logo

KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

過去ログ

過去ログ選択フォーム
表示ログ

気分屋

10月29日(水)
 Mさんは理系大学を目指していますが、ムラがあるというか気分屋というか、先週受験講座に出て必死に勉強していたかと思うと、今週は学校にすら来ていないとかっていう有様です。そんな調子ですから大して勉強しているとは思えないのに、EJUの過去問をやらせるとかなりの点数を取ってしまいます。気分屋のいいほうのピークでEJU本番を迎えられれば好成績が期待できますが、どん底で迎えたらそもそも試験会場に顔を出すかどうかもあやしいです。
 Mさん自身がどう思っているのかじっくり話したことがありませんが、どうしても有名校にっていう意識はないようです。今みたいなペースでは入れるところで十分だと思っている節は感じられます。才能はあるもののそれを十分に生かしていません。教師とは欲張りなもので、そういうMさんが歯がゆくてなりません。今までのクラスの先生方も異口同音に「線がつながったときのMさんはすごいんだけどねえ…」と。何とか勉強に目を向けさせようとしていますが、もうすぐ受験という時期に至っても相変わらずのMさんです。
 本人は自分の頭の良さにも、その頭脳の使い道にも気づいていません。自分の才能を余すところなく発揮しなければならないような状況に追い込まれたこともないのでしょう。苦労をしなくてもそこそこの暮らしができちゃうから、よりよい生活を求めて頑張ろうっていう気持ちが湧かないのかな。ハングリー精神がないのかな。
 以前、作文の授業で「若いときの苦労は買ってでもしろ」ということばに対する意見を書かせたことがあります。多くの学生が肯定的な意見を述べていましたが、Mさんはどんな意見を書くのでしょうか。

  • 2014年10月29日(水)18時53分

国の料理

10月28日(火)
 HさんとLさんは、KCPの中では少数派の国から来た学生です。クラスで今週金曜日のBBQの献立を考えるとき、多数派の国の学生に押し切られないように、意識して「Hさんの国の料理も作ってくださいよ」と水を向けました。多数派の国の学生も、「Lさんの料理が食べたいなあ」って応援してくれました。
 ところがHさんもLさんも首を横に振るばかり。少数派だということを意識しすぎて遠慮しているのかと思い、さらに一押ししてみましたが、2人とも全身でNOのサインを送り続けます。しかたなく2人の国の料理はあきらめて、ごく当たり前に多数派の国の料理をつくることになりました。
 2人の国を担当しているSさんに話を聞くと、2人ともいいとこのお嬢様、お坊ちゃまの可能性があるとのことです。その国から日本に留学できるのはかなりの富裕層に限られ、自分で料理を作るなどしたことがないことも十分考えられるとか。もしそうだとしたら、来日1年以上になるのに、2人は今まで自分の国の料理は食べてこなかったのでしょうか。新宿にも2人の国の料理店がありますから、全然ということはないでしょうが、料金を考えるとそう頻繁に通っていたとは思えません。
 私がどこかの国に留学していたらどうでしょうか。「国の料理」って言われても魚は下ろせないから寿司は無理だし、ましていわんや懐石料理なんて金輪際不可能です。鮭茶漬けや冷奴じゃ簡単すぎるから、肉じゃがでも作るのかなあ。いや、外国じゃ豆腐が手に入らないかもしれませんから、そもそも冷奴は出せないかも…。そうやって考えると、お嬢様、お坊ちゃまじゃなくても「国の料理」って案外難しいのかもしれません。HさんとLさんに変なプレッシャーをかけちゃったかなと反省しています。

  • 2014年10月28日(火)18時03分

コート選び

10月27日(月)
 週末にコートを買いました。昨シーズンまで来ていたコートは、もう袖口が擦り切れ、ボタンが取れそうになり、満身創痍の状態で、買い換えることにしました。6年か7年は着ましたから、十分元は取ったと思います。昨シーズンの終わりのバーゲン期を逃してしまったので、少々高いのを承知の上で、寒さが本格化する前に買おうと思い立ったのです。
 買うなら、多少高くても品質のいいものを選びたいです。私は流行を追いかけるつもりはありませんし、上述のように1着の服を長く着る主義です。だから、何年たっても飽きの来ないもの、愛着の持てるもの、着ていて誇らしく思えるものを見つけ出して買います。何より、売り場に並んでいるときに私を引き付ける何かを持っているかどうか、オーラか後光みたいなものが感じられるかを重視します。昨シーズンまでのコートは、明るいグレーの字なのですが、ごく薄いピンクの織りが入っていて、それが私を引き付けました。
 さて、今回ですが、実は先々週から探し続けていたのですけれども、「これだ!」というのに出会えませんでした。どうしても見つからなかったらここで妥協しようというのは2着ほどキープしていましたが、できればそれは避けたいと思っていました。気に入ったのが見つかるだろうか――という一抹の不安を抱えながら探し始めました。
 そうしたら、意外とあっさり見つかりました。他のコートの陰に隠れて目立たないところにあったのですが、私に向けてオーラを発しているコートがあったのです。「これだ!」と思ってすぐに買おうと思いましたが、冷静にならねばと他の売り場をもう一度見て回り、気持ちが変わらないことを確かめてから買いました。
 今日はけっこう暖かかったので、新しいコートの出番はありませんでした。今週いっぱいはそんな日が続きそうですから、学校へ着てくるのは来週以降でしょうか。寒い日が、ちょっぴり待ち遠しいです。

