Category Archives: 社会

集中力

2月13日(木)

私が通勤に利用している日比谷線は、先週から駅の発車メロディーが新しくなりました。今までのに比べてよく響く感じがします。乗客に発車を伝えるという意味では改善なのでしょうが、電車の中で本を読んでいる身にとっては、若干耳障りです。それが鳴ると、そこで集中が途切れてしまうのです。読書に没頭していないから発車メロディーごときで気が散ってしまうのだと言えないこともありません。でも、気になるものは気になります。以前は気が付いたらもう降りる駅だったということがよくありましたが、今は各駅停車ならぬ各駅覚醒です。

車内でスマホをいじっている人はどうなんだろうと思います。イヤホンをしている人は、発車メロディーなど聞こえないか、聞こえたとしても気になるレベルではないのでしょう。じゃあ、普通に画面に集中している人はどうなんでしょう。ゲームのほうが読書より引っ張り込まれやすいのかな。

たまに教室に早く入ると、本気でタブレットの画面をたたいている学生を見かけることがあります。タタンタンタンタタタタタンと小気味よくリズムを刻んでいる学生の表情を除くと、思いのほか目がつり上がっていて、思わず息をのんでしまうこともあります。そんな学生なら、日比谷線の発車メロディーなどで気が緩むことは絶対にないでしょうね。その集中力を勉強に向けてくれればと思いますが、そういう学生に限って、授業が始まりタブレットをしまうと同時に意気消沈してしまうんですね。

ゲーム軍団の学生たちは、入試では集中力を発揮したようで、合格が決まっています…。

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歯が痛くなりそう

2月10日(月)

昨日は歯医者に行ってきました。いろいろな事情で、日曜日に診てもらえるというのもその1つですが、学校の近くでもうちの近くでもなく、うちから電車で通っています。その歯医者、腕もいいし虫歯予防にも力を入れてくれますから気に入っているのですが、事務員や歯科衛生士の言葉遣いがよくありません。言葉が乱暴だというのではありません。そこの先生(歯科医師)に尊敬語を使うのです。日本語教師としては、日本語教師養成講座の講師としては、見逃すわけにはいかない敬語の使い方の間違いです。

昨日は、歯科衛生士による歯周病検査の次に、歯科医師による治療が予定されていました。歯周病検査が終わると、歯科衛生士が「先生がいらっしゃるお部屋にご案内いたします」ときました。「はい」と笑みを浮かべながら歯科衛生士の後をついていきましたが、「“先生がいらっしゃる”だと? ふざけるんじゃねえ!」と思っていました。

いつもこんな調子です。予約を取るときにも、「先生のご都合をご確認します」です。言っている本人に悪気はないでしょうし、言わんとしていることも伝わりますから、表面的にはスルーしています。でも、私の語感では許しがたい使い方ですね。患者である私が、「先生のいらっしゃるお部屋はどちらですか」「先生のご都合を確認していただけませんか」などと聞くのは問題ありませんが、歯医者の事務員や歯科衛生士が、自分サイドの人間である歯科医師に対して「先生」とか「いらっしゃる」とか「ご都合」とかと言ってはいけません。

今学期は敬語を教えるレベルのクラスは担当していませんが、日本語教師養成講座で敬語を扱いました。学校で敬語について触れるたびに、歯医者を思い出します。

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新店舗開店か

1月30日(木)

全国的にはわずかではありますが減ったのに、学校の近くにまたコンビニができるようです。店員募集の張り紙がありました。新宿1丁目って、そんなに魅力ある地域なんでしょうか。大きな事務所や工場があるわけでもなく、新しい集客施設ができたわけでもなく、東京医大も富久クロスも新宿御苑も大きい通りの向こう側ですからねえ。コンビニが増えてもゼロサムゲームだと思います。

それから、店員やアルバイトが集まるのでしょうか。最近の日本語学校の学生は、KCPに限らず、あまりアルバイトをしません。付近にこれだけお店(=アルバイト先)が多いと、店の近辺で普通に募集しただけでは効果がないんじゃないでしょうか。安倍さんじゃないけど、広く募らなきゃ。

今週は、ある財団に奨学金受給者として推薦する学生を決める面接をしました。面接をした学生は1人を除いてアルバイトをしていませんでした。住んでいるところの家賃も10万円近いのが普通で、かつてのように勉強とアルバイトの両立に頭を悩ませることもありません。奨学金は、生活費を支えるというより、名誉のためにもらうためになりつつあります。

