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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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意外な結果

8月15日(水)
 今日は選択授業の聴解の中間テストがありました。私が持っているクラスはニュースの聴解ということで、ロンドンオリンピック閉会式と昨日の西日本の大雨を取り上げました。オリンピックは学生たちの関心が高い話題なので、知っている言葉が多く、聞き取れるのではないかと考えました。大雨の方は、気象に関する話題を授業で取り上げたので、それができるかというチェックです。
 「(大雨が)峠を越える」など、学生が明らかに知らないであろうという言葉はあらかじめ入れておいて始めたのですが、テストの結果は思ったより差がつきました。満点に近い人からやっと30点台まで、トリプルスコアに近い差です。優秀な方は予想通りでしたが、意外な学生が意外に点が取れていなくて、驚かされました。授業中の話題に対する反応からすると、結構聞き取れているんじゃないかと思っていた学生が、聞き取ったことを書かせようとすると、文字という形には残せないんですねえ。
 耳そのものが悪くても、耳はよくても聞き取って書くという部分が弱くても、聴解のテストで好成績を収めることはできません。書くのではなく、別の形で聞き取れていることが示せるようなテストがあればいいのですが、授業の中で気軽に使えるものはなかなかありません。こちらの言っていることはわかっているんだけど点数が伸びない学生は、さぞかしもどかしい思いをしていることでしょう。ペーパーテストに弱い学生の中にこそ、不言実行的な、素晴らしい人間性を持っている学生がいるのかもしれません。聴解力という1つの技能の力ではなく、聞き取ったことを元に何をするかという、総合コミュニケーション力みたいなものが測れるといいんですけどね。
 明日は読解、文法、漢字の中間テストです。今学期も半分まで来ちゃったんですね。アメリカの大学のプログラムできている学生は、半分ぐらいが明日で終わりです。ちょっと寂しくもなります。

  • 2012年08月15日(水)22時39分

将来、どうする?

8月14日(火)
 WさんがK大学に出す志望理由書と卒業後の計画を書いてきました。名門のK大学を狙うだけあって、文法的な間違いはあまりなかったのですが、Wさんの特徴も出ていない文章でした。
 志望理由書は、安全運転に努めましたという感じで、とがったところがありません。K大学でなくても、どこの大学に出してもそれなりに当てはまる内容なのです。私が読んでみても何も残りませんでしたから、K大学の先生がお読みになったら全く問題外でしょう。
 卒業後の計画も、「K大学で勉強したことを生かします」だけじゃ、いかんともしがたいですね。そんなのは当たり前のことであって、何をどのように生かすのかが、ここでの焦点なのです。卒業10年後の自分の姿が描けるくらいの計画であってもらいたいです。
 でも、アメリカの大学から来ている学生の中には、大学4年生になっても将来設計のはっきりしていない人もいます。人生の寄り道ぐらいの気持ちだったり、アニメへの興味に釣られて来てしまったり、その他、目的意識のイマイチはっきりしない学生が多々おります。
 日本の高校生だって、かなりいい加減に志望校や志望学部を決めていると思います。極端なことを言えば、高1の1学期の中間テストで数学が悪ければ文系なんていうこともまかり通っているでしょう。それゆえ(と決め付けていいのかどうかわかりませんが)、大学入学者の8人に1人が中退しているそうです。中退理由の第1位は、経済的理由ではなく、進路変更、つまり、入った大学・学部が合わなかったからだそうです。
 留学生の場合、そう気安く進路変更できませんから、きちんと将来のことまで考えなければならないのです。しかし、留学生も日本の高校生より1つか2つ年上であるに過ぎません。彼らだって迷いたいでしょうし、将来を決めてしまうことにためらいもあるでしょう。でも、日本の大学はリベラルアーツという、いわば学びながら自分自身について考えるという仕組みになっていません。専門教育がすぐ始まるので、迷っている暇などありません。
 日本は留学生を増やそうとしていますが、こんなあたりにも改善の余地があるんじゃないんでしょうか。Wさんに添削した志望理由書と卒業後の計画を渡した時の困惑した顔を見ながら、そんなことを考えました。

