Category Archives: 健康

新しい道

5月22日(月)

Qさんは、あることを除いて、クラスでは目立たない学生です。その“あること”とは、遅刻です。今朝も、出席を取り、漢字テストの問題用紙を配り終わってふと振り返ると、教室のドアに一番近い席にQさんがいるではありませんか。すぐに問題用紙を渡し、ロスタイム1分ぐらいでテストを受けさせました。

そのQさんとの面接が、授業後にありました。遅刻が多い理由を聞いてみると、後遺症でした。去年8月に感染したQさんは、規定の日数で熱も下がり、PCR検査が陰性にもなり、登校を再開しました。しかし、どうも体調がしっくりきませんでした。Qさんの話をまとめると、寝ようとしても寝付けない日が続いているようです。ゲームなどをしながら夜更かしをしたため朝起きられないという、遅刻者のお決まりのパターンとは違うようです。

また、集中力も落ちて、勉強も長時間続けられません。20分頭を使ったら10分休むという感じでしか勉強できません。勉強の効率が著しく落ちています。予習の宿題だって、ほとんどしてきません。そのため、成績もパッとしません。だから、授業中も目立たない学生に甘んじているのです。大学院進学を考えていましたが、こんな体調では研究計画書の執筆など、受検準備すらできないだろうということで、あきらめました。

目標を専門学校進学としたQさんは、積極的にオープンキャンパスに参加しています。めぼしいところの資料も取り寄せて、着実に準備を進めています。進学の話から逃げているとしか思えない学生が大勢いる中、立派な心掛けです。「今から準備を始めれば、秋ぐらいには合格しているよ」と励ましてあげたら、少し笑顔を見せてくれました。

後遺症に悩まされ、進路変更も余儀なくされた実例を見せつけられて愕然とした反面、それにもめげずに自分で自分の道を切り開こうとしているQさんのけなげな姿に、心を動かされました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

病人集団

2月28日(火)

学校を休んでWさんに電話をかけて理由を聞きました。「足が痛くて歩くのが大変でしたから病院へ行ったら、尿酸値が高いと言われました」「えっ、それって痛風ってこと?」「は、何ですか?」となってしまいましたが、足が痛くて尿酸値が高いとなれば、痛風に決まっています。

Wさんに限らず、私の周りの学生には、高血圧とか腰痛とか肥満とか貧血とか、生活習慣病が疑われる人が多くて困ります。そう言われていなくても、不健康そうな顔つきをしている学生をよく見かけます。昔は“アルバイトのし過ぎは万病の元”でした。しかし、今はアルバイトをする学生が珍しくなりました。ですから、それ以外の生活習慣に何らかの原因があるはずです。

まず、食生活が怪しいです。休み時間にコンビニまで猛ダッシュしておやつを仕入れて、授業が始まりまでに大急ぎでぱくつく学生が少なくありません。朝食抜きは昔から多かったですが、昼食夕食もいい加減な学生が増えている気がします。お菓子で3食済ませてしまうという話もよく耳にします。私も食生活は自慢できたものではありませんが、野菜と果物とヨーグルトとという具合に、どうにかバランスを保とうとしています。学生にはそういう意識が薄いように思えてなりません。

それから、ストレスです。我々教師もストレスを与える側に回ることが多いですが、教師以外が源となっているストレスが多くなっている気がします。家族の期待、自分が自分にかけるプレッシャー、住環境でのいざこざ、日本の生活になじみきれない、進学に対する焦りなど、数え上げたらきりがありません。

運動不足もあるでしょう。エレベーターに列をなす学生を何とかしたいです。先日の御苑でも、なかなか行きたがらなかった学生が何名かいました。Pさんもその1人でしたが、行ったら大はしゃぎしていました。体を動かすのを億劫がって、本当に動かさないままになっている例が多いのではないでしょうか。まあ、痛風になってしまったら、動かすどころの騒ぎじゃありませんが。

あさっては、葛西臨海公園まで行きます。学生には、せいぜいたくさん歩いてもらいましょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

また休みました

2月1日(水)

Yさんがまた休みました。授業後電話をかけましたが、出ませんでした。おとといの私の授業も休みましたが、その時は電話には出ました。精神的に参っているようでした。

Yさんは有名大学に進学すると言って、去年の4月に入学しました。最初のつまずきは数学でした。文系志望ですが国立を狙うということで数学も勉強し始めましたが、だんだん手が回らなくなり、夏までに撤退しました。数学よりも総合科目に注力し、私立のいいところに入るという手は、多くの先輩がやってきました。

