Category Archives: 教師

動きが鈍いと

3月2日(火)

つい先日合格を決めたXさんが、入学許可証を持って来ました。学校から入管への報告に必要ですから、進学する学生には入学許可証を持って来てもらい、学校でコピーを取っています。

ところが、そのXさんを見つけたY先生が「Xさん、何してんの! 授業中でしょう」と一喝。本来なら自分の部屋でオンライン授業を受けていなければならない時間に、学校へ来てしまったのです。担任教師としては怒らなければなりません。怒られたXさんは、シュンとなって帰りました。

その後、T先生と、担当している学生たちの進学先決定状況を確認しました。学期初めに比べれば未定者はかなり減りましたが、残っている学生はかなりのつわものたちです。そして、T先生の分析によれば、このつわものたち、動きが鈍いのです。教師からアドバイスをもらっても、動き始めるまでに時間がかかり、チャンスを逸してきた形跡があります。

さらに言ってしまうと、優先順位がつけられないという面もあります。Xさんがその典型でしょう。志望校から入学許可証が届いたら、うれしくなって、後先考えずに学校へ来てしまったに違いありません。Xさんに限らず、計画性がない学生、すぐに取り掛からなければならないことが見えない学生が、いつまでたっても進学先が決まらないという図式が見えてきました。

それに対し、NさんやGさんなどは、日本語力的には疑問符が付いていましたが、夏ぐらいから騒ぎ出して、周囲の教師も巻き込んで、昨年秋には合格を決めてしまいました。Aさん、Fさん、Wさんあたりも、合格が決まったのは年が明けてからでしたが、計画的に動いていましたから、思いを遂げることができました。

毎年、多かれ少なかれ、そういう傾向がありましたが、今年は特に顕著なような気がします。これを、卒業式後に残る学生の指導につなげていきます。

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落ち着いた

2月17日(水)

Yさんがやっと合格しました。今までに10校ぐらい受けましたが、ことごとく落ちました。2月の半ばが過ぎて、かなり切羽詰まって来た時点で、どうにか行き先が決まったというわけです。

はっきり言って、Yさんは高望みのし過ぎでした。実力的に無理な大学ばかりを受け続け、落ちまくっていたというのが実情です。もちろん、私たちも何も指導しなかったわけではありません。かなりきつい言葉で志望校のレベルを落とせと言ったこともあります。しかし、Yさんは全く耳を貸しませんでした。

指定校推薦に応募しようともしましたが、EJUの点数が足りなくてあきらめざるを得ませんでした。指定校推薦の足切り点は、通常、かなり低めに設定されます。その大学の合格最低点かもっとしたぐらいの感覚です。それにすら到達しなかったのですから、その成績で他大学に受かるはずがありません。

Yさんは不真面目な学生かというと、決してそんなことはありません。ただ、どこかで仕入れた根拠がないけど自分の耳にやさしい情報を信じ、こちらの厳しい言葉はすべてスルーでした。今学期になって、ようやく現状が見えてきて、志望校を3ランクぐらい下げて、合格にたどり着きました。

Yさんにとっては不本意な結果でしょうが、去年から見てきている者としては、落ち着くべきところに落ち着いたなという感じがします。自分の実力って、なかなか見えてこないのでしょうか。

去年からずっと指導されてきたK先生、今晩はきっと枕を高くしてぐっすりお休みになれるでしょう。

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最後のお勤め

2月12日(金)

今学期はずっとオンラインでの授業を続けていますが、始業日に学生にアンケートを取りました。進学先が決まっているか、これから受験すところはどこか、アルバイトはしているか、しているならそれはどこか、曜日と時間はどうか…など、学生の生活全般にわたるものでした。最後に、学校や教師への要望も聞きました。

Cさんは、それに対して「入試直前なので、面接練習をしてほしい」と答えました。その週の週末が入試でしたから、私が入試前日にオンラインで面接練習をしました。答え方がめちゃくちゃだったので、基礎からたたき直して、どうにかCさんの思いが面接官に伝わるようなレベルまで持って行きました。それが功を奏したかどうかは定かではありませんが、Cさんはその志望校に合格しました。