最近、バスや電車が、運転士がいなくて減便されるという話をよく聞きます。電車はゆりかもめみたいに無人運転の方向に進んでいくのでしょうか。丸ノ内線がワンマン運転を始めた時はびっくりしましたが、そうしていなかったら、今頃朝のラッシュ時の運転本数が減って遅延が慢性化して、KCPの学生の遅刻が激増していたとも考えられます。また、コンビニも、中国でやっているような無人店舗が広まっていくこともあり得るでしょう。そうなれば、新しいコンビニも生まれやすくなるかもしれません。

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マスクだらけ

1月27日(月)

今朝の電車――私が乗るのは1番電車ですからそんなに込んでいるわけではありませんが――で、私が座ったシートの人たちは、全員マスクをしていました。マスクをするとメガネが曇るので、私は可能な限りマスクをしませんが、世の中はそんな甘っちょろいことを言ってはいられなくなりつつあるようです。

昨日、うちの周りを歩いていたら、ドラッグストアをはじめ、どこへ行ってもマスクは10枚までとか最大5箱とか数量制限がついていました。それでも買い物かごいっぱいにマスクを積み上げてレジに向かう人が大勢いました。

先週のこの稿で武漢の肺炎が下火になることを祈っているなどと書きましたが、状況は日々刻々悪化しており、患者も死者も積み上がってきています。それゆえの全員マスクであり、マスクの販売制限です。流行っているのは日本ではなく、海を隔てた中国ですが、昨年は1千万、すなわち日本の人口の8%に近い人が中国から来ているのですから、油断は禁物です。

問題となっているコロナウィルスは、普通の風邪のばい菌です。肺炎だとか死ぬとかと言う物騒な話とは無縁のはずです。でも、おそらくどこかで(人類にとって)悪い方向の変異を受け、こうなってしまったのでしょう。さらに、人から人への感染力も強くなったとかで、もはや単なる風邪の病原菌などと軽く見るわけにはいきません。

現時点では感染が疑われる学生は出ていませんが、先週末の春節で大騒ぎした影響がいつ現れるかわかったもんではありません。今晩から明朝にかけて雪かもしれないという予報が出ていますが、そんなことよりこっちの方に気をもまなければなりません。早く春が来ないかなあ…。

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伝わっていますか

1月25日(土)

電車の車内アナウンスに、録音の音声による英語アナウンスが加わったのは、もうだいぶ昔のことと思います。ところが、最近、特に去年あたりから、車掌さんの肉声による英語アナウンスをよく耳にするようになりました。私が通勤に使っている東京メトロは、その日の車掌さんによってしたりしなかったりというのが現状です。

しかし、この肉声英語アナウンス、果たして通じているんだろうかと思うことがよくあります。年末に行った名古屋では、“アライビングアットカナヤマ。ドアーズオブライトサイドウイルオープン”とカタカナで書きたくなるようなアナウンスでした。“あらいびんぐあっと…”と、ひらがなの方がぴったりしそうな車掌さんもいました。東京のも似たり寄ったりです。

若い車掌さんなら、大学でかなりがっちり英語を鍛えられているはずですから、“Arriving at …”とやってほしいところですが、そういうアナウンスはなかなか聞けません。私が気持ちよく聞き取れるということは、その発音はネイティブのものからほど遠く、いかにも日本的発音だということです。悪い意味の横並び意識が現れ、わざと下手にしゃべっているのでしょうか。

私のクラスのアメリカから来ている留学生・Aさんに、自動音声アナウンスと肉声アナウンスとどちらがよくわかるか聞いてみたいと思っているのですが、授業の後はいつも忙しくて、そのチャンスがありません。非難の声が強かったらとっくの昔にやめているはずですから、それなりに支持されているのかな。日本人は手作り感に弱いですが、英語を頼りに来日している外国人の皆さんはどうなのでしょうか。

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気になるニュース

1月24日(金)

今学期は、毎週金曜日に学生の気になるニュースについてまとめて発表してもらうことにしています。先週の学生は自分の趣味に関するアニメの話題を10分ぐらい熱く語ってくれました。今週は、4人のうち2人が武漢の新型肺炎を取り上げました。2人とも、武漢ではありませんが中国の学生でしたから、やはり心配なのでしょう。

中国が震源地となり、世界中に広がりつつあるという恐ろしい話も出てきました。確かに日本でも患者が出ていますからねえ。じっとしていても、ウィルスの方からじわじわと近寄ってきそうなイメージがあります。患者のくしゃみのしぶきで感染するそうですから、油断はできません。

