logo

KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

過去ログ

過去ログ選択フォーム
表示ログ

なぜ、今、原子力?

4月19日(木)
 Wさんは、KCPの大学院進学コースに在籍し、来春の大学院進学を目指す学生で、大学院では原子力の研究をしようと思っています。日本の原子力研究は、今、非常に風当たりが強いです。この時期になぜ日本で原子力に向かおうとするのか不思議でなりませんでした。
 確かに原子力の利用には逆風が吹いていますが、原子力は何も発電だけに限定されるべきエネルギー源ではありません。もっと小さな単位でエネルギーを使うことを考えれば、原子力は効率のよいすばらしいエネルギー源になれるはずです。…Wさんこんな理由を挙げていました。
 Wさんの発言内容そのものには私もいちゃもんをつけたいところはありますが、学問する意義、技術の方向性まで考慮して、自分の進むべき道を選んでいる点には感心しました。まだ日本語に慣れておらず、自分自身の思いをこちらに届ける術が完全に身についていないため、今日は議論を深めることはできませんでした。しかし、これから夏の終わりにある大学院受験まで、Wさんの考え方を鍛えていく楽しみが生まれました。今学期は毎週木曜日に、Wさんを含めて他の理科系大学院進学を狙う学生のお世話をする授業があります。Wさんと議論を交わしていくことによって、一緒に授業を受けること学生たちの大学院進学に対する考えも深耕していければいいと思っています。
 うわべを飾るテクニックではなく、ほとばしり出る思いに形を与えるお手伝いをしていけたら、面白い仕事ができるに違いありません。こういう指導が、理科系出身の日本語教師である私が本来なすべき仕事です。

  • 2012年04月19日(木)20時30分

おかえりなさい

4月18日(水)
 受験講座日本語のレベルテストの結果についてあれこれ言っている時、Hさんが職員室にひょっこりやってきました。Hさんは去年の震災までは、日本での大学進学を目指していました。真面目で優秀な学生で、先生方はみんな期待をかけていました。しかし、震災後、日本に居続けることに反対のご両親からの経済的援助を打ち切られてしまったため、アルバイトに励むことを余儀なくされました。その結果、学校に通えないほど疲れ果ててしまい、ついに6月で帰国してしまいました。今回は、それ以来約10か月ぶりの来日です。
 帰国したHさんは働きながらも再来日の夢は抱き続け、粘り強くご両親を説得した結果、ワーホリでの来日、日本での専門学校進学を認めていただいたとのことです。帰国直前のやつれた感じの顔ではなく、また自分の道を歩けるようになったことの幸せを満喫している表情でした。1度は挫折した夢を再び描き始めたのですから、その喜びはひとしおであることは想像に難くありません。
 前回の来日はご両親からの援助を得た恵まれた留学でした。それに比べて、今回は自活しながらの留学です。ワーホリの特権を生かしてと言えば明るく響きますが、現実は決して生易しくはないでしょう。ただ、Hさんは、最後の学期がKCPの上級だっただけあって、日本語力は折り紙つきです。その力が発揮できる職場は、きっと見つかるはずです。そして、何より、ご両親の説得を通してHさん自身大人になったはずです。また、留学できることのありがたみとその意義を身に染みて感じているに違いありません。それが、いかなる困難をも跳ね飛ばす原動力になるでしょう。
 Hさんを知っている先生方すべてが「よく帰ってきたね」と言いました。震災後日本を出国した外国人が増えたこともあって、昨年は日本の人口が25万人あまり減ったと朝刊に出ていました。そんな記事を目にした後だけに、Hさんの心意気がうれしく、Hさんの留学生活に幸あれと心の底から応援したくなりました。

