Category Archives: 学校

本当は…

3月6日(金)

朝、御苑の駅の階段を上って外に出ると、東の空がほんのりとオレンジ色に光っていました。日中は抜けるような青空で、建物の中にいるのがもったいないようなお天気でした。千葉県鴨川市も同じような天気だったようです。最高気温が15度を少し上回り、海の動物を間近で観察するには絶好の日だったでしょう。そうです。本来なら、鴨川シーワールドへバス旅行に行く日だったのです。

今学期が始まって早々に旅行代金を集め、どうにかこうにかほぼ全員から集めたと思ったら、中止の決定を余儀なくされました。その後情勢が厳しくなる一方で、鴨川シーワールド自体、おとといから休館です。今年のバス旅行は、どうあがいても無理筋だったというわけです。

鴨川シーワールドに限らず、休館・休園の施設は全国に広がっています。5月の連休は例によって関西地方への旅行と決めて、足と宿はすでに押さえています。計画も少しずつ立てつつあるのに、なんだか不安になってきました。姫路城の平成の修理が終わってからだいぶ経ちますが、まだ行っていませんから見学しようと思っています。でも、姫路城も閉まっています。こちらは、いよいよとなったら、山の辺の道を再訪してもいいし、近江富士に挑戦してもいいし、いくらでも手があります。

それに対して、中国と韓国からの入国制限が日本語学校に与える影響尾は非常に大きいものがあります。どの学校も、4月からの運営に苦慮していることと思います。まずは在校生の利益を最大限に守ることを考えなければなりません。来年の4月に進学を考えている学生には、6月のEJUの手当てをしていかなければなりません。大学院進学希望の学生は、動き始めなければなりません。そのころまでにこの騒ぎが収まっていることを祈るほかありません。

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寂しいひな祭り

3月3日(火)

学生がいないので、ひな人形のいないひな祭りの日でした。今まで、卒業式が比較的早い年は、講堂に立派なひな飾りを出すのはやめて、ロビーに小さなお内裏様とお雛様を置いただけだったことはありました。しかし、まるっきり何もしなかったというのは、私がこの学校にお世話になってからは初めてじゃないでしょうか。この校舎が建設中で、仮校舎の時も事務の窓口に木目込みかなんかのお人形を飾った記憶があります。

学生はいなくてもオンライン授業を送り続けることは、教師側にとってはかなりの負担であり、珍しがったり面白がったり「かわいい」と言ったり話を聞いたり写真を撮りまくったりしてくれる人が誰もいないのなら、飾るのを省略したくもなります。張り合いがないですからね。

授業はオンラインですから自宅で受けられますが、諸手続きや進学相談などで学校を訪れる学生は何人かいます。そういう学生は、特に後者は精神的にあまり余裕がなく、お雛様がさりげなく立っていても気づかないでしょうね。いや、だからこそ、飾っておいて気づかせて心に余裕を持たせてあげた方がよかったでしょうか。

お昼は青空と暖かさに誘われて、近くの公園へ行きました。河津桜が咲き誇るそばで、マスクをした小さい子どもたちが遊んでいました。鬱陶しがる子どもをお母さんが叱っていました。

こういう世の中が、もう少し続きそうな気がします。韓国は3月から新学年ですが、それを大幅にずらすとのことです。日本もそうなってしまうのでしょうか。そこまで長引くとなると、端午の節句も危なくなりかねません。もちろん、そうならないように強く願っています。

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口は雄弁に

2月22日(土)

教室にマスクが目立ちます。コロナウィルスに感染しないようにということなのでしかたがありませんが、授業がやりにくいです。まず、学生の声がこもってしまい、聞き取りにくいです。学生の発言を聞き返すことが増えました。その分、授業がスムーズに流れなくなります。

そんなことよりも、口元を隠されると、こんなにも表情が読めなくなるものかと、逆に感心しています。学生がわからなさそうな顔つきをしていたらもう少し説明を加えるとか、楽しそうにしていたらその活動を少し延長するとか、そういった現場での授業の微調整がしづらいのです。そこまでいかなくても、目の前の学生たちが何を考えているのかつかみにくく、商売がやりづらいことこの上ありません。