  • 2014年10月27日(月)21時18分

週間予報

10月24日(金)
 来週の金曜日は、立川の昭和記念公園でBBQです。昨日学生たちに概要を説明し、気の早いクラスはリーダーを決めたりメニューを話し合ったりしているようです。週間天気予報によると、来週の金曜日はまあまあ以上の好天のようで、最高気温も20度を超えるとのことです。これだったら楽しいBBQ大会になりそうです。
 こういうイベントがあると、特に初級ではこれを授業のネタに使わない手はありません。今日の初級クラスでは早速いじらせてもらいました。「雨が降ったらBBQに行きません」なんて言ってやると、学生たちは覚えたての「たら」を使って、「雨が降ったら学校は休みですか」と返してきます。うん、ここまでできたら十分成功ですよ。来週いっぱいはBBQネタで導入を考えれば、頭をさほど悩まさずにすむし、学生たちの食いつきもよろしいことでしょう。
 ただ、あんまり盛り上げすぎると、天候に恵まれず中止になったときの反動が怖いです。11月になると日中の気温もめっきり下がってきますから、EJUを間近に控えた学生たちを外で長時間うろうろさせたくありません。EJU後は防寒着を着こんでBBQなんてことになりかねません。だから、EJUを受けない学生からすると不満の残るところかもしれませんが、10月31日の一発勝負なのです。それがこけちゃったら、腕を撫して待っていた学生にとってはショックというか残念というか、立ち直るのに時間を要するかもしれません。
 週末は各自がメニューを考えてくることになっています。来週の今頃は、おいしいものをたくさん食べておなかをたたいているといいですがね。予報が当たることを願うばかりです。

  • 2014年10月24日(金)22時48分

朝のメール

10月23日(木)
 昨日雨に濡れたせいで、今熱があります。今日はうちで休んでいただいてお願い致します。
 朝、メールを開いたら、Gさんからこんなメールが届いていました。「休ませていただけませんか」と言おうとしたのですけれども、うろ覚えだったためこんな文になってしまったのでしょう。先学期の最後にさんざん練習して、期末テストにも出ていたんですがねえ。
 Gさんの話し言葉にはよくこんなミスがあります。このメールを読んだとき、Gさんの声が頭の中にこだましました。テストのときみたいに強く意識すれば正しく使えるのですが、そうじゃないと身にしみ込んだ癖がそのまんま出てくるんですね。Gさんの練習が足りなくもあり、私たちの訓練のさせ方が甘かったとも言えます。
 そもそも、熱があって学校を休もうとしているときには「休ませていただけませんか」とは言いません。「熱があるので欠席します」で十分です。「休ませていただけませんか」だったら、休むか休まないかの決定権はこちらにあり、「今日は文法のテストがありますから、無理してでも出てきてください」ってことになっても文句は言えません。そうじゃなくて最初から休むって決めてるんだったら、「欠席します」ですよ。
 「休ませていただけませんか」「お疲れ様でした」などは、アルバイトで仕込まれた言葉です。アルバイトは学生が言葉を覚える有力なチャンネルです。しかし、そこで覚えた言葉を無制限に使ってしまうと、おかしなことにならないとも限りません。さらにGさんのようにきちんと覚えずに使ってしまうと、何を言っているのかわからなくなってしまいます。今日のGさんのメールには、「…そのため、今日は欠席します。1日うちで休んで、明日は元気に出席します。」と直して返信しました。Gさんはわかってくれたかな。

  • 2014年10月23日(木)20時58分

やり直し?