  • 2012年04月18日(水)20時50分

コンビニスモーカー

4月17日(火)
 4月に入ってから毎週火曜日の朝は、K国大使館までレッスンに出かけます。その途中にコンビニがあるのですが、どうもその店先でタバコを吸っている人が毎週同じような気がするのです。毎週ほぼ同じ時刻に決まったところを通るので、同じ人が吸っていたとしても不思議はありません。その人はほかにタバコが吸えるところがないんでしょうね。
 もしかすると、その人の会社の中は全面禁煙か、少なくとも分煙がなされていて、喫煙所は狭苦しい会社の片隅に追いやられているのかもしれません。外で堂々と心置きなく吸えるコンビニの前は、その人にとっては貴重なオアシスなのでしょう。時間的にも仕事を始める前の1本という感じで、毎日の活力をコンビニ前のタバコから得ているような気がします。
 以上は私の勝手な想像ですが、ここのところ喫煙者への風当たりはきつくなる一方で、多かれ少なかれこのような状況ではないかと思います。KCPも、私が入ったころか各階の廊下でタバコが吸えましたが、今は6階の喫煙所だけです。道路からのセットバックでできた空間を転用しているため、元は屋外扱いのところです。KCPの正面のビルも、喫煙所はある階のベランダの隅っこだけのようです。
 私の父の世代までは、いや、私が就職したころまでは、タバコを吸う人を中心に社会が作られていました。山手線などが禁煙なのは非常に特殊な例であり、新幹線に禁煙車ができたことが画期的な事件だったのです。禁煙の喫茶店なんて想像もつかず、歩きタバコも当然で、何かのお礼にタバコが1箱差し出されるのはごくありふれた風景でした。そのころは、タバコを全く吸わない人たちのことを考えてもらえる世の中が来るとは思ってもみませんでした。タバコの煙に非常に弱い私は、社会に適応できるのだろうかと何となく不安を感じてさえいました。
 コンビニの前に屯してタバコを吸っている人たちを見ると、世の中変わるものだなと思います。価値観が変わると言ったほうがいいかもしれません。次は、今当たり前だと思われている何が変わるのでしょうか。

  • 2012年04月17日(火)21時57分

5時はお昼?

4月16日(月)
 今日は9時から4時近くまでずっと授業で、席の温まる暇もありませんでした。おかげで、昼食と言うよりは今日2回目の食事にありつけたのは、夕方5時近くでした。今日ほどじゃなくても、この仕事は食事が不規則になりがちです。不健康だと思いながらも、顧客である学生を第一に考えると、なかなか昼休みの時間帯に昼食とはいきません。
 私の場合、一番空腹を感じるのは2時から3時にかけてで、その時間帯を過ぎると逆に空腹を感じなくなり、食事を取ろうという気持ちもなくなります。ほうっておくとお昼抜きになってしまいます。幸か不幸か、お昼抜きになったくらいで倒れるようなことはありませんから、何が何でもお昼を食べようとは思わないのです。今日は5時近くになったのに何で食べたのかというと、お昼用のパンを買ってあったからです。そうじゃなかったら、間違いなくお昼抜きのパターンだったでしょう。
 私がお昼抜きでも体がもつのは、朝をガッツリ食べているからです。厚切りのトースト1枚、野菜炒め数百グラム、牛乳250cc、バナナ1本というのが標準です。トーストには蜂蜜を塗り、糖分の補給も怠りません。これだけ胃袋に入れておけば、昼を抜いたくらいで倒れる心配はありません。戦国時代ぐらいまでの人は1日2食で、しかも戦争をしていたのですから、デスクワークやせいぜい教壇に立つくらいで倒れていたら、ご先祖様に申し訳が立ちません。
 よくないのは、夜が更けてくると、晩御飯を食べるのが面倒くさくなり、仕事から帰ると風呂に入って、果物とヨーグルトを食べて寝てしまうことです。寝る直前にたくさん食べるのは胃腸によくないと言われていますが、栄養摂取量を考えると朝だけでは不足です。それが証拠に、月曜日の朝の顔と金曜日の夜の顔は、明らかに頬のこけ方が違います。
 さて、明日はまた大使館のレッスンです。その後、2時過ぎの受験講座生物まで授業はありません。どうやらお昼は普通に取れそうです。

  • 2012年04月16日(月)20時06分

サクラサク

4月13日(金)
 今日は中級以上の各クラスが新宿御苑へお花見に行きました。私はお留守番だったので話を聞いただけですが、新宿御苑は各種の桜が花盛りだったり散り始めだったりで、まさに春爛漫だったようです。・芝生の上でゲームをしたらすぐ暑くなり、予定のゲームをこなさずにクラスごとの懇親会に移ったとか。今日の最高気温は23℃、天気は下り坂で、湿った空気が入りつつあったのでしょう。いつの間にか蒸し暑さで体を壊す心配をしなければならない季節になりました。
 お留守番の私は、ひたすら受験講座の準備。今学期は、金曜日に物理と化学があるので、理科担当の私にとってはタイトなスケジュールです。新学期になり、新たに登録する人がどれぐらいになるか読めないところがあり、不安半分で教室のドアを開けたら、教材プリントが足りなくなるほどの学生がいるではありませんか。コピーに時間を取り、ちょっと出遅れてしまいました。
 化学の授業の後、W大学のOさんが来てくれて、学生の受験勉強の相談に乗ってくれました。今日はSさんがOさんを占領していました。Sさんは優秀だと思いますが、進学に対する心構えがまだできていないように見えます。2年前のOさんはW大学に照準を定め、先生たちを上手に利用し、日本語も英語も数学も理科も、ぐんぐん力をつけていきました。Oさんには自身のそういうところを、Sさんを始めとする後輩に伝えていってもらいたいと思っています。
 Sさんは、Oさんからどんな影響を受けたでしょうか。来週Sさんに会うのが楽しみです。ここで大きく脱皮して受験戦争を勝ち抜き、今度はSさんがOさんの立場になって後輩に経験を伝えていってもらいたいものです。

