Category Archives: 健康

暗黙の指定席

12月13日(月)

いつものように教室で授業の準備をしていると、いつものように出席率100%のBさんが入ってきました。時々欠席しますが来るときは早いQさん、教室にかばんを置いてよく廊下で朝ご飯を食べるSさんなどは来ましたが、始業の9:30になってもLさん、Kさん、Cさんなどが来ませんでした。いつもより幾分スカスカの教室で授業を始めました。

教室は指定席ではないのですが、面白いことに、一番出席率のいいLさんがいつも座っている席は空席のままでした。他の学生が比較的よく座る席はなんとなく埋まりましたから、Lさんがみんなから一目置かれていることが、図らずも見える化されたかっこうでした。

担任のH先生のところには、LさんやKさんから体調不良で休むという連絡が入っていました。胃の調子が悪いとのことだそうですから、どうやら受験ストレスのようです。この2人に限らず、今シーズンはぎりぎりの日本語力で勝負を挑まざるを得ない学生が多いです。Lさんは先日のJLPTでN1に受かったら第1志望の大学院に出願すると言っていました。Kさんはすでに受験していますが、面接練習でかなり厳しい指導を受けました。これからもまだ受験が続きますから、胃が痛くなってもおかしくはありません。

Mさんは最近休みが増えました。大学院への出願書類を作成するので手いっぱいだと聞いています。Mさんもきわどいところで合否が決まりそうですから、気が気ではないのでしょう。でも、Mさんの場合は休み癖がついてしまったような気がします。出席率の落ち込みが激しいと、ビザの問題が出てきます。

Mさんの“指定席”は、ごく普通に埋まっていました。早く教室に戻らないと、取り戻せませんよ。

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また?

10月22日(金)

朝からさっぱり気温が上がらず、日中は10度か11度あたりをうろちょろしていました。12月並みの寒さだそうです。教室は、学生が暖房を入れていました。感染予防のため窓を開けていますから、教室内の気温も10度台前半だったかもしれません。

寒さのせいなのか、私のクラスは欠席が目立ちました。あまり体が丈夫ではないと引き継がれている学生が休んでいます。「解熱剤を飲めば熱は下げられます」と言って学校へ来ようとした学生もいましたが、そこまで無理をするなと止めました。受験を控えていますから、気になる兆候です。

Yさんは出席率が危険水域なのに、休んでしまいました。もう休み癖が付いていますから、教師が騒いだところで効き目がありません。でも、放置しておくわけにもいきません。担任教師がお手上げならば、私が動く番です。それでも行状が改善されなかったら、自分自身で責任を取ってもらうほかありません。

Yさんが成績優秀なら、まだどうにかなる可能性もありますが、残念ながら、その目は薄いようです。そういうことがわかっているのかなあ。自分で自分の首を絞めている、自分の手で自分の将来の扉を閉ざそうとしているということに気付いていないのです。

毎年のことですが、Yさんのような学生に、来学期、私たちは手を焼くことになります。今年の1月期もそうでした。Yさんは学校に隠れて受験しているようだという噂を聞きつけています。こんな隠密行動がうまくいったためしがないのに。でも、何にも見えないんですよね。

天気予報によると、週末はいいお天気のようです。秋晴れの程よい日差しを浴びて、みんな元気になってくれるかな。

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理系の時事問題

9月6日(月)

KCPの先生方もだいぶワクチン接種が進みました。でも、大半の先生が何らかの副反応に見舞われています。出勤しても早退したり、週末に寝込んだり、あるいは先月の夏休みを半分ぐらい棒に振ったりなど、大変な思いをしているようです。

副反応が出るということは、免疫機能がしっかり働いているということです。若い人ほど副反応が強く出るというのも、体にとって異物であるワクチンに対して生体防御反応が活発に行われたということで、若さの証明なのです。2回目の接種後に強い副反応が出るというのは、免疫の二次応答と呼ばれるものです。全然出ないとなると、むしろ免疫細胞がきちんと働いているのかと心配すべきかもしれません。

現在接種されているワクチンは、mRNAワクチンという種類で、ウィルスの表面に存在する特徴的な物質をつくるmRNAを体内に送り込むというものです。ワクチン中のmRNAは体内で細胞の中に入り込み、細胞内でそのウィルスの表面に存在する物質をつくります。しかし、それは私たちの体に最初からあったものではありませんから、免疫細胞は異物と判定し、排除にかかります。このとき、こういう異物を退治したという記憶が残ります。この記憶のおかげで、次に同じ異物が侵入してきたら直ちにそれを攻撃できるのです。