Cさんが受かったという情報は、M先生から聞きました。始業日のアンケートで進学先が決まっていないと答えた学生にさらなる聞き込みをした段階で、M先生がCさんの合格を知り、他の学生の合格情報と一緒に伝えてくださいました。責任を果たせて、ホッとしました。

ところが、その後、Cさんのクラスに入ることはあっても、Cさん自身の口から合格の報告は聞いていません。恩着せがましいことをするつもりはりませんが、一言あってもいいんじゃないかなあ。「おかげさまで」などという気の利いた言葉までは要求しませんが、「合格しました。ありがとうございました」ぐらいは言えますよね。

面接練習は教師の仕事の1つです。だから、受験する学生から要望があればして当たり前であり、その結果受かっても報告するいわれはないと考えているのでしょうか。残念ながら、日本の社会はそこまでドライに割り切る発想が広まっていません。Cさんが同じようなことを進学先で、おそらく次は就職試験で、やらかしたら、人間性を疑われるでしょうね。

これをCさんに教えてあげるのが、Cさんを教えた者としての最後の仕事でしょうか。

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画面の向こう側

2月1日(月)

オンライン授業の悩みの1つが、学生がどこまで本気かわかりにくいことです。すぐに顔を隠す学生が怪しいのは言うまでもありません。ですから、顔が出ていない学生はどんどん指名します。顔を出している学生も、部屋でぼんやりしているだけかもしれません。油断できませんから、顔が出ていても動きが少なかったら「はい、〇〇さん」と抜き打ちをかけます。

指名されても何をしたらいいかわからなかった学生は、1回は見逃してやります。しかし、2日目からは「はい、授業を聞いていませんでしたね。欠席です」と冷たく言い放ちます。指名に対して返答がなかったら、「××さん、いませんね。欠席ですね」と言って、欠席にします。何も言わずに欠席にしてもいいのですが、授業を聞いている学生に向けて、「授業に参加しないと欠席になるんだよ」と警告を発する意味も込めています。

そして、文法などの例文をチェックすると、授業を聞いていたかどうかは如実にわかります。特に上級は、単にどこかの例文集から引っ張ってきただけではうまくいきません。私の例文は要求度が高いですから、状況説明が足りないとか動作主がはっきりしないとか、理屈と膏薬はどこへでも付くさながら、ビシバシ文句を付けます。そういうろくでもない例文ばかりだったら、やはり授業を聞いていないと見なします。

これだけ学生を痛めつけても、zoomに名を連ねるだけの学生は少なくなりません。私たちも楽しい授業をと思っています。しかし、そういう流れをせき止めるような態度を取られると、強硬手段に出ざるを得ません。

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対外関係

1月28日(木)

進学には学生の一生がかかっていますから、あれこれ悩んで当然です。周りの人に相談することも必要です。しかし、ころころと方針を変えてばかりというのは、いただけません。相談した人の意見に流されて、日々言うことが違うとなると、こちらも進路指導のしようがありません。

そんな傾向を見せ始めているのがGさんです。Gさんの希望を聞き、EJUの成績を勘案し、ここなら実のある勉強ができると、いくつかの大学をリストアップしても、翌朝は全然違うことを言い始めます。誰に教えられたのか、とんでもなく評判の悪い大学名を出し、ここなら確実に入れる言い始めたこともありました。“昨日の目の輝きは何だったの?”と追及したくなります。Gさんが相談を持ち掛けた人に言わせれば、KCPは変な進路指導をする、ろくでもない学校なのでしょう。

いつの時代にも、親の言いなりになっている学生がいます。教育熱心なあまり、子供に干渉しすぎる親も、進路指導においては危険な存在です。日本の進学事情を表面的にしか知らないのに、本人も納得ずくで選んだ志望校をひっくり返します。親御さんの提案が妥当な範囲ならそれに報えて指導もしますが、往々にして無理難題に近いものです。Iさんは、今年進学ではありませんが、親が毎日のようにあれこれ指示を出してくるそうです。すでに、親の意見にはついていけないという顔をしています。