  • 2012年04月13日(金)22時11分

授業見学

4月12日(木)
 今学期初めてのクラスでしたが、見学の方が入りました。今まで日本語教育に全く縁のなかった方たちが、日本語教師は一体何をするのだろうか、日本語学校はどんなところなのだろうか、ということを知ろうと見学にいらしたという次第です。30分あまり見ていただきました。今日のクラスは素直な学生が多く、しかも今日は全員出席だったので、日本語学校の明るい面が伝わったのではないでしょうか。
 私もこの仕事を始める前は、日本語教師など漢字の読み書きと文法の品詞分解さえできれば務まるだろうと思っていました。高校の国語の成績は、古文・漢文は全くダメ、現代文は「この時の太郎の気持ちを50字以内で述べよ」などという記述問題もさっぱり点が取れず、漢字の読み書きと文法問題が得点源でした。東京生まれで東京暮らしも長かったですから、発音・イントネーションも何とかなるだろうという読みもありました。外国人に日本語を教えるならそれで十分だと軽く考えていました。
 しかし、漢字の読み書きと文法と発音イントネーションだけの日本語教師は、機械と変わりません。ティーチャーではなく、ティーチングマシンに過ぎません。最初に始めたプライベートレッスンの時から、そういうことに気づかされました。日本で小さな会社を持っている生徒さんから、クレームの手紙の読み取り方、お客さんがどのくらい怒っていてどう対処したらいいか相談された時、実はとんでもない仕事を始めてしまったのかもしれないと思いました。日本語学校に勤めるとなると、在籍管理やら進学指導やら人生相談やら、素人さんには想像もつかない仕事が待ち受けています。全人格を振り絞って取り組まねばならない仕事なのです。
 今日、私の授業をご覧になったみなさんはどうお感じになったでしょうか。日本語教師の楽しさみたいなものが伝わったでしょうか。それとも、こんな仕事はまっぴら御免だと思われてしまったでしょうか…。

  • 2012年04月12日(木)21時47分

未定じゃダメだよ

4月11日(水)
 受験講座のオリエンテーションをしました。新たな学生が加わり、大きな教室が満員になりました。講座の内容や時間割を説明したあと、受講届を書いてもらい、例によって志望校のアンケートを取りました。先学期も受けていた学生にとっては2度目のアンケートですが、回答内容にあまり進歩がみられないのが気になります。相変わらず「未定」が多く、勉強したい学問系統すらあやふやなままという学生もいました。
 中には、東京の外に出て進学したいから相談に乗ってもらいたいと言ってくる学生もいます。具体的な大学の名前をいくつか出して比較したいという、この時期にしてはけっこう高度な話です。出願締め切りが早い大学は、本当に時間がないのです。それを口が酸っぱくなるほど注意してきましたが、なかなか伝わりません。こういうことは、教師の口から言うより同じ留学生の先輩から話してもらったほうが効き目があるのでしょう。今学期から週に1回ずつ来てもらうことになったAさんやOさんに語ってもらいましょうか。
 2人のうちOさんはかなり早い時期からW大学と目標を定め、ただ憧れているだけでなく、そのための勉強を始めていました。EJUはともかく、W大学独自の試験は厳しいと思っていましたが、入りたいという強い思いが面接で通じたのでしょうか、見事に合格しました。今年は、こういうパターンの学生が少ないように思えてなりません。最上級クラスのSさんも、OさんがKCPにいたころと同じくらいの年齢だと思いますが、考え方や生活パターンが子供ですね。見守るほうとしては心配でなりません。
 いずれにしても、これから手綱をかなり引き締めて臨みます。それが、最終的に学生たちにとっての幸せにつながるのですから。