夏を過ぎたあたりから、授業中の内職が激しくなりました。机の上に堂々と総合科目の参考書を出し、教師と衝突することも目立ってきました。焦りが募ってきたのでしょう。でも、このあたりからYさんの日本語力は、読解力に偏りだしました。話す力がある点が、Yさんが同じレベルの学生より勝っている点でしたが、それがだんだんそうでもなくなってきました。内職のおかげ(?)で読む力は伸びているようでしたが、授業中に教師の話を聞かず、教師からも相手にされなくなってきましたから、話す力は伸び悩んでしまったのです。

受験した大学に落ち、精神的に追い詰められていきました。そうすると内にこもってしまって、負のスパイラルに陥ってしまったようです。教師とつながっていたいような、放っておいてもらいたいような、微妙な心境なのだと思います。もはや有名校もへったくれもなく、入れるところに入るという考えになっています。どこか1校でも合格すれば気分が大きく変わるのでしょうが、それができないからこそつらいのですよね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

早朝の電話

12月13日(火)

朝8時ごろ、Mさんから電話がかかってきました。「先生、かかっちゃったみたいです」と、苦しそうな息遣いで感染宣言。詳しく話を聞くと、熱があるようです。まず、検査をしてもらうよう指示を出しました。Mさんは先週末S大学に合格しました。そのS大学の入学手続きに必要な日本語学校の書類はどう申請すればいいかと、聞かれました。これからしばらく学校へ来られないとなると、そういった心配もしなければなりません。来週が手続き締め切りだそうですから、落ち着かないでしょう。こちらは、KCPのホームページ経由で申し込めますから、そう指示しました。熱があっても、パソコンの操作ぐらいはできるでしょう。

そういえば、昨日、校舎内でMさんにばったり出会ったので、「おめでとう」「ありがとうございます」なんてやり取りをしました。1mぐらいは離れていたし、お互いマスクもしていましたから、たとえMさんが陽性でも、濃厚接触者にはなりません。

あの尾身さんですらなっちゃうんですから、Mさんのような一般庶民がかかっちゃうのもしかたのないことです。でも、Mさんは今学期初めまでは入学以来の出席率が100%でした。10月に交通事故にあい皆勤が途切れ、そして今回です。お祓いでもしてもらったほうがいいかもしれません。

Mさんと同じ学期に入学したYさんが今月初めに帰国しました。Yさんは来日早々体調を崩し、とうとう復活できませんでした。初級のオンライン授業で受け持った時は、Mさんよりもよくできました。そんな学生が帰国しなければならなくなったと思うと、残念でなりませんでした。親元を離れての一人暮らしには、トラブルがつきものです。小さなつまずきが大きく膨らんでしまいがちです。Yさんのことを思うと、Mさんも気がかりです。せっかくつかんだ合格を無駄にしないように、きちんと治してもらいたいものです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

体が資本

9月13日(火)

Pさんがまた受験講座を欠席しました。Pさんは先学期から理科系の受験講座を取っています。先学期はEJU直前講座が中心だったので難しかったようですが、11月のEJUに向けて再スタートを切った今学期は、基礎の部分から始めたこともあって、どうにかついてきていました。しかし、夏休み明けぐらいから欠席が続いています。

先週の金曜日の授業後、Pさんが受付へ来て、私を呼びました。話を聞くと、最近体調が悪くて、午前中の日本語の授業に出るのがやっとなのだそうです。受験講座がある午後は、家で体を休めているとのことでした。Pさんの場合、受験講座への出席は、在籍管理上の義務ではありません。出欠状況が入管報告事項となっている日本語の授業を優先するのは、理にかなっています。

とはいえ、体力的に日本語の勉強でいっぱいいっぱいというのであれば、ちょうどあと2か月後に迫ったEJUが心配です。Pさんは、金曜日に私に事情説明した話し方からしても、日本語の力はある程度以上備わっています。EJUでもそこそこ以上の点が期待できますし、面接試験で落とされることもないでしょう。むしろ、コミュニケーション力を高く評価されると思います。しかし、理科系の科目は、先学期からあまり進歩がないとすると、心細い限りです。妥協して来年4月に進学するか、もう1年勉強して初志貫徹するか、厳しい選択を迫られそうです。

感染して入院という事態にこそ陥っていませんが、体力的にはそれよりもひどい状況かもしれません。欠席する時には義理堅く連絡してくれるPさんに、何とか救いの手を差し伸べたいのですが…。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