10月22日(水)
 EJUの受験票が届き、学生に配りました。ところがMさんは理系と文系を間違えて出願してしまったことがわかりました。これはEJUの本部に掛け合っても直すのは無理で、そのままいくしかありません。悪いことに、Mさんは理系なので、日本語と数学だけじゃ出願できる大学が極端に少なくなるんですね。文系ならEJUの日本語だけで受けられるところも結構ありますが、理系は主だったところは理科の受験が必須です。日本語と数学だけで出願できる大学はありませんかと相談されましたが、そんなにあるものではありません。
 Mさんはこの1年の努力の成果を発揮することなく受験シーズンを終えなければならないかもしれません。多少なりともMさんの希望に沿えそうなところをリストアップして渡しましたが、満足してもらえるでしょうか。「願書を書いたら出す前に先生に見せなさい」と指導していましたが、Mさんは「大丈夫、大丈夫」って思ってそのまま出しちゃったんですね。自分の日本語力を過信したとまでは言いませんが、人生を分かつかもしれない書類に対する態度としては雑だったかもしれません。
 理系の場合は、多くが大学院に進学します。進学後の頑張りによっては、そこでミスを取り返すこともできるでしょう。また、ここで思わぬ大学に進学したことが塞翁が馬になるかもしれません。やり直しが利く若い年齢なのですから、これも肥やしにして自分を高めていってもらいたいです。

  • 2014年10月22日(水)18時02分

青色LEDで

10月21日(火)
 選択授業の「身近な科学」が始まりました。これはEJUやJLPTの勉強が終わっちゃった学生、もう進学先が決まってカリカリ勉強する必要のない学生向けの授業です。知ったところで何の役にも立たない知識を教えることをモットーとする授業です。初回は光の科学。青色LEDの3氏がノーベル賞を取りましたから、時事ネタであり旬の話題ということで取り上げました。
 メンバーを見ると、バリバリ理系進学を狙っている学生、日本語ができすぎて選択授業のレベルじゃ追いつかない学生、勉強しなくてもよさげだから取りましたと顔に書いてある学生など、さまざまです。理系の皆さんには申し訳ありませんが、EJU対策にも大学独自試験の準備にもなりません。日本語できすぎの皆さんには、大学の講義のつもり(大学にはこんな役に立たない講義はないでしょうが)で聞いてノートを取る練習をしてもらえればと思っています。最後のグループの学生の興味を引き付けられたら、私のしゃべくりも大したものだと思うことにしています。
 LEDは青色が加わったことで「第四の明かり」の地位を確固たるものにしました。LED電球の普及のスピードはかなり上がっており、それによる省エネ効果も、データとしてはなかなか見えてきませんが、相当大きなものになっていることでしょう。博物館や美術館などの展示物の照明も、紫外線を出さず展示物を傷めないLEDが広まってきました。また、フルカラーLEDパネルは駅をはじめ街の中のいたるところで見かけるようになりました。一昔前の3色LEDの中途半端な色付けから、目に鮮やかな表示板になりました。
 今回のノーベル賞は、サイエンティストだけではなくエンジニアももらったという点が大きな特徴だと思います。それは上述のように我々の生活に大きな変革をもたらし、これからももたらしていくだろうという点が高く評価されたからに違いありません。元エンジニアとして、私もうれしかったです。
 …なんていうことを話しました。これからどんなことを話題に取り上げようか、楽しみでもあり、苦しみにもなりそうで怖い面もあります。今回のノーベル賞みたいに、明るい旬の話題が出てくるといいなと思っています。

  • 2014年10月21日(火)18時48分

初テスト

10月20日(月)
 私のクラスでは、今学期初めての漢字テストがありました。テストは押しなべていい成績でした。漢字を苦手としていたLさんとMさんは、95点を取ったのですから、ゆうべかなり勉強したのでしょう。クラスは先学期と同じような顔ぶれで、教師まで持ち上がりときたら、学生たちにとっては新鮮味が薄いんじゃないかと思っていましたが、今のところそうでもなさそうです。この緊張状態をいつまでも持ち続けてもらいたいです。
 午後はレベル1のクラスの代講をしました。授業が始まって一週間ほどですが、クラス内には歴然とした差があります。レベル1には、国で多少勉強してきてもKCPのレベルテストで点数が取れなかったという学生もいますから、もともと差があることも確かです。しかし、学習歴の差を勘案してもなお見逃し難い差があります。
 今日あたりやっているような初級文法のそのまた初歩ぐらいなら、どんな国の言葉にもあるはずです。ただ口が回らなくて自分の理解していることを表現できないのなら、口が回るまで続ける単純な練習に耐えられるかどうかにかかっています。直接法での日本語による文法説明がよくわからないのなら、私ではない違う教師に教わったり、友人から国の言葉で説明してもらったりすれば理解が進むかもしれません。今ここで沈没したら、日本語を使って何かするなんて、100%無理です。何とか乗り越えてほしいですし、乗り越えられるはずです。
 午前中のクラスの学生たちは、そういう修羅場をいくつもくぐり抜けて選び抜かれた珠玉の学生たちです。LさんやMさんのように、苦手と言いつつもきちんと勉強すればすばらしい成績が取れる才能を持っています。そこに気づいて、自分の持てる才能を伸ばすことに心を砕き、高みに上り詰めてもらいたいです。