  • 2012年04月11日(水)19時20分

助けすぎ

4月10日(火)
 昨日ほどではないにせよ、この時期らしいほどほどの暖かさの中、新学期が始まりました。1階のピロティでは、新入生と在校生とが入り乱れてクラス発表に見入っていました。新たに始まる学校生活に漠然とした不安を感じているような顔もあれば、友達と同じクラスになって喜んでいる顔もあり、いろんな表情があふれていました。午後のクラスは授業が始まる5分前にはピロティから学生がいなくなりました。遅刻の学生もほとんどいませんでしたから、今学期の学生は期待していいのでしょうか。
 そんな中、去年の卒業生のMさんが来ました。日本で会社を作り、社長の名刺を誇らしげに見せてくれました。従業員3人で、もう1人増員するそうです。計4人の生活を背負っているわけですから、大したものです。KCPにいた時はやや頼りなさげだったのですが、地位が人を作るのでしょうね、今日の顔は大人の顔でした。まだまだ苦労が多いでしょうが、KCPから求人してくれるくらいの会社を作っていってもらいたいです。
 夕方、先月卒業してN大学に進学したLさんが来ました。ビザを変更するのに必要な書類をもらいに来たとか。一般教養の授業はレベル別になっていて、そのレベルテストがずっと続いているそうです。でも、毎週月曜日が休みになり、毎週3連休だと言っていました。じゃあ、月曜日はアルバイトだねと聞くと、奨学金がもらえるので実質的な授業料は国立大学程度に抑えられるそうです。Lさんは真面目な学生でしたから、きっと卒業するまで奨学金をもらい続けることでしょう。そうすると、私立大学でもけっこう安く留学できるものだなと思いました。本当に勉強しようと思っている学生には、救いの手が差し伸べられるのでしょう。
 Lさんは、また、KCPの先生は優しいですとも言っていました。KCPの先生は何でも手伝ってくれたけど、大学の先生は何もしてくれないとぼやいていました。LさんはKCPに感謝しているという流れで話していましたが、私たちのやり方が果たして学生のためになっているのかと反省させられました。Lさんは上級までいきましたから、もっと突き放してもよかったかもしれません。でも、本能的に手を出しちゃうんですよね、この学校の先生たちは…。

  • 2012年04月10日(火)18時18分

相談コーナー

4月9日(月)
 今日は気温が23.8℃まで上がり、5月下旬並みの暖かさとなりました。私が仕事をしている部屋は北向きなのでそういった暖かさはほとんど感じられませんでしたが、日中外に出た時や、1階でちょっと力仕事をしたときなど、20℃を大きく超えた空気を肌で感じることができました。新宿御苑は花見客でいっぱいだったと、夕方学校に顔を出した卒業生が言っていました。先々週末に桜の開花宣言が出されたことから、新宿御苑前駅のホームに御苑のポスターや御苑に近い地下鉄出口の案内が出ています。去年まではそんな案内は出ていなかったように思います。
 今学期から、受験講座では卒業生による相談コーナーを設けることにしました。G大学に進学したAさんが英語の、W大学に進学したOさんが数学の相談に乗ってくれます。私たちの日本語の説明ではよくわからなかったところの補足や合格体験談などが聞けるようにという考えです。2人とも去年の卒業生で今年2年生ですから、受験講座の受講生と年齢も近く、学生たちも何かと話しやすいのではないでしょうか。こういうところから学生のニーズがわかれば、それを授業やコースにフィードバックしていくこともできます。
 今日は、2人がその打ち合わせに来てくれました。2人とも、これから毎週1日、大学の授業を済ませてからこちらへ来てくれます。受験講座が終わり次第、相談コーナーを始めるということになりました。後輩のために一肌脱いでくれるという2人の心意気を在校生に上手に伝え、相談コーナーが繁盛するように持っていくのが私たちの務めです。明日が始業日で、水曜日木曜日が受験講座のオリエンテーション、そして金曜日から相談コーナーが始まります。在校生の皆さん、2人とも受験生の苦しみがわかるいい学生ですから、バンバン利用してくださいね。

  • 2012年04月09日(月)20時55分

入学式挨拶

 みなさん、本日はご入学おめでとうございます。このように世界各国から多くの若い方々がKCPに入学してきてくださったことを非常にうれしく思います。
 今から1が月ほど前に、私たちは卒業生を送り出しました。進学する人、就職する人、帰国する人、卒業生それぞれ自分自身の選んだ道に向かってこの学校を巣立って行きました。式の後、卒業生と教職員とで卒業記念パーティーを開きました。お酒が入ったこともあり、卒業生たちは学校では表したことがない素顔を見せてくれました。
 その卒業生たちがほとんど異口同音に言っていたことが、「もっと勉強すればよかった」ということです。入学したばかりのころ先生から注意されたことが、卒業が近づくにつれて身に染みてわかってきたと言っていた学生もいました。ある学生は、「日本にいるだけで日本語が上手になり、何でもできるパワーが身に付くような気がしていた」そうです。
 私たちは、KCPはすばらしい学校だと思っていますし、そうあり続けるために日々努力もしています。でも、「何もしなくても何でも身につく」では期待のされ過ぎです。皆さんが留学を成功させるには、皆さん自身が目標を具体的に描き、それに向かって自分の足を前に出し続けることが肝心です。目標はいくらでも掲げられるかもしれません。先ほどの卒業生たちも、入学した時に目標を持っていなかったわけではありません。ただ、目標に向かってたゆまず前進し続けたかというと、自分自身の中にそうとは言い切れないものがあったのでしょう。それが「もっと勉強すればよかった」という反省の言葉に集約されているように思えてならないのです。
 留学生活はすべてがスムーズに運ぶとは限りません。テストで思ったように点が取れないなどということも経験するでしょう。志望校に落ちてしまうことだってあり得ます。また、ホームシックにかかったり人間関係で悩んだりした学生もいました。こういった大小の挫折を、KCPの教職員や友人を始め、周りの力も借りながら、最終的には自分の力で乗り越えていくこともまた、留学で得られる成果の一つです。
 皆さんが留学の期間を終えてKCPを去るとき、どんな気持ちを抱いているのでしょうか。皆さんが心の底から有意義だったと思えるような留学生活が送れるよう、皆さん自身も自分のすべての力を留学生活に注いでいってください。私たち教職員も皆さんを精一杯応援していきます。一緒にすばらしい留学生活を築いていこうではありませんか。
 本日は本当にご入学おめでとうございます。