新しい食生活

6月15日(水)

学期末が近づくと、アメリカの大学のプログラムで来ている学生への発話力テストがあります。それぞれの学生のレベルに合わせて質問に答えさせたりまとまった話をさせたりしながら、文法や語彙の定着具合や発音などをチェックします。テストと言いつつも、雑談の中からそういった力を測っていきます。

Jさんは自炊をしています。日本料理が作れるというので何が作れるか聞いたら、カツ丼という答えが返ってきました。カツ丼が日本料理かなあと思いながらも、ハンバーグやスパゲティを食べてきた人から見たら、ご飯粒の上にしょうゆ味のたれがかかった料理は、十二分に日本料理何だろうと納得することにしました。

Rさんは全く料理をしません。毎日、コンビニ弁当でお腹を満たしています。国にいた時は、仕事をしながらお菓子を食べるのが食事代わりでした。不健康なにおいがプンプンしますが、目の前のRさんは顔色もよく、私の質問に積極的に答え、弱々しい感じはしませんでした。

さて、この2人、食生活が正反対でした。Jさんは朝ごはんと昼ごはんをしっかりとり、晩ごはんは食べないことが多いと言っていました。宿題をしたら、そのまま寝てしまうそうです。一方、Rさんは、朝はコーヒーだけで、昼は抜き、晩ごはんをたっぷり食べます。その晩ごはんが、コンビニ弁当なのです。夜食も少々とのことでした。

2人とも、お金がないわけではありません。Rさんなんか、ゴールデンウィークにしまなみ海道でサイクリングをしたくらいですから。最近の若者は、1日3食じゃなくても平気なのでしょうか。食事は集約して、自分のしたいことに時間を振り向けようとしているのかもしれません。すると、料理をしないRさんなんか、口が寂しくなったらサプリなんて方に進むんでしょうかねえ。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

健康の源

6月7日(火)

午後3時ごろでしょうか、Xさんの姿を見かけました。「体調、良くなった?」「はい、どうにか」。実は、昨日の朝、Xさんから学校に電話が掛かってきました。

「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「おはようございます。もしかすると、金原先生ですか」「はい、そうですが、あなたはだれですか」「Xです。すみませんが、M先生はいらっしゃいますか」「はい、少々お待ちください」「はい。M先生を呼んでくださってありがとうございます」

その後のM先生とXさんのやり取りを聞いていると、どうやらXさんは体調がイマイチですが学校に出てこようとしているようでした。M先生に説得され、結局休むことに。きっと、進学フェアで志望校の話を聞きたかったのでしょうね。でも、こういう時期ですから、少しでも体調が悪かったら休んでもらっています。

「はい、どうにか」と答えたXさんの顔色はよく、声もしっかりしていました。100%ではないにせよ、体調も回復したのでしょう。それに比べて、昨日の進学フェアの会場にいたHさんはなんだかむくんでいました。前から大きかった体がさらに一回り膨らんだ感じがしました。ジャージがはちきれそうでした。聞くところによると、Hさんは何かというとすぐ休んでいるとか。骨と皮になっているよりはましかもしれませんが、見たところ締まりがなく、不健康な感じがしましたねえ。あの体をスーツに包んだとしても、面接官に与える印象は芳しくないでしょう。

Xさんは校舎の掃除のアルバイトをしています。夕方、ぱきぱき働いてゴミ捨てなどをしてくれました。体を動かすことをいとわないところが、Xさんの長所であり、少しの病気ぐらい跳ね返してしまう原動力になっているのです。Hさんにも見習ってほしいですね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

まだ復活せず

3月24日(木)

Kさんは理科系の受験講座を受けています。数学は、私の説明に対して質問したり、私の計算間違いを指摘したりできるくらいまで力が伸びてきました。時々ひっかけ問題にはまってしまいますが、ヒントを与えると自分ではい出してきます。6月のEJUも、ある程度は計算できそうです。

問題は、理科です。数学は数式を追っていけばかなりの所まで理解できますが、物理や化学はそういうわけにはいきません。私の授業はすべて日本語ですから、物理の法則や化合物の性質など、私の日本語がわからなかったらどうしようもありません。練習問題をさせてみると、私の話がちゃんと届いているか不安な状況です。

クラスの先生に聞いてみると、Kさんの日本語力は、順調に伸びているとは言い難いようです。先学期は進級できず、今学期も同じレベルをやっていますが、今学期も進級が危ういとのことです。この調子だと、EJUの日本語も期待薄なのが現状です。

