Category Archives: 社会

こんなに暑いのに

7月28日(金)

暑い日が続いています。東京の最高気温は36.2度でしたが、全国で暑い方からの第10位が38.5度ですから、2度余りも及びません。こんなに暑いのにベスト(ワースト?)10にも入れないのですから、日本全土が熱波に包まれていると言っていいでしょう。

私がよく行く狭い範囲での感覚でしかありませんが、近ごろは、お昼の食べ物屋さんがいくらかすいているような気がします。昼食を取りながらお店で涼もうとしても、お店までの暑さに耐えられず、そこまでに至らないのかもしれません。近くのお店で我慢しようとか、あまりの暑さで食欲そのものが減退してしまったとも考えられます。新宿駅付近なら地下街に逃げ込むという手もありますが、ここからではその地下街にたどり着くまでにどうにかなってしまいそうです。

わりと最近まで、36.2度なんていうと、年に何度もない異常な暑さでした。気象庁が最高気温35度以上の日を猛暑日と呼ぶようになった2007年あたりから、36.2度がありふれた暑さになり始めたのではないでしょうか。東京の36.2度は、現時点で今年の7位タイです。この調子で行くと、夏の終わりには上位10位から落ちているでしょう。2007年以降、36.2度でその年の最高気温になれるのは、タイも含めてわずかに6回です。2014年までに5回、最後はタイの2019年です。

世界気象機関とEUの気象情報機関・コペルニクス気候変動サービスが、7月の世界の平均気温が観測史上最高になることが確実になったと発表しました。日本全土どころか、全世界が熱波に包まれているのです。

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農業とは

7月24日(月)

子どもの頃、父の仕事の都合で、田舎に住んでいました。父はサラリーマンでしたから、私が直接農業にかかわることはありませんでした。しかし、友達には農家の子どもがたくさんいましたし、農家の方から野菜や果物、時にはお米など、農作物をいただくこともよくありました。また、学校からの帰り道などで農作業を見かけることも稀ではありませんでした。父の転勤で住んだ東京23区にも、子どもの足で行ける範囲に、わずかではありますが、畑がありました。

先週から、上級の読解教材で農業についての文章を扱っています。そのテキストに、文章の中心人物であるMさんが田植え機に苗をセットする写真が載っていました。学生に「これ、何の写真かわかる?」と聞いてみましたが、誰もわかりませんでした。それはそうでしょうね、学生にとって、田植えなんてなじみがありませんから。

私が小学生だった今から半世紀ほど昔は、農業はまだまだ日本の中心でした。しかし、工業やサービス業などが新しい産業として注目を集め、農業はそれらに比べると時代遅れというイメージでした。それゆえ、就業人口も減りつつありました。

現在はどうでしょう。日本の農作物は、海外で偽物が出回るほど高い評価を得るようになりました。平成前半あたりに比べると、バイオテクノロジーを駆使するなど、近代的なイメージが強まっているのではないでしょうか。耕作放棄地などという経済的な問題もありますが、“斜陽”しきって上向きの勢いを感じます。

学生たちの国では、農業はどんな位置付けがなされているのでしょう。読解が進んだら、聞いてみようと思っています。

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納税意欲

7月19日(水)

先日、信号待ちの時に、暇つぶしに交差点の近くにあったたばこの自動販売機を眺めました。今は、たばこが1箱600円もするんですね。びっくりしてしまいました。私が学生の頃は、100円台だったような気がします。たばこを吸わない人間の記憶ですから、信頼性は著しく低いですが…。

そのうち税金はいくらぐらいでしょう。300円ということはないと思います。400円ぐらいは取られているんじゃないかな。1日1箱の人は、月に1万円、年間12万円ぐらいの税金を払っていることになります。なんと納税意識が強いことでしょう。私は、たばこだけでなく、お酒もやりませんし、車も持っていませんから、所得税と住民税と消費税以外はろくに税金を納めていません。

