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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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9500円

11月22日(土)
 所用があって新宿駅付近を歩いていたら、1万円の図書カードが9500円で売られているのを見つけ、財布の中の1万円札を全部はたいて買い占めました。夏ごろにやはり9500円で買った図書カードがそろそろなくなってきたので、いい値段のがあったら買おうと思っていたところでした。
 私は1万円の図書カードなら9500円台以下でないと買いません。9600円のところはけっこうありますが、9550円を割る店は少ないです。だから、9500円ジャストなら即買いです。私は活字中毒ですから、1か月1万円まではいかないまでも、数千円は書籍代として使っています。そういう者にとって、5%は大きいですよ。3月までは消費税分が丸々返ってくる計算だったんですから。
 うちの近くのスーパーには書籍売り場があります。そのスーパーのポイントカードを持っていると、毎週日曜日は税抜き100円につき5ポイントもらえます。ポイントがたまると1ポイント1円で使えますから、5%割引ということになります。書籍は図書カードでの支払いができますから、9500円で買った図書カードを使うと、しめて10%近い割引という計算になります。書籍販売には値引きはありませんが、私はこうして値引きを勝ち取っています。
 今読んでいる本は、宮部みゆきの「ソロモンの偽証」です。500ページぐらいの文庫全6巻の3巻目に今日入ったところです。宮部みゆきのストーリーには引き込まれます。多数の登場人物を見事なまでに操っています。電車の中で読むと、あっという間に降りる駅っていう感じです。いよいよ佳境ですから、連休中は読み浸っちゃうかもしれません。

  • 2014年11月22日(土)17時39分

ま、いいか

11月21日(金)
 朝、Wさんから風邪で欠席しますというメールが入りました。無断で休む学生が多い中、感心なことです。Cさんは学校へは来たものの、授業中ずっと鼻をかんでいました。欠席するものかという心意気は立派なものです。
 でも、そもそもは風邪をひかないように日々暮らしていかなければならないはずです。WさんもCさんも、若くて立派な体格をしていますが、年寄りで貧弱な体つきの私のほうが病気をしないのはなぜでしょう。睡眠時間だって間違いなく私のほうが短いです。
 学生たちと私の違いは、サービスを受ける側か提供する側かです。サービスを受ける側が休むのは権利放棄なのに対し、提供側が休むと義務を果たさないことになります。当然後者のほうが休むことへのためらいが強く、その原因となる風邪に対しても、かかわりを持たないようにとあれこれ手を尽くします。
 最近の学生はお金持ちだからでしょうか、権利は100%行使しようという貪欲さはなく、「ま、いいか」っていう軽さで休んだり遅刻したりしちゃうような気がします。このままだと、風邪をひくとかひかないとかじゃなくて、人生において負け組になっちゃうんじゃないかと心配です。
 また、M先生の見立てによると、国で甘やかされて育ってきた学生が多いので、ストレスに弱いとのことです。自分で何かを決めなければならないときそのストレスが最高点に達し、体が変調を来たし、学校を休むのです。いずれにしても、学生を預かる側としては大問題です。
 「ま、いいか」から脱却させるのが教師の勤めとはいえ、難しいものがあります。

  • 2014年11月21日(金)22時49分

不安ですよね

11月20日(木)
 受験講座が終わった後、今週末に面接試験があるSさんとKさんの面接練習をしました。2人とも超級の学生ですから日本語そのものには大きな破綻はありません。細かいミスはあっても、面接官に誤解を与えるような致命的な間違いは見られません。問題は、内容です。
 Sさんは担任の先生と何回も練習しただけあって、スキがありません。ガードを崩してやろうといろんな角度からパンチを繰り出しましたが、ダウンは奪えませんでした。面接官に意地悪な先生がいたらこんな質問が出るかもよっていう指摘と、発音の矯正を少ししただけでした。自滅のスリップダウンさえしなければ、勝ち目のある勝負ができるのではないかと思っています。
 Kさんはすでに1つ落とされているだけに慎重です。しかし、性格的なものがあるのかもしれませんが、ついつい余計なことを言ってしまいがちです。自分の考えを少しでも正確に伝えようという気持ちはわかりますが、焦りまで伝わってきてしまいます。面接官に乗せられてのっぴきならない状況に追い込まれねばいいがと思いました。
 Kさんにしたら不安でならないのでしょう。落とされた大学での面接がフラッシュバックしてきて、こういう場合にはどう答えたらいいかあれこれ尋ねてきました。そして、その想定問答を何回も確認するのです。また、もう提出してしまった志望理由書の内容にも不安を覚え、書き出しはこうすればこうすればよかったなどと、妙なところで反省もします。
 Kさんには今度の大学には受かってほしいです。受かってもおかしくない力は持っています。国立にも挑戦するつもりですが、その前にどこか受かっておいて、余力のある戦いをしたいところです。あとは祈るほかないところが苦しいところです。