火曜日だったと思います。午後、食事に出たら、「先生、こんにちは」と学生に声をかけられました。その学生はマスクをしていましたが、わざわざマスクを取ってくれました。そのおかげで、声の主が初級で教えたMさんだとわかりました。とてもさわやかな印象でした。顔を全部見せるって、コミュニケーションの上で重要なんだと感じさせられました。

今朝の新聞に、マスクで顔を半分隠す習慣が、コロナウィルスの流行が収まってもそのまま日本に定着するのではないかと出ていました。マスクをすることによって心を隠し、安心感を得るのでしょう。でも、マスクをして感情を見せなくした群衆から受ける圧迫感はそれ以上だと思います。塵も積もれば山となるで、日本社会全体が不安定な方向へ傾くんじゃないかと心配しています。

関東地方で春一番が吹いたそうです。この強風でウィルスを吹き飛ばし、活力のある社会を作り直したいです。

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中止

2月17日(月)

新型肺炎がじわじわ広がってきています。東京マラソンの一般参加レースが中止になったり、天皇誕生日の一般参賀が中止になったりなど、全国各地で行事が中止になっています。KCPも、バス旅行の中止を決定しました。

もはやどこへ行っても新型肺炎の心配をせねばならず、行った先で肺炎を拾ってしまうことだってあるかもしれません。また、バスの車内も、みんながマスクをして押し黙っているようでは楽しくもなんともないでしょう。

それを聞いたHさんとSさんは少し残念そうでした。2021年に日本で進学しようと考えている2人は、今はひたすら日本語とEJUの各科目の勉強に明け暮れています。バス旅行は、そんな生活の中でのひとときの楽しみだったようです。それが消えてしまい、「先生、今学期は学校行事はもうないんですか」と聞いてきました。

私たちも、先週末に「中止」の決断はしましたが、バス旅行に代わる学校行事を行うかというところまでは深く考えませんでした。“バス旅行は行かないけれど、どこか別のところへ行く”では全く意味がありませんから、外出系はしないでしょう。そうなると校舎の中で行う何か楽しそうなこととなりますが、いったい何があるでしょう。

実は、私たちも何かアイデアがほしいのです。バス旅行のために事前学習なども含めて、ある程度の授業時間を使うことを予定していましたから、その分をどうにかしなければなりません。御苑へ行こうというわけにはいきませんから、もうすぐ卒業する学生が喜びそうな何かをしなければならないのです。明日の中間テストが終わったら、学生に聞いてみようかな…。

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新局面

2月14日(金)

昨夜は疲れ果てて帰ったので、夕刊に目を通しただけで、風呂に入って寝てしまいました。今朝、朝刊を取ってくると、第一面に国内で新型肺炎による死者が出たという記事が出ているではありませんか。情勢が大きく動いたと感じました。

朝食を取りながら新聞をじっくり読むと、多少はあおっているところもあるかもしれませんが、感染が拡大しそうな臭いがプンプンしてきました。武漢の人などと直接接していない方が亡くなったようなので、私たちが思っているよりもずっと身近なところに新型肺炎が潜んでいるおそれは否定できません。コロナウィルスは空気感染しませんからマスクをしてきませんでしたが、そろそろ考え直すべきなのかなあ。でも、マスクはなかなか手に入らないということだし…。

休日の11日の朝9時ごろ、うちの近くのドラッグストアの前を通ったら、10時開店なのにすでに人が並んでいました。みんなこうやってマスクを手に入れているのかと感心しました。午後、その店に入ると、一般的なマスクはすでに売り切れで、1枚何百円もするマスクが何枚か残っているだけでした。もう一軒のドラッグストアは、いつ入荷するかわからないと張り紙が出ていました。

そういう異常事態だったところに、こういう新たな状況が加わり、マスク枯渇状態に拍車がかかりそうです。気になるニュースとしてマスクが買えないことを取り上げた学生がいましたが、これからどうなるのでしょう。思わず、「売り惜しみ」「買占め」という言葉を教えてしまいました。

新たな局面を迎え、今学期から来学期にかけての学校運営を再構築しなければならなくなりそうです。

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喫煙厳禁

1月14日(火)

学校の中で、今年になってから一番大きく変わったのは、喫煙のルールです。地下にあった喫煙室が廃止になり、校内は完全禁煙となりました。健康増進法の改正に伴うもので、4月から法律的に学校や病院などの全面禁煙化を先取りし、KCPの敷地内は、建物の内も外も、たばこを吸えなくしました。

