Category Archives: 社会

メトロポリタン口

10月29日(金)

課外授業で、池袋の防災館へ行きました。感染状況が落ち着いてきたので、本当に久しぶりに学校の外へ出ようということになったのです。読解の時間で地震に関する教材を扱い、実際に災害に見舞われた際にどう行動するべきか、それを学びに行きました。

まず、学生が集まりませんでした。中級の学生ならたやすく見つけられるだろうと思って、集合は池袋駅メトロポリタン口としました。しかし、集合時刻までに姿を現したのは半数以下でした。多くの学生が朝から池袋探検をしたようです。新宿から池袋まで、スマホに言われたからでしょう、湘南新宿ラインに乗ろうとした学生がいました。ところが、今朝は運転見合わせとなってしまいました。「どうしましょう」という電話が入りました。山手線で行くという知恵が回らなかったのです。東京で暮らしていけるか、不安になりました。

ゆとりを持って予定が組んでありましたから、防災館の約束の時間には間に合いました。グループに分かれて体験+見学です。私のグループは、最初に地震のVRを見ました。作り物だってわかっちゃいるけど、迫力は感じました。今から玄関につながるドアが開かないとき、どうしようって思いました。

震度7の体験は、それ以上でした。緊急地震速報の、あの不吉な電子音とともにテーブルの下に身を隠しました。しかし、震度7の揺れだとテーブルの天板に頭がぶつかるんですねえ。ヘルメットや防災頭巾の意味がよくわかりました。

学生たちはみんな、消火器の使い方などの訓練に真剣に取り組んでいました。不幸にして地震や火事などが襲ってきたときの対処法は、身につけたとは言えないまでも、考えるきっかけにはなったはずです。学生たちにとって、苦労してメトロポリタン口までたどり着いた甲斐はあったと思います。担当のA先生、お疲れさまでした。

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中断

10月28日(木)

テストがある日は、朝一番で出席を取ったらすぐに実施します。授業の後半などというと、それまでの授業は上の空になってしまいます。同じ話をテスト後に繰り返す羽目になりかねません。

出席を取り、毎朝実施している漢字復習テストを済ませ、真打登場という雰囲気で、9:40ごろから今学期このクラス初めての文法テストを始めました。学生の机の間を前に後ろに、右に左に見て回り、答え方が間違っている学生にそれを指摘したり、学生の誤答に落胆したり、微妙な答えに採点の難しさを憂えたり、肉体的にも精神的にも忙しく立ち回りました。もちろん、不正行為未然防止という意味もあります。

そんな中、学生たちが突然、「先生、地震」と言いながら、いくらかおびえた目つきで私を見上げました。地震は立っている人より座っている人の方が感じやすいと言われますが、私は全く感じませんでした。「はい、こんなの、地震のうちに入りませんよ。テスト、テスト」と、テストを続けさせました。何人か、スマホで地震情報を確かめようとした学生もいましたが、それに乗じてカンニングしようという学生はいませんでした。私がスマホ中毒とみているSさんすら、すぐにテストに復帰しました。でも、ここで集中力が途切れてしまったことは確かなようで、少しだけ時間を延長してやりました。

その後は何事もなく授業を進めていきました。会話の授業の最後に、グループで話し合ったことをまとめて発表してもらいました。その最中、感染防止で全開にしていた窓から、「地域のために働いております〇〇××でございます」と、大音量の連呼が入り込んできました。「ごめんなさいね、日本は今週いっぱい、選挙だから…」と謝っておきました。地震も、「ごめんなさいね、日本はプレートの端っこが集まっていて、地震が多いんですよ…」とでも謝っておけばよかったかな。

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早くしてくれ

10月25日(月)

11月のEJUの受験票が届きました。学校を通して団体受験申し込みをした学生の分です。届いたのが授業の始まった後でしたから、学生本人に手渡すのは明日になります。ここまでくれば、よほどの天変地異でもない限り、中止ということはありえないでしょう。

しかし、学校としては、まだ胸をなでおろすわけにはいきません。11月までの来日を見込んで日本国内での受験を申し込んだ学生たちが、まだ誰1人として入国できていません。11月14日の本試験を受けようと思ったら、今すぐにでも来日しなければなりません。11月30日に設定された追試験を受けるにしても、待機期間を考えると、11月15日には来日していないといけません。