  • 2012年04月07日(土)14時06分

入学式の写真

4月6日(金)
 昨日は今年初めて最高気温が20℃を超え、そのおかげで、今朝見た四ッ谷駅の桜は七分咲きぐらいでした。今日は、花冷えというほどではありませんが、昨日に比べるとちょっと風が冷たかったです。それでも16℃まで気温が上がっているのですから、季節は確実に進んでいます。そして、今日は桜の満開宣言が出されました。
 今週になってから、フェイスブックには3月に卒業した学生が入学式の様子を載せてくれています。M大学に入ったKさん、Y大学に入ったUさん、O大学に入ったCさん、A大学に入ったZさんなどなど、みんな晴れがましい顔をしています。KCPに入学した時は初めての日本で不安と緊張ばかりだったでしょうが、大学の入学はどうだったのでしょう。写真を見る限り余裕たっぷりのようですが…。
 KCPで身に付けた日本語は、大学で本当に自分が勉強したいことを勉強するための道具です。それを存分に使いこなして、留学の目的を達成してもらいたいと思います。外国語の勉強は、それを使って初めて意味があるものです。マンガを読むためであっても、異性と付き合うためであっても、そういう何かがあるからこそ、勉強しようという意欲も湧いてくるのではないかと思います。勉強が趣味だという人でもなければ、「何か」がない語学の勉強は長続きしないでしょう。
 KCPは明日が入学式です。新しい学生たちは、どんな「何か」を鞄に詰め込んでKCPの門をくぐるのでしょうか。そして、KCPの入学式の写真を誇らしげにフェイスブックに載せるのでしょうか。

  • 2012年04月06日(金)20時03分

学生を観察する

4月5日(木)
 昨日、今日は新入生のレベルを決めるテストがありました。毎学期、新入生たちはみんな緊張した面持ちでこのテストを受けます。試験監督する立場としては、全員と初対面ですから、これから付き合っていく上で参考になるかもしれないと思って、テストを受けているときの様子をじっくり観察しています。聴解で几帳面にメモを取る人、貧乏揺すりが止まらない人、わけもなくキョロキョロする人、きちんとした身なりの人、丁寧な字で名前や答えを書く人、消しゴムを使わずにぐしゃぐしゃと字を消す人、片手に携帯を握りしめている人、帰りがけに「先生、さようなら」と声をかけてくる人、まあ実にいろいろな人がいます。こうした第一印象が、その学生の特徴として私の心に刻み込まれることもあります。
 入学式などで試験監督に入った教室の学生がいると、「あのときの落ち着きのない学生か」とか、「この髪の長い学生は隣の学生が落とした消しゴムを拾ってあげたっけ」などと、テストの時の様子を思い浮かべることもあります。テストの時の印象が強かった学生が自分のクラスになると、よけいな先入観は持ってはいけないと思いつつも、色眼鏡で見てしまいがちです。
 もちろん、第一印象が当てにならないことも多く、意外にいいやつだったと思うこともあれば、逆に失望させられることもあります。今までどちらのケースが多かったかといえば、プラスの方向に傾くことが多かったように思います。付き合いが長くなれば信頼関係が生まれてきて、その学生のいい面が見付けられるようになってくるのでしょう。
 「人は見た目が9割」なんて本がベストセラーになったこともありました。一面では紛れもなく真実ですが、それが訂正される例を何度も経験してきていますから、私はそういう見方もあるんだねっていうスタンスです。ですから、初対面で悪い印象を持ってしまった学生に対しては、可能な限りその学生のいいところを見出そうとしています。入学してくれた学生の長所を伸ばすのも、この学校の役目だと思っていますから。