明日のコトバデーを控え、各クラスは練習に余念がありません。私のクラスの練習に立ち会い、先週とは比べ物にならないほどの進歩に目を見張りました。その一方で、最近学生の喫煙マナーが乱れていますから、学校近辺でむやみにたばこを吸って教職員に摘発された学生を相手に、注意を与えました。明日の会場は喫煙厳禁です。トイレなどで吸われでもしたら、KCPは出入り禁止になってしまいます。タバコを吸った学生個人の問題にとどまりません。

その際に、たばこの値段の話題を持ち出しました。学生たちも、600円は高いと感じているようでした。でも、やめられないみたいです。「私の代わりに日本の国に税金を払ってくれてありがとう」と言ったら、苦笑いをしていました。その学生は、概略10万円ちょっとを日本国政府に寄付してくれています。

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20万円の靴

7月13日(木)

レベル1のクラスでは「いくらですか」を勉強しました。値段を答えるとなると、万の単位までは言えるようにならなければなりません。英語はthousand, million, billionと3桁ごとに単位が変わっていきますが、日本語は万、億、兆と、4桁ごとです。ちょっとお遊びで“100000000”を読ませたら、「1万万」という答えが返ってきました。それはともかくとして、“32千円”などという予算か何かの表に出てくるような言い方をする学生がたまにいますから、それをつぶさなければなりません。

「Kさん、いい靴ですね。そのくつはいくらですか」なんていう形で、値段を聞いたり答えたりさせました。Kさんの靴は20万円だそうです。「この時計は18万円です」なんていう答えもありました。学生が身に付けているものや持ち物は、高いものが多かったです。話をいくらか盛っているかもしれませんが、いくらかは事実でしょう。私なんか、夏はユニクロで身を固めていますから、靴まで入れてやっと1万円を超える程度、時計がそれと同じくらいといったところでしょうか。視界はしっかり確保したいのでメガネは多少奮発していますが、それを加えても学生を上回らないかもしれません。

私がKCPにお世話になり始めた頃は、“学生=貧乏”という不滅の定理がありましたが、今は“学生=金持ち”のほうが恒等式に近いような気がします。これも、日本の国力の衰えという意味での時代の流れなのでしょうか。円安のため、かつて海外へ出て行った工場が国内に回帰しつつあるのだそうです。20万円の靴の国でつくられた品物は、我々一般庶民には手が届きそうもありません。

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AIと教師

7月4日(火)

文部科学省が、小中高校の作文などの創作活動で生成AIを使用するのは不適切だという指針を発表しました。使いこなすことの重要性にも触れつつ、小中高校では自分の頭で考えることを優先する姿勢を示しています。同時に、情報モラル教育を推し進める必要性も訴えています。

当然ですね。AIに考えてもらって原稿用紙に書くのだけ自分でするなんて、剽窃と言われてもしかたがありません。それが高じると、読みもしないのに「東野圭吾の『放課後』の感想文」などと入力して、感想文だけ“書いて”しまうなどということすらやる子供が現れてくるかもしれません。

しかし、よく考えたら、今までも夏休みの宿題に親が手を入れることがありましたよね。親の代わりにAIが手助けをしたと考えれば、AIに頼るのだけ禁じるのは不公平だと言えないこともありません。宿題には、親も絶対に手出しをしてはいけないということになっていくのでしょうか。

そこまで言うのなら、私たちだって危ないです。今まで何人の学生の志望理由書を書き換えてきたでしょう。志望校と志望学部学科、日本留学に至るまでの学生の生い立ち・心の動き、進学してから、そして卒業してからの構想、そういったことを聞き取って、根本的に書き直したこともありました。それほどではなくても、志望理由書のサンプルを示してこういう書き方をしろという指導は、今年もすでにしています。

こういうのって、AIが作文を書くのと大して変わりませんよね。ということは、この仕事はAIに代替可能だということでしょう。各大学に合わせた志望理由書が書けるレベルまでAIを鍛えるのに時間と労力を要するかもしれませんが、できない話ではなさそうです。

いや、それよりも先に、志願者本人が書いた文章かどうか判定するAIの方が先に開発されるような気もします。狐と狸の化かし合いみたいなことは、したくないものです。

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残り半年

7月3日(月)