一刻も早く政府に動いてもらいたいところですが、現在、衆議院選挙の真っ最中で、動ける状況ではありません。どんなに早くても31日の投票日後ですから、11月14日の本試験受験は絶望的、30日の追試験も黄信号かもう少し赤っぽい中央線のラインの色ぐらいでしょうか。

感染状況がひどくない国からの留学生は、ワクチン接種済みを条件に待機期間を5日間ぐらいにしてくれたら、多少は望みが出てきます。でも、そういう政策は取らないでしょうね、政府は海外からの留学生に冷たいですから。自民党がボロ負けして政権交代などとなったら、留学生の入国なんかかすんでしまいます。自民党が勝っても、まず経済政策とか言って、やっぱり後回しにされてしまうでしょう。どちらに転んでも、明るい兆しは見えてきません。菅さんが夏あたりに抜き打ち解散とかしておいてくれたら、今ごろは多少落ち着いて、「そういえば、留学生も入れなきゃね」などとなっていたかもしれません。

本人に渡らないかもしれない受験票の入った水色の封筒を見るのは、心が痛みます。

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東京ドーム

10月18日(月)

今、扱っている読解のテキストに、説明をわかりやすくするには「東京ドーム3個分」などというたとえを使うといいという一節がありました。“A氏は東京ドーム3個分の敷地の大豪邸に住んでいる”と言ったらわかりやすいでしょうか。とんでもなく広いということは伝わりますが、それ以上ではないでしょう。それよりも“うちの敷地の1000倍だ”などという方が、実感が伴うのではないかと思います。東京ドームよりも自分ちの方がはるかに身近ですからね。でも、それでは一般の人にはわかりません。だからこそ、具体的イメージは犠牲にしても、東京ドームなのです。

その東京ドームにしても、伊勢丹新宿本店の延べ床面積の方が広いとなるとどうでしょう。伊勢丹が広いと受け取るか、東京ドームが意外と大したことがないと感じるか、人それぞれでしょう。観客席も取っ払った東京ドーム全体に売り場が広がっていたら、見て回る気がなくなるでしょうね。だから、東京ドームも広いのかなあ。

東京ドームの面積は、200m四方よりももう一回り大きいくらいです。ということは、東京ドーム3個分とは、200m強×600m強ということです。御苑と三丁目の駅間距離が700mですから、御苑の一番西側と三丁目の一番東側で600m強でしょうか。その間を幅200mで占領するとなると、相当なものです。

さて、学生の反応はどうだったかというと、Gさんから「東京ドームって何ですか」という質問が真っ先に出ました。Gさんは野球に関心なさそうだもんね。

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どんでん返し

10月8日(金)

昨夜はひどい目に遭いました。EJUの数学の模範解答を作っていたらすっかり遅くなってしまいました。戸締りをして学校を出て御苑から丸ノ内線に。平時に戻ったとはいえ、夜遅い時間帯の電車は2年前に比べたらずいぶん空いています。私も腰掛けて本を読んでいました。

四谷三丁目を出て程なく、急ブレーキがかかりました。ほぼ同時に、かばんの中のマナモードになっているスマホが精いっぱいのうなり声をあげました。強い地震が発生したので緊急停止したと車内アナウンスがありましたが、揺れは全く感じませんでした。だから、すぐに運転再開するだろうと思っていましたが、結局20分ほど待たされました。でも、おかげで本のページがどんどん進みました。

赤坂見附で乗り換えた銀座線は、運転再開直後だったからでしょうか、けっこう混んでいました。車内で日比谷線は人形町・北千住間で運転見合わせという気になるアナウンスが。上野で降りて日比谷線の改札まで行ってみましたが、入口が閉鎖され、ホームに入れませんでした。まあ、上野まで来ればうちまで3キロちょっと。JRも全線止まっているとのことでしたから、タクシーは遠距離の人に譲って、歩いて帰ることにしました。暑すぎず、寒すぎず、歩くのにはちょうどよかったです。本気で歩いて30分少々。

南千住駅はメトロもJRもTXも止まっているみたいで、いつもは事務所に引っ込んでいる駅員さんが改札口に出ていました。さらに数分歩いてマンションのエントランスに着くと、“地震のためエレベーターは運転停止中”という張り紙が。こんなことなら、四谷から引き返して学校の近くの東横インにでも泊まればよかったと思いました。

