Category Archives: 学校

暗雲漂う

7月8日(月)

毎学期の始業日には、各クラスで全学生に対して学校生活のオリエンテーションをします。規則・ルールの再徹底をしています。

「授業が始まるのは朝9時ですが、遅刻は何分までですか」とA先生が質問しました。答えが返ってこないので、「じゃあ、Bさん」と指名しました。指名されたBさん、おどおどしながら「9:15までです」と答えました。当然、「えーっ!」という声がクラス全体から上がるかと思いきや、シーンとしたまんまでした。

「9:15? いいですか」とA先生が正解を促しましたが、教室は静まり返ったまま。このクラスは中級ですからA先生の言葉がわからないなどということはありません。新入生は1名だけですから、少なくとも3か月はこの規則に従ってきたはずです。見慣れない顔が多く、互いに牽制し合っていたのかもしれませんが、何の反応もないとなると、ちょっと怖くなってきました。「こいつら、本当に規則を知らないのかもしれない」。

KCPでは、始業時刻から5分以内に入室した場合、「遅刻」となります。つまり、午前授業の場合、9:05までに教室に入れば「遅刻」で済みますが、それよりも遅くなると、1授業時間欠席の扱いになります。これはKCP独自のルールではなく、官庁からのお達しにのっとった規則です。だから、入学時のオリエンテーションで全員に伝えていますし、こうして毎学期確認もしているのです。

それにもかかわらず、決して不真面目とは言えないBさんから9:15などという答えが出てくるということは、少なからぬ学生が本気で9:15などと勘違いしているおそれがあるということです。だから、遅刻する学生が後を絶たないのかもしれません。

新学期初日から、恐ろしいことになってきました。

朝日を浴びて

6月19日(水)

昨日は98ミリの雨が降りましたが、帰宅時にはほとんど上がっていました。天気予報も晴れだと言っていたので、チャンスだなと思いました。

今朝4時、空の大部分はまだ暗かったですが、北東の空にはきれいな朝焼けが見えました。あさってが夏至ですから、この時期の朝日は東からではなく、北東に近い方角から昇ります。ネットで調べると、真北から60度東、真東から30度北からですから、昔流の言い方をすれば、寅の方角です。雨の日の翌朝ですから水蒸気が多く、筑波の峰はそのかなたでしたが、気にせず出発しました。

朝の早いこの時期、家から直線距離で3キロちょっと離れた上野駅まで歩くと、途中で夜が明けます。特に今朝のような雨上がりは、空気が澄んでいて、かつ速足で歩いてほどほどに体が温まる程度の気温なので、本当に気分爽快です。

少し遠回りをして、上野公園を抜けました。昨日の雨をたっぷり吸い込んだアジサイが、朝の光を受けて、生き生きとみずみずしく赤、白、青、色とりどりに咲いていました。上野公園と言えば春の花見ですが、この季節もなかなか捨てたものではないと思いました。

さて、学校は期末テスト。期末テストの日は、アメリカの大学のプログラムで来ている学生の修了式があります。今学期はいつもの学期と違って、琴クラブの発表会がありました。もうすぐ帰国する学生が、見事な演奏を披露してくれました。

朝のすがすがしい空気の中を歩いて始まった一日が、美しい琴の音色で終わりました。

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教師も勉強

6月15日(土)

学生たちは、自分たちは、KCPのテストから入学試験やJLPT、TOEFLまで、日々いろいろな試験があり、毎日勉強しなければならないのに対し、先生たちは自分たちをいじめるテストを作るばかりで、授業も毎学期同じことを繰り返せばよく、あまり勉強しなくてもいいと思っている節があります。

いいえ、決してそんなことはありません。土曜日なのに、いや、土曜日だからこそ、勉強会がありました。ほぼ全員の教師が集まり、日本語教育を専門としている大学の先生のお話を聞き、その後そのお話に基づきグループに分かれてディスカッションをしました。議論が盛り上がり、有意義な勉強会でした。

現在、KCPはカリキュラムを改訂しようと考えています。少しずつ新しいカリキュラムに移行しつつある段階です。その新しいカリキュラムにのっとった教育を円滑に実施していくには、勉強しなければならないことが山ほどあります。勉強会にはこういう背景があるのです。

平日は、授業やら学生指導やらに追われて、勉強する時間がなかなか取れません。それに加えて、私は代講が利かない授業をいくつも抱えていますから、外部の講習会に参加することもままなりません。ですから、大学の先生のお話は刺激的であり、頭の隅々にまで血が巡ったような感じがしました。