幸いにも、今のところ、KCPにはこの前の年末年始の休みに武漢に帰省したり遊びに行ったりした学生はいないようです。でも、ウィルスに感染していたけれども潜伏期間中だったため元気そうに見えた友人と会っていたなどというパターンもあるかもしれません。そうだとしても、週明けぐらいまでに発症しなければ、最長の潜伏期間を仮定しても、無事だったと言えそうです。

この学校には世界中から学生が集まってきますから、世界中のいろんな影響も凝縮されます。時には今回のような伝染病であり、経済状況の激変の場合もあり、自然災害に気をもむこともあります。そういうニュースを知っていると、心配そうな顔をしている学生が特に目についてきます。私たちが力になれることってたかが知れていますが、それでも何かしてあげたいと思うものです。

私が目にした記事によると、武漢のウィルスは感染力がそれほど強くないとのことでしたから、中国政府の武漢封鎖作戦が成功して、どうにか下火になることを願っています。

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責任

1月17日(金)

講堂のステージ上の演壇に立つと、知っている顔やどこかで見かけたような顔やそういえば入学しにいたよねっていう顔など、さまざまな顔が一斉にこちらを向きました。中には「えっ、なんでお前が?」っていうようなのまで混じっていました。これから入試の面接かというようなスーツ姿もいれば、寝巻を着てきたのかと聞きたくなるようなお気楽ないでたちもいました。昨日、いい服を着て来いと注意しておいたはずなのになあ。

そういう学生たちに向かって、責任とは何かという話をしました。盛んにうなずいているのは中級か上級の学生、ポカンとしているのはおそらく初級の学生でしょう。卒業式みたいにみんなが日本語を理解できるか、入学式みたいに大多数に日本が通じないかなら話は楽ですが、このような混成チームを相手にするとなると、どこに照準を合わせたらいいか気を使います。

責任とは、自分で判断し、決定し、行動するから生まれるのです。行動した結果に対して責任を感じなければならないとしたほうが正しいでしょうか。そして、正しい判断や決定ができるようになるために勉強するのであり、広い目で物事がとらえられるようにとわざわざ万里の波濤を乗り越えて日本まで留学に来たのです。そのチャンスをあだやおろそかにしてはいけません。

それからもう1つ、自分のためだけではなく、他人のために働ける人に育ってほしいとも期待を述べました。一人っ子でわがままに育てられてきたとしても、そういうことはだんだん許されなくなります。誰かのために汗が流せるようになることが、成長の証です。

そんなことを、かみ砕いた言葉も交えて、学生たちに贈りました。40年前の新成人の訴えは通じたでしょうか。KCPでは、世間から4日遅れた成人式がありました。

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入学式挨拶

みなさん、本日はご入学おめでとうございます。このように多くの若い方々が世界中からこのKCPに集まってきてくれたことをうれしく思います。

今、日本は大学入試を大きく変えようとしています。大学に進学しようと考えている日本の高校生の大半が受けるテストで、一部をマークシート方式から記述式にしようというものです。なぜこのような変更が行われようとしているかというと、受験生の考える力を測定したいからです。マークシート方式は、客観的な採点ができて公平であり、また、機械で採点できますから省力化も図れます。しかし、暗記で答えられたり、受験のテクニックが通用したりしますから、受験生の本当の力は見られないという批判がありました。こういった批判に応えるため、記述式を導入しようとしているのです。

日本人の高校生が受けるテストなので、留学生のみなさんには一見無関係のように感じられますが、日本の大学が求めている人材が変わりつつあるという点においては、みなさんにも大いに影響があるのです。つまり、目の前の課題に対して自分で考えて結論を導き出し、それを他人にわかるように表現する力が求められるようになるのです。出題者から与えられた答えを選ぶのではなく、自分で答えを導き出せる人物こそが、これからの日本や世界を支える人材だという認識に立って、大学は受験生の能力を吟味します。

“グローバル”という言葉が世の中に出てからかなりの時間が経ちます。その間、世界に横たわる問題は複雑化する一方で、超大国のリーダーが額を寄せ合っても問題の解決には至らないことが多くなりました。そこまで大きな問題ではなくても、多様化した人々の心を満たすのは、マークシート的な発想では無理でしょう。もちろん、迫りくるAIの影を振り払うには、人間の頭脳にしかできない複合的な思考力が必須です。

みなさんは国でどういう勉強をしてきましたか。考える訓練をしてきましたか。それとも、受験のテクニックを身に付ける練習をしてきましたか。確かに、EJUはマークシート方式です。受験のテクニックで解けてしまう問題もあります。マークシート方式のテストの特性に合わせた勉強だけで結構な点数を取って進学していった学生も実際にいます。しかし、そういう学生たちは、考えに考えて自分なりの答えにたどり着き、それを関係する人々に示し、議論し、より高い次元の問題解決へと登っていく人材を育成する教育に耐えられるでしょうか。