  • 2012年08月14日(火)19時20分

不安

8月13日(月)
 大学に出願するとき、国の高校の卒業証明書と成績証明書が必要です。この書類、日本語か英語で書かれていれば問題ないのですが、それ以外の言語で書かれている場合、それを日本語に訳して、その翻訳が正しいものだということを公的機関で証明してもらわなければならないことがよくあります。日本にいる留学生にとって、公的機関というのは各国の大使館です。ところが、中国大使館がこのサービスを今月からやめてしまいました。いろいろ調べてみると、学生たちは、取り寄せた書類を翻訳し、北京の教育部学歴認証センターに送り、そこで証明してもらうのが一番確実な方法だということがわかりました。
 今までは1週間ほどで証明がもらえたのが、今後は日数が読めなくなってしまいました。日本の大学は、今のところ、こういう変更があっても出願締切を変更する考えはないようです。つまり、去年と同じペースだと出願しそびれるおそれが出てきました。進学担当としては、学生の尻をたたき続けていくことが求められます。
 今日の受験講座でそういう話を学生たちにしましたが、不安そうな表情をしている学生が何名もいました。中国大使館がなぜ公証サービスをやめてしまったかはわかりません。ただ、言えることは、それによって同じ中国の若い人民が非常に不安な思いをしているということです。中国のすべての学校で、中国語と全く同じように英語の証明書を出してくれるのなら問題はありません。しかし、学生たちの様子からすると、残念ながら、現時点ではそうではないようです。
 大使館の第一の任務は、国の外で頑張っている国民を支援することではないでしょうか。その点に鑑みて、今回の決定はぜひとも再考してもらいたいものです。

  • 2012年08月13日(月)19時45分

実習生が来た

8月10日(金)
 今日は、私の中級クラスに、KCPで実習しているS大学の学生が2名入りました。私は見学者が入ったからといって授業のやり方を変えはしませんが、学生たちはちょっと張り切ったようです。コーラスの声がいつもより心持ち大きく、エアコンの温度調節も「少し暑いんですけど、エアコンを強くしていただけませんか」なんて、今まで聞いたこともないような言葉遣いで求めてきました。
 それはさておき、実習生は初級クラスに入っていて、私は上級がフランチャイズですから、私の授業の進め方はかなり特異に映ったようです。初級は日本語の入口ですから、本当にいろんな人がクラスにいます。ところが中級になると、ある程度の語学センスを持ち合わせた人しか残りません。初級に比べると、良くも悪くもクラスが丸くなってきます。上級には大学進学や就職など、日本社会に入り込もうという学生が多いですから、日本人の中に入っても見劣りしない日本語力というのを意識します。その授業は、初級とはかなり様相を異にします。
 今日はそういう授業を常日ごろ行っている者が実習生のお相手をしたのですから、実習生も面食らったかもしれません。でも、そういうように日本語力にかなり開きのある学習者が集まるのが日本語学校であり、その学習者の力に合わせてクラスを作るのですから、それぞれのクラスでスタイルが違うのも当然です。KCPでの実習は、極力それらをみんな体験してもらおうと思っていますから、私のような日本語学校の標準からずれた教師の授業も見ていただくことになるのです。
 実習生たちが私の授業の中の“しかけ”にどれだけ気づいたかはわかりませんが、フィードバックでお話をした限りでは、感じるものがあったようです。実習生たちがプロとして学習者に向かう時に、今日の見学をちょっとでも思い出してもらえれば、非常に光栄です。

  • 2012年08月10日(金)20時35分

読み応えのある作文

8月9日(木)
 今学期は選択授業の作文を担当しているので、毎週かなりの量の作文を読みます。日本語教師ですから、文法の間違いや誤字脱字、語句の用法、原稿用紙の使い方などは厳しくチェックします。でも、本当に吟味したいのは、内容です。言葉や文法など、表面的な間違いがあまりなく、スッと読めるのですが、心に全然引っかからない文章もあれば、間違いだらけなのですが訴える力が非常に強い作文もあります。後者の学生に高い評価を与えたいのですが、評価の基準に従って点数化すると、どうしても前者のほうが高得点になってしまうのです。
 じゃあ、評価基準など無視して心のままに点をつければいいじゃないか、といきたいところなのですが、そういうわけにもいきません。学生から「私はどうしてこの評価なのですか」と聞かれた時にきちんと説明できなければなりませんから。「私の心を打ちましたからA評価です」「何も感じるところがなかったから、間違いは少ないでですが、C評価です」じゃあ、恣意的に評価していると言われても反論のしようがありません。
 作文の評価は、学生が次により良い作文を書く手がかりになるべきものです。どこを直せば日本語らしい表現になるのか、自分の思いが伝わるようになるのか、その指針でなければなりません。そうすると、ある基準を設けてそれに則って評価するのが妥当な線となるのです。
 それでもやっぱり、何かを強力に訴えてきた文章には何かを返してあげたいものです。私は、そういう作文にはたっぷりコメントを書きます。他の作文が1行だとしたら、3行ぐらいこちらの思いを書き綴ります。そのコメントから、成績評価とは違う面で高く買っているのだということを伝えようとしています。
 今日読んだ作文では、Tさんのがそういう作文でした。中級なのに初級っぽい書き方なのですが、Tさんの人となりが、文法の間違いや表現の拙さを越えてひしひしと伝わってくる文章でした。明日はちょっと創造的な文章を書いてもらうことにしています。Tさんの作品が今から楽しみです。

