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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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秋が近いです

9月20日(木)
 今年の秋は西から来るようで、九州各地の最高気温が25℃程度なのに対して、中部地方以東・以北は30℃前後でした。今日の最高気温の高い地点は軒並み関東地方で、最低気温の低い地点は中国地方がほとんどでした。中国地方の山間部は、北海道よりも気温が低かったのです。太平洋高気圧の張り出し方と、移動性高気圧の動きによっては、こういうこともありえます。それでも、週末以降は、西日本の秋をもたらしている高気圧がこちらへも来てくれるようなので、涼しく過ごせそうです。
 東京には夏の空気が残っているのですが、受験シーズンは始まっています。学生が出願にあたっていろいろな問題を持ち込んでくる季節になりました。国からの書類の翻訳チェック、最近流行りのウェブ出願がわからない、出願書類を書き間違えた、EJUの成績通知書をなくした、国の高校が普通じゃないカリキュラムを組んでいる、はんこを逆さまに押した、…よくぞまあ、これだけいろんな問題が出てくるものだと感心させられます。
 でも、立場を変えて見ると、それだけ出願が受験生にとって優しくないということにもなります。書類作成が煩雑なのも日本文化の一端だと言いたいのでしょうか。TOEFLの出願も日本人の私にとっては面倒くさかったのですが、同じ苦しみを全国の留学生が味わっているのでしょう。
 日本語学校の場合、入学生は日本語ができないのが当たり前ですから、各国語の説明マニュアルが充実しています。大学の場合、志願者はある程度以上日本が日本語が分かることが前提ですから、ここまではすることはないでしょう。そうだとしても、超級の学生がオロオロするような手続きは、考え直してもらいたいです。
 東京が秋の空気に包まれる頃は、入学試験のシーズンです。面接練習の季節が迫りつつあります。

  • 2012年09月20日(木)20時21分

引越し近づく

9月19日(水)
 「暑さ寒さも彼岸まで」に滑り込むような感じで、今日は久しぶりに熱帯夜・真夏日のコンビから解放されました。それでもまだ平年より3~4℃高いのですが。なんとか秋に訪れてもらわないと、来週末に迫った仮校舎への引越がえらいことになります。今日は荷物運びを手伝ってもらうアルバイトを校内で募集しましたが、カンカン照りの真夏日だったら、KCPの誇る屈強の若者も倒れてしまいかねません。
 最近、現在の校舎の見納めをしに顔を出す卒業生がちょくちょくいます。現校舎は2001年の9月から使用していますから、ちょうど11年になります。この間何名の学生を見送ってきたかわかりませんが、その学生1人1人に思い出を配り続けてきたわけです。学生たちにしてみれば日本という異国で最初の足がかりとなったのがこの校舎です。その校舎が消えてなくなるとなれば、別れの挨拶ぐらいはしたくなるでしょう。
 1人でも多くの卒業生に別れの挨拶に来てもらいたいです。お疲れ様と一言ねぎらいの言葉をかけてやってもらいたいです。校舎に魂があればきっと喜ぶことでしょう。現校舎の最終日に何をするのかわかりませんが、学生も教職員もこぞって、校舎の花道を飾ってあげたいです。
 昔、蒸気機関車が廃車になる時、お世話をした人たちがみんなで磨き上げて、まるで新車のようにピカピカにして解体工場へと送り出したそうです。私たちもそういう気持ちでこの校舎に別れを告げたいと思っています。

  • 2012年09月19日(水)19時29分

健康診断

9月18日(火)
 健康診断を受けました。本当は3か月ほど前に受ける予定だったのですが、仕事の都合で延び延びになっていたのです。
 ここ数年、健康診断で引っかかるのは眼底検査で、緑内障の経過観察を続けています。毎晩寝る前に眼圧を下げる目薬をさしています。それ以外は特に問題になることはなく、日常生活も全く影響がありません。今回も、おそらく、眼底検査以外は何も出てこないでしょう。
 はっきり言って、自覚症状が何もないのですから結果も十分想像でき、もう受診するのが面倒くさくなっていたのですが、万が一ということを考えて受診しました。「あの年、真面目に健康診断を受けていれば…」という後悔はしたくないですからね。
 工場の設備管理には2通りの考え方があります。1つはBMと呼ばれるもので、Broken Maintenance、すなわち、壊れたら直すという考え方です。もう1つはPM、Pre MaintenanceまたはProductive Maintenanceで、壊れることを予想してその前に予防措置を施す、生産活動を維持しながら保守点検を行うというものです。もちろん、現在はPMが主流です。健康診断は、いわば人間にとってのPMですから、自覚症状がないからといってサボってはいけません。病気になってから治すのではなく、病気にならないように点検を怠らないという姿勢が健康を持続させるのだと思います。
 自覚症状が何もない、というのは正確ではありません。今年に入ってから、無理がきかなくなったと感じています。遅くまで仕事をすると、翌日どころか翌々日まで疲れを引きずるようになりました。週の最初に無理をすると、1週間ずっと頭も体も重いということがあります。これは老化現象であり、血液検査とか胃のレントゲンとかには現れてこないでしょう。しかし、PMの基本は定期的な検査と故障の予兆を見逃さない注意力です。健康に仕事を続けていくためには、自分の体に正直にならなければなりません。