新宿区は路上喫煙も禁止ですから、学校の前と言えども道で吸うこともできません。花園公園も公共施設ですから禁煙です。付近のビルや駐車場は私有地ですから、たばこを吸いに立ち入ったりしようものなら、不法侵入となってしまいます。

要するに、KCPにいる間はたばこが吸えない、たばこを吸うなということです。学生たちの家から学校までの間も、たばこが吸えそうな場所はほとんどないんじゃないでしょうか。喫煙者にはつらいご時世となりましたが、たばこ1本で寿命が4分縮まるとか言われていますから、これを機に潔く禁煙に踏み切るのが正解だと思います。

さて、廃止した喫煙室ですが、壁やら天井やら、この校舎ができて5年余りの間のやにがこびりついてまっ茶色でした。これをきれいにしてもらうのに結構なお金がかかりました。喫煙室を使った卒業生たちに請求したいくらいです。

喫煙室の換気扇から排出される空気は、たばこ臭くてかないませんでした。休み時間になるたびにそれを吸わされていた私たちは、まさに受動喫煙そのものでした。喫煙室が満員だからと言って、外の吸ってはいけないところで吸っていた学生をどれだけ説教したことか。運動会やバス旅行やBBQなどでどれほど喫煙者に気を使っているか。喫煙者はコスト以外の何物でもありません。

たばこなんか、税金の塊を燃やしているようなものなのに、どうして吸うのでしょう。私は喫煙経験がありませんから、その辺の心理が理解できません。校内全面禁煙化をきっかけとして、“留学生活=きれいな肺”という公式を作っていきたいです。

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回収物

12月23日(月)

金曜日の期末テストの追試を受ける学生を横目に、教室整備をしました。掃除というよりは、3か月間使った垢を落とすといった感じです。掲示板に貼られているテストの日程表を取ったり、今年のカレンダーをはがしたり、パソコンの画面に張り付けられている発表用の資料や教材のコピーを削除したりしました。

その中で一番の大仕事は、教室に置き去りにされた傘の回収でした。各教室に1本ぐらいならともかく、10本ぐらい放置されている教室もあり、あっという間に抱えきれないほどの本数になってしまいました。各階の教室と1階の職員室との間を3往復もしてしまいました。

傘の大半はいわゆるコンビニ傘で、300円か500円で買えるビニール傘です。期末テストの日は好天だったことを考えると、その前日、日中雨が降って夕方やんだ木曜日から置きっぱなしだったと思われます。真新しい傘は、通学途中で買って差して来て、授業後は持ち帰らなかったのでしょう。実働10分かそこらで、教室の傘立てに捨てられたというわけです。

学生たちは、通学時に降っていなくて帰宅時に降っていると、職員室に傘を借りに来ます。その傘は、こうした学生たちの忘れ物というか不法投棄物(?)が元になっています。リサイクルがなされていると言えないこともありませんが、貸出用の傘がいつの間にか減っていること、同じような学生が何回も借りに来ることからすると、学生が借りていった傘の少なからぬ部分が、どこかに置き去りにされているのでしょう。

どうして折り畳み傘を愛用しないのでしょう。数百グラムが重いのかなあ。私は天気のいかんにかかわらず、かばんに入れっぱなしですが…。

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KCPがなくなる?

12月16日(月)

超級クラスで、紙の本がもうすぐなくなるのではという記事をもとに、もうすぐなくなりそうなものを挙げてもらいました。あっという間に話が終わっちゃうかなと少し心配していましたが、杞憂でした。

しょっぱなに指名されたIさんは、元気な声でいきなり「KCP」と答えました。クラスのみんながそんなこと言っちゃまずいという顔になりましたが、Iさんは「インターネットを通して語学の勉強ができるようになれば、わざわざ学校に通う必要もないと思います」と理由を説明してくれました。その通りとうなずく学生もいれば、「それじゃあ留学のビザが取れないから、日本へ来られなくなっちゃう」と、全然違う角度から反論を加える学生もいました。

Sさんは、「日本へ来て日本の文化に触れることが留学の大きな意味だから、KCPがなくなってしまっては困ります。それに、ネットで一人で勉強するより、みんなと議論しながらのほうが、役に立つ日本語が身に付きます」と、教師一同泣いて喜びたくなる反対意見を述べました。