  • 2014年10月20日(月)19時23分

大きなスーツケース

10月18日(土)
 Yさんが明日の関西地方にある大学受験のため、旅立っていきました。そのまま帰国するんじゃないかっていうくらい大きなスーツケースを引っ張って学校へ来て、M先生と面接の最後のチェック。大きなスーツケースには、本番で着るスーツが入っているそうです。そうだとしても、ちょっと大きすぎるんじゃないかなあ。
 Yさんの場合は新幹線で向こうへ行った後も乗換えがあるそうです。あんなに大きな荷物を引きずっていって大丈夫なんだろうか心配になりました。私は遊びでも仕事でも、遠出のときは荷物は最小限にという主義です。受験で1泊するだけだったら、スーツを着込んでショルダーバッグだけじゃないかな。スーツを手で持っていくとしても、Yさんみたいな新幹線の網棚に載せるのも大変そうなスーツケースは使わないでしょう。
 それはともかく、遠隔地の受験は何かと気を使うことでしょう。不慣れな土地ゆえ迷ったらどうしようとか、枕が違うと眠れないかもとか、考え出したらきりがありません。でも、Yさんは1年半前に日本語がほとんどできないという、今とは桁違いに大きなハンデを背負って異国の地で暮らし始めたのです。胸を張って臨んでもらいたいです。
 入試も、いろんな先生方に鍛えてもらったのですから、できないはずがありません。寝坊さえしなければ、絶対とまでは言いませんが、可能性は十分にあります。月曜日はどんな顔で試験の様子を報告してくれるのでしょうか。大きなスーツケースにいい知らせを目いっぱい詰め込んで帰ってきてほしいです。

  • 2014年10月18日(土)18時34分

言霊とのゲーム

10月17日(金)
 H専門学校に出願するUさんの推薦書を書きました。今シーズン初めての推薦書です。最近は専門学校に進学しようとする学生が減りましたから、推薦書を書く機会も少なくなりました。それでもこれからしばらくは推薦の文言に頭を悩ますことが何回かはあることでしょう。
 最近読んだ本に、現代においても日本人は言霊を信じているということが書かれていました。「そんな縁起の悪いことを言うな」って言って、悪い予測を封じてしまうのがそれだそうです。ダメだと思いつつもダメとは言い切れず、「改善の余地がある」なんて言ってしまい、その「改善」という言葉が独り歩きし始め、傷口を広げてしまうということを繰り返してきたと言っています。
 私も言霊にがっちり取り付かれていて、推薦書には悪いことは書けません。でも嘘も書きたくないです。逆に、推薦書にいいことを書くと、その学生がそういう方向に向かって人間的に成長するのではないかと思ってしまうのです。ですから、嘘にならない範囲で精一杯その学生に期待をこめた言葉を書きます。なおかつ美辞麗句で飾り立てたとは思われないような表現を心がけます。そのために苦吟している面も多分にあります。
 私も言葉で人を傷つけたり怒らせたりしたことが何度もあります。言葉の怖さを知っているからこそ、言霊に魅入られてしまうのでしょう。でも、絶対に言霊から逃れなきゃならないとは思っていません。言霊の手のひらの上で可能な限りの真実を伝えています。縛りの中の自由を最大限に生かす工夫をすることは、非常に知的なゲームのように思えるのです。
 今シーズン最初のゲームは、Uさんというすばらしいカードのおかげで、快勝できました。

  • 2014年10月17日(金)19時27分

大学選び

10月16日(木)
 BさんはS大学を狙っています。7月にあったJASSOの進学説明会でS大学のブースにいたKCPの卒業生Yさんを紹介してくれといてくるほど、真剣に考えています。Yさんに連絡し、YさんのほうからBさんにメールを送ってもらうことにしました。
 S大学は、日本人の誰もが知っているというほど名の通った大学ではありません。でも、その道のプロは実力を認める大学ですし、Yさんを始め進学した学生はみんな満足しています。また、最近、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援に採択されました。中身の濃い大学だという印象がよりいっそう強まりました。
 Bさんも、4月ごろは有名かどうかで志望校を決めようとするきらいがありました。自分の国でも知られている有名な大学に進学しなきゃ、わざわざ日本まで来た意味がないって感じでした。KCPに入学したときから、勉強したいことではなく名前で選ぼうとしていました。いろいろと調べていくうちに、大学で実力をつけなければ卒業後に苦しむことになるということに気づいたようです。それで、だんだんS大学に目が向いてきたのです。
 超有名大学に落とされたからという面もあるでしょう。でも、それによって自分と真剣に向き合い、自分に本当に必要なものは何かを追求し、それが得られる大学を選ぼうとしているのです。Bさんは成長したと思います。
 受験シーズン真っ盛りだというのに、まだ夢見る少年・少女のまんまの学生が少なからずいます。自分に都合のいい情報だけを信じて突っ走ろうとしている学生は、危なっかしくて見ていられません。毎年、進路指導の難しさを感じさせられます。