  • 2012年08月09日(木)21時09分

早く動けば

8月8日(水)
 朝、自動ドアを抜けてマンションの外に出ると、昨日までの肌にまとわりつくような空気ではなく、肌から体温を奪っていくような風を感じました。おやっと思って、学校へ来てから気象庁のサイトをのぞくと、最低気温が24℃を割っているではありませんか。日付が変わってから風向きが北寄りになったのが大きいのでしょう。日中の最高気温も29.6℃と、真夏日にはなりませんでした。建物の中の方が暑く感じられるほどです。
 最近、仕事の進みが悪いです。暑さのせいではなく、原因は学生が次から次へと進学相談に来るからです。受験講座であおってきたからでしょうか。去年に比べて、学生たちが悩み出すのが早いような気がします。今から騒いであれこれ動いてくれれば、卒業式までには絶対何とかなっているものです。追い詰められてから、少ない選択肢の中でやむを得ず進路を決めるのではなく、自分に主導権があるうちに主体的に手を打つことが、留学を実り多いものにするのには不可欠だと思います。
 今日相談に来たOさんも、6月のEJUの結果と自分の英語の実力から、どこの大学に出すのが最良の選択か、いろいろと考えているようでした。昨日のSさんも同じような相談で私のところへ来ました。また、Cさんは自分の予想以上の高得点をどう活かすかという作戦を練りに来ています。
 さて、例年より若干早めにスタートを切った学生たちですが、どんな結果を出してくれるでしょうか。早い時期に、景気づけにポンポンと合格者が出てくれると、波に乗って次々と朗報が聞けるような気がするのですが、どうなるでしょうか。

  • 2012年08月08日(水)18時12分

いろいろな願い

8月7日(火)
 昨夜は一晩中気温が25℃を割らず、というか夕方から全く気温が下がらず、熱帯夜で立秋の朝を迎えました。朝型の私にとっては、立秋ともなると夜明けがずいぶん遅くなったという感じがしますが、夏はまだまだ元気いっぱいです。今日もまた真夏日でした。
 そんな蒸し暑い一日でしたが、学校では月遅れの七夕をしました。今朝の段階では、笹は単なる緑の塊でしたが、学生が願いを込めた色とりどりの短冊を吊り下げていくにつれて、次第に華やかになってきました。午後のクラスが吊り下げ終えることには、仙台の七夕飾りほどではありませんが、目を引く存在になっていました。
 学生たちの願いをこっそり見てみると、家族の健康や幸福を祈る親孝行系のもの、成績向上・志望校合格など勉強成功祈願系、恋人欲しい・ダイエット成功・お金持ちになりたいなど現世利益追求系、彼と結婚したい・彼女とお店を開きたいなど夢追い系、まあいろんなものがあります。
 でも、”東京大学を合格するように”なんていう短冊を見ると、「お前は教師の言うことを聞いとらんのか! こんなことを書いてるようじゃ、一生どこの大学にも合格できんぞ!」と突っ込みたくなります。それが上級の学生だったら、泣きたくなります。その一方で、病気で休んでいるU先生の回復を願った短冊もありました。なんかほっこりさせられました。
 先月の7日は雨が時々降る湿っぽい一日で、織姫と彦星は会えませんでした。でも、今日は、暑いですが何とか晴れましたから、2人は1年ぶりの再会を喜び合っていることでしょう。学生たちの多少アホな願いも、聞き届けてもらえるんじゃないでしょうか。