  • 2012年04月05日(木)18時04分

嵐が過ぎ去って

4月4日(水)
 昨日の帰宅時は、ひどい嵐でした。東京でも最大瞬間風速が30m近くに達しました。この強風のためいろいろなところで電車が止まりましたが、私が通勤に使っているのは地下鉄ですから、多少遅れたぐらいで普通に帰れました。S先生は途中で足止めを食ったそうです。
 学生たちは、よく、「東京は交通が便利です」と言います。JR、地下鉄、私鉄のネットワークが発達していて、電車だけでほとんどどこへでも行けます。KCPはバイクや車での通学は禁止されていますが、全く不自由しません。東京の多くの学校や会社が同様の状況だと思います。でも、その頼みの綱の電車が止まってしまうと、身動きが取れなくなってしまいます。去年の震災の時は、私も学校に泊まりましたし、先生が引率して歩いて帰宅した学生たちもいました。昨日は学期休み中でしたから学生はいませんでしたが、学期中だったらいろいろと頭を悩ませなければならなかったでしょう。
 便利なもの、文明の利器とはえてしてそういうものです。どうしてもそれに頼りがちになり、それが欠けたり機能しなくなったりすると、多大な影響を受けます。昔はそんなものを使わなかったなどと懐旧談を始めたところで何の足しにもなりません。でも、それが使えなくなったらどうするかという思考訓練だけは、常々しておくべきではないでしょうか。
 私の机の下には、はき慣れたウォーキングシューズがあります。いざという時、学校から歩いて帰れるようにです。学校から家まで歩いて帰ったことはありませんが、家から四谷までなら歩いてみたことがあります。どの道をたどっていけばいいかほぼ頭の中に入っていますから、もう少し陽気がよくなったら学校から家まで歩こうと思っています。
 今日は一転してきれいな青空が広がりました。寒冷前線が通過したため気温はあまり上がりませでしたが、いいお天気になりました。でも、昨日の嵐を忘れずに、非常時にこそ頼りになる学校を作っていきたいです。

  • 2012年04月04日(水)21時27分

大使館にて

4月3日(火)
 今日からK国大使館でのレッスンを担当することになりました。以前、R国大使館で教えていたことがあり、KCPに入る以前はM国大使公邸まで赴いたこともあります。
 一般に、大使館勤務の方々は、日本通とまではいかなくても、みなさん国で日本についてそれなり以上の勉強をしてきたことでしょう。そういう方々に満足してもらえるレッスンとはなんだろうかと、大使館でのレッスンをするたびに思います。単に文法や漢字の読み書きを教えるだけなら、自習教材を与えればすみます。学習意欲が高い人たちですから、教師はせいぜいペースメーカーとして進捗状況をチェックするくらいで十分でしょう。面と向かってレッスンするとなると、それ以上の何かを与えねばその意義が疑われかねません。
 今日のレッスンは、前任者からの引継ぎで、日本各地の風土の紹介でした。配ったプリントを読みながらそこの出てくる単語や文法を教えていくという内容でした。でも、その土地の風土がすべてそのプリントにまとめられているわけではなく、また、そういう風土を生んだ背景も網羅されてはいません。そこが、生身の教師が出てくる価値のあるところだと考えました。
 私は、そういう日本の風土などということに関する知識は普通の人よりはもっているつもりですから、大使館の方々が知らなさそうな話もできます。というか、私は、自分が興味のおもむくまま集めてきた、日本人が普通に日常生活を送っている分には全く不必要などうでもいいような知識を応用する道はないかと考えて、日本語教師になったという面もあります。
 ですから、この仕事を引き継ぐと決まった時、密かに喜びました。でも、知識をひけらかすような、押し付けるようなレッスンでは先が見えてしまいます。その辺のところを自重しながら、末永くレッスンを続けていきたいものです。

  • 2012年04月03日(火)15時30分

春の装い

4月2日(月)
 先週の土曜日に、東京でも桜の開花宣言が出されました。今朝、通勤時に注意して見てみると、四ッ谷駅の桜もちらほら咲いていました。天気予報によると、今週は極端に暖かくなるわけでもなさそうなので、今度の週末がお花見のピークとなることでしょう。
 桜の花も咲き始めたし、新しい月、新年度にもなったことだし、今日はコートを着ないで出勤しました。毎年、いつコートを脱ぎ捨てるか迷うのですが、今年は迷うことなく今日からにしました。朝はちょっぴり寒かったですが、駅まで早足で歩いたら体が温まってきました。ホームで待つ人々はまだコート姿が大半で、その人たちからすると伊達の薄着に見えたかもしれませんが、当の本人は季節を先取りしているつもりです。しかも明るい色合いのスーツにしていますから、人ごみの中ではだいぶ浮き上がっていたことでしょう。でも、今週の土曜日は入学式です。軽やかな気持ちで新入生の皆さんをお迎えしたいです。
 学校の中は、新学期の準備が着々と進められています。今日もその関連の会議がいくつもありました。私は会議はあまり好きではないのですが、新しい学校を作り、発展させていくためには知恵を絞りあい出し合っていかねばなりません。服装だけではなく、仕事の面でもほかの人たちに先んじていきたいと思っています。