  • 2012年09月18日(火)21時10分

期末の足音

9月14日(金)
 期末テストが近づいてきました。来週の水曜日は選択授業の聴解、金曜日は作文です。私のクラスの学生について言えば、聴解も作文も力をつけてきたと思います。
 聴解では、これは聞き取れないだろうなという言い回しが結構聞き取れるようになってきました。耳の力もさることながら、話の流れから推測する力もついてきたのでしょう。最近はドラマの聴解をしていますが、登場人物の背景を加味してストーリーの流れをつかんでいます。
 作文では、文章自体に力が出てきたように思います。読み手に自分の主張や気持ちを訴える力というのでしょうか。読み応えのある文章が増えました。選択授業化によって授業時間を長くした甲斐があったというものです。授業に出ている学生たちの真剣さも違います。
 「書く」という技能は、「話す」と同じく自ら情報を発信する技能ですが、「話す」と違って発信した情報が残ります。それゆえ、勢いだけで走り続けることはできません。情報の受け手は「読み返す」という手段によって、情報を精査できるのです。怪しいところはいずれわかってしまいます。そういう厳しい目を通り抜けて自分の主張を伝えるのが「書く」という技能ですから、語学の四技能のうちで最も高いレベルのものだと、私は思っています。
 これだけ学生を伸ばすには、授業を準備する方には当初の予想を上回る負担がかかっています。聴解の授業の準備時間は、私の場合、以前の倍にはなっています。期末テストも、学生の顔が十分すぎるくらい見えているだけに、それに合わせて作ろうとすると、結構時間を食ってしまいます。
 連休が終わったらすぐに聴解の期末テストを作らなければなりません。仮校舎への引越し準備も重なり、忙しくなりそうです。

  • 2012年09月14日(金)22時14分

仮校舎見学

9月13日(木)
 学生たちに10月から使う仮校舎を案内しました。建物の中に入ると時間を食うし、入ったところでまだがらんどうなので、今日のところは外から場所の確認をしただけです。
 2棟のビルを使うのですが、そのうち1つは学生も予想していたビルでした。もう1つは全く予想外だったようで、少々驚いていました。でも、今のビルから歩いて行ける範囲なので、そんなに大きな不安は感じていないようでした。自宅からの距離が微妙に遠くなる学生は遅刻が増えることを心配していましたが、朝、ほんのちょっと早く起きればいいだけのことじゃありませんか。
 最近学校に卒やってきた卒業生にこのビルは今月いっぱいだと伝えると、一様に驚き、寂しそうな顔をします。今日来たLさんもKさんもそうでした。私たちが思っていた以上に学生たちがこの校舎に愛着を感じていることをうれしく思うと同時に、驚かされてもいます。一度離れると、かえって愛着が強くなるのかもしれません。
 KCPだけでなく、日本語学校は学生たちにとって日本留学のゲートウェイです。何も知らない日本での、多くの学生にとっては初めての外国生活の拠点であり原点です。その建物がなくなるという時、そこで十年一日のごとく働いている教師とは違った感慨が湧いたとしても不思議はありません。
 新しい校舎ができた時、卒業生たちが今と変わらぬ気持ちで来てもらえるような学校を作っていきたいです。新しい校舎にもこの校舎と同じくらい愛着を持ってもらえるような、強い絆を生み出していきたいです。