  • 2014年10月16日(木)20時42分

理科の王者

10月15日(水)
 受験講座が始まっています。私が担当している理科は、EJU直前までひたすら過去問に取り組みます。物理、化学、生物各4回、いよいよ追い込みです。EJUはすべての分野から出題されますから、山を張るのは危険です。苦手分野を作らず、解ける問題を確実に物にしていくことが肝です。
 EJUが終わったら、2016年入学に向けての授業が始まります。来年は、日本の高校の教育課程が変わったため、EJUの数学と理科の出題シラバスも連動して変わります。それに合わせて受験講座の内容も再検討しなければなりません。 新しい理科の教科書を買ってきて研究中ですが、物理、化学、生物とも、内容が広がりそうなのが気になるところです。EJUでは出題されなくても、必修化された項目は大学の独自試験に出てくることは十分に考えられます。ですから、教えるほうも怠りなく頭を鍛えておかねばなりません。
新しい理科の教科書ですが、カラフルですね。旧課程の教科書も40年近く昔に高校生だった私にとっては十分にカラフルでしたが、それに輪をかけて写真や図表が増えています。また、特に文系向けとされる物理基礎、化学基礎、生物基礎は、理科が身近な生活に直結していることを示そうと努力している跡がうかがわれます。理科離れが叫ばれて久しいですが、こうしたカリキュラムや教科書によってそれに歯止めがかかれば、理系人間として喜ばしい限りです。
 ただ、私は地学こそ理科の王者だと思っています。物理、化学、生物を総動員して、太古の昔を想像し、今の地球の姿を探求し、宇宙に羽ばたく学問です。お天気も地震も地下資源も星座も生物の進化も温泉も風力発電も、森羅万象を司る学問が地学です。本当は地学の教科書も買いたかったのですが、そうすると仕事そっちのけでそればっかり読みかねないので、手に取っただけで置いてきました。その地学が、日本の高校で軽視され、EJUの科目にも入れてもらえないのが、残念でなりません。

  • 2014年10月15日(水)18時32分

もうすぐ…

10月14日(火)
 台風が来て月曜日から天気が悪くなるというので、日曜日の朝、張り切って掃除をしようとバケツに水を汲んで持ち上げようとしました。その瞬間、ングッときちゃいました。腰に電気が走り、力が入らなくなりました。数分間立ち上がれませんでしたが、痛みがおさまりましたから、だましだまし掃除を続けました。
 最初に腰を痛めたのは30歳ぐらいの頃で、もう20年以上も前のことです。その時はとんでもなく太い痛み止めの注射を打たれ、その注射の痛さで腰の痛さを忘れたんじゃないかっていうくらいでした。それ以後慢性的な腰痛で、時たま何かの拍子にひどくなり、そのたびにマッサージや整形外科に通って応急処置をしてきました。日曜日のは久しぶりに激しいのが来たなと思いました。
 一晩寝たら多少はよくなったのですが、月曜日の朝に顔を洗おうと洗面台に向かって腰を曲げた瞬間、また来ちゃいました。ですから、天気も悪くなってきたことだし、昨日は一日中うちでじっとしていました。
 今日は台風の影響があるかもしれないということで、始業を遅らせました。通常クラスの授業は短くなりましたが、受験講座がありましたから、結局夕方まで授業でした。受験講座は代講が利かないので、腰がどうしてもダメだったら受験講座が終わったらすぐに整形外科へ行こうと思っていました。でも、今は痛みがそんなにありません。授業に打ち込むことで痛みを忘れようとするほど仕事熱心じゃありませんが、今回の腰痛は立っている姿勢が筋肉やら神経やらの関係がいいのでしょう。
 「腰痛まで10年、老眼まで20年だよ。あっという間だよ」と、学生にはよく冗談めかして言います。学生は他人事のような顔をしていますが、「肩凝りは老化の第一歩だよ」って言うと、少しは真剣な顔になります。腰痛になるたびに腰痛体操を始めようとしますが、学生たちのように腰痛になる前の体のときに始めなきゃ、本当は意味がないんですよね。でも、これをわからせるのは日本語を教えるよりはるかに難しく…。

