Category Archives: 社会

病人の運動

7月16日(火)

急にのどが痛くなったのは、先週の火曜日の授業直後でした。あまりに急だったので、咳払いを何回かすれば思ったのですが、1回やっても2回やっても10回やっても一向に良くなりませんでした。ならばロ龍角散攻勢を仕掛けましたが、敵方の牙城を崩すには至りませんでした。

3連休は、全くの安静というわけにはいきませんでしたが、比較的穏やかに過ごしました。熱いお風呂に入って体を温めて免疫細胞の活性を高め、それよりも至適温度が若干低めの病原菌類の活性を落とし、この差でもって健康を取り戻そうともしましたが、望み通りの結果とはなりませんでした。

午前中の授業を終え、昼休みの進学授業もこなし、午後の化学が終わり、授業の引継ぎも済んだのは5時過ぎ。急いで四谷三丁目にある耳鼻咽喉科へ向かいました。地下鉄1駅分ありますから、さすがに学校から10分では着きませんでしたが、15分後には待合室で問診票を書いていました。

最新の医療機器は進歩しており、医者がカメラを向けると私ののどがモニターに大写しになるのです。自分ののどを初めて見ました。医者に言われずとも明らかに不健康そうな口蓋垂や咽頭の上部が見えました。驚くほかありませんでした。会計を済ませ、処方箋をもらい、うまくすると6時までに学校に戻れるかなというタイミングでした。

ところが。御苑前の出口のところに最近できた薬局には処方箋受付がなく、学校の近くの薬局は、処方箋に載っている4種類の薬のうち1種類の在庫がないので、他の3種類の薬も出せないと言います。処方箋は1枚につき1回(=1店舗)限り有効なので、1種類でも揃えられなかったら、すべての薬がもらえないのです。

これは一般常識なのかもしれませんが、病院から出る薬を飲むなどめったにない私にとっては、初めての出来事で、ただただ驚きました。次に行ったのが全国チェーンの薬局ですが、学校から一番近いところにあった店舗がいつの間にか倉庫になっていました。その次に近い店舗も同じくするがありませんでした。ただし、こちらは、そこから歩いて行けそうな店舗に電話をかけて在庫を確認してくれました。「店の前の道を右に進んで、ファミマの角を、道を渡らずに右に曲がってまっすぐ進んでください」と、店の場所を説明してくれました。

近くにファミマがあったかなあ…と思いながら歩いて行くと、新宿通りの交差点まで行ってようやくファミマがありました。これなら「新宿通りの交差点を…」と言ってもらった方がわかりやすかったです。

そこで4種類の薬を出してもらいましたが、お会計は670円。雨のせいもあり、日没前でしょうが外は夜の雰囲気にたっぷり漬かっていました。御苑の駅から半径500mぐらいを、小1時間歩き回らされたことになります。歩く元気も出ないほど病気が重かったら、薬をもらうのをあきらめたでしょう。

今、日本中で薬が足りないと報じられています。それを強く実感させられました。同時に、この処方箋の制度は、手直しが必要なのではないかとも思いました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

小池さんの目

7月10日(水)

初級から超級まで、学校全体のカリキュラムを見直そうと考えています。そうすると、例えば縦軸にレベルを配置し、横軸に読解とか作文とか会話とかといった科目を取った一覧表を作りたくなります。そこに各レベルの到達目標なども盛り込んで、作ってみました。

作るのはエクセル上ですから、必要事項を次から次へと書き込んでいくのも、わりと楽です。行も列も簡単に増やせますから、気がつくと、モニター画面の数倍もありそうな巨大な表が出来上がってしまいました。

ところが、全体像を把握しようとすると、かなり縮小しないと画面に入りません。印刷したら、字が小さすぎて、老眼の私には全く読めませんでした。これでは、全体を俯瞰するなど到底無理です。ある科目の初級から超級までとか、最上級レベルの授業内容とか、表の一部を限定すれば見られますが、科目間、レベル間の有機的なつながりを確認したいとなると、せっかくのエクセルですが、力不足です。

都知事選は、結局(予想通り?)、小池さんが当選しました。某大学の研究によると、小池都政は100点満点で34点だそうですが、都民は未知数よりも34点を選びました。小池さんには、他の候補者よりも、都政全体が見えていると都民が感じたからこそ、300万票に近い票が集まったのだと思います。KCPのカリキュラムを都政と同列に扱うなど、烏滸がましいにも程があると言われそうですが、このところそんなことを考えています。

こういう一覧表は、AIにお願いすると、気の利いたのを作ってくれるのでしょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

渋沢栄一登場

7月3日(水)