  • 2014年11月20日(木)22時24分

果敢に挑戦

11月19日(水)
 Y先生の代講で入った初級のクラスは、ちょうど日本人ゲストとの会話の授業でした。日本語教師ではない一般の日本人ですから、初級だということは知らされているものの、だからどんな文法や語彙がわかるとなると手探りというところです。学生たちは、そういう日本人ゲストに果敢に立ち向かいました。
 学生たちは宿題という形で会話のテーマについて調べてきています。どんな話題を出すのか、ゲストに何をどんなふうに質問し、自分の考えをどのように伝え、ゲストの話から何を得るのかといったことを考えてきました。「よろしくお願いします」という挨拶が済んだら、各グループとも考えてきたことを話し出しました。
 会話というかコミュニケーションは、自分の言いたいことを述べ立てて終わりというわけにはいきません。相手の意見や主張にも耳を傾け、自分の欲する情報を手にするという受信もできなければ成り立ちません。自分たちの日本語力をフル活用して発信し、全身を耳にして受信し、この授業の目標を達成すべく会話に集中していました。
 時間の最後にゲストの方々に感想を聞いたところ、教えられるところが多かった、学生たちの意欲に圧倒されたという声が上がりました。多少の外交辞令を差し引いたとしても、学生たちが自分の思いのかなりの部分をゲストに伝えられたのではないでしょうか。
 初級の学生にとって、自分の日本語が教師以外の日本人に伝わるというのはある種の快感なのだと思います。私も昔自分の英語が外国人に通じたとき、えもいわれぬ喜びを感じました。きっとその瞬間に脳内麻薬が出たのだと思います。その快感にどっぷりつかりたくて、外国旅行までしちゃったくらいですから。残念ながら、留学まではできませんでしたが…。
 初級の学生は、日本で暮らしているといっても、生の日本人とある事柄について深く話すチャンスはそうめったにあるものではありません。KCPは努めてそういうチャンスを作ろうと、ほとんど常時会話ゲストを募集しています。詳しくは日本語教師養成講座のページをご覧ください。

  • 2014年11月19日(水)19時24分

泣きが入る

11月18日(火)
 中間テストがありました。私が作った問題をやった上級クラスからは難しいという声が上がりましたが、上級ですから難しくて当然ですよ。
 学生たちが一番苦戦したのが、単語の用法の問題です。「勇気な人」ではなく「勇気ある人」でなければなりません。「夢中している」ではなく「夢中になっている」でなければ間違いです。「勇気」も「夢中」も中級で勉強した単語ですから、漢字の読み方や意味は知っています。でも、それはそれらの単語が「読んでわかる」のレベルに達しただけであって、「自在に使える」段階には至っていません。
 要するに、理解語彙を使用語彙にレベルアップさせようという意味で設定した上級の授業の一環として、今回のテストがあったのです。学生たちにとっては一番痛いところ、弱いところを突かれたわけですから、弱音の一つも吐きたくなります。こちらとしては学校にいるうちにたくさん失敗させることが学生たちにとって最高の教育だと信じていますから、傷口に塩をすり込むような問題を出すのです。
 実際に採点してみたら、学生たちが嘆いたほどひどい点でもありませんでした。かろうじてではあっても合格点はキープしている学生が大半でした。KCPで上級まで進級してくるとなると、相当な日本語のセンスがあるのです。頭の中に日本語的感覚のネットワークができていて、そこに流すと当たらずとも遠からずの答えが得られるようになっているのでしょう。
 明日から今学期の後半戦です。学生を適度に泣かせつつ鍛えていきたいです。

  • 2014年11月18日(火)17時27分

すっかり冬

11月17日(月)
 先週末ぐらいから朝がずいぶん冷え込むようになりました。電車を待っているとき日本を読む手が冷たくなります。まだかじかむまではいきませんが、電車に乗ったら首筋に手をやり、指先を暖めます。私が電車に乗るのが早朝だから冷たく感じるのかと思っていましたが、今日はお昼を食べに外に出たときでもけっこうな寒さでした。日中は日が射さず気温も14度台でしたから、そう感じるのも当然です。暖冬という長期予報が出ていますが、果たしてどうなのでしょうか。
 今年は秋が短かったように感じます。10月からスーツ着用でしたが、初旬ははっきり言ってスーツがうっとうしかったです。でも、下旬になるとコートがほしくなり、つまり、普通のスーツでいられたのは1か月足らずだったんじゃないでしょうか。温暖化が進むと季節が夏と冬に集約されるとも言われます。もしそうだとすると、温暖化が着実に歩みを進めているっていうことなんでしょうか。
 教室はどうかというと、今のところ暖房をつけているところはないんじゃないかな。今日は中級クラスでしたが、中間テストの範囲の文法の復習をしたら、エキサイトして暑いくらいでした。やっぱり省エネ授業をすると薄ら寒く、学生たちにがんがん突っ込んでいくと体がほてってきます。
 明日は中間テストです。問題に手も足も出ずに、教室中がひやんとした空気に包まれる、なんてことがないように願いたいです。