「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」とことわざに言いますけれども、最近の茄子は突然変異を起こしたのか、品種改悪が進んだのか、あだ花が増えたようで…。

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何をどうすれば

1月16日(土)

ZさんがY大学に合格しました。Zさんはいろいろな大学を受けましたが、その中で最難関と考えられたのがY大学でした。もちろん、本人にとっては第一志望の大本命です。

Zさん自身から報告を受けたときは、「おめでとう。よくやった」と祝福し、努力をたたえました。私もうれしいのですが、落ち着いて考えてみると、どうしてZさんがY大学に受かったのか、さっぱり見えてきません。EJUの成績がずば抜けてよかったわけでもありません。何回も何回も面接練習をしましたが、最後の最後まで話し方にぎこちなさが残りました。自分で答えを用意してある質問にはスムーズに答えられますが、そうでないことを聞かれるとしどろもどろになっていました。さんざん指導しておいてこんなことを言うのは無責任ですが、勝ち目は薄いなと思っていました。だから、Zさんが受かった要素が思い浮かばないのです。強いて言えば、Zさんは面接で質問されたことを覚えてきて教えてくれましたから、本番の面接ではさほど緊張せずにふるまえたのかもしれません。

何がよくて受かったのかわからないと、Zさんの合格を次の年度の指導に生かせないのです。確かに、私はZさんの受験指導をしました。だから、ZさんのY大学合格について貢献度がゼロだとは思っていません。だけど、結果的にどういう貢献をしたのか、私自身にもよくわからない点が、もどかしい限りなのです。LさんのK大学合格にも、同じようなものを感じています。

午後、まだどこにも受かっていない学生3名の進学相談をしました。この期に及んできれいごとばかり並べるつもりはありません。励ましつつもかなり厳しいことも言いました。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言います。負ける要素を1つずつつぶしていくことで、道を切り開くしかありません。

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追い込まれて

1月13日(水)

年が明けてから、まだ進学が決まっていない学生が急に焦りだしました。こちらが口が酸っぱくなるほど志望校のランクを落とせと言ってきたのに聞く耳を持たなかった学生たちが、青菜に塩みたいな顔で相談を持ち掛けてきます。ついこの前まで進学準備は自分でやるから干渉するなと言わんばかりの態度でしたが、今や無条件降伏状態です。もはや、プライドも何もありません。

進学指導の教師は、かかりつけ医的な面があります。ずっと健康状態を見てきて、カルテも内容が充実していて、お互いの間に信頼関係があれば、的確なアドバイスもできます。うるさいほど相談に来る学生には、こちらもかかりつけ医になれます。しかし、我が道を行っていた学生に突然来られても、これまでの状況把握から始めますから、一見さん扱いといったところでしょう。

だれにも頼らずに生きていける人なんて、世の中にほとんどいません。また、頼るべき人を間違えて取り返しつつかないことになった例は、枚挙にいとまがありません。毎年のことですが、この時期になると、もっと早く相談してくれたらと苦い顔をしてしまう日が続きます。今シーズンは、これまでにない特殊な受験環境でしたから、とにかく先手必勝と訴え続けてきました。しかし、それが伝わらなかったんですねえ。

いや、伝わった学生もいます。そういう学生は、今、緊急事態宣言でどこへも行けないのが残念だなどと、余裕をかましています。Ⅱ期やⅢ期で同じ大学を受けようとしている学生に、面接の手ほどきをしてあげようなどと言っている学生もいます。

信ずるものは救われる…としたいものです。

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休みだけど

12月21日(月)

昼(といってもかなり夕方に近かったですが)に外に出ると、門松が据えられていました。なんだかわけのわからないうちに2020年が暮れようとしていますが、新しい年が近いんだなあと思いました。

明日は期末テストで、その後、学生たちは休みに突入します。その前に進学クラスの学生の気持ちを引き締めてほしいと頼まれました。そのクラスはまだ行き先が決まっていない学生がほとんどで、正月休み返上でどうにかしないと、卒業式が来てもどうにもなっていないかもしれません。