  • 2012年09月13日(木)17時59分

節電+節水

9月12日(水)
 昨夜はなんとか熱帯夜を免れたようですが、今日は最高気温が33℃近くになり、相変わらず残暑が続いています。暑い、暑いと言いながら節電に気を取られていたら、ダムの水が底をつきそうだということで、関東地方は大部分が昨日から10%の取水制限が始まりました。KCPの周りは時々ものすごい雨が降ったのですが、先月の東京の降水量は例年の15%ほどでした。水源地に近い群馬県みなかみ町でも50%ほどでした。関東北部の山沿いで雷が盛んに発生してはいましたが、雨域は局地的でダムを満たすには遠く及ばなかったようです。また、台風も西日本には被害をもたらすほどの雨を降らせましたが、関東地方へ来た時には勢力が弱まっていて、大した雨にはなりませんでした。いずれにしても、節水にも心がけなければなりません。
 日本は、先進国の中ではかなり降水量の多い国ですが、国土に降り注いだ雨を有効に使っているかと言われれば、疑問を呈さざるを得ないところがあります。都市に降った雨は、すぐに下水道から海へと流れていってしまいます。洪水にならないように、いかに効率よく海まで持って行くかということばかりに目がいっています。太陽光発電をしている家と、天水桶のある家を比べたら、間違いなく前者の方が多いでしょう。
 日本語には、「湯水の如く」とか「水に流す」とか、水は無限にあるんだという発想に基づいた表現がよくあります。「干害」という言葉があるくらいですから水不足の時もあったでしょうが、水は有り余っているものという意識が強かったと思います。海水から真水を作っているような中東あたりの国々に比べれば、水に対する意識は天地ほどの開きがあるに違いありません。
 でも、水だって貴重な資源であり、水を大切に使うことはダムなどによる自然破壊を防ぎ、ひいては地球温暖化の抑止にもつながります。計画以来もめ続けている八ツ場だって、節水が進んでいれば堂々と不要だと言えたのです。
 学生はこんな日本の水事情をどう思っているのでしょうか。ちょっと聞いてみたいです。

  • 2012年09月12日(水)17時58分

無理は禁物

9月11日(火)
 年をとると体のいろいろなところにガタが来て、私も3か月に1回、経過観察のため病院に通っています。今日はその通院日でした。
 病院に入ると、当たり前ですが、いかにも病人という人たちが大勢いました。私も他人から見ればこんな感じなんだろうかと思うと、気持ちから病人になりそうです。待合室で血圧を測り、117-73という、とても50代とは思えない素晴らしい数字を出し、少し気をよくしました。
 ようやく順番が回ってきて、医者に診てもらい、問診も受けました。特に異常なしでした。まず間違いなくそうだろうとは思っていましたが、だからといって経過観察をスキップする気にはなれません。スキップしたことで大病の兆しがつかめなかったら、取り返しのつかないことになりかねないからです。
 祖母が亡くなった時、お寺の住職が「40歳までは生を生きるが、40歳をすぎたら死を生きる」という法話をしました。当時私は30歳前で、自分が死ぬなどということは全く考えていませんでした。しかし、その数年後、父が亡くなってからは、自分が死ぬということを意識し始めました。死ぬまでの時間を計算し始めたと言ったほうがいいでしょうか。
 私の余命があと何年かはわかりませんが、もうとっくの昔に折り返し点を過ぎたことだけは確かです。それゆえ、これからの時間を大切にしたいのです。もう、無理を続けられる年ではありませんから、無理はここぞという時だけのために取っておきます。休む時は徹底的に休むことにしています。夏休みは毎日30キロ以上歩きましたが、同時に8時間以上寝ていました。だから、全体として良い休養になりました。
 病院から戻ったら、すぐに次から次へと仕事が舞い込んできました。そういう仕事を片付けながら、あと何年バリバリやっていけるだろうか、やっていていいものだろうか、という計算もしているのでした。

  • 2012年09月11日(火)19時56分

私も

9月10日(月)
 9月に入り、一部の私立大学の出願締切が迫ってきています。そんなわけで、今日は3人の学生から進学相談を受けました。それ以外に出願書類の下書きチェック、志望理由書の校生など、受験シーズン到来を思わせられる依頼が次々とやってきました。
 いつも不思議に思うのは、友達が出願すると「私も」と考える学生が多いことです。違う学部ならまだしも、同じ学部に出願しようとする神経が今ひとつ理解できません。友達といえども受験となったらライバルなので、ライバルがひとりでも少ない大学・学部を選ぶべきなんじゃないでしょうか。どうしてもそこで勉強したいなら別ですが、「私も」なんていう程度なら、代わりはあるはずです。
 確かに、一緒に受かれば喜びは2倍になるし、一緒に落ちれば傷口をなめあうこともできるでしょう。学生たちはそんなつもりでいるのかもしれません。あるいは、ただなんとなく○○さんと一緒に大学で勉強できたらいいな、なんて漠然と考えてるだけかもしれません。でも、友達が受かって自分が落ちたら悔しいし、逆に自分が受かって友達が落ちたらちょっと決まり悪いし、「私も」だったら受けてもメリットが少ないように思えます。私なら友達と違うところにしますね。
 学生たちは国を出るときに大きな決断をしてきているはずです。異国の地で一人で生きていくんだと。にもかかわらず、この期に及んで友達がどうのこうのというのはおかしいです。大学でまた新たな友達を開拓すればいいじゃありませんか。いや、必ずそうなるもんですよ。
 だから、みなさん、「私も」なんていう主体性のないことはやめましょうね。

  • 2012年09月10日(月)19時21分

やめたい???