Tさんは、「でも、先生だって、毎学期同じ授業を繰り返すのはつまらないでしょ?」と、こちらの心理を尋ねます。「確かに初級のひらがなの書き方とかて形のつくり方や練習なんかは毎学期同じかもしれないね。でも、このクラスみたいなレベルになると、クラスの学生の雰囲気や進路や興味の対象に合わせて授業を組み立てるから、同じ教科書を使っても進め方はかなり違うんだよ」と実情を語ると、学生たちは感心したような顔をしていました。

そうはいっても、教科書は電子配信の方がありがたいみたいでした。タブレットにチャカチャカと書きこむ方が、今の学生にとっては勉強しやすいのでしょう。こちらの方は、早晩そうなっていくのではないでしょうか。

学生に考えさせるつもりの授業が、こちらが考えさせられてしまう授業になりました。

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流れるように

12月4日(水)

Yさんは今週末が入試の初めての面接です。今まで何校か出願しましたが、どこも書類選考ではねられ、面接まで進めなかったのです。

だから授業後に面接練習となったわけですが、入試の面接については今まで耳学問しかしてこなかったので、部屋の入り方からしてめちゃくちゃでした。やはり、動作は聞くだけでは身に付かないのです。

どうにか着席までこぎつけたので、「Yさんですね。簡単に自己紹介してください」と最初の質問を発すると、いきなり「???」となってしまいました。私も黙っていると、「Yです。〇〇国の××から来ました」。これはちょっと簡単すぎますね。初級じゃないんだから、もう一言何かアピールしたほうがいいです。

「どうして本学を志望したのですか」と聞くと、ここからは立て板に水なんてもんじゃありませんでした。急に早口になり、一方的にまくしたてます。暗記してきたことがもろ見えです。後で聞いたら、志望理由書を丸暗記したとか。それじゃ意味がありません。だって、面接官は志望理由書を見ながら質問するんですから。

約15分将来の計画などを聞き、練習を終えました。感想を聞くと思ったより優しかったと言います。しかし、私に言わせると、Yさんの特徴が感じられる答えがほとんどありませんでした。基本的な質問に対する答えはそれなりに準備されていることはわかりました。でも、Yさんじゃなくても答えられる内容の答えばかり目立ち、私が面接官だったら×ですね。Yさんにフィードバックすると、驚きながらも納得してくれました。

面接は自分を面接官に売り込む場です。セールスポイントのないセールストークじゃ意味がありません。面接はうまくいったと言いながらも落ちてしまった学生は、きっとこれなんでしょう。学生たちに上滑りさせないように指導していかなければなりません。

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手のひら返し

12月2日(月)

Wさんが大変なことになっています。先学期までは典型的な優等生で、入学以来9月の台風の日に休むまで、無遅刻無欠席でした。それが、今学期に入ってから、ボロボロの状態です。私は毎週月曜日にWさんのクラスに入りますが、ほとんど姿を見かけません。

担任の先生は、もちろん何度となく注意しています。しかし、一向に効き目がありません。原因として考えられるのは、「合格」です。第一志望校に進学が決まり、緩みまくっているとしか考えられません。受かった日にどんちゃん騒ぎをして翌日休んじゃったというのなら、それもいいことではありませんが、まだ理解の範囲内です。しかし、2か月も合格祝いが続くわけがなく、たまに出てきたときは元気そうだと言いますから、何をどう考えていることやらわかりません。

今までにも、合格したら来なくなったという学生はいました。しかし、そういう学生はもともと危ないにおいを放っていましたから、何となく見当がつきました。Wさんのように出席に関しての模範生から真っ逆さまの転落という例は、非常に珍しいです。入学以来1年以上にわたって出席率100%という学生は、それなり以上に志操堅固ですから、合格したとしても大崩れすることはありませんでした。10月・11月と札付きの問題児になってしまったWさんにいったい何があったのでしょう。話を聞こうにも、そもそも学校へ来ないのですから、聞きようがありません。

優等生というWさんの仮面を見抜けなかった私たちに、人を見る目がなかったのでしょうか。だとしても、消え去ることのない裏切られた気持ちで、出席簿のWさんの欄に「欠席」を記録しました。

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