教師も勉強をしていますが、やっぱり学生の勉強量にはかないませんね。日中、2階のラウンジで、Cさんなど数名が、明日のEJUに備えて問題集に取り組んでいました。もはや、私たち教師には、学生たちが実力を遺憾なく発揮できるようにと、祈るよりほかにできることはありません。

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牛乳対日本語

6月4日(火)

欠席したYさんに電話をかけて休んだ理由を聞くと、「ゆうべ、賞味期限が過ぎた牛乳を飲んで、お腹を壊しました」という答えが返ってきました。飲むとお腹を壊すほどの牛乳って、相当傷んでいると思います。飲むときに嫌なにおいがしなかったのでしょうか。タンパク質が腐ると、吐き気を催すようなにおいがするものです。味だって、酸味や苦味がしてくるはずです。変なにおいや味がしたら、もったいないからといっても、生理的に体が受け付けず、吐き出してしまうと思います。

賞味期限はだいぶ余裕を持って決められていますから、1日でも過ぎたら絶対アウトというものではありません。しかるべき温度の冷蔵庫の中に保存してあれば、たとえ開封されていても、直ちに菌が増殖するものではありません。牛乳パックに歯垢たっぷりの口を付けて飲んだら、賞味期限前でも悪くなってしまうかもしれませんが、ちゃんと清潔なコップに移して飲んでいれば、そう簡単に悪くなるとは思えません。

「近頃の若者はひ弱で困る」という結論に持って行きたくはありませんが、こういう理由で休む学生はYさんだけに限りません。よく聞く話です。となると、そう結論付けざるを得ません。さもなければ、こういった学生はずる休みをしていることになります。

気になるのは、Yさんに電話をかけて欠席理由を問うた時、何かを操作したような音がしたことです。パソコンかタブレットで国の言葉を翻訳して答えた可能性もあります。上述のようなわりと単純な理由が日本語で言えないとなると、Yさんの日本語力を疑いたくなります。勉強がわからないから学校へ行きたくないのだとしたら、ひ弱な若者が多いことより深刻な問題です。果たして、真相はどうなのでしょう。

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リスト入り

6月1日(土)

月が替わって早々、5月の出席不良者のリストが回ってきました。4月のリストに載っていたSさんの名前が消えていました。指定校推薦でH大学などと言っていたのにリスト入りしてしまい、どうしちゃったのだろうと心配していましたが、どうやら一時の気の迷いだったようです。根はまじめな学生ですから、立ち直って目標に向かって進んでいると思っていいでしょう。

Dさんはまたもリスト入り。確かに病弱なのですが、リスト入りが続くとビザが心配です。「そんなに病気ばかりしているんだったら、留学なんかできませんよねえ」というのが入管の考え方ですから、どうにかしてもらわなければなりません。クラスの先生からはたびたび指導を受けているはずですが、それでも出席率が上がらないとなると、本気で帰国を考えなければならないかもしれません。

Jさんもリストに載っていました。授業後に机をきちんと並べてくれたりなど、性格はいいのですが、出席率だけはさっぱりよくなりません。Jさんもよく病気になる学生です。厳しい言い方かもしれませんが、病気に逃げている面があるような気がします。そんなことを続けていたら、いつまでたっても何もできませんよ。国へ帰ったって、学校も仕事も無理なんじゃないかな。

そして、なんと、Aさんもリストアップされているではありませんか。6月までで帰国するという話を聞いていますが、それで気が緩んでいるのでしょうか。去年、私が受け持った頃のAさんは、向上心がとても強く、出席率も100%でした。その意欲を最後まで持続させることって、やっぱり難しいのでしょう。そう考えると、皆勤賞の学生たちって、本当に偉いなあと思います。卒業式はまだだいぶ先ですが…。

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好天に恵まれました

5月17日(金)

朝から快晴。7時に本川越駅に着きました。先生方への事前説明で示したおすすめコースを歩いて氷川神社へ向かいました。大正浪漫通りにはたくさんの小ぶりのこいのぼりが、四万十川などで行われているような、川の両岸を差し渡してたなびかせるのと同様に、道をまたいで泳いでいました(ところが、いつの間にか片付けられてしまい、昼間通りがかったときには、夢幻のごとく、何もありませんでした)。富士見櫓跡に上ると、マンションのすき間から富士山の頂上部が見えました。新河岸川遊歩道から木立の向こうに氷川神社の大鳥居が見えると、やっぱり立派だなと感じました。菓子屋横丁は店がまだ開いておらず、観光客も皆無でした。蓮馨寺は、毎朝お参りしていると思われる地元の方が数人手を合わせていました。境内を掃除している方もいましたが、こちらも毎朝なのでしょうね。