9月7日(金)
 Sさんは理工系の大学進学を目指しています。受験講座にもきちんと出席して、11月のEJUに向けて着実に準備をしてきました。しかし、今日、突然、受験講座の物理と化学を辞めたいと言い出しました。物理と化学はよくわからないから、EJUは日本語と数学に絞るというのです。そして、EJUの日本語と数学だけで受験できる理科系の大学を探してほしいというのが、Sさんの進学相談でした。
 6月の試験結果を聞くと、確かに伸び悩みという感じがしました。また、受験講座を受けている様子も、今学期から演習形式にしたからなおのこと、苦しそうなときもありました。しかし、この苦しさを、歯を食いしばって耐え抜けば、必ず明るい未来が訪れます。ここで物理と化学をあきらめてしまえば何も残りません。実力は急に花開く時があります。そこまで水をやり続けられるかがポイントです。Sさんが今やめてしまうのは、花芽を摘み取ってしまうことに等しいのです。
 それでも、まず、Sさんの希望通り、日本語と数学だけで受けられる、そして、Sさんの6月の成績で何とかなりそうな大学を探しました。K大学、H大学など、何校か候補に挙げました。H大学は名のある大学なので、欲が出てきたのでしょうか、「国立大学で手が届きそうなところはありますか?」と言い出しました。A大学、I大学など、これまたいくつか名を挙げました。「でも、国立なら物理・化学はあきらめられないよ」と言ってやると、「はい、わかりました。週末、もう一度よく考えます」ということになりました。
 要するに、Sさん自身も揺れているのです。本当は今頃悩んでいるようじゃ困るのですが、でも、Sさんのような学生は、意外といるんじゃないでしょうか。月曜日は、OさんとTさんの進学相談が入っています。同じような話になるかもしれません。Sさんのように、前向きの形で決着がつくといいんですが…。

  • 2012年09月07日(金)21時07分

前線通過

9月6日(木)
 今日は秋が夏を追い出したような1日となりました。朝の最低気温は26℃を超え、真夏のまんまでした。午前中、気温は順調に(?)上がり、昼過ぎには33℃近くにまでなりました。そのあたりから悪い色の雲が出始め、3時過ぎには風速14mを記録し、気温も下がりました。ちょうどこの時前線が通過したのです。その頃、山沿いでは雷が発生し、つくばエクスプレスは落雷によって運転見合わせとなってしまいました。でも、今晩は寝苦しさから解放されそうです。
 こんなにはっきり前線の通過を感じられるのは、珍しいことです。私は毎朝、学校前の道路から空を見上げて、雲の形や流れ、空の色を見ています。今朝は、完全に夏パターンでした。先ほどちょっと外に出てみたら、肌に涼しさを感じました。屋上で風向風速でも観測していれば、夏が秋に追われる瞬間が実感できて、秋の到来を生で喜べたかもしれません。
 もう少しすると、真っ青の露地物のみかんが店先に現れます。私は柑橘系の酸っぱい味は大好きなので、毎年、このみかんを楽しみにしています。今はハウス栽培のみかんが出ていますが、それはなんか不健康な感じがして、好きになれません。そして、獲れたての秋刀魚ですよね。サンマはよけいな手を加えないで、塩焼きにして大根おろしをたっぷりかけて食べるのが一番美味しいです。
 真っ青なみかんや新秋刀魚にお目にかかる頃には、この校舎とお別れしているかもしれません。ホームページやフェイスブックでお知らせしている通り、新校舎建設のため、現校舎は今学期までなのです。ラストサマーが、終わろうとしてります。

