていません。それで、いまだにすっきりしない天気が続いています。でも、明日は快晴のようです。

始業を10:45に遅らせましたが、私のクラスは遅刻・欠席の学生が多かったです。Hさんは、家から駅までの歩道に雪が集められたため、歩道の幅が狭くなり、いつものようにすいすい歩けず、それで遅刻したと言っていました。こういうところにも、車中心社会の片鱗が見えてしまいます。

Sさんは欠席でしたが、電話で理由を聞いたところ、「寝坊」と答えましたが、要するに雪なので外に出たくなかったのでしょう。そんな臭いがプンプンしてきました。雪景色の東京なんて、めったに見られるもんじゃないんですけどね。布団の中がそんなに好きなのでしょうか。こんな程度の好奇心も持ち合わせていないで、よく留学ができるものです。Sさんは進学先が決まっていますが、若干心配です。

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意外にアナログ

2月2日(金)

K先生が日本語プラスの英語の授業を休んでいるJさんとLさんに声をかけてくださいました。2人から「いつ始まったか知りませんでした」という答えが返って来たそうです。でも、それは嘘です。日本語プラスの受講生全員には、始業日の翌週の月曜日にメールで時間割を送っています。また、メールで時間割が送られてくるからそれを見て確認せよという連絡も、各クラスで流してもらっています。たとえクラスでそのお知らせをした日に学校を休んでいたとしても、メールは届いているはずです。問題は、そのメールにきちんと目を通したかどうかです。

確かに、日本語プラスの時間割メールはデザイン的に目立ちません。システム上、私が勝手にデザインを変えることはできず、毎学期そのまま送っています。しかし、勉強する気があれば学校から届いたメールは丁寧に読むのではないでしょうか。JさんもLさんも、そこまでの気持ちは持ち合わせていないようです。

あるいは、メールは見たけれども内容が読み取れなかったということも考えられます。2人の日本語力からすると、このパターンは十分あり得ます。こういう場合、多くの学生はほったらかしにします。不利な事態が発生すると「わからなかったから特例を認めろ」と主張することもあります。そうなる前に疑問点をクラスの先生や事務職員に聞けばいいのに、それを面倒くさがるきらいがあります。

ペーパーレス化、デジタル化を図っても、末端部に情報が届かなかったら意味がありません。日本語プラスの時間割も、各学生に紙で配るのが一番安全確実に違いありません。デジタル世代の学生たちに、私たちの世代よりアナログな方法で情報伝達しなければならないとしたら、何という皮肉でしょう。

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骨折

1月19日(金)

昨日の夜、家の近くのスロープを下りていたら、左足をくじいてしまいました。「痛い!」と思いましたが、どうにか歩けましたから、足を引きずりながら家まで帰りました。

風呂に入り、寝て、今朝になると、痛みがひどくなっていました。左足に体重をかけると、痛みが走ります。昨日はまだすたすたと歩けましたが、もう無理でした。でも、午前中、代講が利かない授業を2つ抱えていますから、匍匐前進してでも学校までたどり着かなければなりません。いつもの半分ほどの歩幅で駅に向かいました。駅では、いつもは使わないエスカレーターに乗り、ホームに出ました。

電車は、なんたって早朝ですから、楽勝座れました。しかし、乗換駅では、いつもはダッシュしてきわどいタイミングの電車に乗り込むのですが、もちろんそんなことはできません。そろりそろりと歩いて、いつもより1本遅い電車に乗りました。御苑の駅から学校までも、牛歩戦術でした。いつもは、家から学校まで、スマホの歩数計で1700歩あまりですが、今朝は3300歩を超えました。やはり、歩幅が半分なのです。

教室まで行くのも、いつもは絶対に乗らないエレベーターのお世話になりました。どうにか授業をこなし、午後、学校の近くの整形外科へ行きました。靖国通りを渡る時は、次の青信号まで待ちました。通りの真ん中に取り残されたら寿命が縮まってしまいます。

レントゲンを見た医者は、「足の小指の骨が折れてますね」と一言。痛いわけです。靴を脱がされ、足を固定してもらい、帰ってきました。全治4週間。意外と重かったです。「ほっときゃ治るよ」なんて思わないでよかったです。

さて、これから足を引きずりながら帰ります。固定された足には、整形外科で貸してもらったサンダルが。乗換駅の階段が辛そうだな…。

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