1周して駅に戻ると、先生方が少しずつ集まり始めました。その後学生も来始めましたが、学生も教師もみんな直射日光を避けて日陰に集まったため、駅構内から出る通路を塞いでしまいました。これは反省事項です。

あれほど時間厳守と指導しておいたのに、定刻になっても学生の集まりは7~8割だったでしょうか。“いい学生”と評判の学生も、定刻過ぎの電車で到着し、慌てて集合場所に向かっていました。冷たくおっぱなして出発しても、結局こちらの手に負えなくなるだけですから、待たざるを得ません。これは永遠の課題です。

時の鐘付近で学生の整理に当たっていると、超級クラスのグループが来ました。正午少し前だったので、12時に鐘が鳴ると教えると、写真を撮りながら待っていました。私も時の鐘を聞くのは初めてでした。自動で撞木が鐘から離れ、今か今かと待ち構えていると、撞木が解き放たれて鐘を撞きました。思ったより小さな音(それでも付近には十分響きました)でした。鳴っていない鐘を見上げているくらいが、想像力が掻き立てられて、かえって面白いんじゃないかなと思いました。

超級グループの学生たちが鐘を聞いた後すぐに立ち去ろうとしたので、時の鐘の奥に祭られているお稲荷さんを拝んだかと尋ねました。拝んでいないと答えたので、「ここは合格に著しいご利益があると言われているのに、そこにお参りせずに行ってしまうんじゃ、お前ら全員だめだな」と脅したら、慌てて拝みに行きました。みんな、受験に関しては必死なんですね。

外歩きをする課外授業は、“天気よければすべてよし”みたいなところがあります。最終集合場所の蔵里にやってきた学生たちは、みんな満足そうでした。歩き疲れたDさんやGさんたちのように、しばらくの間座り込んでいる学生もいました。ここでも定刻になっても現れない学生がいて、教師が連絡を取る場面が見られました。体験イベントに夢中になっていたとのことでしたから、担任の先生からは大目に見てもらえたようです。

私は、うっかり、夕方歯医者の予約を入れてしまったので、へとへとの体を引きずって歯医者へ行きました。口を開けたまま、寝てしまいそうになりました。

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初欠席

5月2日(木)

プライベートレッスンを受けているHさんは、小学校入学以来、学校を休んだことがありません。体調が悪くても親が休ませてくれず、お腹が痛いとか言いながらも学校に出ました。ですから、小学校、中学、高校と皆勤賞をもらいました。その時は誇らしく思い、ひそかに優越感に浸りました。

そのHさん、なぜプライベートレッスンを受けているかというと、会社の仕事で日本語が必要だからです。通常のクラス授業に加えて、会話練習やJLPTの問題などに取り組んでいます。仕事に直結するとなると気合が入るものです。話し方の間違いを指摘するとすぐに言い直したり別のシチュエーションで使ってみたりしようとします。

ところが、連休明けに出張が入ってしまいました。そのため、どうしてもKCPを休まざるを得なくなりました。小学校から続けてきた皆勤が途切れると思うと、Hさんは残念でなりません。二日酔いの朝も、文字通り這うようにして登校してきたのです。私にまでその残念が乗り移り、「仕事だからしょうがないよ。Hさんはほかの学生みたいにいい加減な気持ちで休むんじゃないんだから」などと慰め役に回りました。

Hさんの爪の垢を煎じて飲ませたい学生がおおぜいいます。Dさんはまた日本語プラスを休みました。数学のS先生から才能があるとお墨付きをいただいているのに、このままでは宝の持ち腐れに終わってしまいそうです。RさんはA先生にたっぷり油を絞られていました。こちらも光るものを持っているんですがね。

明日からの連休、Hさんは出張の資料作りをするそうです。私は、例によって関西遠征です。

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こいのぼり

4月30日(火)

朝、外階段から教室へ行こうとしたら、校庭上空にこいのぼりが泳いでいるのが目に入りました。先週土曜日は何もなかったし、今朝出勤した時も曇り空しか広がっていませんでした。きっと、O先生が飾り付けてくださったのでしょう。