  • 2012年09月06日(木)21時43分

なまえ

9月5日(水)
 毎週水曜日は聴解の選択授業があります。私のクラスでは、中間テスト以降、ちょっと前に放送されたラジオドラマを教材として使っています。数回の連続もので、1話2分半ほどですから、学生の集中力も途切れません。
 中級の学生でも、ストーリーの大意はつかめます。しかし、ちょっと踏み込んだことは、一発では聞き取れません。日本人との差を感じたのは、登場人物の名前の聞き取りです。話の流れに関する質問には答えられても、「主人公の名前は?」ときくと、みんな顔を見合わせてしまいます。誰ひとりとして聞き取れていないのです。
 「アヤ、何してんの?」なんていうように、かなりはっきり名前を言っているにもかかわらず、名前は学生たちの耳に残りません。どうやら、名前の部分はよくわからない単語として処理してしまっているようです。その証拠に、名前を言う直前で一旦話を止めて、「さあ、これから主人公の名前が出てくるからしっかり聞いて」と注意を喚起してから聞かせると、全員が聞き取れるのです。つまり、日本人なら名前として認識する単語をそう認識していないのです。名前が聞き取れないというよりは、聞き逃していると言ったほうが正確かもしれません。
 中級というと、KCPの在籍が半年から1年に及ぶ学生もいます。それだけ長い間日本に住んでいながら、日本人の名前に接する機会はそんなに多くないのでしょう。アルバイトをしていても、名前を聞き取らなかればならない場面が頻繁に発生するとは思えません。だから、日本人の名前を聞き慣れておらず、それゆえ、ラジオドラマで「アヤ」などと名前を聞かされても聞き逃してしまうのも道理です。これは、日本人は日常会話で名前を呼び合うことが少ないことにも関連しています。それで生活に何の支障も来さないのですから、日本人にとっては十分なのですが…。
 聴解に限らず、私は日本人の名前をできるだけ学生に紹介するようにしています。初級なら「田中さん」「山田さん」ばかりでいいかもしれませんが、私が作る教材に出てくる日本人は、竹内さん、春香さん、岡本さん、健一郎さんなど、バラエティーを持たせています。でも、日本には苗字が30万種類もあるそうなので、慣れさせるって言ってもたかが知れてますけどね。

  • 2012年09月05日(水)22時23分

火付け役

9月4日(火)
 Tさんは去年に続いてN大学とR大学を受験するつもりだと言います。それはいいのですが、去年の失敗から何を学んだかが問題です。去年の入試では何が悪かったかを聞いたところ、面接の時に上がってしまって、思い通りのことが言えなかった点だという答えが返ってきました。私は首をかしげざるを得ませんでした。確かにそういうこともあったでしょうが、それ以上に自分を上手にアピールできなかったことのほうが大きかったのではないかと思っています。
 去年の受験直後の話を思い出すと、Tさん自身はそこそこ以上の手応えを感じていました。面接官といろいろな話ができて満足しているような口っぷりでした。しかし、だめでした。つまり、面接官はTさんを知ろうとあれこれ質問したものの、ついにTさんは何者かをつかみきれなかったのでしょう。その点を今年はどのように改善し、どんなコンセプトで面接に臨むのかがいい加減なままでは、同じ失敗を繰り返しかねません。
 このあたりをTさんに追及してみると、その覚悟があやふやでした。単に落ち着いて質問に答えればいいという問題ではありません。自分をいかに売り込むかという戦略を考えた形跡が見えません。面接官を自分の土俵に引き込むくらいの勢いが必要なのです。例えば、時事問題にからめて志望動機を語ったり、他の受験生との違いを強調したりして、歯車が噛み合った学問への意欲を示していきます。今日はそのヒントを与えて終わりにしました。
 時には学生の尻に火をつけるのも教師の役目です。面談の初めと終わりで、Tさんの目つきが多少変わったような気がします。R大学の入試まで2か月ほどですが、どこまで化けることができるでしょうか。一皮むけて合格につなげられるでしょうか。