大学院に進もうと考えているみなさんには、大学進学希望者以上にこういう頭脳が要求されます。真の研究には模範解答などないのですから。道なき道を歩むことが、道を切り開きながら前進することが、大学院における研究です。研究の結果、ネガティブな結論に達することもあるでしょう。しかし、それもまた、立派な研究成果なのです。それを乗り越えて新たな地平に光明を見出すには、マークシート的思考では力不足です。

KCPでは、みなさんにこうした普遍的な力をつけてもらうべく、日本語での思考力を鍛える授業に取り組んでいます。時には何かを暗記させることもありますが、それはその彼方にある思考力を得るための一里塚なのです。

みなさん、真の思考力を身に付けて、私たちと日本語で議論しませんか。みなさんがそういう力をつけてもらうためとあれば、我々教職員一同は努力や支援を惜しみません。そして、みなさんと実際に議論できる日を、首を長くして待っております。

本日は、ご入学本当におめでとうございました。

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凍えそう

1月8日(水)

寒い1日でした。東京の最高気温は7.6度で、平年を2度ほど下回り、1年で最も寒い時期の平年気温よりも低くなりました。でも、予報では最高気温18度だったんですよ。10度も違うなんて、派手にはずしたものです。

気象庁のデータを見ると、神奈川県の横浜が8.5度なのに、三浦は16.4度。千葉県の木更津7.7度に対して、君津16.4度。どうやらこのあたりに寒気団と暖気団の境目があったようです。東京はそれよりも幾分北なので、真冬以上の寒さだったというわけです。予報はこの境目がもう少し北上すると踏んだけど、実際には神奈川と千葉を二分するにとどまりました。東西方向に移動する天気の予報はよく当たるけれども、南北方向には弱いという、天気予報の弱点がもろにあらわになりました。

この寒さにもめげず、新入生たちはプレースメントテストに挑みました。来るべき学生はみんな来たとのことですから、立派なものです。

このテストで、中国人学生の多くが、自分の名前をアルファベットで書きました。最近、名前をカタカナで書く学生が増えたと思っていましたが、ピンインで書く学生は見かけませんでした。聞いてみると、どうやら、日本への入国の際にも、区役所で外国人登録をしたときにも、漢字の名前は受け付けてもらえなかったようです。簡体字よりもアルファベットの方がコンピューターへの親和性は高いでしょうが、私たち日本人はWANGよりも王の方がわかりやすいです。学生たちにお願いして、漢字のなめを書いてもらいました。

明日はオリエンテーション、明後日は入学式。学生たちは、卒業するまで初めてKCPを訪れた日の寒さを覚えているでしょうか。

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じじいに手玉に取られて

1月7日(火)

日産のカルロス・ゴーン元会長が海外逃亡して1週間余りがたちました。日本脱出の方法が次第に明らかになってきました。

最初にこのニュースに接した時、入管は何をやっているんだという怒りがこみ上げてきました。留学生には厳しいことを言い続けているくせに、保釈中の容疑者をあっさり出国させてしまったのです。しかも、共犯者たちはわりとあっさり抜け穴を見つけられたと言います。入管とは「出」入国管理庁ですからね、入国のチェックだけでなく出国の管理も厳重に行ってくれなければ困ります。入管職員は全員10%減俸ですね。

それにしても、妻と一緒にお酒を飲んでいるゴーン元会長、ずいぶん年を取りましたね。経営不振の日産に乗り込んできてから20年ほどでしょうか。若さと目力を感じさせられた精悍な顔つきは影を潜め、こずるそうなじいさんがにやけていました。こういう姿に対して「晩節を汚す」という評価を下すのは、日本人の典型的な発想なのでしょうか。日産のお金を自分のものにしていただけでも十分名声が地に墜ちましたが、今回の不正出国で地中深く沈みこんだ感じです。

入管も同じです。荷物の箱がでかすぎるからX線検査をしないなんて、想像だにしませんでした。これじゃあ、犯罪者の高跳び天国じゃありませんか。まあ、要するに、日本のお役所共通の、弱きをくじき強きに屈するパターンですよ。出席率の悪い学生にもビザ更新を認めろとまでは言いませんが、杓子定規な法令解釈によって泣かされている留学生にも目を向けてもらいたいです。

今年はオリンピックイヤーで出入国が激しくなります。ゴーン元会長の例が再発しないように、入管さん、しっかりやってくださいね。

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