  • 2014年10月14日(火)22時01分

しまってください

10月11日(土)
 昨日の午後は初級のクラスに入りました。大半が先学期入学した学生で、そこに数名今学期の新入生が加わったというクラス編成です。新学期2日目にしていきなりテストでした。先学期からの学生にとっては復習テストですが、今学期からの学生にとっては実力テストに近いものがあります。
 その問題の中に、「テストですから、辞書は(   )ください」というのがありました。先学期からKCPで勉強してきた学生たちは、ない形の問題だと反応し、「使わないで」とか「見ないで」とかと書きます。あるいはそれをちょっと失敗して「使ってないで」「見らないで」なんていう答えでした。しかし、新入生のSさんは違いました。「しまって」ときました。もちろん〇です。採点していてニヤッと笑ってしまうと同時に、恐ろしさも感じました。
 Sさんは既習事項に捕らわれることなく、これからテストが始まるというときの教室を思い浮かべました。そして「しまって」と答えたに違いありません。一方の先学期からの学生たちは、「~ないでください」で文を作る練習をがっちりしてきています。しかも、期末テストの直前ですから、わりと最近です。その成果が現れて、「使わないで」「見ないで」と答えたのです。
 それはそれで文型をしっかり身に付けていて立派なものだと思います。でも、Sさんの答えを見てしまうと、もしかすると単なる反射神経で答えたに過ぎないのではとも思えてくるのです。Sさんの答えには創造性を感じますが、先学期からの学生には飼いならされた感じがしてなりません。反復練習の結果、文型は身に付けさせることができたけれども、学生固有の創造性を押さえつけてしまったとしたら、私たちの教育は果たしてこれでいいのだろうかと考えさせられました。
 授業中、Sさんはとても積極的に活動していました。学期末までの間に、このクラスに大いなる刺激を与えてくれることでしょう。そして、それがこのクラス全体の底上げにつながればと思っています。

  • 2014年10月11日(土)16時00分

今日は何の日?

10月10日(金)
 今年は10月13日が体育の日ですが、そもそも体育の日は東京オリンピックの開会式の日を記念して設けられたのですから、本来なら今日が体育の日です。ちょうど50年目ですから、もし今日が休日だったら盛大な催し物が行われたんじゃないでしょうか。
 そんなことを午前中の上級クラスで話したら、学生たちはみんな感心していました。学生たちにとって1964年なんていったら、完全に歴史上の出来事ですからね。それが現在に関連しているってなると驚きもひとしおかもしれません。彼らにとっての東京オリンピックは、私にとってはヒトラーのベルリンオリンピックあたりに相当します。そう考えると、東京オリンピックも本当に遠くなったんだなあと思わずにはいられません。
 体育の日が、そういう由緒ある10月10日からハッピーマンデー制度によって10月の第2月曜日に変わったのは、2000年からです。明確な由来のある祝日を勝手に動かすのには違和感がありましたが、そのうち慣れてくるんだろうなとも思っていました。しかし、いまだに体育の日は10月10日のほうがぴったり来る感じがします。
 2020年の東京オリンピックは、7月24日が開会式です。暑い盛り、それも半端じゃない蒸し暑さのピークの時期に競技が行われるのは、そういう気候に慣れている日本人選手を有利にするためかもって、勝手に邪推しています。で、開会式の日の7月24日は国民の祝日になるのでしょうか。7月にはすでに「海の日」があります。また、2016年からは8月11日が「山の日」です。付近にライバルが多いです。それとも、戦後の復興具合を世界に示すいうような国民共通の目標が生まれてこず、365分の1になっていくのでしょうか。

  • 2014年10月10日(金)22時51分

教科書を買う

10月9日(木)
 新学期が始まりました。私が入ったクラスは、大半が先学期からの持ち上がりかその前の学期に教えた学生でしたから、名前を覚える手間が省けました。この歳になると、初日に学生20人の顔と名前を覚えるのはかなりの大仕事ですから、とても助かりました。
 となると、初日らしい良い意味での緊張感がなくなってしまいますから、学生たちには先学期のレベルとはこういうところが違ってここが難しくなるんだよっていうのを強調しました。中級の後半ですから、日本人が読む文章をそのまま教材として与えることもあれば、微妙な心理状況を表す表現やかしこまった言い方も勉強します。字面を追っているだけでは理解できない言葉の裏側に踏み込んでいく訓練をしていきます。学生の目の前には、上級に進むために超えなければならない最後の山がそびえています。
 初日ですから、教科書も買います。上級目前のレベルともなると、みんなこちらの指示に従ってパキパキ動いて、効率よく仕事が進みます。そして、新しい教科書とともに教室へ戻り、ちょっぴりよそ行きの字で名前を書いていました。今日は教科書に対して希望を燃やしていますが、いつの間にか平気な顔をしてその教科書を机の中に忘れて帰ってしまうようになっちゃうんですからね。薄情なもんですよ。
 午後は初級のクラスの教科書販売のお世話をしました。販売所に列を作るところからして、中級の私のクラスと違います。右往左往というほどではありませんが、どこかもたもたしています。そして、いざ買う段になると1冊ずつ教科書を手に取り、あっちこっち眺める学生が目立ちました。教室で先生から説明があったはずですが、自分の理解に自信が持てないんでしょうね、きっと。実物をじっくり観察して、本当に買わなければならないものなのか見極めているかのようでした。
 言葉の威力って偉大だなと思いました。私のクラスの学生と初級の学生と、人間の質に差があろうはずがありません。実際の動きにこれだけの違いが出るのは、日本語がわかるかわからないかの違いにほかなりません。初級の学生は「?????」の状態で、不安で不安でたまらないのです。私のクラスの学生は、自分の日本語力にある程度の自信がありますから、それに基づいた情報にも信頼が置けるのです。
 おびえながら教科書を買っていた学生たちも、1年後には堂々と胸を張って教科書を買うことでしょう。そのとき、1年前の自分の姿を思い出せば、自分の日本語の上達具合に喜びを感じるに違いありません。