  • 2012年09月04日(火)19時45分

授業再開

9月3日(月)
 1週間の夏休みが終わり、今日から授業再開です。今日私が接した学生たちは、北海道のホームステイプログラムに参加したOさんを除き、あまりパッとした夏休みではなかったようです。受験生なら、勉強に追われるのもしょうがないですよね。私も宿題をしこたま出しましたから、責任の一端は感じなければならないかもしれません。
 私は、ここ数年と同様に、四国へ行きました。四国は関西や北海道などと比べると華々しい観光スポットが少なく、地味なイメージが拭いきれません。しかし、毎年通っていると、次から次へと行きたいところが現れてきます。今年は、どうしても徳島県小松島市の日峯山に登って、淡路島や和歌山まで見通してみたくなり、向こうへ行ってから予定を変更しました。登ってみると、眼下の徳島や小松島の街並みだけではなく、海を越えた山並みが見渡せて、気分爽快でした。
 今年のメインディッシュは西日本最高峰の石槌山に登ることでした。しかし、天候が優れず果たせませんでした。台風15号が北へ抜ければ好天が望めると思ったのですが、14号が台湾から引き返してくるという全く予想外の事態が発生し、また上空に寒気が到来し、先週いっぱいは天候が回復しませんでした。雷と言われちゃあ、リスクが大きすぎます。石鎚山に登りにまた来い、という四国からのメッセージだと思い、来年以降のお楽しみとしました。
 そんなきわどい天気だったのですが、雨に降られないように慎重に行き先を選び、いろんなところを歩き回りました。1日平均30キロ以上は歩きました。私の歩く速さはガイドブックの1.5~2倍ぐらいなので、汗をたっぷりかき、ああ有酸素運動してるなと感じました。濁世の垢を汗と一緒に流し、自分が澄明になっていくような気分でした。でも、おかげで、両腕の4分の3と顔の下半分はきれいに日焼けしました。白い部分は、半袖シャツに隠れていた部分と、帽子のひさしの影になっていた部分です。
 さて、今日から学校です。欠席した学生に怒り、宿題をしてこなかった学生に怒り、一気に濁世の垢にまみれてしまいました。次にこの垢を流し去ることができるのは、年末年始の休暇でしょうか。

  • 2012年09月03日(月)19時25分

Lさんの目

8月24日(金)
 選択授業作文のLさんは、毎回、一言たりとも聞き落とすまいというような目つきで真剣に授業に臨んでいます。積極的に発言し、質問し、何でも吸収しようという態度には好感が持てます。そういうLさんの顔を見ていると、授業にも力が入ってしまいます。
 しかし、Lさんの作文はどうも力が入りすぎてしまっていて、読むのに骨が折れます。もう少しリラックスして書いてくれるといいんだけどなと思います。話が大げさになりすぎて、自分自身でも収拾がつかなくなている様子がうかがえます。
 また、Lさんは原稿用紙に書く前に必ずメモを作って全体の構成を考えています。それ自体は他の学生にも真似させたいくらい素晴らしいことなのですが、そのメモが徹底的に国の言葉なのです。日本語はひらがな1つ出てきません。明らかに、母語で考えてそれを和訳しています。まだ中級だからやむを得ないところもあるでしょうが、このままでは効率の悪い努力を積み重ねることになりかねません。何でも吸収する瞳が生きてきません。
 中級よりも上になると、日本語特有の言い回しや外国語には翻訳しにくい表現を勉強していきます。母語からの翻訳に頼って作文を書いていると、そういったものを使いこなす力がつきません。Lさんのように自ら伸びていこうとしている学生にはぜひ身につけてもらいたいのですが、このままではちょっと危ういですね。
 翻訳作文だと、確かに理屈は通っているし正論なのですが、B評価までです。読んでいて、すんなりと頭に入ってきません。うまさというのか、読み手を引き付けるものというか、いい意味で印象に残るものが少ないのです。Lさんの場合、題材はいいのですが、生硬な感じがして、なかなか心に響いてこないのです。
 今日のLさんの作文はどうでしょうか。読むのは夏休みの宿題になりそうです。

  • 2012年08月24日(金)19時34分

処暑ですが

8月23日(木)
 今日は処暑、暦の上では「暑さが収まるころ」です。職員室でそんな話をすると、N先生は「そういえば、風が少し変わったみたい」とおっしゃり、M先生は「そんなことありませんよ。お盆の頃と変わりませんよ」とおっしゃいます。私は、どちらかといえばM先生の意見に賛成ですね。確かに日は短くなりましたが、それが気温にまで反映されているかといえば、断じてNOです。今日も最高気温は34度を超えました。学校の近くの花園公園では、セミの鳴き声が衰えるところを知りません。小さい秋を感じるのも、まだまだ先のようです。
東京の場合、平年の最高気温、最低気温ともに1年で一番高いのは8月7日の立秋の頃です。それに比べれば、処暑の頃は最高も最低も0.5度ほど下がっているのですが、いずれにしても真夏日が平年であることには変わりなく、涼しさが実感を伴うには程遠いです。KCPはあさっての土曜日から夏休みですから、そう簡単に夏が終わってしまっては困るのですが。
 こういうように残暑は続いていますが、電力使用量はさほど伸びていないそうです。節電で大騒ぎした去年に比べても十数%電力使用量が減っていると新聞に書かれていました。逆の見方をすると、一昨年まではかなり贅沢なというか無駄な電気の使い方をしていたということがわかります。原発推進派は電力使用量があまりに下がってしまっては困るようですが、エネルギーの使用量が減るということは、地球規模で見れば好ましいことです。
 今日の私のクラスでは、「必要は発明の母」という言葉を扱いました。原発が止まって節電の必要に迫られれば、電気がないなりの暮らし方を発明するものだ、というところでしょうか。学生たちには、こんな日本の姿もまぶたに焼き付けていってもらいたいと思っています。