  • 2014年11月17日(月)19時22分

防災訓練

11月15日(土)
 花園小学校も校庭で催された、地域の防災訓練に参加しました。
 8:45ごろに小学校に入ると、その直前に地震発生という想定で校庭に避難していたと思われる小学生が、ちょうど教室に戻るところでした。朝一番で訓練開始だったのでしょうか。感心なものです。校庭でしばらく待った後、消防の人の案内で、非常用の飲料水受水槽や消火栓を見学しました。道路に埋め込まれている消火栓のふたの中を初めて見ました。中には消火用水を送り出すパイプの差し込み口と送水バルブがありました。消火栓のふたを開ける工具や栓につなぐパイプって、町内会の倉庫から持って行くんですね。よく考えれば当たり前のことですが、じゃあ私のうちの近くにある消火栓は、そういうものがどこに置かれているのでしょうか。ちょっと考えてしまいました。
 その後、起震車に乗りました。これまた初体験でしたが、いきなり震度7でした。「突き上げるような揺れ」と大地震のたびに報じられますが、まさにそのとおりでした。立っていられないどころの騒ぎではなく、土下座するようなかっこうで床に伏し、神様ごめんなさいってつぶやいていました。つぶやいたというよりは叫び声をあげる余裕がなかったというべきでした。何の前触れもなくこんな揺れに襲われたら、文字通り腰が抜けてパニックに陥るかもしれません。今日は「この揺れはもうすぐ必ず収まる」とわかっていましたから冷静にいられましたが、本当の地震ではどうなってしまうのでしょう。
 次は煙体験。煙が充満した5mほどのテントを抜ける訓練をしましたが、煙のせいで何も見えませんでした。今日の煙はもちろん無害でしたが、本番はそうは行きません。ハンカチで口を押さえつつ匍匐前進するのでしょうが、何も見えないという不安に加えて、火が迫ってくるという恐怖に耐えられるでしょうか。真っ白な視界の中、「これは訓練なんだ、すぐそこに出口があるんだ」という信念(?)に支えられて歩きました。そういう気持ちに頼っていた、逃げていたというほうが正確です。この安心感がない本当の地震や火災のときの心理状況は、想像すらできません。
 私以外の先生方は、消火栓につないだホースからの放水体験もしていました。私はかつて勤めていた化学工場で今日の倍ぐらいの太さのホースでさんざん訓練されましたから、こちらはパス。
 消防署の方の話によると、火災の原因の不動の第1位は放火だそうです。私はタバコが1番だとばかり思っていましたが、ごみに火をつけられることが多いと言っていました。KCPはきちんと管理されたごみ置き場を利用していますが、時々、朝、学校の前にごみが捨てられていますから、完全に安心はできません。
 この防災訓練は、実に中身の濃いものでした。またぜひ参加したいと思いながら、非常食の実演で町内会の役員の方々が作ったα化米の味ご飯とカップヌードルの保存缶をもらって学校に戻りました。

  • 2014年11月15日(土)17時36分

点が取れる例文

11月14日(金)
 上級クラスで文法テストをしました。最近休みがちで明らかに勉強不足のSさんがよくなかったのは当然として、他の学生は大きく2つのグループに分けられました。4択問題はできるけれども短文作成問題で沈没した学生たちと、短文作成も乗り越えた学生たちです。
 短文作成沈没組の代表格はLさんです。短文作成になると4択の勢いがぴたりと止まり、意味不明の例文の連続です。ここでいう意味不明とは、文意がわからないということではなく、どうしてそういうことを言いたい時にこの文法項目を使うのかがわからないのです。この短文はどういう発想をし、どういう勘違いを繰り返せば生まれてくるのか、浅学菲才な私は頭を抱えるばかりです。
 Hさんは誰よりも努力していますから4択は強いです。しかし、短文作成に関してはその努力が効率的に回っているとは思えません。努力では埋められない事柄に対してもろさを露呈したというところでしょうか。このあたりがHさんの限度かもしれません。
 こういう学生に引き換え、TさんやDさんはそつのない短文を書き、確実に点数を上げてきます。安全運転の短文ですが、その文法項目の要点をきちんと押さえているので、文法テストの上では高い評価になります。上級の文法ではなく、初級の文法のミスによって満点を逃してしまいました。
みんなの日本語で言えば初級の青い教科書に入ったあたりから、学習者の語学センスが物を言い始めます。この時点で教師がもっと力強く引っ張っていれば、Lさんがここまで偏って成長することもなかったでしょう。TさんやDさんはその山をこともなげに通過し、よりいっそう日本人の発想に近づいていったのでしょう。
 さて、午後は初級クラスを担当しました。ちょうど今、その問題の文法のあたりをやっています。Tさん、Dさんを思い浮かべながら授業をしました。この学生たちの1年後はどうなっているのだろうかと頭の中がよそ見をしていたら、なんだかミスの多い授業になってしまいました。