昨日の「どうする家康」で、瀬名と信康が自害しました。それは史実であり当然の流れなのですが、そこに至るまでの流れ、この2人の描き方が今までのドラマや小説などと大きく違いました。瀬名役が有村架純だと発表された時点から、過去の大河ドラマとは異なる瀬名になるのではないかと思っていましたが、その通りでした。

そもそも、役名が「築山殿」という住まいの名前ではなく「瀬名」という本人の名前になっているあたりから、瀬名個人にスポットを当てたストーリーが期待できました。ドラマ内では、常に自分で考えて行動する人物であり、個性が際立つ存在でした。武田氏に通じていたというのも、受け身ではなく瀬名の側から動いてのこととして描かれていました。もっとも、瀬名というのが築山殿の本名かどうかは、史料的には裏付けられていないそうですが。

この瀬名の描き方に対しは、おそらく批判も出てくるでしょう(もう出ているかもしれません)。でも、私にはこれまでの瀬名があまりに悪人過ぎたと思えます。山岡荘八から「おんな城主 直虎」まで、姉さん女房の悪女ばかりでした。そこから大きく脱し、なおかつ史実とされていることには従い、新たな瀬名を視聴者に示した脚本家・古沢良太の力量には恐れ入るばかりです。

瀬名が自害したのは、1579年。ドラマの始まりは桶狭間の戦いですから、1560年。ドラマ開始から半年で、まだ19年しか進んでいません。家康は1616年没ですから、この後37年生きます。今までの倍近い時間を同じ半年で描けるのでしょうか。少々心配です。

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ルーチンワークがなくなって

7月1日(土)

昨日の朝まで、KCPの教職員は出勤したらまず体温を測り、それを所定の用紙に記録していました。しかし、今朝からはそれがなくなりました。3年前に測り始めようとした時は、そのさらに数年前のSARSの際に買った体温計を倉庫から発掘してきて使おうとしました。しかし、長年湿っぽいところに放置しておいたのがいけなかったのか、34.2度などという数字を平気で連発してくる代物で使い物にならず、結局新しいのを買いました。

その後、毎朝几帳面に体温計をおでこにあててピッとやって示された体温を記録し続けました。私の場合、冬は35度台後半、夏は36度台前半という日が多かったです。先週は毎日36.2度でした。恒温動物であることを存分に証明した3年間だったとも言えます。そうそう、朝起きた時に体温を測ることにもなっていました。こちらも日々の変動はほとんどなく、実に安定していました。

そういった毎朝の体温測定から、7月1日をもって解放されたというわけです。最初の頃は、それまでめったに体温など測らなかったこともあり、ピッとやるたびに臨戦態勢という感じで気が引き締まりました。でも、去年あたりからは、「36.3、勝負!」なんて心の中でつぶやきながら表示窓をのぞいていました。そういった臨戦態勢もお遊びもなくなったことが、私にとっての解放でしょうか。

とはいえ、全国的に見ると、感染者がまた増えてきました。沖縄は最高記録を更新し、本物の臨戦態勢のようです。「第9波」という声が高まりつつあります。油断はできません。

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マイナンバーカードを使いました

6月30日(金)

今朝、3か月ごとに定期的に通っている病院へ行って、いつものように自動受付機に診察券を突っ込んで受付を済ませ、待合室に向かおうとしたら、「マイナンバーカードを持っている方は2番窓口へ」という掲示が目に入りました。受付がすんじゃったんだから、診察が終わってから行ってみることにしました。

無事診察が終わり、支払いの手続きのために窓口へ行き、保険証を見せました。「ありがとうございました」と保険証を返されたので、後ろに並んでいる人もいなかったこともあり、「受付機のところにマイナンバーカードを持っている人は窓口へって書いてあったんですが…」と聞いてみました。すると、「カードをそちらの機械の読み取り部に入れてください。そのあとは画面タッチでお願いします」と指示されました。その通りにすると、「次回からマイナンバーカードをこちらにかざすだけで保険証の確認ができます」と言われました。どういう仕組みになっているかよくわかりませんが、この病院では私のマイナンバーカードと保険証とがつながったみたいです。