この副反応の出方とか、mRNAワクチンの作用機序とかは、生物の教科書に書かれている免疫の働きの応用です。ですから、今シーズンの入試の口頭試問なんかに出るんじゃないかと思っています。昨シーズンはPCRのしくみが聞かれたとかという噂も耳にしています。

時事問題は、小論文や社会科学系の学部学科に限りません。

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不安な日々

8月27日(金)

夏休み明けの月曜日から、Vさんが受験講座を休んでいます。日本語の授業も出席したのは1日だけです。ワクチンの副反応がひどいようです。オンライン授業にも参加できない状態が1週間も続いているとなると、体力の衰えが心配です。もうすぐ9月だというのに、この前までの天候不順を挽回しなければと思っているかのごとき暑さです。平熱に戻った程度で耐えられるでしょうか。

Vさんは6月のEJUの結果が思わしくありませんでしたから、この時期にガンガン鍛えたいところです。夏休み前までは、本人もそのつもりでいたようです。しかし、こうなってしまっては、無理は禁物です。去年の秋、ほんの一瞬、鎖国が解かれたすきに入国したはいいですが、思わぬ落とし穴にはまってしまいました。でも、ワクチンを接種しなかったら、それもそれで心配が募るでしょう。

Hさんは、まだ入国できず、自国からオンライン授業に参加しています。受験講座の時間が終わって、私がサヨナラと言いながら画面に向かって手を振ったら、「先生、質問があります」と呼び止めました。授業内容についての質問かと思ったら、「先生、私はいつ日本に入れますか」と聞いてきました。

正直に言って、一番してほしくない質問ですね。わからないというのが事実であり、本音でもあります。でも、それではHさんの気持ちは晴れないでしょう。ですから、今年も同じようになるか全くわからないけれども、去年はこうだったという話をしました。希望を持たせすぎるわけにはいきませんが、希望の灯を消してしまってもいけません。

多くの学生が、それぞれの不安を抱えたまま、受験シーズンに踏み出そうとしています。

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声が出ない

8月11日(水)

朝、出席を取ると、JさんはZOOMに顔を出すや否や、チャットで「扁桃腺炎で声が出ません」と訴えてきました。自室内で授業を受けていることは明らかだったので、「はい」という声の返事はなくても出席としました。声が出ないと言っているのですから指名するわけにもいかず、かと言って野放しにもできませんから、いつもよりJさんの画面を頻繁にのぞき込むことで、ずっと出席していることの確認を取りました。

Jさんは最後まで画面から消え去ることなく、課題もきちんとこなしましたから、授業態度に関しては問題ありませんでした。しかし、担任のO先生に届いたメールによると、ゆうべエアコンをつけっぱなしで寝たため、のどを傷めたとのことでした。確かに、昨日は今年最高の暑さでした。その熱気が残り、当然のごとく熱帯夜でした。だからエアコンをつけて寝たというのは理解できますが、こういう時期にのどを傷めてはいけませんよ。今、世界を震撼させているのは呼吸器系の伝染病なのですから。

毎年、この時期になるとエアコンが原因で風邪をひく学生が目立ちます。しかし、今は「ああ、またか」で済ませられる状況ではありません。医者にかかるのも一苦労だし、余計な病気で体力を消耗したところに真打が襲い掛かってくることだって十分考えられます。そういうことも考えて健康管理をしてもらいたいなあ。

でも、Jさんはオンラインだから授業に参加できたのです。対面授業だったら、きっと欠席したことでしょう。熱はなかったそうですが、声も満足に出せないような体調で、外には出たくないでしょう。こういう学生も救える点が、オンラインの真骨頂だとも言えます。

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早退

7月21日(水)

前半の授業が終わって、いったん職員室に引き上げようとしていると、「先生、早退してもいいですか」とBさんが聞いてきました。中級ぐらいの学生は、許可を求める場面で「~させていただけませんか」を使いたがります。そして、たいてい失敗するものです。しかし、Bさんは「~てもいいですか」という、初級の表現を使いました。よっぽど余裕がないのだろうと思いました。