新しいお札が発行された…そうです。もちろん、私は目にしていません。そういうふうに報道されているので、そうなんだなあと思っているに過ぎません。

私が新しいお札を目にする、手にするのはいつのことになるのでしょうか。考えてみると、この1週間は現金を使っていない気がします。電車はPASMO、買い物はnanacoなどの電子マネーかクレジットカードか“~pay”の類で支払いを済ませています。

先ほど財布の中を見たら、1万円札が6枚入っていました。ずいぶん入っているとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、これは、5月に通勤定期を買い替えた後で、現金で定期代を受け取ったからです。その定期代はカードで支払っており、学校からもらったのと同額がすでに口座から引き落とされています。赤ちょうちんにでも入れば現金払いなのでしょう。でも、私はお酒を飲みませんから、そういうチャンスもありません。現金は、nanacoなどにチャージする時や、チケット屋さんで安売りの図書カードを買う時ぐらいしか使っていないんじゃないでしょうか。、

こんな調子ですから、銀行でお金をおろすこともあまりなく、だから、新しいお札にお目にかかるのは、しばらく先になると思います。でも、早く見てみたいという気にもなりません。お金は欲しいですが、それがお札の形である必要はありません。

40年前、福沢諭吉初登場の時は、現金払い以外ありませんでした。20年前、今までのお札が出た時は、クレジットカードを使っていましたが、財布の中の1万円札が2か月も変わらないなどということはありませんでした。20年後、今度の新札が旧札になる時は、お札を使っているのでしょうか。渋沢栄一のお札が最後のお札になるという話もあるそうです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

農業県

6月26日(水)

「日本一の農業県はどこか」(山口亮子、新潮新書)を読みました。農業の見方が変わりました。

田植えが終わったばかりの水田、夏の強い日差しを浴びて勢い良く成長している稲、たわわに実って頭を垂れている稲穂、稲刈りが終わった後の稲架、私にとってはどれも心を和ませてくれる風景です。棚田はいつまで見ていても見飽きることがありません。しかし、この本によれば、米作こそ日本の農業の活力を低下せしめている元凶なのだそうです。もう少し正確に言うと、米作を支えている補助金が最大の戦犯なのです。

また、カロリーベースの食料自給率が低いことが日本の農業の最大の問題点のように言われていますが、この指標は日本ならではのガラパゴス指標だそうです。カロリーベースのため、野菜はカロリーが低いですから、いくら作ってもこの自給率の上昇にほとんど寄与できません。一方、米などはカロリーが高いので、米を大量に生産すれば数値はあっという間に改善します。しかし、現在、日本人は米を食べなくなりました。ですから、カロリーベースの食料自給率は、日本の農業の姿を正しく反映した指標だとは言えません。

日本の農政は、そんな指標に基づいて進められています。その結果、やる気のある農家の頭を押さえつけてしまう政策も実施されています。それにも負けず、工夫を重ねて農業経営を行っている農家が多い県こそ、日本一の農業県だと、筆者は訴えています。具体的にどこが日本一の農業県かは、この本をお読みになってお確かめください。これ以上はネタバレになりますから、書きません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

低空飛行の果てに

6月25日(火)

今学期の出欠状況を見てみると、まだ6月なのに出席率が崩れてしまった学生がいます。本人はあれこれ理由を並べ立てますが、多くは私を含め第三者が納得できるものではありません。

進学のための塾に通っているから、疲れてKCPには出て来られないと言い訳する学生が少なくありません。塾に100%出席しても、KCPを休んだら出席率は下がります。出席率が下がると、最悪の場合、ビザが出ません。ビザが出なかったら、日本で勉強を続けることはできません。

確かに、音楽大学に進学したいという学生に対し、KCPは音楽の専門的な授業はしていません。美術の指導ができる先生はいらっしゃいますが、音楽の指導ができる先生はいらっしゃいません。私も理科系出身ではありますが、大学院入試の物理や化学や数学は全くできません。EJUの試験科目にしても、週末も含めて毎日ビシバシ鍛えるほうが、学生の目には効果的に映るのでしょう。だから、塾に通うななどとは言いませんが、本末転倒はいけません。

出席率だけではありません。学校に出て来なくなると、日本語力が如実に落ちます。日本語に対する反応が鈍くなるのです。こちらが何か問いかけても、ぽかんとしていたり的外れな応答をしたりして、コミュニケーションが進展しなくなります。となると、留学生入試に付き物の面接試験で落とされてしまいます。書類審査だけの所に合格しても、入学してから苦労することは明らかです。2年生に上がれずに退学を余儀なくされた学生もいます。