Kさんは昨年夏、ワクチンを打った後に体調を崩し、学校もずいぶん休みました。それから半年以上たちましたが、まだ完全に健康を取り戻してはいないようです。これが日本語の習得に悪影響を及ぼしているのです。

いちばんもどかしい思いをしているのは、Kさん自身でしょう。あれだけ数学ができるのですから、理科系のセンスはあります。EJUが国の言葉で出題されれば、平均点は軽く超える成績が挙げられるでしょう。しかし、現在のKさんは…。こういう時期でなければ、健康な状態で勉強でき、今ごろ6月に向けて自信を持って歩んでいけたに違いありません。

来学期の受験講座は対面で行う予定です。どうにかKさんの力になりたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

なんとなく不調

2月28日(月)

昨日、3回目のワクチンを打ってもらいました。1回目と2回目は去年の夏の暑い盛りでしたから、半袖シャツで行って袖をひょいとまくり上げるだけで準備完了でした。しかし、昨日は、2月としては暖かかったとはいえ、長袖のシャツでしたから、肩を出すのも一苦労でした。接種は、去年の夏同様、あっという間に終わり、15分の安静時間を読書で過ごし、特に何ともなかったので、そのまま帰ってきました。それでも一応副反応を気にかけて、ゆうべは早々に床に就きました。

今朝も別段何ともなく、いつもと同じように出勤しました。仕事に取り掛かりましたが、どうも手先が冷えていけません。お湯を入れたカップを手で包みながらキーボードを打ちました。お昼ごろから、何となく体がぞくぞくし始めました。悪寒というほどではありませんでしたが、何となく落ち着きません。ネットで調べてみると、接種30時間後ぐらいが副反応のピークだそうです。まさにピークに向かっているところです。

ワクチンを打ってもらった箇所は、痛くはありませんが、かゆいです。腕が上がらないとか動かしにくいとかはありませんが、かゆみのせいで意識がそれてしまいます。夏だったら間違いなくポリポリかいていることでしょう。それに、熱っぽいまではいきませんが、背中が痛いです。

どうやら、頭脳労働は明日にしろということのようです。確かに、養成講座の資料を作り直していますが、うまい例文が浮かんできません。演習問題のアイデアも枯渇状態です。これをアップしたら、潔く帰ることにしましょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

久しぶりの大口

2月21日(月)

朝、食事をとっていたら、前歯に違和感が。そして、舌に硬いものが当たりました。慌てて吐き出すと、なんと、差し歯がころりと出てきたではありませんか。鏡を見てみると、下の前歯が1本抜けています。何ともマヌケな顔になってしまいました。でも、食べ物がかめないわけではありませんから、食事はそのまま続けました。

幸いにも、令和4年2月21日現在、マスクが必須アイテムですから、しゃべっても笑ってもマヌケ顔をさらす心配はありません。しかし、放っておくわけにもいかず、学校の近くの歯医者で応急処置をしてもらうことにしました。抜けた差し歯はしっかり確保してありますから、それを持って行けば、多少は治療期間も短くなるでしょう。

その差し歯を入れたのは、私がKCPにお世話になる前からかかっていた歯医者です。しかし、そこは遠いので、ネットで探してみると、学校の近くにはけっこうたくさんは医者がありました。評判のよさそうなところを選んで予約しました。

予約の時間に行くと、問診票の記入が最初の仕事なのはどこの医者でも同じですが、この歯医者は麻酔についての質問がありました。ここの先生は麻酔の専門医らしく、普通の歯医者が治療で使う局部麻酔よりも本格的な麻酔を使う治療も選べるようでした。そういう治療もいいかなと思って、○を付けておきました。

患者が結構多く、待合室の椅子が全部ふさがるくらいいました。しかし、診察台も3台で、3人の先生が診ていますから、回転も速いです。程なく私の順番が来ました。以前は3か月おきに歯科定期検診を受けていたのですが、おととしから、人が多いところで大口を開けて仰向けに寝っ転がるのはあまりにも不用心だと思い、中断しています。久しぶりにその体勢を取るのは少し勇気が要りましたが、治療が始まってしまえばどうということはありませんでした。

20分ほどの治療で歯は元通りに戻り、治療費は1000円余りでした。数か月、数万円を覚悟していましたから、あっけないほどの時間と費用でした。しばらく、これで様子を見ます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