  • 2014年11月14日(金)22時59分

遅刻の山

11月13日(木)
 今日の私のクラスは遅刻が大勢いました。電車の遅延ではなく、なんとなく遅れてしまった学生ばかりです。そのうちYさんとLさんは家庭を持っていますから、そちらの事情で遅刻せざるを得ないこともあるでしょう。しかし、ほかのやつらはこれといった理由もなく単なる寝坊による遅刻です。
 このクラスの学生は勉強する気がないわけじゃありません。中間テストの前に追試や再試を受けよう、文法の例文を出そう、そういう意識があります。でも、やってることがマッチポンプだって気づかないんでしょうか。追試を1つ片付けても、遅刻したらまた未受験のテストが増えるのです。自転車操業にもなっていません。
 同じクラスに入学以来1年以上無遅刻無欠席を続けているMさんがいます。でも親しい友達でもMさんのそういう面を見習おうとはしないようです。Mさんだってアルバイトをしていますから、アルバイトがきついからというのは理由にはなりません。アルバイトをしていない学生がのんびり遅刻してくるのは論外です。
 Yさん、Lさんだって、留学ビザの学生よりは条件が悪いです。それにもかかわらず、勉強しようという、現状に甘んじていてはいけない意志が感じられるし、遅刻欠席は必要最小限にしようとしていることがわかります。
 月曜日にさんざん注意したのに、それ以後今日まで改善が見られません。何か罰則を設けないと状況は改善しないのでしょうか。罰則がいやだから遅刻しないというのでは、後ろ向き過ぎるように思えてなりません。でも、あるべき姿に向かって進むには、1歩後退2歩前進という考え方を取るべきなのかもしれません。クラス運営は難しいものです。

  • 2014年11月13日(木)19時46分

新しい学生たちとともに

11月12日(水)
 来年のEJUを受け、2016年に大学に進学しようと思っている学生向けの受験講座が始まっています。上級の学生たちがすっかり抜けて、レベル3や4の学生が中心です。中級の入り口ぐらいの日本語力ですから、先週みたいな調子でしゃべっちゃいけません。余計なことは話さず、単刀直入に要点を伝えていきます。
 何より、日本語の専門用語になじみがありませんから、すぐ“?”という顔になってしまいます。カタカナ語は大敵ですね。“V=IR”と書き示せばわかってもらえますが、“オームの法則”って言っても不得要領な表情のままです。なんだか未開の大地に進んでいくようで、1年後立派に成長しているだろうかと不安でもあり、私の手で開拓していくんだと思うとわくわくもします。
 去年までは11月のEJUが終わったら12月の学期末まで受験講座はお休みで一息つけたのですが、今年からすぐに新しい学生への授業が始まり、「一息」がなくなってしまいました。でも、6月のEJUで運命が決まる大学が少なからずありますから、そのための準備をちょっとでも早く始めようと、スタートの時期を早めました。
 レベル3・4だと、日本語で何かを勉強するのがまだまだ相当な負担です。それをそんなに苦にしない上級や超級の学生と一緒に授業を受けるとなると、どうしても置いていかれがちになります。Kさんもそんな1人で、レベル3だった先学期は途中であきらめてしまいました。しかし、今学期は、先学期よりも日本語力がつき、なおかつ周りがみんな自分と同じレベルですから、のびのびとしています。
 こういうように、11月スタートには早い時期からじっくり育てようという意味もあります。授業時間も6回増えますから、丁寧に教えていくことができます。私も初めての経験ですからこの余裕の時間をどう使おうか手探りの部分もあります。また、教科書も替えたし、動画教材も取り入れていきたいし、研究すべきことが山盛りです。でも、それが片付いたらお正月休み。そっちの計画も立てておかなきゃ。