  • 2012年04月02日(月)18時09分

バックアップ

3月30日(金)
 最近、学校で私が使っているパソコンの調子が今ひとつすっきりしないので、消えてしまうと困るファイルなどのバックアップを取りました。パソコンのメモリーには、all or nothing的なところがありますから、nothingにならないように予防措置をとっておかなければなりません。電子的な記録は目に見えないだけに、こわいところがあります。
 私が初めてパソコンに接したころは、キロバイトの世界でした。ですから、メモリーを食わないようにするにはどうしたらいいかを常に考えさせられました。記憶容量がメガになったときは感激したものです。ギガなんて夢にも出てこないような規模でした。今は小指ほどの大きさのUSBでギガですからね。すごいもんです。
 記憶容量が大きくなることはすばらしいことなのですが、昔だったら捨てていた、しょうもないことまでファイルに残すようになってしまったことも否めません。今日のバックアップにしても、取っておいても金輪際見ないだろうなというファイルまで、全部、とりあえず残しておくという感じでした。これが紙のように場所を取るものだったら、要不要を見極めて、整理をしながら保存すべきものを選び出したことでしょう。こういうところにも、人間が頭を使わなくなる兆しが見られます。
 今日は南寄りの風が吹いて、今年最高の気温になりました。3月末になってようやく春らしくなりました。月曜日からは新年度です。デスクトップもすっきりさせて、新たな気持ちで新入生を迎えようと思います。

  • 2012年03月30日(金)17時05分

Eさんのボランティア

3月29日(木)
 去年W大学に進学したEさんが遊びに来てくれました。職員室に入るや、開口一番、「エレベーターのにおいが懐かしい」と。こういう感想を述べた学生は初めてです。うーん、1年も学校を離れていると、そういうもんなんですかねえ。
 入学した時のEさんは、まだ幼さが残る顔つきでしたが、今日のEさんは大人になったなという感じがしました。ちょっとやせて顔の輪郭がシャープになったからかなと思っていましたが、違っていました。大学に入ってから、Eさんはボランティアに打ち込んでいるのだそうです。今週末も福島へ行って避難している人たちのために汗を流すとか。人のために何かをすることで、一皮むけたのでしょう。
 代償を求めることなく誰かのために尽くすということは、非常に尊いことです。人間の本性は利己的なものです。親兄弟など自分のごく身近な人たちのためなら利他的になれるかもしれませんが、外国の全く見ず知らずの人たちのために自分の時間と労力を割くということは、そう簡単にはできません。Eさんは何の気負いもなく、それをやっているのです。このことがEさんを精神的に大人にし、そのオーラが全身から発せられているのだと思います。
 EさんがW大学でボランティア活動をしていると聞きつけた、KCPボランティアクラブ顧問のM先生は、さっそくEさんに先輩として来てくれないかと交渉していました。立派な活動をしている卒業生から生の話や、何よりボランティアで磨かれた先輩の生き生きとした姿こそが、在校生たちにとって大きな刺激と目標になります。
 ボランティアクラブが校内で集めた募金を福島県南相馬市に送ったところ、市長さんからお礼状が届きました。Eさんが加わってこんな活動がどんどんできるようになればいいですね。

  • 2012年03月29日(木)18時59分

あっという間に充実

3月28日(水)
 KCPの日本語教師養成講座の修了式がありました。修了生は「あっという間でした」「充実していました」という感想を述べていました。「あっという間でした」というのは、勉強すべきことがたくさんあるのに時間が足りなかったということでしょう。「充実していました」ということばを反対側から見ると、勉強で大変忙しかったということにほかなりません。日本語教師になるためには、それだけ多くのことを身に付けなければならないということなのです。特に、今回の修了生の方々が経験した教壇実習となると、自分の思い描いた図のとおりに進まずに悩むことも多々あるでしょうから、なおさらあっという間に時間が経ち、充実しすぎるくらい充実した生活を送らねばならなくなります。
 翻って今の私自身はどうなのかというと、通常の授業で日本語を教えることにはあまりチャレンジングな感じを抱いてはいません。どんなレベルでどんな教材を使っても、100点の授業はできないまでも、学生たちをそこそこ満足させる授業をする自信はあります。でも、これじゃいけないんですよね。こんな感覚に陥っているようじゃ進歩はありません。
 だからというわけではありませんが、この4月からKCPの授業が変わります。どう変わるかは、そのうちホームページに載るでしょうからそれをご覧ください。新しいことを始めようとすると、身が引き締まるものです。始めてみると計画通りに行かずに苦労することもあるでしょう。それこそが、今日の修了生の感じてきた充実感に当たるものなんだと思います。次の学期は今までとは一味違った3か月になるかもしれません。それを存分に楽しもうと思っています。