  • 2014年10月09日(木)22時50分

退学届

10月8日(水)
 1人の学生をやめさせました。今日、Sさんが授業料を払いに来ましたが、授業料を受け取らずに退学手続をさせました。
 Sさんは4月にKCPに入学し、中級クラスに入りました。会話もできるし、いい学生だなと思っていましたが、3日目に初めての遅刻、6日目に初めての欠席、連休が終わってからは来たり来なかったりというパターンに陥っていました。欠席の理由を聞いても、いかにも言い訳ですというような言葉しか返ってきませんでした。漢字や文法のように積み重ねが求められる科目の成績が上がらず、進級できませんでした。
 7月期は再起を帰して臨むはずでしたが、7月と8月はほとんど学校へ来ず、中間テストも受けずということだったので、最後通告を発しました。さすがに驚いたらしく、それからは登校するようになりました。しかし、教室にいるというだけで、眠そうな顔をしていたり実際に居眠りしていたりという調子で、まじめに勉強しているとは思えませんでした。たまにまじめに勉強すれば、頭はいいですから、テストなんかでもいい成績を取りました。でも本当に「たまに」であって、長続きしませんでした。期末テストは受けましたが、苦手の漢字にたっては、とてもここには書けないようなひどい成績でした。当日は、漢字の試験用紙が配られて早々にあきらめて提出して、さっさと帰ってしまったと試験監督のA先生がおっしゃっていました。
 そして、始業日前日の今日、突然姿を現したのです。10月期も続けてKCPで勉強したいと言います。アルバイトは1つだけにしたと言います。アルバイトの時間帯を聞くと、月~金の5時から11時までとのこと。「留学生は1週間に何時間アルバイトができるんだっけ」と聞くと、28時間と答えます。「じゃあどうして30時間も働こうとしているんですか」「わかりました。減らします」。これじゃあ、アルバイト中心で気が向いたら学校へっていう生活が続くことは明白です。
 退学手続の用紙をSさんの目の前に出したら、あっさりと書きました。事務の説明を聞いたらすぐに、振り向きもせずに帰っていきました。ダメモトという気持ちもあったんでしょうね。このまま日本にいて、ビザが切れるまでアルバイト中心の生活を続けていても、Sさんはお金以外に何も得られないでしょう。バイト敬語が多少上手になったとしても、それがSさんの将来に資することは少ないと思います。だから、いったん帰国して、自分の人生設計を考え直したほうがいいです。

  • 2014年10月08日(水)21時54分

入学式挨拶

 皆さん、ご入学おめでとうございます。世界中からこのように多くの若者がKCP入学してくださったことをうれしく思います。
 先学期、私のクラスに同じ国から来た2人の新入生がいました。仮にAさんとBさんとしましょう。Aさんは何度か来日経験があり、こなれた日本語を話しました。Bさんは初めての日本で、Aさんに比べるとだいぶたどたどしい感じがする日本語でした。入学前のレベルテストでは、Aさんはもう1つ上のレベルかどうかぎりぎりのところ、Bさんはもう1つ下のレベルとのボーダーライン上の成績で、私のクラスに入ったのです。
 勉強が始まると、Aさんは「そんなこと知ってるよ」という感じで退屈そうに授業を受けていました。今までの来日と同じ、物見遊山気分が抜けていないようでした。それに対してBさんは、教師の話を一言たりとも聞き漏らすまいと、目をらんらんと輝かせて授業に臨んでいました。
そして、1か月ちょっとで中間テストを迎えました。テストの合計点は、わずかですが、BさんがAさんを上回りました。たった数週間で、クラスのトップ近くにいたはずのAさんはごく普通の成績に落ち、最下位付近だったはずのBさんは中堅レベルにまで伸びてきたのです。
 Aさんは「またそのうち来ますね」と笑顔で別れを告げ、Bさんは「また日本へ来られるかわかりません」と涙ぐみながら帰国しました。そうです、2人は留学に対する真剣さがまるで違いました。チャンスはいくらでもあると思っていたAさんは、勉強に身を入れず、楽しい留学に走りました。これが最初で最後のチャンスと思っていたBさんは、密度の高い留学生活を送りました。
 茶道の世界には「一期一会」という言葉があります。一生に一度しか会えないという気持ちでお客様をもてなしなさいという意味ですが、人生のいろいろな場面でのチャンスも、一度きりというのがよくあります。私自身、今振り返れば、実にさまざまなチャンスを逃してきました。あの時どうして勇気を奮って挑戦しなかったのだろうと思うことだらけです。
 皆さんには日本での留学生活を楽しんでもらいたいですが、同時に自分自身の人生におけるこの留学の位置づけを常に見つめ続けてもらいたいとも思っています。日本で遊ぶこともアルバイトをすることも、皆さんにとっては貴重な体験でしょうが、何よりきちんとした日本語をしっかり身に付けることが、この留学の最大の意義のはずです。そういう本来の目的に向かって邁進する姿は、周りで見ている人たちから尊敬を集めます。私は皆さんのそういう姿を目にしたいです。
 本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