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」です。今楽しんでしまうと、後で苦しくなります。今は苦しくても、後で楽しい時が必ず来るものです。そういう思いを学生たちに訴えました。

盛んにうなずいている学生もいれば、線がつながっているとは思えないような顔つきの学生もいました。でも、ここで楽に走ってしまうと、卒業式には別の意味で涙を流さなければならなくなります。旧正月を祝う習慣の学生たちには、1月1日の正月返上はさほどでもないでしょう。だから、ここで精いっぱい踏ん張って、自分たちの正月を心から祝えるようにしてもらいたいです。その時期にも決まっていなかったら、もちろん、旧正月もへったくれもありません。日本人の受験生だって元日から勉強するのですから、留学生も負けてはいけません。

週末に届いたEJUの成績を渡しました。毎度のことながら、悲喜こもごもです。今シーズンはここにきて独自試験を中止する大学が出てきています。“悲”の学生をどうフォローしていくか、私たち教師も、“苦”がしばらく続きます。

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想定外に負けるな

12月12日(土)

受験講座もなく、学生が来ないはずの土曜日ですが、10時過ぎにスーツ姿のJさんが来ました。いつものラフなスタイルとは打って変わって、営業をかけに来たどこかの会社の人と言っても何ら不思議ではありません。Jさんは、N大学の面接試験が対面からオンラインに変更されたため、学校の教室を借りに来たのです。おとといの夕方、使用予定の教室でカメラテストのようなことをして、面接の会場としてふさわしいと認められ、本番を迎えたという次第です。

大学入試のオンライン面接をつぶさに観察したいのはやまやまですが、会場の教室に受験生本人以外の人がいることが知られたら、不正行為とみなされてしまうでしょう。また、教室の外から、耳をそばだて娜からのぞき込むなどというのも、お行儀もよくないし、Jさんに余計なプレッシャーをかけてしまうことにもなりかねません。ですから、私は1階の職員室でJさんの面接試験が終わるのをずっと待っていました。

30分ほど経った後、「先生、終わりました」とJさんが。緊張が解けたからでしょうか、すっきりした顔をしていました。「どうだった?」と聞くと、想定外の質問が2つあったとか。うなだれたり目がおどおどしたりしていませんから、少なくとも志望理由などの王道の質問にはきちんと答えられたのでしょう。想定外と言っていた質問も、内容を覚えていましたから、パニックになったとかということはなさそうです。果報は寝て待てということにしておきましょう。

来週も、月曜日から面接練習です。今年は大掃除の日まで、学生の受験指導が続いそうです。

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お手本になれたかな

12月10日(木)

日本語教師養成講座の受講生Mさんが、実習生として私のクラスに入りました。これから1週間、授業を見学し、時には参加し、最終日には授業をします。実習生は、養成講座の講義の一環として、今までに何回か授業を見ていますが、自分が授業をやることを前提に見るとなると、自ずとポイントが違ってきます。

Mさんは、授業前に、来週担当する授業の教案を提出しました。しかし、それは実際の授業を知らない教案で、教師に都合よく授業が進んでいく形になっています。そういう教案になるのはしかたがありません。神様みたいな学生ばかりだったらその通りに進められるでしょうが、実際に教室にいるのは煩悩だらけの学生です。その学生をどのように引っ張って目標地点まで連れていくか、それを学ぶのがこの実習です。

だから、私の役回りは、Mさんの教案の参考になるような授業をすることです。学生への目の配り方、指名のしかた、そんなことを見せていきました。私にしたって、常に理想的な授業をしているわけではありません。考えた通りに進まなかったり、想定外のことが起こったり、日々薄氷を踏む思いです。そういうのも含めて、全部見てもらって、Mさんの血肉にしてもらおうと思っています。

さて、私の授業を観察したMさんはどうだったでしょう。実習ノートを見る限り、今までの授業見学とは違う気付きがあったようです。それをどのようにご自身の教案に生かしていくかが、直近の課題です。明日はK先生の授業を見学することになっています。K先生は私とは違うスタイルの授業をなさるでしょうから、そこからもまた、得るものがあるに違いありません。多くのものを得て、成長していってもらいたいです。

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