  • 2012年08月07日(火)19時00分

お金がかかる

8月6日(月)
 今日は午前中から雨が降り始め、一時は窓をたたく雨音がうるさいほどでした。久々のまとまった雨となりました。そして、この雨のおかげで、今日は最高気温が30度を超えず、7月23日以来、ちょうど2週間ぶりに真夏日となりませんでした。とはいえ、お昼過ぎに雨が上がって日が照り始めると、気温も上がってきました。蒸し暑さが残り、熱帯夜から解放されるかは微妙なところです。
 そんな蒸し暑い中、受験講座では先週提出させた今後の予定表を見た感想を述べさせてもらいました。まず、この時期になって志望校の大学・学部・学科の名前が正確にかけないとは何事か、と怒りました。ただ憧れで名前を挙げているだけなら名前が間違っていても許せますが、出願に必要な書類を取り寄せなければならない時点に至ってもまだそんなことをしているなんて、とても本気とは思えません。詰めが甘いというか、いい加減というか、初手から後れをとっています。
 それから、勉強の計画がきちんと立てられていません。ただ漫然と問題集か何かを広げているだけでは、実力は付きません。11月のEJUの点数など、具体的な目標を立ててそれを達成するためにはどうしたらいいかを考えていくべきです。しかし、それができていない学生が多いのです。
 そういうコメントをした後、出願に必要な書類について触れました。卒業証明書や成績証明書などは学生たちも知っていますが、経費支弁書や資金計画書といった、入学後の金銭面に関する書類について話をしました。シミュレーションしてみると、国からの仕送りが意外に多くなることがわかり、学生たちはちょっと暗い表情に。
 そこで、最後は、自己推薦書を書かせました。“私にはこんな素晴らしいところがあるんです”的な文章ですから、学生たちも多少は元気が出たようです。これからその自己推薦書を読んで、学生たちの意外な一面を知ろうと思います。

  • 2012年08月06日(月)20時11分

ギアを入れ替えて

8月3日(金)
 今学期は昨日までスピーチコンテストを中心に回っていましたが、今日からは勉強中心にギアを入れ替えなければなりません。…と思っているのは教師だけなのか、私のクラスは欠席3名。
 今日の受験講座の理科は、先週出しておいたT大学2次試験の答え合わせをしました。2次試験はEJUと違って記述式ですから、答案を作らなければなりません。少なくとも、他の受験生に差をつけるためには式の羅列ではいけません。そういうつもりで宿題にしたのですが、学生が答案用紙に書いてきたものは、計算のメモでしかありませんでした。私が採点官だったら、0点にはしませんが、最終的な答えが合っていたとしても、部分点も半分ぐらいでしょうかね。
 EJUの過去問を取り扱うときは解説を加えた模範解答を配るのですが、今日はホワイトボードに答案見本を書き、それを写させました。解説を読むだけでは勉強になりませんから。自分の手を動かして論理の流れを感じ取ることをしてもらいたいのです。論理が身に付けば、EJUのような問題を解くのにも有効なはずです。
 それから、数値の計算をいかに早くするかということも、学生に問いかけました。理系の学生でも、すぐに電卓を使いたがります。そうすると有効数字の概念も育ちませんし、概算の重要性も理解できません。数量的感覚が磨かれないままになってしまうのです。大学入試問題で有効数字2桁なら、筆算さえしなくてもいい場合がよくあります。計算のスピードを上げること、計算結果の蓋然性が判断できるようになること、そうい狙いを示して電卓を使わずに計算するときのコツを教えました。
 私自身はギアを入れ替えて授業しましたが、学生にとっては連休の谷間的な1日だったかもしれません。でも、あんまりのんびりしたことは言ってられないんですよね。

  • 2012年08月03日(金)20時24分

卒業生の審査員

8月2日(木)
 今日はスピーチコンテスト。最近は池袋や世田谷、調布など遠征が続いていたのですが、今年は近場の四谷区民センター。ホームゲームみたいなもんですね。気温があまり下がらなかった昨晩は寝つきが良くなかったのか、朝早くから学校に姿を見せる学生も数名。荷物運びを手伝ってもらいました。
 その区民センターのホールを学生で埋め尽くして、スピーチコンテストが始まりました。びっちり詰まった観客席に気圧されてしまったのか、途中で言葉に詰まってしまうスピーカーが目立ち、また、力が入りすぎたのか、制限時間を若干オーバーするきらいがありました。でも、内容が伴っていましたから、許してあげましょう。クラスの応援は、観客席と一体になってするパターンが加わり、幅が広がったように感じました。
 今年の特徴は、卒業生が審査員として入ったことです。審査用紙に書かれたスピーチのタイトルを見て、この4月にN大学に進学したAさんなど「こんな難しい話、採点できるかなあ」なんて心配していました。昨年は、アルバイト疲れでスピーチコンテスト中寝ていたりもしましたから、一抹の不安が無きにしもあらずでしたが、スピーチが始まるや真剣に耳を傾け、審査用紙には的を射たコメントが書かれていました。立派に大役を果たしてくれました。進学して日本人の中に放り込まれると、日本語学校の学生の日本語を客観的に評価できる力が備わってくるのではないでしょうか。
 学生は我々教師から通訳を頼まれると非常に誇りにも思うものだ、ということは感じていましたが、スピーチコンテストの審査員はそれ以上のようです。今日来てくれた4人の卒業生は喜んで引き受けてくれましたし、声がかからなかった卒業生がとても残念がっていたそうです。こういう形でも学生の力を引き出し、伸ばしていけるのだな感じさせられました。また、一番危なっかしく思っていたAさんを筆頭に、卒業生たちの人間的成長を感じることができたのが、私たちにとっての収穫でした。
 今学期が始まってから今日まで、スピーチコンテスト中心に学校が回っていました。受験組は明日から、いや、今晩からギアを入れ替えなければなりません。引き締めていきましょう。