  • 2012年08月23日(木)18時36分

船出

8月22日(水)
 今日のクラスのOさんは、北海道のホームステイプログラムに参加します。そのため、授業が終わったらまっすぐ東京駅へ向かうとのことで、スーツケースを引きずって学校へ来ました。羽田へ行くのになんでわざわざ東京駅なんかに集まるんだろうと思いながら、何時の飛行機かと聞いたところ、なんと、船で北海道へ渡るというではありませんか。クラス内がどよめきました。
 調べてみたところ、大洗発18:30、苫小牧着が明日の13:30という便があります。東京駅からバスで大洗港へ向かったのでしょう。大洗を出航する直前ぐらいが日没で、今日はよく晴れていましたから、山に沈む夕日が望めたのではないでしょうか。明日もいいお天気のようですから、太平洋上で海から昇る朝日が拝めるに違いありません。
 北海道行きといえば飛行機と決め付けていた自分の固定観念に恥じ入るとともに、このプログラムの主催者の粋なはからいに感心しました。このプログラムには多くの留学生が参加するので、きっと船上で親睦会が開かれていることでしょう。羽田から北海道まで1時間半ほど、機内で座席に縛り付けられているよりもずっと有意義な時間が過ごせます。何といっても海から昇る太陽には、感激させられるものがあります。そうやってムードを盛り上げていくあたりが、心憎いと思います。
 私は会社の転勤で、苫小牧から仙台までフェリーに乗ったことがあります。お世話になった人たちが岸壁からいつまでもいつまでも手を振っていてくれたことを、今でもよく覚えています。飛行機では味わえない別れでした。一晩、北海道での思い出に浸りながら、新天地での活躍を心に誓いました。そういう経験があるから尚のこと、この旅程に輝きを感じます。
 Oさんが次に学校に顔を見せるのは、夏休み明けの9月。初日からこんなユニークな日程が組んであるプログラムですから、きっと道内でも得難い経験をさせてくれると思います。今から土産話が楽しみです。

  • 2012年08月22日(水)19時22分

うなずく学生

8月21日(火)
 教師は、自分の言葉に盛んにうなずいている学生を見ているとうれしくなるものです。しかし、“前にも同じことを話したんだけどなあ”という気持ちがあると、とたんに、“自分の教え方が悪かったから学生たちの頭に何も残らなかったんだろうか”と、落ち込んでしまうこともあります。
 今学期に入ってからの受験講座・理科は、EJUや各大学独自の試験問題をやりながら復習をしています。その解答と解説の時に、やたらとうなずきが多いのです。今日の生物も、Sさん、Oさん、Kさん、みんなうなずいていました。確かに、同じことを何回も繰り返し演習することで定着するものではありますが、果たしてどうなんでしょう。
 スパイラルを描きながら理解が深まっていけばいいと思って、前回とは角度を違えた見方をした資料を用意したり、新しい解き方を教えたりはしています。そういう点でうなずいているのならまだいいのですが、どうもその手前で感心されてしまっているような気がします。新たな知識を手に入れたっていう顔付きが、私にとってはかえって不安材料です。
 来週は夏休みですから、今週の受験講座では夏休みの課題を与えていきます。学期中は、日本語のクラスの勉強に追われて理科まで十分に時間が回せないこともあるでしょう。でも、夏休みは、少なくとも日本語の授業時間3時間がなくなるのですから、そのうちのいくらかは理科に振り向けてもらえるものと信じています。いや、振り向けないと11月に悲惨な結果を迎えかねませんから…。