  • 2014年10月07日(火)21時29分

ピタリ

10月6日(月)
 台風が近づいていると報じられていましたが、私の通勤経路は地下鉄ばかりですから、こういう場合でも大きな影響を受けません。私の通勤時間帯は一番電車のころですから、台風はまだ紀伊半島のあたりでした。ですから、普通の雨の日よりもちょっと強いかなという程度の雨で、風はさほどでもありませんでした。学校に着いたときでもズボンの裾が少しぬれただけで、かばんに忍ばせたタオルが活躍するまでもありませんでした。靴は革靴はぬれると傷むのでぬれても平気なのをはいてきました。途中水たまりもできていたので、それは正解だったようです。
 他の先生方が学校に着いたころは結構激しい雨になっていて、M先生などはレインコートをびしょびしょにして到着。K先生やT先生は靴下までずぶずぶ。みんな大騒ぎしていました。今思えば、そのころが雨のピークだったかもしれません。
 学校に着いてしまうと、雨がいつやむかに関心が移ります。ここで威力を発揮したのが、気象庁のサイトにある高解像度降水ナウキャストです。現在から1時間後までの雨の範囲と強さを細かく詳しく予測するものです。250m四方で予測しますから、新宿駅で降ってもKCPでは降らないなんていう予測も可能なのです。
 これを見ると、11時半ごろには雨が上がるということがまだ結構強い降りの時にわかり、実際にそのとおりになりました。8月7日から運用が始まり、今まで個人的には何回か使ってきて、かなりあてになるなと思っていました。それでも台風のような激しい気象状況ではどうなのだろうと不安に思っていましたが、今日の大当りで俄然信頼度が上がりました。
 気象庁のホームページの最上段に「高解像度降水ナウキャスト」の入り口があります。黒い雲が出てきたけど目が降るんだろうかとか、お昼を食べに外に出たいけど傘なしで行けるだろうかとか、そんなことに使ってみてください。

  • 2014年10月06日(月)19時02分

イケてる?

10月4日(土)
 新入生のレベルテストがありました。昔はいかにも留学生というあか抜けないかっこうの学生が多かったのですが、最近はそんな区別がつきません。その辺を歩いている高校生や大学生と変わるところがありません。学生たちの国が豊かになったのか、日本が停滞しているのか、たぶんその両方でしょう。
 気になるのが、すでにスマホ中毒ではないかと思われる学生がいることです。1科目終わるたびにスマホを握って教室から出て行く学生が何名かいました。こういう学生は1コマ90分間我慢できずにスマホをいじり始めて、KCPの厳しい先生方に叱られるんだろうなと、ちょっと気の毒に思いながら廊下に向かう背中を見送りました。
 でも、試験中貧乏ゆすりが止まらないなど妙に落ち着きがなかったり、試験問題に取り組もうとしなかったりというような、学校生活に向きそうもない学生はいませんでした。全くの野生児の集団ではないようです。そういう人は、君は勉強以外の方面で苦労したほうがいいよとアドバイスしてあげたいです。
 あとは、新入生の皆さんがどこまでやる気を携えているかです。親に言われてしかたなく来たなんていう学生がいないことを祈るのみです。勉強する気も薄いのに、親に命じられているから進学しなければなりませんっていうのが一番厄介です。
台風が近づいてきているのが気がかりです。でも 7日の入学式は台風一過の秋晴れになりそうで、今日の新入生たちも気持ちよく留学生活の第1歩が踏み出せることでしょう。

  • 2014年10月04日(土)19時32分
Web Diary