  • 2012年08月02日(木)19時59分

Tさんの大学

8月1日(水)
 夕方、東京から遠く離れたK大学に進学したTさんが来ました。来週末から関西地方でインターンシップをし、来年早々から1年間、イギリス留学をする予定だそうです。東京を離れることが決まった時には寂しそうな顔をしていたTさんですが、今日は生き生きとしていて、K大学がすっかり気に入っているようです。キャンパスに熊が出没するなんていう話を、面白おかしくしてくれました。自分のインタビューが載っている大学のパンフレットを持ってきて、是非後輩を送り込んでくださいと、大学の宣伝までしていきました。
 K大学は最近非常に注目を浴びている大学で、新聞や雑誌などで取り上げられることもしばしばです。海外留学が義務付けられていて、国際的に通用する人材を育てる大学だという評判が高まっています。今世紀になってからできた大学なのに、100年以上の歴史を誇る大学と同等以上の評価を得ているのです。どういう人材を育てるかという方針が明確なこと、それに向けてのカリキュラムがしっかりしていること、さらにはそれに基づいて実績を上げていること、こういったあたりが高い評価の元なのでしょう。
 普通の大学とは比べ物にならないくらい厳しい大学だ、それゆえ留年率も高いという噂も耳にします。また、徹底した就職予備校だと評しているサイトもあります。でも、Tさんの明るい笑顔を見ていると、頑張り続ける気力がある学生や確たる目標を持っている学生にとっては、居心地のいい大学なのでしょう。日本の高校生の進学率が50%を超えたということは、真に勉強したくて進学した学生と、いわゆるモラトリアムで進学した学生とがいるということなのです。そして、K大学は、後者に迎合することなく、徹底して前者に照準を合わせているのです。
 先学期、Tさんの話をしたら、是非K大学に進学したいといってきた学生がいました。でも、その学生はTさんほど根性がなさそうです。試験にパスすることはできても、Tさんのように笑顔で母校を訪問してくれるかどうか、心配なところです。

  • 2012年08月01日(水)21時11分

一期一会?

7月31日(火)
 昼休みに、去年も来ていただいたT大学の説明会がありました。昨日の受験講座で、この説明会のテコ入れをしたのが効いたのか、予定をだいぶ上回る数の学生が参加しました。
 DVDとパワーポイントを使った大学の説明でしたが、はっきり言って学生に対するインパクトには欠けていたように思えました。もちろん、必要んことは確実に言っていました。しかし、それが学生の胸に響いたかといえば、そうでもなさそうでした。大学の説明会といえばイベントなのですから、そのイベントを盛り上げようとする工夫が必要です。また、留学生は外国人なのですから、日本人に話すのと同じだったら情報の伝達率は下がってしまうでしょう。それを補う何かが感じられませんでした。
 パワーポイントのスライドはよくできていました。多少字が細かいきらいがありましたが、必要なこと、知りたいことがちゃんと書かれていました。でも、たとえ上級であっても、留学生にそれを全部読めというのには無理があります。T大学に対するイメージが明確に描けていない留学生に対して、主腰でもいいイメージを持ってもらうには、耳から入る印象的な言葉も不可欠だと思います。
 せっかく、昨日、ムードを高めておいたのに、これじゃあ台無しです。学生たちには「来年」はないのです。今日、説明会場にいた学生は、今年の入学試験しか受けません。そういう意味では一期一会なのです。でも、一期一会になりきれなかったのが、今日の説明会だったように思えます。