いずれにしても、早退したいとは穏やかではありませんから、「どうしたの?」と尋ねました。「実は、昨日、予防注射に行って、たぶんそのせいで、頭が痛いんです。気分も悪くて…」とBさん。どうやら、少々強い副反応が出たようです。確かに、前半の授業中、机に伏せっている場面もありました。他のクラスで副反応により体調を崩した学生がいるという話は聞いたことがありましたが、自分のクラスの学生がそうなったのは初めてでした。明日からの連休の宿題を渡し、「お大事に」と言って帰しました。

この予防接種、若い人ほど副反応が出やすいと言われていますが、本当にそのようですね。身近なところで副反応により体調を崩す人を見ているからでしょうか、予防接種に対して漠然とした不安を感じている学生もいるようです。感染者数がかなりの勢いで増えているのもこわいし、感染を防ぐはずの注射でひどい目に遭わされるのも絶対避けたいし、学生たちは余計なところで気を使わされています。私みたいな年寄りは、予防接種もさらっと終わってしまうんですがね。

それでも、少しずつ、接種を済ませた学生が増えています。明るい兆しが感じられる日が近いことを信じたいです。

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塩素のにおい

7月7日(火)

あさってから新学期なので、午後から教室の消毒をしました。教職員が全教室を手分けして、いすや机をはじめ、学生・教師が触れそうなところを、消毒液でよく拭きました。毎日の授業後も消毒液を吹きかけていましたから、どうしようもなく汚れているということはなかったでしょう。しかし、最近、じわじわと感染者数が増えて来ていますから、念を入れておくに越したことはありません。

床とか窓とか、しゃがみこんだり伸び上がったりしないと手が届かない場所まで手掛けたわけではないのですが、うっすら汗をかくほどの仕事量でした。今学期は始業日までに新入生が大挙してやってくることはありませんから、学期前の準備も比較的楽でした。ですから、ちょっと額に汗するくらいで、新学期を迎えるにふさわしい雰囲気になります。お正月を迎えるにあたって大掃除をするようなものでしょうか。

九州の大雨に見舞われた地域に比べれば、教室の消毒なんてゴミみたいなものです。家の中を濁流が通り抜けたんですよ。倒木やら車やら、果ては隣の家まで流れ込んできたんですよ。畳も家具も衣類も家電製品も台所用品も仕事道具もみんな泥水に浸かっちゃったんですよ。消毒液でちょちょいと拭けば終わりじゃありません。

大きな被害を受けた熊本県人吉市へは、5年ほど前の夏休みに行きました。鎌倉時代から続く相良氏の城下町で、街の人たちはその歴史に誇りを持っています。また、熊本県唯一の国宝・青井阿蘇神社は風格を感じさせる拝殿を持っていますが、球磨川のほとりと言ってもいいところにありますから、被害が心配です。

消毒後の教室には、かすかに塩素のにおいが残っていました。人吉のみなさんは塩素まみれになるくらいに消毒をするところから立ち上がるんだろうなと思いました。七夕の夜も、人吉には雨が降っているようです。

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声の本能

6月12日(金)

今朝、玄関のドアの鍵を開けて職員室に戻ろうとしたら、N先生がそのドアを開けて入って来られました。N先生のクラスは、先週の金曜日はオンライン授業でしたが、今週は教室での授業ですから、おいでくださったというわけです。N先生が出勤なさったのは、2月末以来、3か月半ぶりです。だからでしょうか、どことなく懐かし気にロビーを見渡していらっしゃいました。

気になったのは、声の張りでした。今までほどの響きがないように感じました。「うちにこもっていると、大きな声を出す機会がないから…」とのことでした。確かにそうですね。ご自宅でしたら、話す相手はせいぜい数人のご家族だけでしょう。教室では20人を向こうに回しますから、自ずと発声法が違ってきます。

オンライン授業だって、パソコンのマイクに声を拾わせればいいのですから、そんなに大きな声を出す必要はありません。理屈の上ではそうなのですが、やっているうちにいつの間にか大声を張り上げています。そして、授業が終わると、どっと疲れが出てくるのです。これは私だけではなく、KCPの先生はみんなそうです。オンライン授業の最中に廊下を歩くと、あちこちの教室から先生の声が響いてきます。教師とは、授業となると本能的に声が大きくなる生き物なのでしょう。N先生も、きっと、教室ではかつての美声で授業をなさったことでしょう。