進学してから驚くほど会話力をつけた卒業生もいます。しかし、そういう学生はKCPでその素地を身に付けていたのです。机に向かって勉強することしかしなかったら、そうなる可能性は0と言っていいでしょう。

ところが、少子化にともなって日本人の志願者が減ってしまい、海外で直接募集する大学が増えてきました。しかるべき選抜が行われていれば、日本で勉強したい学生のためになります。しかし、そうでもなさそうなケースも見られます。選抜らしい選抜をせずに連れて来た留学生にどんな教育をするのでしょう。日本に留学したばかりに人生を捻じ曲げられた、などと思う人を量産されたら、日本の国益にも悪影響が及びます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

堕落

6月20日(木)

もうすぐ区議選だっけ? 2週間ほど前でしょうか、学校の近くの公園に設置された大きなポスター掲示板を見かけたとき、そう思いました。区議選なら何十名も当選しますから、幅数メートルの掲示板でも不思議ありませんが、このバカでかい掲示板が都知事選のものだと知った時、えーーーっと思ってしまいました。確かに都知事選は昔から立候補者が多かったですが、48名分の掲示板は大きすぎるんじゃないでしょうか。ニュース映像などに出てくる県知事選のポスター掲示板は、普通は4人分ですよ。

東京都知事選が告示されました。56人が立候補しました。掲示板は足りませんでした。NHKから国民を守る党は、24名もの候補を立てました。区議選ならともかく、当選者が1名の知事選に1つの党から複数名立候補すること自体がおかしな話ですが、これは百歩譲って大目に見ることにしましょう。これに加え、この党は、立候補者が得たポスター掲示板にポスターを張る権利を、他者に売って利益を得るそうです。候補者乱立を防止するために設定された供託金を没収されても、十二分な収益が上がると報じられています。こういうことは公職選挙法の想定外で規制はなく、法律違反にはならないそうです。

昨日は政治資金規正法の改正案が可決成立しました。政治にはお金がかかるものです。だから、私は政治家がお金を集めることを全面的に禁止せよとは言いません。しかし、この改正法は、昨今問題になっているお金の汚い集め方について何ら規制していません。ですから、自民党のみなさんは、法律に書かれていないという理由に基づき、今まで通りの汚い集め方を続けるのでしょう。これは、NHKから国民を守る党の、ポスター掲示板ぼろもうけの発想と通底しています。

政権与党がこのざまです。いつから、日本人は、法律に書かれていなければ何でもしていいなんて思うように堕落してしまったのでしょう。これが、日本の停滞をもたらしている最大の原因のような気がしてなりません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

シャープペンシル禁止

6月14日(金)

EJU本番前最後の授業日ですから、EJU受験の際の注意事項を学生たちに伝えました。受験票と一緒に注意事項も送られているはずですが、ろくに読みもせずにほったらかしにしているおそれが多分にありますから、各クラスで注意喚起をしてもらいました。

EJUを実施しているJASSOが公表している注意を読むと、試験会場外と連絡を取っての不正行為に非常に神経をとがらせていることがわかります。シャープペンシルも使ってはいけないというのは、小型の発信機と区別がつかないからでしょう。うっかりシャープペンシルを使って失格にでもされたら、今シーズンを棒に振ってしまうことにもなりかねません。一罰百戒の“一罰”として血祭りにあげられたらたまりません。

昔は、試験での不正行為と言えば、他人の答案用紙をのぞき込んだり、カンニングペーパーを見たりといった古典的手口でした。しかし、昨今は外部の人に答えを教えてもらうなど、大掛かりになりました。通信技術の発展の負の一面と言っていいでしょう。

そんな無理をしてまで進学しても、卒業できなければ意味がないでしょ。留学生の場合、日本語力で背伸びしても、進学先で苦しくなるだけです。分相応の所に進学するのが、その学生にとって一番幸せな結果をもたらします。“いい大学”に入りたかったら、日本語学校でもう1年日本語を鍛えてから挑戦すべきです。

泣いても笑ってもあと2日です。ここまで来たら、勉強するより体調を整えて、ベストコンディションで16日の試験に臨んでもらいたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

アラーム発報

6月3日(月)

午前中T先生の代講をすることになっていたので、朝、1人でその準備をしていると、職員室のあちこちでけたたましい警戒音が鳴り響きました。「地震です、地震です」という声に驚いてスマホを見ると、6:32。「富山湾で地震発生」とスマホは叫び続けます。富山湾から東京までなら1分ぐらいかかるだろうと思うと同時に、震度は最大4ぐらいかなと思いました。いや、緊急地震速報が出るということは、東京でも震度5クラスかもしれません。そうなったら、富山や能登半島は震度7だろうかと、悪い方向に想像が広がりました。