  • 2012年07月31日(火)21時03分

聞くは一時の恥

7月30日(月)
 私が持っている最上級クラスで文法テストをしました。先々週から先週にかけて授業でやった内容です。N1かN2の文法なので、学生たちはできて当たり前です。最上級クラスなんですから。制限時間は20分でしたが、ほとんどの学生がだいぶ時間を余したようでした。
 ところが、採点してみると不合格者が数名いるではありませんか。不合格にはならずとも、かなりきわどい点数の成績もかなりいました。テスト時間中に余裕をかましていたわりには、さっぱりの出来でした。勉強不足なのか実力不足なのか微妙なところはありますが、いずれにせよ満足できる結果ではありません。
 もちろん、この結果を学生のせいだけにすることはできません。私たちの教え方、普段の指導に全く問題がなかったわけではないでしょう。学生たちは理解しているものとしてどんどん進めてきた授業にも問題があります。もっともっと学生たちが理解したかどうか確認を取りながら、一歩ずつ進んでいく必要がありそうです。
 Hさんが「周りのみんなのレベルが高くて、わからないと言って質問するのが恥ずかしい」と、ある先生に言っていました。私に言うのもはばかられたようです。これじゃあいけませんね。テストの結果を見る限り、わからないのはHさんだけではありません。決してみんながわかっているわけではないことを示して、質問しやすい雰囲気を作ることが必要です。
 学生たちに最上級クラスとしての矜持を持ってもらうことは是非とも必要ですが、教室の中では「わからない」と言っても恥ずかしくないのです。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥です。

  • 2012年07月30日(月)18時50分

大金星

7月27日(金)
 もう間もなくロンドンオリンピックの開会式が始まりますが、それに先立って行われたサッカーの予選で、日本は女子も男子も勝利しました。女子の対カナダは順当なところかもしれませんが、昨夜行われた男子の対スペインは、今朝のスポーツ新聞の大文字のように、大金星です。96年のアトランタオリンピックでブラジルに勝った“マイアミの奇跡”に迫るものがあります。このマイアミの奇跡を演じた選手たちが、98年のワールドカップ初出場、02年の1次予選突破の主力になったことを考えると、昨夜のメンバーたちにも期待を寄せたくなります。女子に続いて男子も、世界制覇とまではいかなくても、それに近い成績を収めてくれればと思っています。
 やっぱり、伸び盛りの若者に必要なものは自信だと思います。今までの自分の努力が、きちんとした形を持った成果となって手に取ることができるようになると、一皮むけて大きく成長します。成功の果実の甘さを知り、自分が成長できるとあれば苦い努力も進んで取り組もうとします。また、自信を持って物事に取り組めば、自然といい方向に歯車が回りだすものです。
 今日は11月のEJUの出願締切日でした。6月の結果がわかった直後に出願という絶好にタイミングで、学生たちの顔色も十人十色です。結果が思わしくなかったSさんは悲壮な顔つきで、好成績だったKさんは押せ押せムードで、微妙な成績のWさんは努めて平静を装って…。また、秋口に入試を行う大学の出願も迫っています。
 努力の割には結果が出ていない学生にスペイン戦のような大金星を挙げてもらいたいのと同時に、上位の学生には大逆転を喰らわずに順当な結果を出してもらいたいです。欲張りな話ですね。ロンドンオリンピックでも、水泳の北島のように前評判の高い選手にはその前評判の通りの結果を期待しています。

  • 2012年07月27日(金)18時37分

朝から暑かった

7月26日(木)
 今朝は外を見ると、いかにも水分がたっぷりありますという空気の色でした。その水分に光が弾き返されたからでしょうか、窓から見える街全体がどことなく茜色でした。スカイツリーの方を見ると、もやがかかって全体が見えませんでした。上の方の展望台がちょうど雲の中で、その上のアンテナは、また見えていました。スカイツリーの見え方だけで言えば、雨の日のようでした。
 気象庁のデータによると、朝の7時頃までは湿度が80%以上で、雨が降り出す時となんら変わりがありませんでした。空気が水を含んでいたように見えたわけです。日中は気温が上がるにつれて湿度は下がっていきましたが、今度は気温が順調に上がりすぎ、最高気温は35.4℃を記録し、今年2度目の猛暑日となりました。これからしばらくは暑い日が続くそうです。
 今週は受験講座や選択授業の滑り出しで、私自身ハードな日が続きました。今日あたりは、暑さもあり、さすがに疲れがたまってきて、進学相談に来たDさんから「先生、体調悪いんですか」なんて気遣われてしまいました。
 そのDさんは、6月のEJUの総合科目が思わぬ高得点で、その点数を活かすにはどうしたらいいだろうかという相談をしに来たのです。日本語の点数がそれほどでもないところが痛いところです。行きたい大学、友達から聞いた大学、どこかからちょっと聞きかじってきた大学など、いろんな大学の名前が出てきました。でも、そのどれもについて深く考えた形跡がなく、総合科目の高得点で浮ついている感じがしました。強気で勝負するのもいいのですが、今のDさんを見ていると、足元をすくわれるのではないかと心配になってきました。
 夕方、卒業生のYさんが来ました。もう3年生で、秋からインターンシップを始めて就活に打ち込むそうです。KCPにいたころは子供だと思っていましたが、業界研究なんかもしていて、成長を感じさせられました。Dさんの3年後はどうなっているのでしょうか。