でも、これは私にとってメリットがあるのかというと、非常に怪しいです。違いは、診察が終わってから窓口に保険証を提示するか、診察前にマイナンバーカードを機械に通すかだけです。マイナンバーカードを機械に通したからと言って受付がすむわけではなく、自動受付機のお世話になることに変わりはありません。つまり、マイナンバーカードを機械に通すために、今までより1回余計に窓口まで足を運ぶことになるのです。要するに、病院は手間が省けますが、その省けた手間が私におっかぶさってきただけです。病院の手間が省けた分だけ、10円でもいいですから診察料が安くなるならいいですが、そんなことはないでしょうね。

誰かが悪いわけじゃありませんが、なんとなく損した感じがしました。こんな人が日本中にたくさんいるんじゃないかな。だから、マイナンバーカードって評判がよくないんじゃないかという気がしました。

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そうまでして?

6月9日(木)

KCPは、校舎・敷地内全面禁煙です。喫煙所はもちろんのこと、灰皿すら置いていません。タバコを吸いたい人は、付近の喫煙所へ行くか、学校にいる間は我慢するか、どちらかです。

付近の喫煙所と言っても、学校のすぐ隣などにはなく、歩いて数分かかります。ですから、15分の休憩時間内にタバコを吸おうとすると、走って喫煙所へ行って、大急ぎで吸って、また走って戻ってくるという感じになります。そんなではあまりにあわただしく、タバコ本来の“一息つく”には程遠いです。それでも吸いに行く人がいますが、タバコを吸ったことのない私など、何のために吸うのだろうと思ってしまいます。

走ろうが何しようが喫煙所まで行って吸って授業開始までに戻ってくるのなら、正当な行為です。誠にお恥ずかしい話ですが、最近、学校至近の喫煙所ではない場所でタバコを吸う学生が後を絶ちません。多くが駐車場などの私有地に無断で入り込み、一服に及んでいます。これは住居不法侵入であり、立派な犯罪です。

捕まった学生たちは、日本人もそこで吸っていると不満げに言います。でも、それは、犯罪の真似をしてもいい、模倣犯は許されると言っているのに等しく、言い訳にも理由にもなりません。

昨日も5人の学生が捕まりました。昼休みに、その5人への締めの説教をしました。次に同じことをしたら即刻退学だと通告しました。夕方、その学生たちの反省文を読みました。喫煙所が遠いとか、早くタバコが吸いたかったとか、要するに学校が何回も繰り返してきた喫煙に関する注意を軽視していたのです。「二度としません」という言葉が躍っていましたが、どこまで信じられるでしょう。しばらくは、この学生たちをマークしていきます。

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失脚

6月6日(火)

上級クラスで「失脚」という単語を扱いました。学生に意味を聞くと、「やめること」という答えが返ってきました。確かに、「汚職がばれて、社長が失脚した」という文なら、「~社長がやめた」でも意味は通ります。ところが、学生に書いた例文の中に、「解決策が完全に失敗して、課長が失脚した」というのがありました。やはり、失脚するのは社長であり、課長が失脚するなんておこがましい感じがします。ですから、失脚する人はある程度の地位、トップかそれに近い人物である必要があります。

辞書で失脚を調べてみると、だいたい「失敗して、それまでの地位・立場を失うこと」とまとめることができます。でも、これだと課長も失脚していいことになります。失脚には、「権力者がその権力を失う」とういイメージが伴うような気がします。それも、「権力争いに負けて」とか、「高い地位にふさわしい仕事がうまくいかなくて」とか、「下の立場の者からの信頼を失って」とかという要素も含まれているのではないでしょうか。

そうすると、学生の例文「首相の長子は不正な行為で失脚した」はどうでしょう。首相官邸でどんちゃん騒ぎをしたり、外国で公用車を使ってお土産を買いに行ったりして、秘書官更迭という罰を受けたことを指すことは明らかです。しかし、首相秘書官が失脚に値する地位かというと、どうでしょうか。次期首相が約束されていたのなら失脚でもいいと思いますが、実際の首相長男氏はそれほどの地位だったかなという気がします。いや、首相の周りでは「失脚」と言っているのかもしれません。

学生の例文を読むまでは、「失脚」という言葉についてこんなに深く考えたことはありませんでした。また、学生に勉強させてもらいました。

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