しかし、1分経っても2分経っても揺れは来ませんでした。気象庁の最新の地震のページはちょっと混んでいましたが、ほどなく入れました。見てみると、石川県の最大震度が5強でした。ということは、気象庁が予測したのに比べてだいぶ弱い地震だったようです。だいぶ弱いと言っても、震度7と比べての話ですから、5強だった地域のみなさんは、さぞかし肝をつぶしたり冷やしたりしたことでしょう。

学生たちは大半が夢の中だったようです。代講のクラスでこの話を持ち出しても、反応は薄かったです。今朝は結果的に何もしなくてもよかったですが、地震大国ニッポンは適切に反応しないと命にかかわることだってありえます。今朝の私だって、何はともあれ机の下に身を隠すべきだったでしょう。

これをお読みのみなさんは、どんな行動を取られましたか。何もなさらなかったみなさんは、今回は結果オーライでしたが、次回も同じだという保証はありません。警報が空振りだったら、訓練だと思えばいいのです。本棚の前の席から動かなかった私も、自戒を込めて警報の後にするべきことを洗い直してみます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

医学部に挑戦?

5月30日(木)

Sさんは非常に優秀であり、努力家でもあります。成績がよくてもそれに慢心することなく、“もっと上を”という気持ちを決して忘れません。出席率も100%です。授業中は自分から積極的に手を挙げることは少ないですが、教師に話は一言たりとも聞き漏らすことはなく、ここぞという時にクラスのみんなを感心させる発言をします。

そんなSさんは、医学部を目指しています。いくら優秀だとは言っても、医学部はそうやすやすと入れるところではありません。しかも、多くの大学の医学部は、留学生を進んで入学させようは考えていないように見受けられます。面接をしてみて“これはいける”と思った留学生がいたら合格にするけれども、そうでなかったら留学生の合格者はゼロでもいいといった考えではないかと思います。

確かに、日本人の入学生と同等以上にできないと勉強についていけないでしょう。また、将来医者になった時、患者の訴えを確実に受け止められるコミュニケーション力が必要とされます。そうなると、並の日本語力では合格できないのもうなずけます。

しかし、これから先は日本も外国人が増えていきます。患者は日本人だけとは限りません。Sさんの国の人も、数多く日本で生活しています。そんな人たちを診るのは、日本人の医者よりもSさんが向いているかもしれません。また、医学を勉強した人が全員医者になって患者を診るとは限りません。iPS細胞でノーベル賞を受賞した京大の山中先生がいい例です。Sさんなら、ノーベル賞は取らないまでも、医学研究者として足跡を残すことは十分にあり得ます。ですから、医学部はもう少し外国人留学生を入れてくれてもいいのではないでしょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

変わるお祭り

5月27日(月)

昨日は花園神社のお祭りがありました。毎年町内会からお誘いがあり、学生におみこしを担がせてもらっています。おみこしを担いだ学生たちは、異口同音にいい体験ができたと言います。今年も3名の学生が参加しました。その写真を見る限り、満足そうな顔をしていました。

花園神社のお祭りは、KCPの学生のような外国人も加えながら、ずっと続いています。おそらく今後もこういう形で引き継がれていくことでしょう。新宿区は外国籍の方が大勢住んでいます。お祭りのような伝統行事にそういう方を巻き込むことで、地元意識を高めることも考えられているのでしょう。

岩手県奥州市で千年以上も続いてきて、国の無形文化財にも指定された蘇民祭が、今年で幕を閉じました。担い手の高齢化が最大の理由です。残念だという声も上がりましたが、祭りを支える人がいなくては、続けようがありません。花園神社のお祭りは、蘇民祭に比べると、ずっと恵まれています。

また、昨日は福島県南相馬市で相馬野馬追祭が行われました。相馬野馬追祭は、去年までは7月下旬に行われていました。しかし、最近の7月下旬は、東北地方でもかなりの酷暑で、祭りに参加する人馬ともども大いに体力を消耗するようになったそうです。それゆえ、今年から2か月早めたというわけです。

報道によると、時期を早めたことは、参加者にも観客にも好評だったようです。7月下旬にこだわっていたら、こちらも中止に追い込まれていたかもしれません。熱中症によって犠牲者が…などとなる前に伝統を変えたことは、英断だったと思います。

担い手が増やせるお祭りや伝統を変えられるお祭りは、生き残れます。高齢化過疎化の大波に耐えられないお祭りは、どんなに見る人を感動させようと、消えていくのです。寂しく厳しい話ですが、これが日本の伝統文化の偽らざる現状なのです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