  • 2014年11月12日(水)18時51分

正解速報

11月11日(火)
 昨日に引き続きEJUの話。どうもあんまりいいうわさが聞こえてきません。
 ある会場では、いすが悪すぎて問題に集中できなかったとか。ネットのいすって言ってましたから、ビーチかどこかに置いておくような折りたたみ式のいすなんでしょうか。もしそうだとしたら、1時間以上にもわたる1科目の試験時間中ずっと座っていろというのは無理があります。
 そのちゃちないすを後ろの席の人に蹴られ続けたので、さらにもっと集中ができなかったという学生も。にらみつけてもやめなかったといいますが、これはその場で試験官にクレームをつけたほうがよかったかもしれません。
 そんなことよりも問題かもしれないのは、試験終了直後に非公式の正解が配られたということです。ある学校が配っていたそうですが、どうやって正解を出し印刷したのでしょう。その学校の受験生が手分けして問題と答えを覚え、それを各科目終了後ただちに学校に連絡し、学校がそれを取りまとめて印刷・配布ということでしょうか。万が一にでも試験時間中に写真を撮って送信するとか、こっそり音声で送るとか、その他何らかの方法で試験時間中に受験生が外部と連絡を取るようなことをしていたとしたら、それは不正そのものです。
 学校が学生を集めるために不正な手段を使ってでもそういうことをしようとするのは、ルール違反で許されることではありませんが理解の範囲内です。しかし、EJUを実施しているJASSOがその不正を発見できなかったとしたら、これは大問題です。EJUの権威にかかわる問題です。もちろん、その学校が正当な手段で正解を入手し公表しているのなら、その努力に素直に拍手を送ります。
 日本の大学は国の大学より楽に入れると思われている節があります。与し易いと思われている原因の一端がこんなところにあったとしたら、不正の見逃しは、故意であるか否かにかかわらず、日本国への裏切りに等しいです。自らの手で日本を貶めているのです。

  • 2014年11月11日(火)17時58分

第1ラウンド

11月10日(月)
 Xさんはいつになく早く登校しました。ロビーから私を呼ぶので行ってみると、昨日のEJUで理科系なのに数学コース1の問題をやってしまったとのことです。最後まで解いてから気がつき、大急ぎでコース2の問題に手をつけたものの時間が全然足りなかったと、肩を落としていました。東大を目指すと言っていただけに、ショックはいかばかりでしょう。
 そのほか、今までとは違う問題が出たので焦ってしまったとか、解けない問題につまずいて頭が真っ白になったとか、あまり景気のよくない話ばかりが聞こえてきました。でも、終わってしまった試験はもうどうすることもできません。約1か月後にどんな結果が出ても動じないように腹をくくっておくしかありません。
 私は試験が終わったら絶対に答え合わせをしませんでした。答え合わせをしたら正解だった問題よりも間違えた問題のほうが強く印象に残り、ああダメだっていう気持ちにしかならないからです。そんなことで落ち込んでいる暇があったら、次にするべきことに進んでいきます。ダメだったことはスパッと忘れて、前を見ます。
 夕方、今年S大学に進学したNさんが来ました。日本人の友達をたくさん作って、授業のノートを見せてもらい、いい成績で単位を取っていると自慢げな顔をしていました。NさんはEJUでは決してすばらしい成績ではありませんでしたが、面接で自分の思うところを存分に語り、難関のS大学に合格しました。
 だから、東大に入ろうというXさんは別として、ほかの学生はまだまだ逆転のチャンスがあります。KCPは発話の訓練をがっちりしていますから、面接勝負なら勝ち目はあります。落ち込んでばかりいないで、明日につながる一歩を踏み出してください。

  • 2014年11月10日(月)21時31分

感度を上げる

11月8日(土)
 上級クラスの文法テストの採点をしました。さすがに上級だけあって、いかんともしがたいようなとんでもない答えは出てきません。しかしというかやっぱりというか、センスの差は現れます。
 例えば、対比を表す助詞の「は」です。これは昨日たまたま初級クラスで扱った文法ですが、この「は」をさらっと使う学生と、「は」なんか頭の片隅にも出てこなかったのではないかという学生がいるのです。
 明日は恋人の誕生日だから、高価なものは買ってあげられないまでも、おいしい料理ぐらいは作ってあげよう――前者の学生はこんな文をつくります。ほぼ同じ内容で“高価なものを…”としてしまう学生もいるのです。「は」でも「を」でも言わんとしていることは十分伝わります。でも、「は」はナチュラルすぎてスルーしちゃいそうなのに対し、「を」だとスムーズに流れないんですよね。
 後者の学生だって対比の「は」は初級で勉強しているはずだし、読解教材なんかでさんざん目にしてますし、日本にある程度いれば日本人の口から生の言葉として出てきたのを耳にしているはずです。それでも自分が文を作るとなると「を」を選んじゃうんですね。「は」に対する感度が、前者の学生に比べて今一歩低いのでしょう。
 前者の学生は「は」を見たり聞いたりしたときに、学校で勉強した対比の「は」とつながり、なるほどこうやって使うんだって納得できたのでしょう。その瞬間に「は」が本当に自分のものとなり、日々の生活の中でも自然に使っていることと思います。
 せっかく日本にいるのですから、学生たちには目と耳の感度を精一杯上げて、日本語が詰まった空気を吸ってもらいたいです。