  • 2012年08月21日(火)19時22分

詐欺にご用心

8月20日(月)
 Xさんの親元に、「お宅の子供がギャンブルで借金を作っているからそれをすぐ払え。さもないと子供を殺すぞ」という脅迫電話がかかってきました。Xさんが泣き喚いている声が聞こえたと言います。親御さんは心配になってXさんに連絡をしてみましたが、電話がつながりません。国にいたのではいかんともしがたいので、国からKCPに電話をかけてきたというわけです。
学校からもXさんに電話しましたが、つながりません。事務担当者がXさんのアパートまで安否確認に行ったところ、Xさんは部屋の中で寝ていました。本人はケロッとしていたそうです。
 何といっても一番悪いのは、脅迫した犯人です。ドラマ仕立てで親御さんをだまそうとしたあたりは、日本の振り込め詐欺の真似でしょう。でも、この騒ぎの一端はXさんにもあります。Xさんが親御さんと頻繁に連絡を取っていれば、少なくとも親御さんからのか、学校からの電話にすぐ出れば、こんな大騒ぎにはなりませんでした。電話を持っていても応答しなかったら、意味がないじゃありませんか。
 親元を離れ、日本で生活し始めると、何でも自由に勝手気ままに振る舞えると思い込む学生が多いですが、国元の親は心配しまくっているということを忘れてほしくないです。そもそも、留学のスポンサーはほとんどの場合、親御さんじゃありませんか。そのスポンサーに心配をかけたり期待を裏切ったりするようでは、留学する資格がありません。
 来週は夏休みです。Xさんのような例が続かぬように、学生たちには注意を与えるつもりです。

  • 2012年08月20日(月)19時14分

本気になれるかな

8月17日(金)
 CさんはN大学を受けようと思っています。N大学には6月のEJUの結果を使う方式と、EJUは全く使わず独自の試験で合否判定する方式との2つがあります。Cさんはそのどちらにしようか悩んでいます。6月の結果は、日本語はまあまあでしたが、総合科目がそれほどでもなかったので、決断できずにいるのです。
 Cさんの本音は、EJU方式で出願したいのです。私たちに背中を押してもらいたという気持ちは、手に取るようにわかります。しかし、EJU方式は6月の結果だけで合否が決まりますから、総合科目が思わしくなかったCさんは勝目が薄いのです。逆転できる要素が全くないのですから。そういう無謀な勝負は推奨できませんから、私たちは独自試験方式での出願を勧めました。2次試験までの2か月間を死ぬ気で頑張れば手が届きます。
 私だけでなく他の先生方からも「無理だ」とさんざん言われたのですが、出願してしまえば合否が決まるまでは何もしなくてもいいEJU方式がどうしても捨てがたいようです。2か月間、死ぬ気で勉強する自信がないのでしょう。でも、人生はどこかで本気にならなければなりません。Cさんは、ここで本気にならなければきっと後悔するに違いありません。
 その点、先日私に志望理由書の添削を頼んできたWさんは、何が何でもK大学かD大学という気持ちが強いです。昨日、中間テストの試験監督から帰ってきたら、志望理由書の書き直しが机の上に置いてありました。それをさらにまっ赤になるまで添削し、今日返しました。Cさんもこれぐらいの根性が必要です。日本語力的にはCさんの方が上なのですから、N大学の独自試験に向けて、それこそ寝食を忘れて頑張ってもらいたいです。

  • 2012年08月17日(金)18時46分

居酒屋が好き

8月16日(木)
 毎年、7月期の中間テストの日は、アメリカの短期プログラムでこちらへ来ている学生たちの修了式の日です。今年も、午前クラスの学生と午後クラスの学生と、2回に分けて修了式がありました。修了式では、修了証書をもらった後、学生たちは簡単なスピーチをします。午前クラスは中級か上級の学生たちですから、まだ余裕があります。国にいた時の日本のイメージと実際とが違っていたり同じだったりというような文化的な話もよく出てきます。しかし、初級が集まった午後のクラスの学生となると、そうはいきません。
 今日は、初級の学生たちの多くが、居酒屋が面白かったと言っていました。ああいう、いろいろな種類のお酒が飲めて、和洋中のいろいろな種類の料理も手軽に楽しめて、しかも安くて明朗会計というところは、アメリカにはないのかもしれません。それに出会った驚きを、少ない語彙と拙い文法とで表現しようとするところに、かえって切実さを感じさせられます。あんまり居酒屋ばかりに通いつめてもらっちゃ困るのですが、日本を知るきっかけになるのなら、多少は大目に見てもいいでしょう。
 ただ、同時に、日本語は難しかったという感想も異口同音に聞かれたのが気になるところです。アメリカ人にとって日本語は、確かにとっつきにくい外国語です。でも、それをそうとは感じさせないところにこそ、プロとしての存在価値があるのではないかとも思います。まあ、ここは、そういう難しい課題に挑戦した自分を褒めようという気持ちの発露だと受け止めておきましょう。
 明日から、今日修了した学生たちは学校へ来ません。中には明日帰国してしまう学生います。クラスによっては主力メンバーが抜けてしまったところもあるでそう。彼らの穴を感じさせない活発な授業を作ることも、教師の役目です。

  • 2012年08月16日(木)21時08分
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