今週は連休の谷間で、授業日は3日だけです。5月2日(木)に、年中行事として端午の節句を予定しています。その一環として、毎年恒例のこいのぼりを揚げました。曇り空だと今一つ映えませんが、風になびくこいのぼりは、やはり初夏の風物詩です。

そういえば、学校以外でこいのぼりを見かけていません。私の行動範囲が、ほぼ家と学校との往復に限られていて、しかも地下鉄経由ですから、そもそも外を見るチャンスがあまりないというのが大きな要因です。おとといと昨日は家の近くを歩き回りましたが、小学校にも幼稚園にもこいのぼりは揚がっていなかったように思います。最近はそういうことをしなくなったんですかね、学校でも。

KCPの近くにある花園小学校と花園幼稚園も見てきました。わずかに幼稚園の掲示板に折り紙のこいのぼりが張られているだけでした。校舎や教室の中には何か飾り付けがなされているのかもしれませんが、外から見る限りいつもと変わらぬ姿でした。コンビニも、恵方巻は派手に宣伝していましたが、柏餅はあまり目立ちません。令和の端午の節句は、通奏低音のごとく地味に行われるのでしょう。

午後、化学の授業をしたら、うっすら汗をかきました。端午の節句は地味でも、季節は夏の入口なんですね。

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悩み

4月26日(金)

文部科学省からの奨学金をもらう学生を決める面接をしました。正確には、KCPが奨学金をもらう学生として文科省に推薦する人を決める面接です。書類審査などで落とされる可能性がありますから。とはいえ、こちらから推薦した学生は例外なくもらえると考えていいくらいですから、事実上「奨学金をもらう学生を決める面接」なのです。

まず、奨学金が欲しい人を募集しました。出席率で制限を加えましたから、誰でもというわけにはいきません。毎日口を酸っぱくして休むなと言っているのですが、こういうところで残念な思いをする学生が後を絶ちません。また、日本で進学する留学生対象ですから、就職希望や帰国予定の学生は対象外です。

こちらの希望としては、お金に困っている学生にあげたいです。出席率や成績がよくても、裕福ない家庭の学生には、遠慮してもらいたいところです。お金の出所は私たちの税金ですから、奨学金を遊ぶ金や貯金の積み増しに使ってほしくはないです。ですから、面接の際には経済状況も聞きます。

Sさんは学業優秀で、出席率も問題なく、しっかりしたビジョンを持って進学しようとしていますから、当選確実です。残りの数名が横一線で、甲乙つけがたい状況です。Kさんはお金に困っていますが、成績が心配です。でも非常な努力家です。やはりお金の心配が絶えないCさんは、アルバイトがなかなか決まらないと言っていました。意外だったのがYさんで、あっさり落ちるだろうなと思っていたら、自分の将来に対してとても深い考えを持っていることがわかりました。好感度急上昇です。

…などなど、結局だれを選べばいいか決めかねて、継続審議ということになりました。各方面から情報を集め、最終決定します。もう少し受給者枠が多ければみんな推薦できるのにね。

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3月中旬並み

4月24日(水)

寒かったですね。最高気温は夜中に記録された16.5℃で、最低気温14.4度は日中に記録されました。本来なら最高気温が出る時刻の14:24です。日中の最高気温が14度台というのは、3月中旬です。40日ほど気候が後戻りしてしまったことになります。

私なんか、今週から夏のスーツを着始めましたから、うすら寒くてかないません。ひざ掛けでどうにかしのいでいます。しかし、学生の中には半袖で平気な顔をしているつわものもいます。先生たちから「寒くないの?」などと声をかけられていましたが、それが楽しみというか、「ぜんぜん」とかって自慢げに答えたくてしょうがないといった風情でした。そう答える自分を誇らしく思っているのでしょう。風邪をひいて休むなどということさえなければ、半袖短パンでもいいでしょう。見ているこっちが寒くなってしまいますが。

先週は夏日も記録したのに、このところ最高気温が平年値を下回る日が続いています。しかし、明日は26度、あさっては28度と、また夏日になるという予報が出ています。気温が激しく上下すると、体調を崩す学生が出てきます。せっかく好スタートを切って新学期の勉強を始めたのに、熱を出して欠席したのがきっかけでつまずいてしまう学生が必ずいます。ここのところの寒さがそんな学生を生み出すのではないかと心配しています。半袖の学生も、ほどほどにしておいてもらいたいです。

今年も中間テストの翌日からクールビズを予定しています。そのころには、半袖でも鳥肌が立つこともなくなっているでしょう。

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