  • 2014年11月08日(土)17時25分

タイトな日程

11月7日(金)
 明日がA大学の入学試験とあって、このところRさん、Jさん、Eさんと面接練習が続いています。
 A大学のポジションは留学生にとって実に微妙なところにあります。名が通っていますから入ってしまえば自慢もできますし自己満足もできます。でも、東京ないしは東京近郊の国立大学を狙う人には、ここで一息つくわけには行きません。もう一頑張りが待っています。そんなわけで、第一志望であるようなないような、何とも言えない位置づけがなされているのです。
 たとえ本命でなかろうと、受験の時には本命だと思い込んで戦わないと、百戦錬磨の面接官の目はごまかせません。鋭い突っ込みにたじたじになり兜を脱いでしまったら、EJUを含む筆記試験ですばらしい成績を挙げていても合格はおぼつかないでしょう。
 私がA大学の人間だったら、やっぱりウチの大学にどれだけ入れ込んでくれてるかを見極めようとしますね。とすると、うわべの装いを引っぺがすような、単なる答えの丸暗記では対処できないような、受験生の本質に迫る問いかけをするでしょう。心の底からのコミュニケーションを求めるでしょう。そこまで追い込んで、至誠が現れるのを待ちます。
 3人に対してはかなり厳しい面接をしました。合格を確信できるところまでには至っていませんでしたが、私のコメントを生かしてもらえば最後の1つのいすを争うぐらいのところへは行けるんじゃないかと思っています。EJU前日の入試は心身ともにきついでしょうが、吉報を待っています。

  • 2014年11月07日(金)22時58分

立派に育って

11月6日(木)
 理科の受験講座は今日が最終日。今学期に入ってからは過去問ばかりでしたが、多少は問題を解くスピードがついたようです。今日の化学は、EJU1回分の問題を30分で解くというのを2回やりました。大部分の学生が時間内で何とかしていました。Oさん、Hさん、Yさんあたりはかなりの正答率でしたから、立派なものです。同じ条件で私が解く側に回ったら、この学生たちくらいの成績が出せるか疑問です。
 私は朝の誰もいない静かな職員室で問題を解いて解説付き解答を作っています。根を詰めて問題を解きまくるのではなく、答えを出しては解説を考え、時には教科書を広げたりネットに当たったりしています。だから、30分間快刀乱麻を断つがごとく化学のいろいろな分野の問題を次から次へと解き続ける自信がありません。ましてそれを2セットなんて、間違ってもしたくはありませんし、したら泡を吹いて倒れちゃうでしょう。
 そういうことを学生に強いている自分にいくばくか後ろめたさを感じます。でも、あと3日後に迫ったEJUという当面の課題を乗り切るにはこれが一番だと思うからこそ、学生にやらせているのです。受験講座では、可能な限り理科のおもしろさ奥深さに触れてきました。「EJUには絶対に出ない話」なんて前置きしながらやってましたから、学生にとっては受験の役には立たない与太話だったかもしれません。でもここに科学の真髄が隠れていると思っていますし、進学したらそこを極めていってほしいと思っています。茨の道の先にばら色のユートピアが広がっていることを信じて、最後の胸突き八丁の坂道を登りきってもらいたいです。
 来週から暇になるかっていうとそんなことは全然なく、2016年入学の学生たち向けの受験講座が始まります。これから1年がっちり鍛えていきます。