  • 2012年07月26日(木)18時28分

ポスターがいっぱい

7月25日(水)
 来週の木曜日がスピーチコンテストということで、校内の至る所にポスターが貼られています。そのポスターはすべて学生の作品なのですが、どれもこれも力作ぞろいです。バス旅行でもバーベキューでも運動会でも、学校行事のたびに学生からポスターを募集します。そして、出てくる作品がみんなうまいんですね、一口で言ってしまえば。美術コースの学生もいますから、作品のレベルが高くなるのは当然といえば当然です。手で描いた作品も、パソコンで作った作品も、私のような絵心のない人間が見ると、感心するほかないものばかりです。
 絵が描けるということは、自分の心を表現する術を持っているということです。現に学生の作ったポスターを見ていると、その学生たちがいかにスピーチコンテストに期待しているか、楽しみにしているかがわかります。こういう、言葉以外で自分の心を表す手段を持っている人は、うらやまましいです。文章で長々と綴ることしか知らない、できない私が、非常にちっぽけなものに見えてきます。
 絵を描くことに打ち込んでいる学生たちの姿は美しいと思います。絵筆を取っている姿はもちろん、パソコンの画面に向かってマウスやら何やらを動かしている姿も、輝いて見えます。好きなことに熱中するということは、周りも感動させるのです。
 そういうすばらしい作品を生み出せる学生たちにしても、絵で食っていけるかといえば、決してそんなことはありません。大半(いや、ほとんど全員?)の学生が、将来は趣味で絵を描いていく、絵の上手なおじさん、おばさんになるほかないのです。でも、人生に疲れたおじさん、おばさんにはならないでくださいね。あなたたちには人を感動させる力があるんですから。

  • 2012年07月25日(水)20時37分

美学?

7月24日(火)
 イチローがヤンキースに移籍しました。突然のことなので、とても驚きました。今まで足掛け12年にわたってマリナーズ一筋で、しかも年齢も38歳ということですから、このままマリナーズで引退するまでプレーするのだろうと、漠然と思っていました。でも、報道によると、自分に新たな刺激を与えるために移籍を志願したそうです。
 やっぱり超一流のプレーヤーは違うなと思わされました。現状に安住し満足することなく、自分を自分自身の手でより高い所へ引き上げようとする姿勢には、頭が下がります。そこまでしなくてもというのは部外者の勝手な思いで、本人の心の中にはまだまだ燃えたぎるものがあるのでしょう。イチローは大リーグでは優勝を経験していません(移籍の年の地区優勝のみ)。ヤンキースという優勝の可能性のあるチームで、激烈な競争を勝ち抜いて優勝に貢献する選手になる――そんな目標を密かに抱いているのでしょうか。
 日本では、よく「引き際の美学」が話題になります。名選手がボロボロになるまで現役を続けるより、余力を残して引退する方が美しいとする考え方です。最近は野球の工藤や山本昌、サッカーの三浦知良など、二線級のランクを押されてもなお現役にこだわる選手が出てきました。また、そういう選手を応援する向きが強くなってきています。でも、これは、そういう選手が少ないことの裏返しに過ぎません。
 イチローは「余力を残して引退」という道筋をたどるのだろうと思っていましたが、もしかするとそうではなく、燃え尽きるまで現役を続ける覚悟なのかもしれません。何年か後は、1番ではなく下位を打つのでしょうか。守備固めで登場するのでしょうか。今日はヤンキースの8番として登場し、古巣のマリナーズからヒット1本を奪ったそうです。今までとは違った意味で、メジャーリーグから目が離せなくなりました。