自分の足で29階まで上がるほかありません。夏休みに、暇に飽かして1往復だけしましたが、こんな形で必要に迫られるとは…。涼風に吹かれて心地よい夜空の下のお散歩が、ゴール直前で滝のような大汗をかく羽目に陥ってしまいました。階段室って蒸し暑いんですよね。

結局、学校から家まで、普段の倍の時間がかかりました。玄関を入るや風呂場に直行し、シャワーを浴びました。

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去る人

9月27日(月)

白鵬がついに引退するようです。36歳で、膝をはじめ体中いたるところにけがを抱えています。体力的にもう限界なのでしょう。今場所は白鵬の部屋で感染者が出たため出場停止になりましたが、内心ほっとしていたのではないかと思います。

白鵬が強い横綱だったことは疑いようがありません。優勝回数、幕内勝利数、横綱勝利数など、多くの記録を塗り替えました。1位になれなかったのは、連勝記録ぐらいではないでしょうか。しかし、高く評価する声ばかりではありません。取り口が汚いとか、相撲の伝統を知らないとか、批判的な評価も多いです。そういう者が親方になって弟子を育てられるのかという疑問すら上がっています。

でも、私は白鵬の功績を大いに認めます。朝青龍が暴行事件を起こして去った後の相撲界を支えたのは、明らかに白鵬です。その間、相撲界そのものが本場所も開けないほどの危急存亡のときを迎えました。白鵬がいなかったら、その危機を乗り越えられたかわかりません。

問題は、今後です。土俵上は、ちょうどうまい具合に照ノ富士が横綱になりました。しかし、2人の大関は8勝7敗だし、それ以下に照ノ富士を脅かしそうな力士も見当たりません。中心となるべき照ノ富士は29歳、いつまでもつかわかりません。また、白鵬自身、相撲界においてどういう地位を築いていくのでしょう。毀誉褒貶が激しいですから、組織の中で生き抜いていけるのか心配です。貴乃花が結局やめてしまったという例もあります。

白鵬はいろいろありましたが、大きな足跡を残しました。心から「お疲れさまでした」と声をかけようと思っている方も多いでしょう。しかし、同じくもうすぐやめる菅さん、あんたはどうなんですか。「お疲れさまでした」と言ってもらえるほどのことを成し遂げましたか。

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我が道を行く

9月21日(火)

人間、与えられたチャンスを生かそうとするタイプと、自分の殻に閉じこもって出てこようとしないタイプとがあります。後者は自分のやり方・考え方が最高で、それ以外は認めないとするものです。自分というものをしっかり持っていると言えば聞こえはいいですが、単に頭が固すぎてチャンスをみすみす逃していることが往々にしてあります。私のクラスならSさんがその最たるものでしょうか。自分の意に染まないことは、全くやろうとしません。学校だって、休み続けると日本にいられなくなるから、やむを得ずオンライン授業に参加しているというのが本音だと思います。

そういう気持ちの差が如実に表れているのが、先週から取り掛かっている期末タスクです。担任のH先生の絶妙な人事配置で、Sさんタイプの学生が集まらないように振り分けられていますが、そうするとグループ内でタスクに対する温度差が生じて、これもまた厄介な問題です。

DさんとXさんに至っては無断欠席です。対面授業なら学生間の交流関係もある程度はつかめますから、どうにかして連絡を取れなどと言い切ってしまうこともできます。しかし、オンラインとなると、学生同士のつながりがさほど育っておらず、連絡の取りようがない場合も十分考えられます。欠員がいるグループは、タスクがうまくいくかどうか心配な様子で、いない学生の分はどうしたらいいかと聞いてきました。自分の担当分をきちんと完成させるようにと指示しておきました。

ここに登場した人たち、人の迷惑というのを考えたことがあるのでしょうか。チャンスを生かそうとしている学生のチャンスをつぶすようなことだけは、しないでもらいたいです。

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初対戦

9月17日(金)

画面には、いつになく緊張した表情のGさんが映っていました。10月早々に面接試験を控えているので、その面接練習をしました。Gさんはこれが初めての面接練習で、入試の面接とはどういうものかということも知りません。本番は対面ですが、手始めはオンラインで。

「簡単でけっこうですから、自己紹介をしてください」というと、名前と出身地だけという、本当に簡単極まる答えが返ってきました。自分を印象付ける言葉を、ほんの一言でいいですから、付け加えてほしいところです。