  • 2014年11月06日(木)18時15分

パワポで資料

11月5日(水)
 今学期は毎週火曜日の選択授業で「身近な科学」をやっています。「身近な科学」は去年と今年の1月期にやっていますから、そのときの資料があります。とりあえずネタはあります。今までは紙の資料をレジュメとして配っていたのを、今学期からはパワーポイントにして、紙の節約を図り、図表をふんだんに取り入れて視覚に訴えようと考えました。
 今までの資料にも図表がけっこうあったので、ワードの資料をパワポに貼り付ければ楽勝だろうと思っていましたが、思惑が完全に外れました。確かにある程度はそれでいけますが、写真なんかを次々に見せていけるとなると、ついつい欲張ってしまうんですね。そのせいでパワポがどんどん膨らみます。昨日のなんかは44枚の“大作”になってしまいました。
 私はパワポのスライドのデザインやアニメーションに凝るたちではありませんが、それでも欲をかいてあれやこれやと資料を漁っていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。いいと思ったデータを取り入れるために勉強しなおしたり、裏を取るために周辺事項を調べたりなどしていると、新たに資料を作るのと変わらないくらいの時間を要します。今学期は水曜日が比較的時間に余裕があるのでそれに充てようと思っていると代講が入ったりして、結局「時間がない!」と叫ぶことになります。
 同じことを説明するのに、レジュメとパワポでは提示のしかたが違います。パワポのスライドをまとめて印刷しただけのレジュメがどこか間抜けなのもそういうわけです。逆もまた真なりってパターンで、レジュメを焼き直してパワポというのも無理があるのです。
 同じことが、来週から始まる2016年入学の学生向けの受験講座でも待ち受けています。学生の理解が進みそうなサイトを活用して授業を作っていこうと思っていますが、そうすると授業を根本から作り直さなければならないかもしれません。一気にやるのは無理でしょうから、気長にやっていくことにします。

  • 2014年11月05日(水)18時12分

日本語がわからない

11月4日(火)
 学校の近くのタバコ屋さんから苦情がありました。そのタバコ屋さんはおばあさんが1人で店番をしていて、KCPの学生も利用しています。そのおばあさんが、日本語のよくわからない学生が大挙して来られると困ると言ってきたのです。
 この「日本語がよくわからない学生」というのは、「学生自身が日本語を十分に理解していない」という意味であると同時に、「学生の話す日本語がおばあさんにはよくわからない」という意味でもあるようなのです。おそらく初級と思われる学生たちが大勢そのお店へ行って、自分の言いたいことだけまくし立てているのでしょう。
 商売をしている人が客に来てほしくないというのは、よっぽどのことだと思います。お年寄りは若い人のペースについていくのは難しいです。しかも発音不明瞭な日本語を話されたとあっては、こういう苦情を言いたくもなるでしょう。
 KCPの学生たちに相手を思いやる気持ちが足りなかったと思います。自分たちがお年寄りの処理能力を上回る言葉を浴びせかけていることに思い至らなかったのでしょうか。まさか、そうやっておたおたするお年寄りをいたぶって楽しんでいたとは思いませんが、おばあさんにしたら恐怖心すら感じていたかもしれません。少なくとも、コミュニケーションをとるという面においては、学生たちの行為は全くもって落第ですね。
 自分の言葉を相手が理解して初めて、コミュニケーションは成り立ちます。相手が理解しているかどうか常に観察しながら話を進めていくことがコミュニケーションには必要です。学生たちがそれがわかっていなかったとしたら、その学生たちを教育している私たちにもその責任の一端はあります。難しいものです。

  • 2014年11月04日(火)18時53分

おすすめ

11月1日(土)
 お昼を食べがてら、K書店へ受験講座の理科の教科書を見繕いに行きました。今の教科書は各科目1冊でEJUの試験範囲全てを網羅しているし、練習問題も付いているし、値段もお手ごろだし、十分合格点です。しかし、索引がついていないこと、図版が少ないこと、やや説明不足の部分があることなど不満な点もあるので、来年のEJUを目指す学生向けの受験講座では教科書を変えてみようと考えてきました。
 何回か足を運んである程度候補を絞ってきましたが、決定的なものがありません。図版が多いと値が張るし、説明が多いとはすなわち読まねばならない日本語が多いことだし、練習問題が多いと「なぜ」の部分が少なくなりがちだし…。さんざん悩んだあげく2つにまで絞って、それを買いました。
 本当はこれはK書店ではしたくありませんでした。つい先日、自宅にK書店から「あなたにおすすめの本」というメールが届いていました。何だろうと思って読んでみると、そこにはその数日前にK書店へ行ったとき、買おうと思って一度は手にしたものの、買わずに置いてきた本の名前がいくつかありました。私はK書店の会員で、本を買うときにはポイントカードを提示し、100円につき1ポイントの還元を受けています。そのポイントカードで買った本から私の好みを分析し、おすすめの本を割り出したのでしょう。そしてそれがずばり私の迷った本だったというわけです。
 私は実に順当な迷い方をしていたとも言えますが、それをわざわざメールで知らせられるのは余計なお世話であり不愉快でもあります。あんたに指図されたくないよって言いたいです。書棚の前であれこれ迷いながら自分なりの珠玉の1冊を見つけ出すのが楽しいのです。どういうロジックか知りませんが、人の頭の中を勝手に想像しないでもらいたいです。
 高校生向け物理、化学、生物の本をたくさん買いましたから、次は何をおすすめしてくれるでしょうか。K書店さん、楽しみに待ってますよ。