  • 2012年03月28日(水)19時53分

花見は遠く

3月27日(火)
 福島県に三春(みはる)という町があります。「梅と桜と桃の花が一度に咲くから三春というなまえになった」とも言われています。もちろん、そんな年はほとんどありません。梅と桃とでは、花の時期が1か月から2か月ぐらい違うでしょうし、桜は花の時期が短いときていますから。ただ、今年は梅の花の咲くのが非常に遅れていますから、これからの気温次第では三つの花が同時に咲いている景色が眺められるかもしれません。金沢では梅がやっと三分咲きになったと今朝の天気予報で言っていました。
 東京は、KCPの卒業式翌日の3月10日を最後として、最高気温が10℃を割ることはなくなっていますが、平年を下回る日が続いています。新宿御苑でも、今年は先週末あたりからようやく梅の見ごろになったそうです。私が毎年注目している丸ノ内線四ッ谷駅の桜も、まだつぼみが固そうです。いつもの年ならほんのり赤みを帯びているころなのですが…。
 さて、三春町には滝桜(たきざくら)という有名なしだれ桜があります。岐阜県本巣市根尾(もとすしねお)の淡墨桜(うすずみざくら)、山梨県北杜市(ほくとし)の神代桜(じんだいざくら)とともに、日本三大桜に数えられています。滝桜は、4月の半ばごろに咲き始めるとライトアップされ、大勢の観桜客でにぎわいます。しかし、去年は震災と原発事故が影を落とし、ライトアップも桜を愛でる催しもすべて中止されました。今年は、例年通りにお祭りも開かれるようです。
 こういう有名な桜を見に行きたいとは思うのですが、桜の季節は新学期が始まる直前か始まった直後かの忙しい盛りです。結局、毎年、通勤時の四ッ谷駅の桜か、新しいクラスの親睦会を兼ねて授業でいく新宿御苑かでお茶を濁してしまいます。まあ、日本三大桜なんて言ったら、花ではなく人を見に行ったなんてことになりかねませんからね。ハイビジョンのきれいな映像で見るくらいがちょうどいいのかもしれません。…というのは、やっぱり負け惜しみですね。

  • 2012年03月27日(火)20時50分

バス停の広告

3月26日(月)
 私の家の近くの駅前にあるバス停には、風除けを兼ねた広告板がついています。広告板は道路と直角方向についていて、道路に面した側にはバスの時刻表と経路図が張られた案内板があります。日中はどうということはないのですが、夜になると広告版には蛍光灯の明かりがつくのですが、案内板には明かりがなく、バスの時刻表を読むには案内板に顔を近づけ、目を凝らさなければなりません。先日、実験してみましたが、付近の街灯の明かりだけでは非常に読みづらく、そうしなければなりませんでした。毎晩、このバス停の前を通るたびに、これってちょっと違うんじゃないかと思います。
 住宅地の駅前から、ことに夜バスに乗る人たちはみんな毎日のように使っているでしょうから、バスの発車時刻をある程度は知っていることでしょう。だからことさらバスの時刻表を明るくする必要はないという考え方もあるでしょう。でも、明かりを入れるなら広告板ではなくて時刻表のほうではないでしょうか。
 同じようなことが昨年の震災後にも言われました。駅の節電を進めているのに、広告用の電気はつけっぱなしでした。広告主との契約上電気をつけなければならなかったのかもしれませんが、広告主と交渉して、場合によっては広告代金を払い戻してでも、広告の明かりを消して客の安全に関わる部分の明かりを1つでも多くつけるようにすべきだったと思います。私はひねくれ者ですから、こういう国全体のことを考えない広告主の商品やサービスには手を出しません。
 駅前のバス停の広告主は半月ごとぐらいで入れ替わります。広告が入らないときは、都バスのイメージ広告のようなものが入っています。百歩譲って、広告収入がないとバス料金を上げなければならないから明かりをつけるのを認めるとしたって、都バスのイメージ広告の時まで電気をつけっぱなしにする必要はないでしょう。
 私がああだこうだと騒いだところで、駅前のバス停の広告板は変わらないでしょう。しかし、これを他山の石として、自分自身やKCPの行為に、この広告板のようなことがないか、気を引き締めていきたいです。

  • 2012年03月26日(月)20時11分
Web Diary