  • 2012年07月24日(火)18時15分

あきらめるのは早い

7月23日(月)
 6月のEJUの結果を学生に配りました。理科系のXさんとWさんは、ともに理科系科目が振るいませんでした。この結果を見て、2人とも文系に変えようかと言い始めました。それはとても危険な発想なので、なんとか押しとどめています。
 6月の結果を見て理系から文系に変えた学生は、だいたいその後も思うように成績が伸ばせません。結局、不本意な進学か帰国を余儀なくされます。今日から11月のEJUまで4か月を切っています。そのわずかな時間で、今まで長い時間をかけてみっちり勉強してきた学生たちに勝とうという考えは、甘いとしか言い様がありません。総合科目を一から始める時間があるのなら、数学や理科の練習問題をひたすら解くべきです。
 数学や理科について言えば、ある量の練習問題をこなさないと力が身につきません。逆に言えば、あるクリティカルな問題量があり、それを超えたとたんに実力の伸びを感じるものです。XさんもWさんも、そのクリティカルな問題量に達していたかといえば、NOです。ですから、今、ここであきらめるのは早計なのです。
 受験講座でも、そういうことを考えて、今学期からはEJUや各大学の2次試験の過去問をやっています。たとえ6月のEJUが不成績でも、どこが悪かったのかを振り返り、これから力を伸ばしていけるようなカリキュラムになっているのです。XさんもWさんも、早まったことはしないでもらいたいです。
 そうは言っても、学生の立場からすると、理科に見切りをつけて文科に転身したい気持ちもわからないではありません。でも、6月のEJUに出願する時点で、自分の勉強したいことや将来の計画を十分に見つめて、理科で頑張ろうと誓ったのです。それをあっさりと引っ込めてしまうのは、私は納得できません。石の上にも三年…だと思うのですがね。

  • 2012年07月23日(月)21時04分

山あり谷あり

7月20日(金)
 昨日は今シーズン初の猛暑日だったのにひきかえ、今日は半袖では薄ら寒いほどの1日でした。私のクラスで欠席したUさんに電話したところ、かすれたひどい声をしていました。先学期教えたZさんも風邪で休んでいるとか。昨日の夜から急に気温が下がり、昨日と今日では最高気温が10℃以上も違うのですから、体調を崩すのもわからない話ではありません。
 気になるのは新入生たちです。体調を崩して欠席したことをきっかけに、休みグセがついてしまうことはよくある話です。先学期のクラスではLさんがそうなってしまいましたし、今学期はHさんが危険水域に入りつつあります。それに対して先学期のCさんは、学期初めは体調を崩していましたが、何とか休まず学校に通い続け、大きく力を伸ばしました。いいものを持っていながら中途半端なままに終わってしまったLさんとは対照的です。
 水曜日から選択授業が始まっていますが、選択授業を休んだ学生たちも気がかりです。選択授業には成績以外に出席率の規定もありますから、気安く休んでしまうと挽回不可能な状況に陥るのです。前述のLさんは、先学期、実力は十分ありながらも選択授業の期末テストの日にも休んでしまったがために、パスできませんでした。やはり、いい加減な勉強のしかたでもレベルが上がれるというのでは、本当の力は付きません。そして、学校の外に出たら、世間は厳しいものなのです。
 新学期が始まって1週間と少々。学校の中は、8月2日のスピーチコンテストに向けて、学生も教師も歩み始めています。

  • 2012年07月20日(金)21時40分

魔の三角地帯

7月19日(木)
 今日の授業は最上級クラスで、新聞記事を使いました。その授業の導入で、「来週の金曜日、7月27日は何がありますか」と聞いたところ、「……」。「あれ、何の日か誰も知らないの?」とさらに問いかけてみると、「先生の誕生日ですか」という答えが返ってくる始末。結局、ロンドン五輪の開幕という正解は出てきませんでした。
 学生は自分が興味を持っていることは多くの情報を持っていますし、持とうとしています。でも、それ以外の世界に関しては、恐ろしいほど何も知りません。今日のクラスの学生たちも、能力的には粒ぞろいのはずなんですが、「ロンドン五輪の開幕」と聞いても線のつながらない顔をしているのもいました。そういう学生たちを日本の大学に入れて、日本人に伍して勉強できるようにしていくには、単に文法やら漢字やらを覚えさせるだけでは済みません。授業で新聞記事を使うのは、論理的な文章の代表として論説文に触れてもらうのに加えて、社会性を持ってもらうことも主たる目的なのです。
 今日扱った新聞記事は、国がメダル獲得数を目標に掲げることの是非についてです。日本はこういう議論がだいぶ前から出てきていますが、学生の出身国では必ずしもそうではありません。ですから、学生たちにとっては、この新聞記事は初めて触れる意見かもしれません。そういう場合でも驚かずにその意見を文章から読み取り、受け入れ、それに対する自分の考えを冷静にまとめられるかどうかが、入試では合否を分けるポイントとなります。
 学生の家、学校、アルバイト先、この3点を結んだ地域を、私たちは冗談半分に「魔の三角地帯」などと呼んでいます。この魔の三角地帯から外に出ず、家ではゲームか何かに没頭していては、留学の意義も半減してしまいます。いかにして学生を魔の三角地帯から脱出させるか、こんな面でも学校の器量が測られているような気がしてなりません。

  • 2012年07月19日(木)20時24分
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