  • 2014年11月01日(土)17時46分

満腹

10月31日(金)
 U社のGパンにポロシャツを着てその上からビブスを重ね、さらに帽子を目深にかぶると、誰も私だと気づきませんでした。昭和記念公園のBBQ会場への案内に立って、「橋を渡ってすぐ左ですよ」なんて声をかけると、学生も先生も「あ、先生じゃないですか。気がつきませんでした」っていう反応。入り口のところで案内していたら、「今日の新聞に載ってた花なんだけど、どこ?」と、明らかに私を公園の職員と勘違いして質問してくる人も。どうやらこのかっこうは私の気配を消すのに非常に有効なようです。
 BBQは、去年までとは違って燃料が炭になり、火をおこすのに苦労しているクラスもいくつかありました。でも、その山さえ越えてしまえば、あとはいつものBBQの風景でした。今までのBBQに比べると、どのクラスも食材が多く、調理をしている時間も食べている時間も長かったように感じました。11時ぐらいから始めて、1時になってもまだ真っ盛りっていうクラスがほとんどでしたからね。友達のクラスを回って食べ歩くのもBBQのお楽しみのひとつですが、今回はそれがたっぷりできたんじゃないでしょうか。しかし、食材を大量に余らせたクラスもあったと聞いています。それはいただけませんね。
 私も、会場内見回りという任務にかこつけて、受け持ちのクラスや顔見知りの学生がいるクラスの料理をあれこれつまみ食いしました。今回はエビを持ってきたところが多く、2尾ほどいただきました。サンマという、おそらくKCPのBBQ史上初の食材もありました。また、焼きマシュマロがいまどきの流行なのか、いくつかのクラスでやってました。私のクラスのTさんが作ってくれたのをいただきました。とんでもない甘さでしたが、超辛口の焼きそばを食べた直後でしたから、ちょうどよかったです。
 今回は卒業生5名がBBQの進行を手伝ってくれました。会場設営や伝令や料理コンテストの作品撮影や、その他雑用全般に1日中大活躍でした。今日の卒業生もここでのBBQを経験していますから、こちらの言いたいことをすぐに理解してくれます。さらに初級の学生への指示伝達なんかでは、日本語しか話せない教師よりよっぽど役に立ちます。声をかければすぐに集まってくれる卒業生がたくさんいることも、KCPの財産だと思います。
 予報されていた雨に降られることもなく、満腹状態の学生たちはクラスごとに園内を散策した後、満ち足りた顔をして帰っていきました。私も晩御飯抜きでも大丈夫なくらいのおなかを抱えて、昭和記念公園を後にしました。

  • 2014年10月31日(金)20時09分

音読テスト

10月30日(木)
 授業の後に読解の教科書の音読テストをしました。授業で扱ったばかりの読解教材を音読するのです。テストに使うテキストには振り仮名は付いていません。また、文字を1つずつ拾いながら読んでもいい成績はつきません。正確かつ滑らかに読めるかどうかをチェックします。
 Aさんは漢字が苦手で、あっさり沈没。Sさんは強引に読み進みましたが、間違いだらけ。Gさんは漢字の読み方は間違えませんでしたが、ひらがなもスムーズに読めませんでした。普通の日本人がGさんの音読を聞いたら、文章の大意すらつかめないかもしれません。Tさんは発音がイマイチ。濁音や長音があいまいです。
 この4名は受験組で、どうしてもEJUIをはじめペーパーテストのほうに目が向いてしまいます。それゆえ、声を出すという言語の最も基礎的なところが疎かになっているきらいがあります。私たちはそれではいけないと思っていますから、あらゆる機会を利用して初級から声を出すことに力を入れています。
 教師が力こぶをふるって「声を出せ」と言い続けても、進学目的の学生の中には声を出すことが日本語力向上につながるとは思っていない人もいます。極端な例がKさんで、どんなテストでも合格点は確実に取るのですが、話をさせると単語だけか、ひどい発音で意味不明の文を述べ立てます。「そんなんじゃ面接は通らないよ」っていくら注意しても、考えを全く改めません。
 進学した卒業生は、よく、他の留学生に比べて自分は発音がいいと自慢げに報告してくれます。発音練習・音読練習のおかげだと言います。それはうれしいのですが、とするとKさんぐらいかもっとひどい留学生が大学には山ほどいるということです。4技能のうち「話す」以外の3つができていれば、大学で勉強できちゃうんでしょうか。ハーバード大学みたいな大学ランキングでトップ常連の大学の留学生って、単語だけの英会話で入れちゃってるんでしょうか。日本の大学の世界ランキングがあんまり伸びないのは、案外こんなところに原因があるのかもしれません。

  • 2014年10月30日(木)18時28分
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