今学期の授業は、来週で終わりです。東京はステップ3に入りましたから、このままいけば来学期は教室での授業が増えるのではと期待しています。その際には、今学期授業をお願いしなかった先生方にご登場いただくこともあるでしょう。先生方、のどのご準備はいかがですか。

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アンダーコントロール

3月25日(水)

オリンピックがとうとう延期になってしまいました。妥当な措置だと思います。まさしく諸々の事情が複雑に絡み合っているため具体的にいつに延期するのかは決められないそうですが、だからこそ、関係者の苦衷は想像に余りあるものがあります。

2020年のオリンピックは、安倍さんが原発事故に起因する諸問題はアンダーコントロールだと大見得を切ってもぎ取ってきたところがあります。最初は批判も多かったですが、次第に国全体がオリンピックに向けて盛り上がってきました。ところが、オリンピックイヤーに入ってから新型肺炎が猖獗を極め、世界全体がアンダーコントロールじゃなくなって、昨晩の決定に至りました。こんなことを言ったら不謹慎かもしれませんが、安倍さん、アンダーコントロールの亡霊にたたられてるんじゃないかなあ。

卒業証書を受け取りに来た卒業生に話を聞くと、専門学校も大学も、ほぼ入学式は中止で、授業が始まる期日さえも未定のところがあります。証書を受け取った後笑顔で写真に収まってくれますが、心の中に言い知れぬ不安を抱えていることは想像に難くありません。日本に居続けるのも不安でしょうが、国へ帰ろうにも帰れないというのもまた事実です。帰国しても2週間は隔離ですから、心配しながらも自由に歩ける日本のほうが多少はましだといったところでしょう。

欧米諸国に比べると、日本は“瀬戸際”が予想よりも長引いていますが、かろうじてアンダーコントロールを保っています。でも、自粛ムードが世を覆い、不安や心配など暗い影に包まれた日々を送っていると、ストレスがたまってしまいます。ストレスがたまると抵抗力が落ち、新型肺炎じゃなくても体調を崩しやすくなります。それじゃあ何のために活動を控えているかわからなくなってしまいます。

安倍さん、今年は人の少ない新宿御苑で1人で花見をして、コロナウィルスが1個もない空気をたっぷり吸って、花の美しさで心の洗濯をして、この難局に立ち向かってください。

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お久しぶりです

7月2日(火)

先週の月曜日を最後に、この稿をずっとサボっておりました。実は、久しぶりに38度を大きく超える熱を出してしまい寝込んでいたのです。ずっと寝たきりだったわけではなく、春の健康診断の再検査を受けたり、眼科の定期検査に通ったり、アメリカの大学から来ている学生たちに授業をしたりもしていました。

検診の再検査や眼科の定期検査を受けた時も少し調子がおかしかったのですが、そこは大病院のため、風邪などでは診てくれません。ですから、内科の看板を目にしながら、指をくわえて見送るほかありませんでした。

家の近くにクリニックがあることは知っていましたが、私には縁がなかったので何科なのかは知りませんでした。駅から歩いてそのクリニックの前まで来ると、整形外科と書いてあるではありませんか。家の向こうに少し大きな病院があるのですが、そこまで行く元気もなく、反対側の駅前にもクリニックはありましたが、そこまで行って内科じゃなかったり、内科でも休診だったりしたら立ち直れないと思い、そのまま家へ帰りました。熱を測ったら38.7度で、そのまま寝ました。

私たち教師は、高い熱が出たら病院へ行けと指導していますが、熱が高かったら外へ出る気力も湧きません。でも、病院へ行って対症療法の薬をもらって飲んだら、体が非常に楽になりました。風邪はウィルス感染が原因ですから、風邪そのものを治す薬はありません。ウィルスを殺す薬はまだ世界に存在しませんから。で、風邪の時に病院でもらう薬は風邪の諸症状を和らげるものでしかありません。風邪を引いても龍角散だけで直してきた私は、そういう薬を馬鹿にしてきましたが、今回、改めて見直しました。

どうして風邪を引いたかわかりませんが、要するに体力の衰えでしょうね。去年までと同じように体を動かしてきても、疲れの蓄積が違っていて、風邪のウィルスに増殖する隙を与えてしまったのでしょう。O先生に鬼の霍乱なんて言われましたが、またかなどと言われぬように健康に気を付けて今学期を乗り越えるつもりです。