Gさんが予想していると思われる順番とは違う順番、違う言葉で質問すると、もうあたふたしてしまいます。その様子が、画面越しに手に取るようにわかりました。私のような根性にねじ曲がった面接官は、そういう受験生を見ると、ちょっといじめてやりたくなります。Gさんの答えの矛盾点を衝いて、窮地に追い込んでしまいました。

そういう影響があったせいでしょうか、Gさんは致命的なミスを犯してしまいました。大学でヒューマノイドロボットについて勉強したいというので、どんなヒューマノイドを作りたいか聞きました。すると、危険な場所で作業するヒューマノイドだと言います。さらに、なぜそういうヒューマノイドを作りたいのかと聞くと、「危険な場所で事故が起きて人間が死んだら、命は1つですから大変なことです。しかし、ロボットは事故で壊れても大丈夫です。代わりがいますから」。前半はともかく、後半は1発アウトでしょう。ロボとの使い捨て、ましてやヒューマノイドが壊れても“大丈夫”という発想は、大学の先生には受け入れがたいでしょう。

Gさんは本番までもう1回か2回面接練習をするチャンスがありますから、これから鍛えていこうと思います。暑い頃に出願した学生たちの勝負の時期が近づいてきました。

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潮時?

9月15日(水)

Lさんが今学期いっぱいで退学します。Lさんは4月にKCPに入学したものの、来日できずにオンラインで授業を受けています。まじめで積極的で好感の持てる学生です。来日したら、ぜひ実際に会って話をしたいと思っていた学生です。

理由は明快です。来日できる見通しが立たないからです。来年4月の大学進学を目指していましたが、この分では本当に進学できるかどうか全然見えませんから、国で進学することにしたとのことです。Lさんほどの学生が熟慮の末に至った結論なら、残念ですが、受け入れるしかありません。

国で進学するにしても、Lさんは大学での勉強開始が1年遅れてしまいました。日本語力は確実に伸びましたから、この半年間がまるっきり無駄だとは思いません。Lさん自身、大学は国だけど、大学院は日本でと考えているようですから、先行投資だと思えないことはありません。でも、本当のところ、どうなんでしょうね。

去年のように11月ごろに入国可能になるかもしれません。ですが、それは希望的観測に過ぎず、それを根拠にLさんを強く引き留めることはできません。Lさんも、そういうことも勘案して、ぎりぎりの判断をしたに違いありません。だからこそ、その決定を尊重したいです。

Lさんのように、人生設計を立て直さなければならない留学生が大勢いることでしょう。日本の政府は何をしてきたのだろうと思わずにはいられません。未必の故意とまでは言いませんが、ベストかそれに近い手を選んできたのだろうかと、疑いの目を向けたくなります。

その政府の頂点に立つことになる人を、選挙の顔という、個人の都合のレベルで選ぼうとしている人たちが暗躍しています。Lさん、日本へ来るのは4年後ぐらいがちょうどいいかもしれませんよ。

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お呼びがかかる

9月9日(木)

今年度になってから、いくつかの地方自治体から留学生向けの進学説明会の案内が届いています。何年か前からお付き合いしているところもありますが、今年初めてというところがほとんどです。何とかして留学生を呼び込みたいのでしょう。

地方の大学は学生を集めにくいという面はあると思います。ただし、最近の報道によると、減ったとはいえ感染者数が桁違いに多い東京に出るのが不安で、地元での進学を希望する高校生が増えているとも言います。18歳人口が減り続けることを見越して先手を打とうとしているのかもしれません。

多様性という観点から留学生の募集に力を入れているとも考えられます。少し前になりますが、ある地方都市を旅行で訪れた時、「大学を誘致することで毎年XX名の学生が入ってきて、留学生も何名か住むようになる」というポスターが街の一番にぎやかなところに貼られていました。わざわざ留学生のことが書かれているという点に期待の大きさを感じました。

さて、当の留学生たちですが、あまり関心を持っていません。大学だとランキングが気になるでしょうが、大学院は研究内容優先ですから、少しは目を向けてもいいと思います。しかし、そういう学生の話は私の耳に届いていません。地方の大学に進学した卒業生に聞くと、特に国立大学の学生は、地元の人から尊敬されるそうです。留学生なら、それに輪がかかります。また、稀有な経験をしたいのなら、東京じゃなくて地方でしょう。日本らしさを感じたいのなら、やはり地方です。東京は、国際的すぎます。

地方のお話を聞いていると、私が行きたくなります。その地方ならではの研究をしてみたです。私の代わりに行ってくれる学生を探しています。

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